Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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第23話 ネオ・バジリスク

 毒蛇の王、バジリスク。奴は、俺達に向けて這いずってきた。クソ。魔眼は効かなくても、まだ牙の毒と俊敏さがが残ってやがるか。

 

息絶えよ(アバダ・ケダブラ)!」

 

 イドゥンが死の呪文を放つが、バジリスクは回避した。マズいな。回避能力も結構高いのか。

 

「何で、イドゥンちゃんの呪文の放つ方向が正確に分かるんだ?」

 

 グラント、訳が分からないようだ。突進してきたので、皆避ける。

 

「グラント、蛇は体温感知と舌で匂いを口内に送り嗅覚感知するんだ。図体がデカくても、従来の蛇の、その特性は持っているだろうな。」

 

「随分詳しいね、ゼロ。ボク、これからゼロの事を蛇博士って呼んでいい?」

 

「徹底的に調べたんだよ。バジリスクを倒す為にな。」

 

「どうかな?ゼロとやら。いくら蛇博士でも、僕の操るバジリスクは倒せやしないさ。」

 

 リドルが勝ち誇った様にゼロに言った。

 

「なら、これはどうかな?エネルギーよ(ヴェスティブルーム)!」

 

 ゼロが、青みがかかった白い光線を発射するをバジリスクに向けて放つ。牙の何本かが抜けたが、それだけだった。

 

来い(アクシオ)。バジリスクの牙。』無言呪文で、抜けたバジリスクの牙全てを回収する。

 

「それなら、魔塊球(ディアブマス・アービス)!!」

 

 エリナが、決闘クラブの時にマルフォイ戦で使った白い光球をバジリスクに放った。バジリスクの顔が光った。

 

「ハッ、何だそれは!バジリスクは攻撃を受けてないぞ!エリナ・ポッター。」

 

「これだけなら、攻撃は無いよ。これは、補助呪文だから。武器よ去れ(エクスペリアームス)!」

 

 エリナは、すかさず武装解除呪文を当てる。顔面に向けて。当たった瞬間、バジリスクが吹っ飛ばされて、石像に叩き付けられた。これは流石のリドルも焦った顔をした。

 

「唯の武装解除呪文だけで、バジリスクが吹っ飛ばされただと!?どういう事だ?」

 

「素直にそれを教えるとでも思う?このボクが、あなたみたいな小悪党に。」

 

 教えたくないなら、それでも良いかもしれないね。

 

「先輩。あの連携をやりましょうよ。」

 

「今が使い時かもな。やろう。じゃあ、頼むよ!」

 

「行きますよ!水よ(アクアメンディ)!」

 

 エックスが杖の先から水を噴出させる。流石ブラック家。魔力の量も半端なく多い。まるで降水の様な水がバジリスクを包み込む。

 

零界の翠氷(アブソリュス・グラキジェイド)!!!」

 

 氷河の呪文を上回る絶対零度を杖から放つ。水は、瞬時に凍り付く。水に包み込まれてたバジリスクも凍ってしまった。

 

「エックス、早く!」

 

「はい!口寄せ召喚せよ(アヴォカルク・ベカリット)!」

 

エックスは、洗面器を口寄せする。

 

熱を持った水よ(アクアメンディ・フェルベンティス)!!!」

 

 熱湯を洗面器に注ぐ。すぐに水が溜まり、俺は杖を持った方の右手を洗面器に付ける。僅かに凍傷を引き起こすのが、零界の翠氷(アブソリュス・グラキジェイド)の欠点なんだよな。幾ら回復スピードが速いウイルスモードでも、熱湯での処置で完治に3分はかかるんだよな。

 

「ハリー先輩は、さっきの術の副作用で3分は戦えません。その間にお願いします。」

 

「任せな。3分でケリをつけてやるぜ!」

 

「グラント、そうして貰えると有り難いね。」

 

「もうあれだ。ハーミーちゃんを傷つけない為に、編み出した俺の力!見せてやるぜ!!」

 

 グラントが、右の拳を地面につけた状態で何かをしている。しかし、グラントの体に何の変化も無い。失敗したのか?魔力感知呪文で探ってみる。

 

 !?何だこれは。脳のリミッターが外れている。それによって、主に細胞が活性してるぞ。成る程。火事場の馬鹿力を任意で引き出すのかな?

 

「オッシャー!力が漲って来た!アイツをぶっ潰せるぜ!」

 

 グラントは、走る。その速度は、人間を超えている。凍り付いたバジリスクの目の前まで来て、パンチをした。氷が粉々に砕かれて、バジリスクは解放されると同時に、吹っ飛ばされる。続いて胴体にキックをお見舞いした。バジリスクは、悲鳴を上げるように叫ぶ。

 

【何をやっている!たかが1,2年生のガキだろうが!この役立たずめが!さっさと殺せ!!!】

 

 バジリスクは起き上がるが、もうピクピクしている。

 

「しぶてえ野郎だ。口寄せ召喚せよ(アヴォカルク・ベカリット)!」

 

 グラントも口寄せした。出て来たのは、AT-4。つまり、ロケットランチャーだ。コイツは全く、懲りてねえな。

 

「ファイア!」

 

 発射した。バジリスクの腹部に直撃。バジリスクは、悶え苦しんでいる。

 

「よし、ようやく完治したぜ。」

 

 俺は、組み分け帽子を被って、特攻する。帽子を被ったしばらく後、帽子が話しかけて来た。

 

『ハリー・ポッター。君は、今まで自分の信じる者や愛する者を守る為に命を張って来た。周りからどう評されようと。君こそ真のグリフィンドール生だ。これを取りたまえ。今は、君こそこの剣に相応しい!!』

 

 何か固い物が出て来た。眩い光を放つ銀の剣が出て来た。柄には、卵の大きさ程のルビーが輝いている。俺は、それを右手で持った。

 

「!!?」グリフィンドールの剣だと!?どうして?

 

「なっ!それはグリフィンドールの…………僕でも見つけられなかった……何故、何の力も持っていない小僧に!」

 

 リドルがそう言ってるのが聞こえる。だが俺は、構う事無くバジリスクの傍まで近付く。

 

天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)!」

 

 黄金の電撃を、左手に持ったアセビの杖から生成する。この魔法は数年前に作った物だ。肉体活性も促すが、人間の情報処理能力がそれに追い付けない。故に、逆にカウンターを取られかねない術だった。実戦で使うには、リスクが高過ぎるから封印した。

 

 だが、去年ウイルスモードを手に入れた事で状況は一変する。身体能力の上昇、動体視力の強化に伴う人間離れした見切り能力。もしかしたら、この魔法の欠点を克服できるのではなと考えて修業を行った。そしたら、見事に成功した。

 

 だから、実戦での使用はウイルスモードとの併用が前提となってくるわけだ。必然的に、W-ウイルスの適合者だけしか使う事が出来ない。実質、俺専用の呪文と言うわけだ。

 

 天魔の金雷(エンジェボルス・ガルドレギオン)が十分な大きさになった直後、俺はバジリスクへ特攻した。視力を奪う為に、両目を攻撃する。結果、バジリスクの両眼を潰した。バジリスクは、絶叫を上げる。次に、口元の部分まで俺は向かったのだ。

 

 全体重を剣にかけ、鍔まで届く様に深く、バジリスクの口蓋にズブリと突き刺した。腕に牙が刺さり、腐食性の毒が流れ込んできたが、W-ウイルスの適合者故に無効化された。それどころか、今まで負ったダメージすら回復した。

 

 バジリスクは、床に倒れ、ヒクヒクと痙攣した。

 

「こんな事が、僕のバジリスクが!」

 

「諦めなさい!トム・リドル!!」エリナが怒鳴るように叫んだ。

 

「やっぱり、さっきのお前の発言は戯言だったようだな。」

 

 冷たい口調で、俺はそう言い放つ。

 

「まだだ、まだ終わらないぞ。こうなったら、最終手段だ!!蘇れ!バジリスクよ!!!新たな力と身体を得て、再び我に従いたまえ!!!!!」

 

 リドルは、ジニーの杖をひったくり、呪文を唱え始める。すると、バジリスクに4本の足が生え始めた。その次に角が、そして最後に翼が生えた。鱗も強固な物となった。再び目に光が舞い戻ったバジリスクだったものは、周りを威圧するような咆哮を放った。

 

「蛇から竜になりやがった!」ゼロも、これは予想出来なかったらしい。

 

「無茶苦茶だー!」エリナも驚いている。

 

「アハハハハハ!!!これが、僕の切札。ネオ・バジリスクだ!直視した者を即死させ、間接的に見た者を石に変える魔眼は持っていないが、それを補えるパワフルさとタフネスを誇る!お前達に、勝ち目など最初から無いのさ!!やれ!」

 

 ネオ・バジリスクは、新たに生えた足でこちらに向かって来る。皆回避した。が、エリナのかわした方向にネオ・バジリスクが向かって行った。エリナは、気付いていない。

 

「エリナ!逃げろ!!」

 

 それでも、竜と化したバジリスクはエリナを噛み殺そうとする。エリナ本人も、自分の方向に来たのを気付いたが、もう後の祭り。もう逃れられない所まで、距離を詰めている。竜の牙が、エリナを殺そうとする。

 

 だが、エリナの持っていたダイヤモンドがはめ込まれた指輪が光り、ネオ・バジリスクの魔の手を防いだ。その直後、何か長い物がネオ・バジリスクを突き飛ばす。ネオ・バジリスクは、思わず転倒した。

 

「何故だ?どうして奴が、エリナを守ったんだ!?」

 

 長い物の正体。それは、さっきの竜の進化前と同じ姿をしたバジリスクそのものだった。

 

 バジリスク。もう1体いたのか!?しかも、敵である筈のエリナを守っただと!?継承者たるリドルに従う筈の奴がどうして?

 

「あれ?何で俺、あの蛇の言葉が分かるんだ?」グラント、何かに気付いたようだ。

 

「何を言っているのか、翻訳してくれ。グラント。」

 

「分かったぜ。」

 

 グラントに翻訳して貰った。

 

エリナ視点

「あの時の声って君だったの?」

 

 ボクは、バジリスクに聞いてみた。

 

【そうだ。我が片割れを止められなくて、本当に済まない事をした。君達のお陰だ。ようやく、サラザール・スリザリン様の目的を実行出来る。】

 

【目的?ねえ、蛇さん。サラザール・スリザリンって人は本当にマグル生まれを排斥したかったの?】

 

【お嬢ちゃん、ならば答えようじゃないか。魔法書の類には、四人の創設者の略歴及びホグワーツでの顛末は書かれている。だが、詳しい人となりについては書かれていない事が殆どだ。】

 

【うん。ハリー。あのいかにも高級そうな剣を持ってる人がボクの双子のお兄ちゃんなんだけど、あくまで記録だから真実はもっと違うかもねって言ってたよ。】

 

【良い兄を持ったものだな。そう、誰も主の真意を理解していない。あそこのドヤ顔で継承者を自称している若造もだ。君の兄は疑問には思っていていたらしいがな。我が主とゴドリック・グリフィンドール、君の兄が持っている剣の所有者は大変仲が良かった。主義主張がぶつかり合ったと言われているが、そうではない。本来、ぶつかり合うものではないからだ。】

 

【どういう事ですか?】

 

【本来の純血主義とは、マグル生まれを差別するための物じゃない。魔法族である事の誇りを自覚する為にある。『誇りあれ、魔法使い。』とね。そう教える為の物だった。それに、サラザール様は別にマグルを排除する気など無い。迫害されている魔法族を、マグルから守る為に城にその場所を作ろうと考えていた。それだけだ。だから、マグルが何もしなければこちらも何もする気は無いという考えのお方だったのだ。】

 

【ゴドリック様は、生来の騎士道精神を持ってサラザール様の主義を快く受け入れた。あの方は、『それ採用するわ。』って軽いノリで言ってらっしゃったが。】

 

【なら良いんじゃないの?それで、グリフィンドールとスリザリンも手に取って仲良く出来る筈だけど。】

 

【そうだな。それが理想だ。だが、これが上手くいかなかった。周りの環境がそうさせたのだ。英雄、騎士道の体現者たるグリフィンドール。真の魔法使いの味方、純血以外を排除する者たちの頂点と見做されたスリザリン。サラザール様は、とても後悔なされた。自分の考えが魔法使い達にキチンと伝わっていなかった事を。】

 

【そんな。そこで諦めちゃったの?グリフィンドールの理想が一番気高いから、わざと自分を敗者にして。】

 

【ゴドリック様は大変苦しんだ。ロウェナ様は髪飾りの件と相まってお亡くなりに、ヘルガ様はせめて4人が仲良かった頃の証を残そうと料理のレシピを作ったのだ。】

 

【ゴドリック様は、親友だったサラザール様への謝罪を込めてマグルの地で歌を残していった。マグルの世界では、聖ゴドリックと呼ばれていた。】

 

【知ってるよ!その人!歌にそういう意味があったんだ!】

 

【魔法世界が、グリフィンドールが夢としてきた世界がどう回っていくのかを見届ける為に意識を複製したものを2匹のバジリスクに残した。だが、我が片割れは見事にリドルの若造の言いなりになっているがな。】

 

【ある意味あなたも、サラザール・スリザリン?】

 

【そうとも言える。私の、即ちサラザール様の目的は唯一つ。この学校の仇名す巨悪を打ち滅ぼす事。私にとっての巨悪は、リドルと進化したバジリスクだ。】

 

【サラザールさん。】

 

 ボクは、目を開いてバジリスクを、サラザールを見る。スリザリンの真意が分かった今、もう恐怖なんて存在しない。

 

【大丈夫なのか?私の目を見る事は死ぬ事に……】

 

【原始的な恐怖さえ抱かなければ、魔眼は効果を発揮しないよ。ボクは何も無いけれど、それでもその器を愛で満たす事なら出来るから。怖くなんかない。サラザール・スリザリンが、世界の敵として居場所を自分で排除するのなら、ボクが居場所になる。存在は永遠に留めておくし、もう傷付けさせない。皆がボクを救ったように、今度はボクがあなたを救います。】

 

【『…………ジェム!創設者様や寮付きゴースト以外で、私を恐れなかった少女に……このエリナ・ポッターはとても似ている。』もう十分過ぎるほど、私は救われたよ。理解者が出来たという意味でね。】

 

【宜しくお願いします!】

 

ハリー視点

「と、いうやり取りがあった。」グラントが翻訳を終える。

 

「じゃあ、これからどうする?皆。」俺が皆に聞く。

 

「創設者の真意が聞けて良かったと思いますわ。」イドゥンが力強く言った。

 

「俺らの代から、また4つの寮の結束をすれば良いんじゃないか?」と、ゼロ。

 

「僕もやりますよ!グリフィンドールの意思も、スリザリンの意思も両方継いで見せます。」

 

「そうだ!偽物を倒して、スリザリンの名誉を守るんだよ!ヴォルデモート。いいや、お辞儀ハゲ。あいつこそ、スリザリンの面汚しだぜ!」

 

「そうだな。俺もやるよ。俺の妹が信じたあのバジリスクを、俺は信じる!皆、行こう!」

 

 俺達も不死鳥のフォークスを連れて、エリナとバジリスクの下へ行く。

 

「ハリー。ゼロ。グラント。イドゥン。エックス君。フォークス。そして、サラザール先生。見つけよう、ボク達の答えを。ボク達自身の手で!!」

 

 全員が頷く。全員杖を構える。バジリスクとフォークスは、臨戦態勢を取る。さあ、最終ラウンドの始まりだ。

 




少々劣化しているとはいえ、バジリスクにはサラザール・スリザリンの意識も内装されています。

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