Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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第14話 決闘クラブ(後編)

 俺を呼び止めた声の主は、イドゥン・ブラックだった。

 

「イドゥン……という事はルインと決着は付けたって事か。お前にしちゃ、妙に積極的じゃないか。どういう風の吹き回しだ?」

 

「あなたと無性に戦いたいのですよ。失神呪文を無言で唱えるなど、もう2年生としての一線を化していると感じたのです。」

 

「常人では出来ない修行方法で身に付けてね。じゃ、さっさとやろうか。」

 

 俺は、黒檀の杖を右手に持つ。

 

「おや。結構お優しいのですね。右腕で応戦してくるなんて。」

 

「だからどうした?人間ってのは、大抵右利きなんだぜ。そう言う風に出来てるんだ。問題あるか?」

 

 見ている全員は、イドゥンの言葉の意図を分かっていない。先生達もだ。

 

「あなたの本気、つまり左腕で杖を持った状態で決闘して欲しいのですよ。」

 

「俺は左利きと言った覚えはないけどな。いつ、俺の本来の利き腕に気付いた?」

 

「いつもクィディッチでスニッチを取るときは、無意識に左手で掴もうとしているではありませんか。いくら利き腕を偽ろうとも、何処かでボロや癖を出すものですよ。」

 

 これを言われた瞬間、決闘クラブに参加している者全員がざわついた。

 

「何だと!?つまり、今までのポッターは、本気じゃなかったと言いたいのか?」

 

 スネイプが何か呟いている。一方のフィールド先生は、感心したような表情を浮かべていた。

 

「そういう事か。ならば、今夜限りの大出血サービスでもしてやるよ。」

 

 俺は、ウイルスモードを発動した。目が赤くなる。本気で来いと言ったなら、文字通り応えてやろうじゃないか。

 

「フッフッフ。アッハッハッハッハッハ!!!それでこそ潰し甲斐があるってものですよ!ハンデのある相手に勝ったってちっとも面白くありませんからね!!!さあ、正々堂々とかかって来なさい!グリフィンドールの切札!ハリー・ポッター!!」

 

「じゃあ、遠慮無く。スリザリンの女帝様。刻み込んでやるよ。実力以上に思い上がる奴は自滅するって言う事をな。」

 

 アセビの杖を左手に持った。

 

 イドゥンが笑っている。普段のそれではない。戦いへの喜び。狂気の笑みを。おいおい。筋金入りの戦闘狂じゃねえか、あの女。せっかく慣れたってのに、おっかねえ野郎だぜ。だけど俺は、いつも通りの表情をしている。

 

 一礼して、距離を取る。

 

「1,2の,3……」3が言い終わってから、行動する。

 

『『武器よ去れ(エクスペリアームス)!』』

 

 俺は、即座に武装解除呪文を無言呪文で放つ。が、イドゥンも全く同じだった。2つの閃光はぶつかり合い、相殺された。

 

「いきなり無言呪文とはな。」

 

「ハリーこそ、人の事が言えませんわよ?」

 

 周りの殆どは、2年生にしては次元の違う戦いを見て言葉を失っている。

 

麻痺せよ(ストゥーピファイ)!」

 

 すぐさまイドゥンが失神呪文をかけてきた。これは、超感覚呪文をつかって、最低限の動きで以って回避した。

 

「バカな!?呪文を使わずにかわすなど!」

 

お前ら(魔法使い)の常識が俺に通じると思うなよ。」

 

 冷静さを無くして、動揺した対戦相手の攻撃なんて、目が曇ってるも同然。イドゥンがどんどん呪文を放ってくる。だが俺は、感知呪文をフル活用してそれらをかわしまくる。時には、側方倒立回転や後方倒立回転跳び、前方宙返り、連続バク転とかもして。

 

「わあ。ハリーの運動能力はボク知ってるけど、あそこまでなんて驚いたよ。」

 

「運動神経良過ぎだ。あいつ。」

 

「俺は驚いてないぜぇ。この学校で、俺と拳で渡り合える唯一の魔法使いだからよぉ。」

 

 エリナ、ゼロ、グラントの声が超感覚呪文を通して聞こえて来た。

 

「す、凄過ぎる。魔法使わないで、イドゥンの攻撃を避けるなんて。」

 

「というか、魔法を使いなさいよ。魔法を。」

 

 別方向を感知すると、スリザリンの女子生徒が主に驚いていた。特に2年生が。イドゥンの実力を知ってるのだろうか。じゃなきゃ、あのセリフは出ないだろうからな。

 

反射の盾よ(プロテゴ・リフラート)。」独自に改良した盾の呪文を発動させた。

 

妨害せよ(インペディメンタ)!」

 

 イドゥンが妨害呪文を放ってきた。だが、俺には届く事は無い。それを証明するかの様に、逆にイドゥンが吹っ飛ばされた。

 

 そう、俺が盾の呪文を形態変化で生み出した呪文。これは、相手に盾の呪文をかける。身を守る為の物ではないのだがな。

 

 この呪文の効果は、相手が呪文を放つと、効果が術者の方にそのまま跳ね返って来る自業自得の呪文だ。しかし、戦闘慣れしてるのか、イドゥンは倒れずにギリギリの所で踏ん張ったのだった。

 

「小賢しい手を使いますわね。」

 

「ほぼ無尽蔵にある魔力の量を持った相手に、計画的に呪文を出すペースの配分を決めておかないとジリ貧で自滅するからな。」

 

 失神呪文を無言で放つ俺。イドゥンは、別の呪文で掻き消した。

 

「まだ……まだまだ……」

 

「?」何だ。奴の目の色が変わりつつあるな。

 

「本気で来いと言った筈よ!ハリー!その気にならないのならば、今すぐそうしてあげるわ!!食らいなさい!!!」

 

 イドゥンがそう言いながら杖を振る。すると、炎が出て来た。頭が幾つもある大蛇、日本の古事記に出て来るヤマタノオロチの様なものとなった。

 

 これは、悪霊の火だな。呪われた炎。そして、分霊箱さえも破壊出来る代物。あっさりと使って来るという事は、余程制御に自信があるのか、それとも業を煮やして本気を出させる為か。あんなの、ささっと対処しなければ。ここで披露したくなかったが、そうも言ってられない。俺も、強力な攻撃呪文を今放つことにした。

 

「腹を括るか。これでジジイに目を付けられる事になるが、仕方ない。邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)!!」

 

 今学期になって初めて、紺碧の炎を出した。狙いは、悪霊の火。だが、これだけでは確実に周囲に被害が出るだろう。なので、もう1つの呪文を無言で唱える。

 

炎よ我に従え(プロメス)!!!』

 

 すぐさま、紺碧の炎の操作を自在に出来る様にする。杖の先から出て来た紺碧の炎を巨大な剣に形態変化させる。それを悪霊の火目掛けて突き刺した。

 

「面白い!私の悪霊の火に、あなたの未知の碧い炎。どちらが強いか試しましょうか!!」

 

 だが、流石のイドゥンも笑顔がすぐに消えた。碧い炎が、悪霊の火を一方的に包み込んで焼き尽くし始めたのだ。

 

 悪霊の火は、何やら不気味な音を発しながら、跡形も無く消えてしまった。ターゲットは悪霊の火であって、イドゥンではない。よって、俺も碧い炎を鎮火させた。

 

「おいおい。いくら何でも、悪霊の火はねえだろ。」

 

「本気にさせたまでです。で、そのさっきの呪文は何ですか?」

 

「来るべき日まで、明かさないつもりだったんだがな。今、効果を教える義理はないってわけだよ。どうしても知りたきゃ、開心術でも使って引きずり出すんだな。」

 

 俺は、再び武装解除呪文を無言で放つ。イドゥンは、失神呪文を無詠唱で発動した。再び相殺される。同時に、目の色が赤から緑に戻った。ウイルスモードが解除されたのか。これ以上の戦闘続行は厳しいな。棄権するか、と思った。

 

「……もう、これ位ですわね。ハリー、あなたが色々と何か隠し持っているのは分かりました。少なくとも、あと2つの術は残していますか。それも、あなたが独自に作り出したものを。もっと出させようと思いましたが、本気で渡り合える相手に対して、喜びで思わず術を乱射してしまいましたわ。ですので今、私は魔力が不足しています。決着は何時かつけるとして、今日の所は引き分けでどうでしょうか?」

 

 何と、イドゥンの方から今日の所はやめにしようと言う提案が来たのだ。

 

「オーケー。生憎俺も魔力切れでね。イドゥン、お前とやるにはまだ早過ぎたと感じたし、あのモードも維持出来ない位にスタミナ切れが起こっているのさ。それに、ここで更なる手札を今見せるわけにはいかないんだ。これ終わったら、棄権するつもりだったんだが、そういうことなら引き分けにしておこう。」

 

 今回、イドゥンの方がやや有利だったわけだが、相打ちに持ち込めただけまだ良い方だろう。その後に、互いに近付いて握手をする。何故か知らんが、周りからの歓声が上がった。そうして、1回目の決闘クラブは終わりを告げたのだ。

 

*

 

「悪霊の火を焼き尽くしただと?ポッター。お前は一体……」

 

 聞いた事が無い。あんな芸当が出来るなど。益々、我輩のハリー・ポッターへの恐怖心が膨れ上がった。

 

「狼狽えていますね、セブルス。あの未知の呪文、校長は知っているみたいですよ。賢者の石の攻防戦にて、死の飛翔相手に使いましたから。」

 

「闇の帝王相手にか!?」

 

 信じられない。幾ら史上最悪の闇の魔法使いとはいえ、既に人間相手に使っているのか。

 

「先程ハリーが唱えたのは、悪霊の火を参考に、それすらを焼き尽くす碧い炎を出す呪文。無言呪文で発動したのは、その碧い炎を鎮火させるだけでなく好きな形に形態変化出来る様にする能力とみて間違いないでしょうね。」

 

 あの憎きメガネを穏やか且つ人の良さそうな感じにした容姿、リリーの瞳を持ったハリー・ポッター。メガネよりはある程度マシだ。まさか、今も奴を見くびっていたというのか?とんでもない存在で、それこそ本当に敵に回してはいけないのは。

 

「セブルス。あなた、まさかハリーが恐ろしいのですか?変わりましたね。あれ程憎んでいたのにも関わらず。彼が、死の飛翔に同調するなんて決して有り得ないのに。」

 

 そう言う問題ではない。闇の帝王に同調するのは決して有り得ないと分かっている。もし、それ以上の危険な組織に同調して本格的な敵に回ったらと思うと、止められるかどうかが分からないのだ。

 

「いざって時は、私は全力で彼を止めると決めていますよ。私自身も彼を気に掛けていますし、エイダからも何かあったら頼むという連絡が来てますのでね。それでは、私はこれにて失礼します。」

 

 フォルテは立ち去った。独自にポッターを見てはいる。今の所、目に余る様な事はしてない。それどころか、本当に危うい時は忌み嫌っている筈のドラコを助けているのだ。自分なりに一線を構えているのだろうか?

 

「敵なのか……味方なのか……」

 

 恐らくだが、双子の妹であるエリナ・ポッターの完全な味方ではあるだろう。だからと言って、それがダンブルドアの味方とは限らないわけだが。

 

 ハリー・ポッターの場合、大切な者を守る為ならば手段を選ばないだろう。そこは、開心術を使わずとも自然に分かった。

 

 正確には、真っ当な手段で済むならそちらを優先する。だが、それを通じないと分かったら、即座に非合法なやり方も辞さない。下手なスリザリン生よりもスリザリンらしい素質を持っている人材なのだろう、あいつは。

 

「…………行くか。」

 

 大広間を後にする。明日も早い。リドルのフォローもしなければならないからな。

 




変更点と追加点
1.ハリーVSイドゥン
2.ハリーの利き腕は左。ついでに、魔法だけでなく身体能力も大幅強化。
3.スネイプとフォルテの会話

今回は、ほぼオリジナルです。ルールアリの決闘なら、イドゥンに分があります。しかし、ルール無用の戦闘であればハリーの圧勝になります。その状態の彼と互角に戦えるのは、ゼロとグラントの2人だけです。

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