Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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第12話 狂ったブラッジャー

 それから1週間、事あるごとにエリナを避ける人が増えていった。ハッフルパフは極少数だが、レイブンクローとグリフィンドールの半数はそうなった。スリザリンは、そもそも信じていない。

 

 だが、グラントは崇められている。スリザリンから。他の3寮からは完全に恐れられているけど。エリナよりもグラントの方が、継承者扱いだ。ジジイ、余計な事しやがって。ヴォルデモートと何かしらの関係性があるのは認めるが、アイツはシロだ。

 

 だから俺は、出来る限りエリナと一緒にいる事にした。グラントの元にもいる様にしたのだ。殆どのグリフィンドール生からやめろと言われているけど、知った事じゃない。共闘して来た戦友が例えスリザリン生であったとしてもだ。別に拒絶するつもりなんて無い。それどころか、下手な同じ寮の人間よりも余程信用出来るんだ。

 

 時々、ロン、ハー子、ゼロもいてくれた。

 

「どいつもこいつも、何でも簡単に信じるよな。」ロンが憤慨している。

 

「全くだぜ。エリナちゃんは、んな事しないっつうの。」グラントも然り。

 

「グラントも、今は自分の心配をした方が良いぞ。」

 

「ハリーよぉ。気持ちはとっても嬉しいぜ。だけど、俺は心配いらねえ。こういう扱いは慣れているからよぉ。」

 

 胸を張ってグラントが力強く言った。

 

「お前がそう言うのなら、別に止めはしない。だが、無理はするなよ。お前は1人なんかじゃない。校長がお前に疑いの目を向けようとも、俺は継承者だとは思ってないからな。」

 

「お、おう。そりゃあ、ありがたいぜ。」

 

「連中のバカさ加減には見て呆れるな。」ゼロは、溜息をついている。

 

「エリナ・ポッターが継承者だと?寝言は寝て言えだ。」

 

 味方がいるので、結構エリナも落ち着いてる。俺達は、3階の事件現場に向かう。血文字はまだ消えてない。が、水溜りは消えていた。水溜りはどこから来たんだ、とロンが口に出す。ハー子は、去年シエルが愚痴っていた『嘆きのマートル』のいるトイレに案内した。男4人は、入らなかった。エリナとハー子だけが向かった。結果は何もなかったが。

 

 その後、それぞれの談話室に戻った。明日のクィディッチ頑張ってとか、明日は負けないからなとか言われて別れた。戻ってから、ロンはマルフォイがそうなんじゃないとか言い出した。

 

「あいつの家系は全員スリザリンだ。いつも自慢してる。末裔でもおかしくないね。父親も、どこから見ても悪玉さ。何世紀も、秘密の部屋の鍵を代々親から子へ受け継いでいたって、不思議はないよ。」

 

「いや、ないな。あんなチキン野郎に命を奪おうっていう度胸なんてあるわけがない。」

 

「そうね。態度に反して、メンタルは豆腐みたいに脆いもの。殺人を躊躇う事無く出来る筈はないわね。でも、何か知ってるかもしれない。確かめる価値はあると思うわ。」

 

「じゃあ、どうやって調べるんだよ。」

 

「スネイプも授業でポリジュース薬の事を言ってたわ。それを使えば。」

 

「NEWTレベルだぞ、それ。やめておこうぜ。」速攻で言っておいた。

 

「じゃあ、ハリー。何か手段があるの?」

 

「開心術で無理やり聞き出す。グラントに協力して貰おう。」

 

「開心術使えるの!?」ハー子は、驚いている。

 

「少しな。そうじゃなきゃ、ポリジュース薬を却下しねえよ。」

 

 そんなわけで、開心術で聞き出す事が決定した。

 

 翌朝。今日の試合の相手は、スリザリンだ。朝食を簡単に済ませて、選手服に身を包む。レッドスパークの最終調整に入る。うん。問題ない。油断や隙を見せなければ従順になってくれる所まで乗りこなせる様になった。

 

 そして、試合開始。何と、開始早々ブラッジャー1個が俺だけに集中的に狙ってきた。レッドスパークの力で難無くかわせたが、また向かってくる。フレッドとジョージが護衛してくれるが、残る1個はグラントが棍棒で飛ばしていて、グリフィンドール・チームのペースを乱した。更に、ルインがその隙を突いてどんどん点数を入れていく。

 

 また、1度見つけたスニッチも、グラントの飛ばしたブラッジャーで邪魔されてしまい、見失った。80-20になった時、タイムアウトがかかった。俺は、腹を括って皆に宣言した。

 

「皆。俺だけを集中的に狙っているブラッジャーがあるでしょ?あれ、俺1人で対処させて欲しい。」

 

「ダメよ!」アンジェリーナが、反対の意思を見せた。

 

「バカ言うな。」フレッドが言った。

 

「頭をふっ飛ばされるどころの話じゃない。下手をすれば殺されるぞ。」

 

 俺は、W-ウイルスの力で、ウイルスモードを発動させた。緑の目から赤き目へと目の色を変える。

 

「このままじゃ、負ける。俺は、自分の言ったことは曲げない。オリバー、指示を頼む。」

 

 オリバーを見た。もう覚悟は決めたと。オリバーは、俺に申し訳ないという表情になりつつも、キャプテンとして冷酷な指示を出した。

 

「皆、何があってもハリーを無視しろ。少しでも、点数を埋めるんだ。」

 

「「ふざけんなオリバー!」」フレッドとジョージが反発した。

 

「何でもかんでもハリーに背負わせようとしないで!」ケイティが怒った。

 

「正気の沙汰じゃないわ!」アシリアもだ。

 

「キャプテンの命令だ。俺は問題ないよ。」

 

 俺は、皆を安心させようと笑顔を見せた。

 

 試合開始。超感覚呪文で、スニッチを探す。僅かな動く音を探る。

 

 あった。マルフォイの目の前をうろついているではないか。しかも、本人は気づいていない。チャンスだ。マルフォイ目掛けて、ロケット弾の様に向かった。ブラッジャーもついて来るが、僅かな動きでかわしまくる。その様子をマルフォイが、笑いながら見ていた。

 

「バレエの練習かい、ポッター。」

 

「そこを退きやがれええええ!!!」

 

「フォオオオオオオオオオオオオオイ!!!」

 

 あまりの迫力ぶりに逆にマルフォイの方がバレエみたいに回る羽目になった。スニッチを追跡する俺。他のスリザリンの選手は、俺の行動を理解した。が、戦神と化したグリフィンドール・チームの対応に手間取っていて俺を邪魔するどころの状態では無かった。

 

 俺とスニッチが一直線に並んだ。マルフォイは、未だに混乱から立ち直ってない。あと少し。俺は、左手で掴もうとする。

 

 バシッ!!

 

 狂ったブラッジャーが、俺の左手を直撃した。超感覚呪文は既に解除すているので、ダメージは減っている。それでも痛いが。すぐさま右手に変える。そして、レッドスパークの上に立ち往生した。激しく空を搔いた――指が、スニッチを握りしめるのを感じた。

 

「やった。勝った。」そう思った時だった。

 

 狂ったブラッジャーが、俺の腹部にぶつかってきた。俺は、落ちてしまった。

 

*

 

 目が覚めた。フィールド先生が、応急処置をしてくれた。さっき、ロックハートが出しゃばろうとしたが、フィールド先生とマクゴナガル先生が必死に守ってくれた。俺は担架に乗せられて、医務室に運ばれる。

 

 結果は、200-100でグリフィンドール・チームの逆転勝利だった。皆、揃ってパーティーを始めようとするが、マダム・ポンフリーが「この子は重症なんですよ!」と怒鳴って追い出した。マダム・ポンフリー曰く、橈骨及び尺骨、腰椎が骨折、胸椎の下部分はひびが入っていた。骨折に関しては、一瞬で治った。それでも念の為、今夜はここにいろと宣告された。

 

 夜、急に目が覚めた。昼間、あんなに寝たからな。それだけじゃない。誰かが、汗をタオルで拭いている。

 

「誰だ!?」大声を出す。

 

「ドビー!」

 

「ハリー・ポッターとエリナ・ポッターは学校に戻って来てしまった。汽車の時も、今日のブラッジャーの事も。あなた方の為にやってまいりましたのに。」

 

「やはりそうだったのか。お前が一枚噛んでいたとはな。汽車の一件では、エリナが退学になりかけ、今回は俺に重傷を負わせたと。軽減出来たとはいえ、死にかけたんだぞ!どう責任を取ってくれる!!」

 

 ドビーを睨み付ける俺。ドビーの奴はビビっている。

 

「ドビー、せめてもの慈悲だ。俺が絶対安静になっている間にこの部屋から出て行った方が良い。ありとあらゆる手段でお前を殺すかもしれん。」

 

 だが、ドビーは弱々しく微笑んだ。

 

「ドビーめは、殺すという脅しにはもう慣れています。ご主人様の夕食を焦がして、鞭打たれるのは当たり前。お屋敷では、1日5回もその言葉で脅されております。その度に、お嬢様が手当てや労りをするのです。」

 

 汚い枕カバーの端で鼻をかんだ。余りにもその光景が哀れだったので、怒りが収まった。

 

「ご主人様って、マルフォイのところか?」

 

「どうしてそれを?」

 

「我らが親愛なるドラコの前で、お前の名前を口走った事があってね。その時のアイツは、笑顔が一瞬のうちに消え失せてた。何か知ってるかもなと思って、接触しようとしてたんだよ。」

 

「そうでございましたか。」その様子だと、本当にマルフォイ家に仕えているんだな。

 

「ドビー。どうして逃げないんだ?本当にどうしようもないのなら、逃げるという選択肢だって取れる筈だ。」

 

「その事でございますか。ハリー・ポッター様。この枕カバーは、屋敷しもべ妖精が奴隷だという事を示しているのでございます。ドビーめは、ご主人様から衣服を貰った時、初めて自由の身になれるのでございます。家族全員がソックスの片方を渡さない様に気を付けているのでございます。」

 

「もし渡せば、自由になって屋敷から永遠にいなくなってもいいってわけか。ドラコが妙に整理整頓をやる癖があったのは、その為だったか。」

 

「お坊ちゃまは、ご主人様から厳しく躾けられているのでございます。ですがお嬢様については、旦那様も甘くなるのです。お嬢様だけが、屋敷でのドビーの味方でございます。」

 

「成る程ね。さて、俺にここまでの怪我を負わせたいという事は、秘密の部屋が絡んでんのか?誰が開けた?」

 

「もう聞かないでください。哀れなドビーめにもうお尋ねにならないで。」

 

「俺は逃げない。絶対に!そうじゃなきゃ、ハー子が真っ先に狙われる。彼女はマグル生まれだ。家族に友、仲間は誰一人死なせやしない!それが俺の、魔法使いとしての信念だ!!」

 

「ハリー・ポッターは友達の為に自分の命を危険に晒す!何と気高い!何と勇敢な!でも、自分自身を助けなければならない。そうしなければ……そうしなければ……」

 

 その時、こちらに向かって来る足音が聞こえた。

 

「ドビーは行かなければ!」

 

 妖精式の姿くらましでどこかに行ってしまった。

 

「待て!まだ聞きたい事が!」

 

 行ってしまった以上は仕方ない。ベッドに潜り込んで、寝る事にする。入って来たのは、マダム・ポンフリーとマクゴナガル先生、それに校長だった。

 

「とうとう生徒の犠牲者が出ました。そばに葡萄が一房落ちていました。ポッターの見舞いに行こうとしたのでしょう。」

 

 マクゴナガル先生が言った。

 

「まさか、ミセス・ノリスと同じ……」

 

「そうじゃポピー。コリンは、石になってしまったのじゃ。」

 

 校長が囁いた。コリンよ。ストーカーではあったが、あんな状態を見せつけられて正気でいられる筈がねえ。この俺が。

 

「カメラはどうでしょうか?何か写ってる筈です。」

 

 マクゴナガル先生が熱っぽく言った。

 

 校長がコリンの手から、カメラを抜き取って裏蓋を開けた。シューッと言う音を立てて、カメラからは蒸気が吹き上がった。

 

「……熔けてる。」マダム・ポンフリーが腑に落ちない顔をしている。

 

「アルバス。やはりこれは…………」

 

「ミネルバ。君の思ってる通りじゃ。秘密の部屋が、再び開かれたのじゃよ。どうやってかは、分からぬがのう。」

 

 重苦しい声が、妙に耳に残った。過去にもあったのか。

 

 そう言えばあの言葉。1年の最後のマクゴナガル先生との面談。気にも留めて無かったが、秘密の部屋ってそういう事か。ヴォルデモート、いや、変態ヘビが絡んでるのか?どちらにせよ、情報が少なすぎる。ゼロ、グラント、ロン、ハー子にも協力を頼んでみるか。

 


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