Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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第11話 継承者は誰だ?

 1992年10月31日。ゴドリックの谷。イギリス西部にある村。ここに1人の男が花束を持って現れた。ライトブラウンの髪の男。名を、リーマス・ルーピン。

 

「…………」

 

 何故、リーマスはここに来ているのか。それは、日付に意味がある。10月31日。彼の親友であったジェームス・ポッターと、その妻リリー・ポッターの命日なのだ。毎年、ここに来ている。

 

 ジェームズとリリーの墓まで来た。花を手向けるリーマス。墓には、沢山の花が供えられていた。

 

「もう、あれから11年か。何であの時、ピーターを守人にしてしまったんだろうか…………ジェームズ、リリー。私は、君達が今いる世界に行った時になんて謝れば良いのか……」

 

 11年前のある日。シリウスから話があった。今、秘密の守人をやっているのだが、闇の陣営の裏をかく意味で変えようかと思っていると言われた。体質の事も考えて、自分が変わろうかとも一時は思った。

 

 だが、1人でヴォルデモートに出くわした時、果たして奴の誘惑を乗り切れるか自信が無かった。下手をすれば、心を救ってくれた親友を裏切ってしまう事態になるかと思うと出来なかった。だから、こう提案した。

 

『そう言った役目を背負ってそうに無いと思わせる為にも、ピーターを守人にすれば良いんじゃないかな?』

 

 この提案をした。シリウスは、その提案を飲んだ。後日、ポッター家に行き、その旨を話した。ピーターが危うい時は、自分とシリウスが全力で助けるという誓って。

 

 でもこれが、そもそもの間違いだった。結果、ジェームズとリリーはヴォルデモートの手に掛かって死亡。生き残ったのは、ハリーとエリナの2人だけ。エリナは、額に一生消えない傷を負わされた。一方のハリーは、リリーが離れた場所に隠した為、無傷だった。

 

 シリウスが育てるという話で付いていた。だが、後から来たハグリッドはダンブルドアからダーズリー家に預けると言った。ダーズリーの事はリリーから聞いている。あの2人が、素直に歓迎されるとは到底思えなかったから。だけど、ダンブルドアの名前を出されて引き下がざるを得なかった。今思えば、頑なに反対しておけば良かったと思った。

 

 シリウスは、消えたピーターを始末しに行くと言った。私は、シリウスと止めようとしたが出来なかった。自分以上に責任を感じていて、裏切りを許さないシリウスの執念の前に敗れ去ったから。

 

 その後、シリウスはピーターとマグル12人の殺害及び、ジェームズとリリーへの裏切り行為の罪でアズカバンに収監された。しばらくして、ハグリッドは謎の男の急襲を受けた。その戦いの最中で、ハリーが空飛ぶオートバイから落ちてしまった。

 

 親友夫婦を死なせてしまっただけでも充分傷口に塩を塗られた気分だ。なのに、残った大切な人達をもっと失ってしまった。更に、傷口を抉られた様な感じになった。

 

 絶望した。シリウスは無実の罪で捕まり、名付け子のハリーは生死不明。エリナはダーズリー家に預けられ、接触すら許されない。

 

 無実だと知っててシリウスを放置し、まだ生きているかも知れないハリーを探さず、エリナを過酷な環境に放り込んだダンブルドアには、もう失望しかなかった。学校に入れてくれた事には大いに感謝している。だけど、それとこれとは話が別だ。

 

 ドローレス・アンブリッジの立案した法律のせいで、まともな職には就けなかった。だが、後輩であるアルフレッドの実家であるロイヤル・レインボー財団からは定期的に仕事が来た。厄介な魔法生物の捕獲や駆除。その他にも、講師をしたりもした。しかも、必要最低限とは言え、経済的な支援もしてくれた。

 

「去年の1月が終わる頃かな。アランさんから、ハリーを保護していて、しかも日本で平穏に暮らしていると聞いたよ。離れてはいるけど、とにかく生きてて良かったよ。今、ホグワーツへは日本の魔法学校からの留学生として通っているんだってさ。」

 

 会える機会は、今の所無い。だけど、死んだと思われていたハリーが無事に生きていてくれた。それだけでも良かった。嬉しかった。

 

「それじゃあ、私はもう行くよ。また来るね。」

 

 こうして、私はゴドリックの谷を去ったのだった。

 

*

 

 1992年 10月31日のハロウィーン。授業が終わって、例の如く湖の畔に来た。去年と違うのは、妹のエリナもここにいるのだ。そして、森でハグリッドが見つけてエリナが世話する事になった生き物も。まさしく、お伽話に出て来る妖精と言った外見をしている。

 

「今日、パパとママの命日なんだね。去年パーティーにいなかったのは、ここにいたんだよね?」

 

「めいにち?」

 

「クワノールにはまだ早いか。ねえハリー。」

 

 妖精の名は、クワノール。エリナに懐いている。見る者を和ませる力がある。

 

「ああ。早過ぎだな。話を戻すぜ。全ては、11年前の今日から始まったんだ。今日ここに来たのは、己の決意の再確認も兼ねてね。黙祷と感傷をするだけだから、つまらないぞ。ハッフルパフの皆と居れば良かったのに。」

 

「ううん。やっぱり、ボクもちゃんとやっておかないと。それに、罰則の後の出来事も報告しとこうと思っててね。」

 

「ロックハートの手紙の返信の手伝いをしてたっていうアレか?書いてる最中に謎の声が聞こえたっていう。」

 

「うん。確かね。『来るんだ……。俺様の所へ……引き裂いてやる……八つ裂きにしてやる……殺してやる……』って。」

 

「ロックハートも聞いたのか?」

 

「何か、ボクだけにしか聞こえなかったんだ。でも誰にも言えなくて、相談も出来なかったんだ。だから、ハリーに相談しようかなって。」

 

「ドビーの警告と何か関係性があるかもな。今年も何か起きるぞ。きっと。用心しろよな、エリナ。」

 

「うん、分かってる。そろそろ行こう。ハロウィーンパーティーへ。」

 

「骸骨舞踏団が来るからね。サー・ニコラスには悪いけど、絶命日パーティーに行かなくて正解だったな。」

 

 俺達は、早めに切り上げて城へ戻る。もう殆ど大広間に集まっていた。それぞれの寮のテーブルに座り、メシが来るのを今か今かと待つ。

 

「トリック・オア・トリート!」

 

 校長が叫ぶと、カボチャ料理を中心に豪華なご馳走が出てきた。俺は、去年食い損ねた分を含めて多く食べた。それだけではなく、人気音楽グループの「骸骨舞踏団」まで招待されていて、最高のパーティーと化した。

 

エリナ視点

 

 去年とは違うハロウィーンになった。授業が終わってから、クワノールと一緒に外へ向かうハリーを見かけた。

 

「あ、ハリーだ。どこへ行くんだろう。」

 

ボクは、ハリーを追いかける。来たのは、大きな湖。ここで、何をするんだろう?

 

「エリナ。出てきな。最初から俺を付け回してたのは、分かってるんだ。」

 

バレてた。ここは潔く出てこよう。

 

「良く分かったね。」

 

「まあな。俺には、自ら作り上げた魔力感知呪文があってね。射程距離は、半径5000kmだよ。」

 

「範囲が広過ぎるって!あ、だから去年のクリスマスはダンブルドア先生が近くにいる事が分かったんだ。」

 

「そういう事だ。」

 

「何でここにいるの?」

 

「今日は、父様と母様がヴォルデモートに殺された日なんだ。それに、俺達の全ての始まりを決定づけた因縁の日でもあるからね。」

 

「そっか。パパとママが。」

 

「ここで、黙祷してるってわけ。」

 

「一緒にやっていい?」

 

「どうぞ。」

 

 それから、しばらくパパとママに黙祷を捧げたんだ。その時に、罰則の時の謎の声を報告したんだ。1時間程やって、引き上げた。クワノールは、談話室で待機させた。

 

 夕食は、去年に勝るとも劣らない豪華なものだった。全てを、少しずつ盛っていきながら食事を進める。人気音楽グループの骸骨舞踏団の演奏も素晴らしかった。

 

 デザートもある程度減った頃、また不気味な謎の声が聞こえた。

 

【……引き裂いてやる……八つ裂きにしてやる……殺してやる……】

 

また、あの声。冷たく、それも残忍な。

 

「誰?」ボクは、独り言を呟く。

 

【……腹が減ったぞー……こんなに長ーい間……】

 

【……殺してやる……殺す時が来た……】

 

【貴様!やらせるものか!】

 

【黙れ!これこそ、我が主の願い。我は、それを実行するのみ!!】

 

 謎の声は2つ。1つは、何かを殺そうとしていて、もう1つはそれを止めようとしている。

 

【や……やめ……ろぉ。】

 

【臆病者めが。そこで大人しく見ているがよい。そうだ血だ。……血の匂いがする……血の臭いがするぞ!】

 

 早く行かないと。誰かを殺すつもりだ。幸いにも、誰も食事や会話に夢中になっている。止めなくちゃ。ボクは、密かに大広間を後にした。

 

ハリー視点

 

 パーティーが終わりに近付いた頃、ハッフルパフの席からエリナの魔力が大広間から遠ざかるのを感知した。まさか、あの妙な声を聴いたのか。隙を見て、俺も出ていく。

 

エリナは、3階をくまなく飛び回っている。俺は、去年ナイロックが飛び回って手に入れたホグワーツの地理を全て記録し、まだ知らない所も新たに更新していく『冒険者の地図(アーダチェス・マップ)』を取り出す。3階のエリアを見てみると、『エリナ・ポッター』と書かれた点があった。誰もいない廊下で立ち止まっている。

 

 俺もそこへ向かった。10分して到着した。

 

「そこにいたか。また、あの変な声が聞こえたのか?」

 

「うん。それに、あれ。」

 

 指差した方向には、大きな水溜り。そして、動かないネコ。フィルチのミセス・ノリスか。そして壁には、血文字が書かれてあった。

 

『秘密の部屋は開かれたり 継承者の敵よ、気を付けよ』

 

「秘密の部屋?」

 

「サラザール・スリザリンが作った部屋だよ。その話は後にするから、ここを離れよう。」

 

 遅かった。パーティーが終わって談話室に帰ろうとする生徒がいた。先頭だってドラコ・マルフォイが俺達にこう言い放った。そう言えばコイツ、顔に青紫の痣が出来てるな。ハー子の事でグラントに殴られたんだろうか?

 

「やっぱり父上の言ったとおりだ。継承者の敵よ、気を付けよ!次はお前たちの番だ!不純物が入った生まれ損ないめ!」

 

「黙ってろ、近親相姦しか能のない血統書付きのチワワ如きが!発情期かテメーは!!」

 

「僕が、近親相姦にチワワ。」マルフォイは、ショックを受けて呆然とした。

 

「ハリーも言う様になったじゃねえか。やっぱ、フォイについてはハーミーちゃんの事もあるからか?」

 

 グラントがマルフォイの後ろから現れた。

 

「ダメか?」

 

「良いんじゃね?それにしもよぉ、何か妙な物騒な声が聞こえたんだぁ。何か知ってるか?」

 

「いいや。俺も詳しくは分からん。エリナを追跡してこうなったんだからな。」

 

「そうかよ。」

 

 その後、フィルチは俺達を犯人だと決めつけ、エリナの首を絞めようとしたが、ダイヤモンドの指輪に宿った盾の呪文で防がれて壁に吹っ飛ばされた。何も出来ず、すすり泣くフィルチ。その後ダンブルドアや他の先生に呼ばれ、2人で事情を説明した。つーか、何故かグラントも呼ばれた。魔力感知呪文とエリナだけに聞こえた謎の声は勿論伏せて。そして、終わった時にはもう12時になっていたので、そこで別れた。

 

 それから数日後の薬草学の授業の後、エリナから話しかけられた。何でも、ハッフルパフの一部の人から避けられている事。だから、秘密の部屋について教えて欲しいと。

 

 なので、金曜の午後に話そうという事で話がついた。無論、大幅改訂されたホグワーツの歴史を持って。

 

 金曜の午後、空いた教室でエリナと合流した。念の為、「耳塞ぎ(マフリアート)」を唱える。

 

「ハリー、秘密の部屋って何?前にスリザリンがどうのこうのって言ってたけど。」

 

「分かった。この『ホグワーツの歴史 大幅改訂版』からの内容を引用して話していくよ。」

 

「お願い。」

 

「もう伝説に近い話だけどな。まず、約千年前にホグワーツ魔法魔術学校が作られた。そのホグワーツを作った4人の創設者は知ってる?」

 

「歴史は苦手だから、読んでない。」

 

「そうか。その4人の名前から寮が作られたんだ。4人の名前は、ゴドリック・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクロー、サラザール・スリザリンだよ。」

 

「へえ。でも何で、城なの?」

 

「この時魔法は、一般の人々に大変恐れられていた。恐れるからと排除する。その原因を排除したいのが人間だ。だから、魔法使いや魔女は見つけ次第迫害され、時には殺されることもあった。」

 

「……」エリナは絶句していた。

 

「この城は、魔法使いや魔女をマグルから守る目的もあったわけだ。」

 

 一旦、深呼吸をする。

 

「最初の内は、4人は和気藹々とやっていたんだ。魔力を持った者を城に誘っては教育してた。だけどね、次第に意見の相違が出て来始めたんだ。スリザリンは根っからの純血主義の思想の持ち主だったらしくて、魔法族の親を持つ者以外はこの学校で学ばせるべきではないと、考えたそうなんだ。しばらくして、この問題を巡ってグリフィンドールとの決闘になった。勝ったのは、グリフィンドール。敗北したスリザリンは学校を去った。」

 

「その2人って、元からそうだったの?」

 

「いいや。元々は、仲が良かったんだそうだ。でもね、そう言った関係ほど、崩れるとそう簡単に修復出来るもんじゃないのさ。」

 

 俺は、エリナに告げた。持ってきた水をグイッと飲んで話を続ける。

 

「でもな、この話には続きがあるんだよ。スリザリンは他の創設者に知られない、隠された部屋を作ったという伝説がある訳なんだが。それによると、スリザリンは部屋を密封したんだよ。学校に自分の真の継承者が現れるまで、何人もその部屋を開けられなくした。その継承者だけがその部屋の封印を解き、その中の『恐怖』を解き放つ。相応しくない者を追放する為にね。」

 

「それが、秘密の部屋。じゃあ、恐怖って何かな?」

 

「継承者だけにしか操れない怪物とかかな?もし、怪物だったと仮定しよう。恐らくスリザリンの事だから、大方蛇で間違い無いだろうね。」

 

「どうしてそう言い切れるの?」

 

「それじゃあ、何でスリザリンのシンボルが蛇だと思う?エリナ。」

 

「インドに行って、蛇使いの修行をしたからじゃないの?」

 

「ヘビを操るという認識って意味では大正解だな。その答えはな、エリナ。サラザール・スリザリンはパーセルマウス、つまり蛇語使いなんだよ。これは、極稀とも言えるレアな能力だ。闇の魔法使いの印、とも言われている。もちろん、善良且つ立派な魔法使いの中にもパーセルマウスはいる。その力を持ってる奴が、目立って悪行をしていただけの話だ。それに、ちょっと試したい事もあるしな。」

 

「試したい事?」

 

「ああ。確認しておきたい事がね。」

 

 セコイヤの杖を取り出し、呪文を唱える。

 

「さて、論より証拠だな。蛇出でよ(サーペンソーティア)。」

 

 ブラジル産ボア・コンストリクター、大ニシキヘビを出した。エリナはハッとした顔になる。

 

「もしかして、君。あの時の?」

 

「知ってるのか?」

 

「少し会話した事あるんだ。」

 

【あの時のお嬢ちゃんか。元気だったかい?】

 

【ブラジルには行けた?】

 

【ああ。密輸船に乗ってな。お嬢ちゃんの言葉のお陰で、今の俺がある。感謝している。】

 

【どういたしまして。】

 

 どうやら、会話は終わったようだな。質問してみるか。

 

「エリナ。その大ニシキヘビは、どこから来たって?」

 

「うん。元々イギリスの動物園にいたけど、ボクとの会話でブラジルに向かったって。今、アマゾン熱帯雨林に住んでるよ。」

 

 杖を振って、ヘビをアマゾンに返す。やはりな。エリナは、パーセルマウスだったか。という事は、怪物がいて、正体は蛇になるな。ん?グラントも妙な声を聴いたって言ってたな。あいつもパーセルマウスなのか?

 

「と、言う事はだ。怪物の正体は蛇になるな。怪物サイズの蛇と言えば、ヒドラにバジリスク、ヤマタノオロチ、ミズガルズオルム、ファーヴニル、ラミア、エキドナ辺りかな?どちらにしても、何が正体かを調べる必要があるんだ。エリナに聞こえた謎の声が蛇語なら、辻褄が合う。」

 

「じゃあ、これからは怪物サイズの蛇を探せばいいって事?」

 

「うん、図書館で蛇について調べていこうかなって。話はこれ位かな?」

 

 エリナは、何か浮かない顔をしている。

 

「スリザリンに入るべきだったんじゃないかって顔してんな。」

 

「何でそれを?」

 

「4つの寮でもやっていける。スリザリンなら1番の栄誉を手に出来る。だからそこをお勧めするよって。でも、組み分け帽子は俺達をグリフィンドールやハッフルパフに入れてくれた。要は素質よりも、自分が何者でありたいのか。大事なのは、そこだよ。全て素質だけに委ねたヴォルデモートとの違いは、そこさ。」

 

 エリナに笑顔が戻った。俺は、ニコリと微笑んだ。

 




変更及び追加点
1.リーマス・ルーピン初登場
2.絶命日パーティーには行かない
3.グラントも容疑者扱い
4.秘密の部屋の伝説を話すのはハリー

ハリーが開発した冒険者の地図というアイテム。ナイロックや、制圧したネズミの探索情報を基に作られています。性能は、忍びの地図の上位互換です。未知の場所も、自然に更新されていく仕様となっております。

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