Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章 作:純白の翼
クィレルが苦しんでいた。ヴォルデモートが、しきりに殺せと言っていた。何で、どうしてヴォルデモートは、味方も敵と同じ様に情け容赦無く振る舞えるんだろう。
額の傷の痛みもあるけど、今はクィレルに対する憐みの感情が勝っていた。
「何の為の魔法だクィリナス!さっさと殺せ!」
「は、はい!我が君!あ、アバダ……」
ハーミーに使わせた魔法を放とうとした。だけど、ボクには来なかった。クィレルが蹴り飛ばされたからだ。
「ぐわぁ!だ、誰だ!!」
そこにいたのは、さっき呪文であっさり倒されて、緑色の閃光で死んだ筈のハリーだった。良かった無事で。でも、ちょっと違うのは眼だった。今までならエメラルドグリーンだったけど、今はボクが知ってるよりも明るい赤になっている。ルビーレッドと言った所かな?でも、それは今、どうだって良いんだ。生きてたからね。
「地獄から舞い戻ってきたぜ、クィレル、ヴォルデモート。」
「ハリー!良かった。生きてた。」
「心配をかけたな。」
「何故だ!なぜ力を込めた魔法をお前にかけたのに、こんな短時間で起き上がることが出来るのだ!?それに、先程クィリナスが死の呪文を使ったのに!護りなどとっくのとうに消え失せているにも関わらず、何故生きているのだ!?」
今のハリーの状態は、流石のヴォルデモートも想定外だった。
「アッハハハハハハハハハハハハ!!!貴様のお得意の開心術で探ってみたらどうだ?貴様なら造作もないだろ?並外れた開心術師様よぉ。一々人に聞いてんじゃねえよ。そんなタコみたいな顔になって、頭脳も畜生に成り下がったんじゃないのか?まあ、10年間もごく潰しや害虫以下の、くたばり損ないのクズとして生きていたんなら無理も無いけどな。」
ヴォルデモートは激昂しながらも、ハリーと目を合わせる。彼の身に起こった出来事を知る為に、開心術を使って。しかし、すぐに目をそらしてしまった。
『バカな!?俺様の開心術が全く効かないだと!?しかも、小僧の雰囲気も大分変わってきている!!俺様の本能が言っている……小僧の方が脅威だと。一刻も早く石を手に入れなければ!』
「クィリナス。2人共始末してしまえ!」
「そ、そんな!死の呪文も効かない相手をどうやって……」
「俺様に口答えする気か?クィリナス。貴様、いつからそんな身分になった?」
「ヒ、ヒィッ!わ、分かりました!」
ハリーは、ボクを見て優しそうな表情を見せた。
「先走ってゴメンな。」
「ううん。生きていれば何も言わないよ。でも今度は、一緒に。ね?」
「ああ。勿論だ。ここからはな。コンティニューしてでも、奴らを攻略してやる。」
こうして、即席の兄妹タッグが結成された。クィレルがこちらに向かって走り出した。
「エリナ。武装解除呪文は使えるか?」
「見よう見真似だけど、やってみる。」
「よし、陽動をかけてくれ。」
「うん、分かった。」
ハリー視点
俺は、横から走り出した。軽い、体が軽い。動きやすくなってる。ダブルに感謝だな。エリナによれば、俺はクィレルのクソ野郎から死の呪文をモロに受けたらしい。
にも関わらず、俺はピンピンしている。これもウイルスの力なのか?まあ、ロイヤル・レインボー財団で詳しく聞いてみようか。文献はあるだろうし。
それよりもだ。急いで、クィレルの真後ろに向かう。幸い、気づいてないようだ。石を奪おうと、エリナだけをターゲットにしたいようだ。相変わらずの変態どもだ。
「
「バカな小娘よ。使った事のない呪文が出るわけが…………何だと!?」
確かにエリナは、見た事はあるが使った事は一度も無い。でも、1回で成功させた。
「クィリナス。」
「
バリアを発生させて武装解除呪文を防ぐ。だが、クィレルは見落としていた。この俺の、ハリー・ポッターの存在に。
「こっちだ。」クィレルの頭部に回し蹴りを叩き込む。蹴り飛ばした方向に吹っ飛んでいった。ついでに、クィレルの歯も何本か抜けた。
「ぎゃああああ!」
「何故だ?何故、魔法も碌に使えない子供に何も手を出せないのだ?ならば、更にやる気を出させるまでよ。
マズい。と、思ったが俺達には来なかった。ヴォルデモートは、あろうことか宿主のクィレルに呪いをかけていた。クィレルの、この世の物とは言えない苦痛に満ちた声が部屋全体に響き渡る。
「な、何故ですかご主人様?何故私に、磔の呪文を?」
「黙れ。俺様に口答えするんじゃない。さっさと石を手に入れないクィリナス。貴様が悪いのだ。」
部下にも敵と同じ残酷な扱いをするとは義祖父ちゃんから聞いていたが、まさかここまでとは。俺は、ヴォルデモートに嫌悪の感情を募らせた。
「本当にヴォルデモート。お前って救いようがないな。」
「何だと小僧。」
「お前をクィレル諸共潰す事は出来る。だがな、エリナたっての希望でそれはやめだ。」
「ではどうする気だ。」
「エリナ。お前のやりたい事を精一杯やってみな。」
エリナを前に出す。
「どうした小娘。石を渡す気になったのか?」
「ボクは、絶対に渡さない。渡したら、もっと取り返しのつかない事になる!」
「俺様の側につけ。お前の両親と同じ目に遭う事になるぞ。お前の両親も、最後は命乞いをして死んでいった。犬死にだ。」
ヴォルデモートの邪悪な顔が、ニヤリとした。俺は、無表情に奴を見つめる。
「黙って下さい。パパとママは、そんな事をしない。」
「仮に本当なら、何故父様はお前をボロクソに言い続けたんだ?矛盾しているじゃねえか。」
俺は、さっき自分に向けて言った言葉と今の言葉の矛盾点を突いた。だが、あまり気にしてない様子。
「なんと、胸を打たれるねぇ。勇敢な事だ、そうだ、俺様は勇敢な者は常に称える。お前達の両親は確かに勇敢だった。まずは父親を殺した。勇敢に戦ったが、俺様には遠く及ばなかった。……しかしお前達の母親は死ぬ必要はなかった。だが、お前達を守ろうとして死んだ。母親の死を無駄にしたくなかったら、石を俺様に寄越せ。」
「絶対に渡さない!」
「貴様に1つ聞く。」どうせ分かり切ってる事だが、確認しておこうか。
「何だ。答えてやろう、ハリー・ポッター。」
「お前は、石を手に入れて何をする気だ。」
「無論、元の体を取り戻す。俺様の力を使って、全てを支配する。」
「マグルの世界も、他の国もか?」絶対無理だろうがな。
「当たり前だ。何故魔法使いと言う優れた者達が表舞台から姿を現してはいけないのだ?だからこそ、俺様はこの世のマグル共に身を以って教えてやるのだ。愚か者共は、常に魔法族に支配されるべきなのだと。ブタ共の居場所は、この俺様のもとにしかない事を思い知らせてやるまでよ。」
とことん下らない野望だなと吐き捨てる。
「お前には到底無理な話だな。」
「何!?」ヴォルデモートの顔が怒った様になる。
「お前は一度エリナに敗北している。そして、エリナを超える奴はこの世にごまんといるし、これからも現れ続ける。そんな奴等にお前が勝てる要素なんて、1ミリもありゃしない。それに、死ぬのが怖いから不死になった上に、他人には犠牲を強要して自分だけは安全な場所にいる様な覚悟の概念も持ち合わせていない奴が、永遠に世界征服どころか、この国を完全に支配する事なんて出来やしないな。」
奴の冷静さを欠いてやろう。挑発するのが手っ取り早い。
「いい気になりおって。」
「それに、散々他者を見下して利用し続けて、その命を弄び続けたお前が、何故自分だけがそうはならないと言い切れる?それこそおごまかしいとは思わないか?所詮貴様など、井の中の蛙に過ぎない。世界どころか、この国すら掌握できねえだろうな!いや、仮に出来たとしても3日天下で潰されるのが目に見えているがな。」
俺は、大笑いした。ヴォルデモートのクズ野郎を苛立たせたのは、言うまでもない。エリナは、真面目な表情でこう言い出した。
「パパとママが、命をかけて守ってくれたボク達の命、あなたみたいな人の為には絶対に使わない!」
「ほう……威勢の良い。それに、勇敢でもあるな。エリナ・ポッター。勇敢なだけで何を持っているかな?いや、そもそもハッフルパフに入れられた時点で勇気を持っているのか曖昧なわけだが。」
「確かにボクは、勇気なんて持ってないかもしれない。ハリーみたいにいざという時は自分の命を投げ出す覚悟もないし、ロンみたいにチェスも上手くない。ハーミーみたいに頭もよくない。ゼロみたいに特別な呪文を持ってないし嘘もつけない。グラントみたいに体が丈夫じゃない。ボク程、欠点だらけの人間なんてそうそういない。誰かに頼らないと、何も出来ない!」
「…………」俺は、じっくりと聞く。
「でも、でも!!ボクの大事なものが、あなたなんかのせいで壊されるのは、もっとイヤだ!絶対に屈しない。絶対に、死んでも頭なんて下げない!だってボクは、ヴォルデモート。あなたを打ち負かした、エリナ・ポッターだから!!!戦う!」
「ここまでバカだと同情したくもなるねぇ。俺様に絶対に勝てないのに。何と愚かな。」
「ああ、確かに普通のバカならな。」
「ほう、ハリー・ポッター。賢い俺に付いてくる気になったか。」
「バカはバカでも、ここまでの大バカ野郎ならお前をぶっ潰せる事が出来るって言いたいんだよ!!」
エリナみたいなタイプのバカには、不思議と手を貸したくなるんだ。
「お前達は間違った選択をした。クィリナス、昔のお前みたいではないか。」
「我が君、私は愚かで若かったのです。」
ようやく、磔の呪文の苦痛から解放された。ゼェゼェ言っている。
「どういう意味だ。」俺は、ヴォルデモートに質問した。
「クィリナスが1年間の世界旅行をしている時の事だ。アルバニアの森の奥地で、俺様と出会ったのだ。クィリナスは、何も持たない弱小者に過ぎなかった。善悪に対してバカげた考えしか持ってなかった。そうだな、クィリナスよ。」
「は、はい我が君。親からは碌に愛されず、友もいません。誰もが私から離れていったのです。それどころか、私が近づく事すら許されなかった。その一方で、私も自分こそが善であり、正義であると信じてやまなかった。だから、私を拒絶するものは全て悪として私の方からも拒絶していきました。」
今までの邪悪な顔から、哀愁の入り混じった顔になっているのは俺とエリナには分かった。
「何と私は愚かな考えだったのでしょう。我が君。あなたは私にこうおっしゃられました。この世には、善と悪が存在するのではなく……力を持つ者と、力を求めるには弱すぎる愚か者の2種類の人間が存在するだけだと……それ以来です。あなた様の忠実な下僕となり、私が変われたのは。」
「そうだクィリナス。お前は、そこから力を持つ者となった。この俺様のおかげ……」
ヴォルデモートが言おうとした時、何かを感知した。何だ。この黒く、冷たく、禍々しい魔力は。常人なら感知出来ない。しかし、今は魂だけだから分かる。何なのだ、これは。
「下らん。全く以って下らん。」
魔力を発したのは俺だ。但し、ヴォルデモートだけに伝わる様にする。
「11歳の少女をつけ狙う悪質なロリコンストーカー野郎だと思ったが、この年でまだ厨二病をこじらせてるのか。65にもなって恥ずかしいとは思わないのか!?貴様!」
「な、厨二!?小僧、それはどういう意味だ!」
ヴォルデモートが、慌てふためいている。
「クィレル先生。そんな力を手に入れて、変われたんですか?」
エリナが、クィレルに質問する。
「ああ。そうとも。だからこうして……」
「それが、この有り様なんですか。見てくださいよ、今のあなたの現状を!ボクに触れると肌が焼け爛れて、ハリーには骨と内臓の一部を損傷させられて、挙句の果てにご主人様から拷問を受ける事の一体どこが変われたっていうんですか?」
「そ、それは……」
「何で、すぐに諦めちゃったんですか。何も出来ないボクでさえ、諦めなかったのに。」
「ミス・ポッター?」
「ま、マズい。クィリナス。小娘の言うことは戯言だ。耳を貸すな!」
「
俺は、ヴォルデモートを黙らせる。
「部外者は引っ込んでろ。この変態ヘビ野郎。口からゲロゲロとキモい、ヘビの様にしつこい奴め。」
ヴォルデモートに暴言を吐いて黙らせた。
「もしかしたら、ボクはあなたみたいになってたかもしれません。」
「!?」
「それでも、出来ないなりに努力した。だから、周りの人達もボクを応援してくれる様になってくれたんです。」
「あ……あぁ。」
「でもあなたは変われていない!それだけは言える!ヴォルデモートは、自分の都合の良い人にしてるだけです!それで役に立たなくなったりしたら、すぐに切り捨てる。それだけは分かる!」
震えながら、泣きそうにながらも、はっきりとクィレルに自分の意思を必死に伝えようとするエリナ。
「ヴォルデモートは、あなたを否定してる!あなたを貶めている!都合の良い道具として利用したいだけ!そんな人との関係なんて絶対間違ってる!自分の夢を持たずに、愛されないで捨て駒の様に情け容赦なく殺されるなんて。こんなの悲しすぎる。あんまりだよ!」
「……ミス・ポッター…………私の為に……どうして……あ、ああ、うわああああああああ!!!」
エリナの説得とヴォルデモートへの少なからぬ不信感がクィレルの中で生まれたようだ。現に、ヴォルデモートがクィレルの体から引きずり出されようとしている。というより、出て行けと言わんばかりの拒絶反応を起こされてしまった。
「どう言う事だ!?クィリナスと俺様を結び付ける魔法が、一方的に解除されていくのだ。」
「心を許した相手にしか、取り憑けなくなってるのか?その魔法は。人の心を軽視するお前は、永遠に理解なんて出来やしないって事だな。」
「クィリナス!貴様、俺様を裏切るとどうなるかを……」
ヴォルデモートはそれ以上何も言えなかった。エリナが差し出した手をクィレルが握った。もう、母様の護りはクィレルを傷つける事は無い。ヴォルデモートだけを徹底的に攻撃する。表現する事の出来ない痛みを味あわされて、ヴォルデモートは脅しの言葉を言えるどころではないからだ。
そうして、ヴォルデモートが外に弾き出された。
「貴様ら、許さんぞ。」
怒りの感情を剥き出しに俺達に言った。だが、俺はウイルスの力を最大限開放する。
「それはこっちのセリフだよ!良くも俺らの人生を歪ませやがって!!痛みを知りやがれ!
俺の十八番の呪文の1つをヴォルデモートにかけた。もっと使ってしまいたい所だが、もう奴は逃げるだろうし、更なる手札を今この場で見せたくないしな。
「ギャアアアアアアアアア!あ、熱い!ク、クソォ!おのれぇ!おのれええええええええええ!!!」
ヴォルデモートは逃走した。
「や、やった。」エリナは、気が抜けたように言う。
「少なくとも俺だけだったら、クィレルも殺してたのにな。エリナ、お前にはいつも驚かされるよ。」
「えへへへへ!」
2人で笑った。それを見ているクィレル。そして、倒れ込んだ。
「ありがとう2人共。そして、本当に済まなかった。君たちのおかげで私は……正気に戻れたよ。」
「クィレル教授。」俺は、初めて自主的にそう呼んだ。
「全ては、私の弱い心のせいなんだ。自らの過ちや欠点を認めるのは物凄く勇気がいる。これは、かなり難しい事だ。」
「俺は、少しあなたを見直しましたよ。それが出来たってことは、少しは強くなれたじゃないですか?俺はそう思いたい。」
「ガハッ!ゴハッ!!わ、私もそう長くないようだ。ユニコーンの血の代償に、今の戦闘で負った傷。私はすぐに死ぬ。だが、悔いはない。」
「そんな事言わないでください!まだ何かしらあるかもしれない。それを見つける方法を探しましょう。相打ちになったハーミーとゼロ、グラントも連れて帰らないと。」
俺はある方法を思いついた。それを、エリナに提案してみた。
「エリナ。賢者の石で、再生って出来るかな?」
「え?」
「そもそも、ヴォルデモートがユニコーンの血を飲んでたのは、これの命の水を飲むまでの繋ぎだったんだろう?ならば呪いも消せて、傷も完治とまでいかなくても、医務室に連れて行く分までは持ちこたえると思うんだが。」
「やってみる価値はあるよ。よし、早速やろう。」
俺は、持って来ていたペットボトルに賢者の石で作った命の水を入れた。それを、クィレルに飲ませた。すると、どうだろう。呪いが消え、焼け爛れた肌も、骨や内臓も完治したではないか。
「どうして……私を?」
「今までヴォルデモートと一緒に悪事をやってきただろう?このまま死なせるより、生きてその罪を償って貰う。本当なら始末したいところだが、エリナに免じてな。」
「ありがとう。ミスター・ポッター。」
「お礼ならあいつに言ってくれ。」
クィレルはそう聞いて、眠りについた。おそらく、憑き物が落ちて気絶したようだ。それに、少し離れたところで疲れがドッと来たのか、こっちが作業してる間にエリナはすっかり眠っていた。
「俺以外全員眠っちゃったな。さてと……」
俺は、元から入ってきた道を見ながら隠れている人物を呼んだ。
「生徒が服従の呪文にかかったうえに、こっちは死にかけた。それでも高みの見物を決め込むわけですか。良い身分をお持ちですね。ダンブルドア校長。」
「ほう。また見つかってしまったのう。やはり、君には隠し切れんようじゃ。」
「褒めたって何も出てきませんよ。」
俺は、ダンブルドアに微笑む。だが、これで全て繋がった。だから、目だけは怒りに満ちたものを見せる。
「ハリー。君の働きは見事だった。寧ろ予想以上じゃよ。それは――」
俺は、ダンブルドアの言葉を手を前に出して制する。ダンブルドアは、黙った。
「校長。あなたは賢者の石の手前まで、クィレルを来させかった。それは成功した。次に、エリナとその友達は勇気を振り絞って、クィレルに挑む。これも問題なし。そして、危なくなった所をあなたの登場で盛り上げる。最後に、ヴォルデモートを圧倒的な力の差を見せつけてやっつけましたとさ。めでたしめでたし。」
俺は、力いっぱいパチパチパチパチと手を叩く。ニッコリと笑顔を見せながら。
「だが、予想外にもクィレルの改心、ヴォルデモートの止めは俺が刺した事までは想定出来なかったようだ。少し狂ったようですね。」
「ふむ。そのようじゃ。わしでは、決して出来ぬよ。だから予想以上だと…………」
「あなたには失望しましたよ。」
演技ではない。本当の気持ちをぶつける。その部分は、開心術で分かる様にした。
「はて。何の事やら。」
このクソジジイ。この期に及んで、まだシラを切るつもりか。人が死にかけたんだぞ。
「エリナには、ヴォルデモートと戦う権利がある――あなたはそう思っていらっしゃった。確かにその通りだよ。アンタの御膳立てなんて無くてもね!だが、事もあろうにアンタは教師という立場を忘れていたんだ!!自分の策略や考えを優先する余りにな!!生徒と学校を危険に晒した!仮にも教師であるなら、早く危険を対処すべきだったんだ!!それなのに、危険をおびき寄せた!!!」
俺は、一回深呼吸を入れてまた話す。
「何が才能ある若い魔法使いを導くだ!!自分がやるべき使命を他人に擦り付けて、高みの見物をしてるだけじゃないか!ふざけるな!!それで、何人犠牲になったと思っている!?そして何よりも許せないのは、俺の唯一生き残っている
俺は、吐き捨てる様に言った。そして、左手に持っていた賢者の石を握り潰した。賢者の石は、粉々に砕け散った。その破片は、全て地面に捨てた。ダンブルドアは、酷く動揺していた。おそらく、石を破壊された事によるものだろうと、俺は分析した。
「俺は、アンタを決して信じない。言いなりにもならない。永遠にね。俺は俺のやり方で、エリナや仲間、俺を信じてくれる人達を守っていく。誰一人死なせてたまるか。それと同時に、ヴォルデモートとその一味を完全にこの世から消してやる。死んだほうがマシだと思う位の苦痛を、奴らに刻み込んでやる!邪魔させてたまるか!!!」
一旦深呼吸をして、自らの感情を抑える。感情的になり過ぎだ。ここで開心術を使われるだろうね。だから、落ち着かせる。だが今度は、敵意に満ちた表情だけを向ける。
「……それでは、失礼。この俺に罰を与えたきゃ、幾らでも与えれば良い。俺は逃げないし、隠れもしない。臆病者であるあなたと違って。」
来た道を戻ろうとすると、ダンブルドアが懇願するように俺に言ってきた。背を向けたまま、老いぼれの戯言って奴を聞いてやろうじゃないか。
「ハリー。君の妹のエリナの事に関しては、本当に申し訳ないと思っておる。だからこそわしは、その償いとして君の信頼を得るに値する人間になりたいのじゃ。だから頼む。わしに協力しておくれ。この世界の為に。破壊神としてではなく、救世主として。」
「…………」
俺は、無言で立ち去った。どうせ嘘だ。まやかしだ。俺を捨て駒にする為の。何が賢者だ。何が偉大な魔法使いだ。家族や仲間、自分を信じる者を誰一人救えない奴なんかが、そう呼ばれて良い筈が無い。
救世主?破壊神?生憎どちらにもなる気は全く無いね。俺は、俺のやりたい様にやる。欲しい物は手に入れる。守りたい者は何があっても守る。ただそれだけの事。大人のレールには、絶対に乗らない。そう誓ったのだから。
クィレルの生存、ハリーのダンブルドアへの不信感が膨れ上がるという結末で終わりました。
EXシナリオの方で、ゼロとグラントの話を書いていきます。そちらの方の話も読んでいただけると有り難いです。