Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章 作:純白の翼
姿を表したのは、クィレルだった。
「まさか、私より先に辿り着くとは、予想外であり、想定外だ。いや、そんな事はどうでも良い。お前達、賢者の石を渡すのだ。我が君の為に。」
やはりナイロックの情報通り、クィレルの方がヴォルデモートの下僕だったか。
主にロンとハー子だけだが、皆スネイプがそれだと思っていたらしい。まあ、予想が外れた2人が特に驚いていた。元配下と言う意味ではスネイプも強ち間違っちゃいないわけだがな。
「スネイプ先生がイイ人で良かったぜ!ワルモンだったら、イヤだからな。」
グラントは、なんだかんだいってスネイプが結構好きなようだった。
「さぁ、早くしろ。」
クィレルは、ヴォルデモートの魂を宿しているのか、有り得ない程の凄まじいプレッシャーと殺意を放つ。俺も、少し足が震えた。
「ど、どうしよう……」ロンが、ガタガタと震えている。
「イヤだ!パパとママを殺した奴なんかに賢者の石は渡さない!!!」
怖がりながらも、勇気を振り絞って反抗の意思を見せるエリナ。
「エリナ・ポッターか。フフフ。俺様の、この有り様を見るが良い。」
ターバンを外し、ハゲを見せたクィレル。後ろを振り向くと、もう一つのおぞましい顔があった。一体何をすればこんなに醜悪な顔になるんだと俺は思った。
「ただの影と霞に過ぎない。誰かの体に入ることで初めて形になれる。ここに来てから、ユニコーンの血で命を繋いできた。」
「ユニコーンの血だと!?ハグリッドの言ってたユニコーンの虐殺はお前の仕業だったのか!」
「ハリー。どういう事なんだよ?」
ある程度恐怖心を払い去ったゼロが、質問してきた。
「ユニコーンの血には、死の淵にいる者でも生き永らえさせてくれる効果をもっているんだ。それ相応の代償は必要になるけどな。」
クィレル(とヴォルデモート)以外が驚くが、俺は話を続ける。
「これ以上失う物がなく、しかも殺して自分の命の利益になるゲス野郎だけが、そんな罪を犯すわけだ。自らの命を永らえる為に純粋で無防備な生き物を殺害するのさ。だから、得られる命は完全な物じゃない。その血が唇にふれた瞬間から、飲んだ奴は呪われた命を生きることになる。生きながらの死の命だ、そんなものは。」
「ご名答だ、エリナ・ポッターの双子の兄、ハリー・ポッター。」
「お前みたいなくたばり損ないのクズに褒められても何も出る訳が無いだろう!!」
『なんて奴だ。あのヴォルデモート卿に暴言を吐くなんて。』
クィレルは、俺の暴言に対して思わずたじろいた。
「減らず口はジェームズ・ポッターそっくりだ。奴は3度も俺と遭遇する度に俺様を侮辱した。だが、それ以上に奴の兄をを見ている様な感覚だ。まあ良い。ここで殺してやりたいところだが、俺様の下につけば全員の命だけは助けてやろう。全員俺様に忠誠を誓うのだ。手始めに、お辞儀をするのだ。」
「あくまで命だけだろうが!安全や尊厳までは保障しないようだしな!!」
「今なら、お辞儀1回だけで許してやろう。俺様は慈悲深い。」
「お前ら逃げろ!こいつは慈悲深いどころか、逆らう奴は皆殺しにする、そういう奴だ。」
俺は、5人に逃げる様に促す。しかし、クィレルの方が早かった。
「誰も逃がさんぞ!
クィレルが失神呪文を放つ。ハー子を狙っていた。
「ハーマイオニー危ない!うわぁ!」
ハー子を押しのけて、ロンが身代わりとなって閃光を食らってしまう。ロンは、その場に倒れてしまった。
「ロン!」
ハー子が泣き叫ぶように呼び掛ける。しかし、返事がない。
「グレンジャー。お前にはこれだ!
何の躊躇いもなくハー子はクィレルに洗脳されてしまった。
「ハーミーちゃん!」グラントが叫ぶが、ハー子には全く通じない。
「グレンジャー、やれ!」
「
ハー子の杖から緑の閃光が発射された。残っていた俺を含めた4人は、すぐさま回避する。
「あんなの。俺の恵まれた体で受け止められたのに。よける必要あるのか?」
「大アリだ。あれは許されざる呪文の一つで、最強最悪と言われる死の呪文。アバダ・ケダブラだ。」
ゼロが、何も知らないグラントに解説する。グラントは、青ざめた。
「よし。3人とも聞いてくれ。これじゃ埒が明かない。下手をすれば全滅だ。ゼロとグラントは、ハー子を元に戻してくれ。俺とエリナで、クィレルをやる。」
「了解だ。」
「ハーミーちゃんは任せろ!」
「行こう、ハリー!」
「ああ。」
二手に分かれた。ゼロとグラントはハー子を食い止め、俺とエリナはクィレル(とヴォルデモート)を相手することになった。
「このぉ!」
俺はクィレルに近付き、腹部に蹴りを入れる。少しのけぞるクィレル。
「さらにもう1発!」
腹パンをする。次は、マントによる体術を繰り出し、魔法を出す隙を与えさせない。しかし、クィレルはすぐに体勢を立て直した。
「甘いな。
錯乱の呪文が直撃した。フラフラになる。しまった。一瞬の隙を突かれた。
「お前の相手は後だ。
俺は、武装解除呪文で吹っ飛ばされた。石にぶつかり、気を失ってしまった。
*
「念には念を入れよう。
クィレルは、気を失ったハリーにあろうことか死の呪文を使い、完全に止めを刺した。
「そんな!」青ざめた表情になるエリナ。
「クィリナス。次は小娘だ!やれ!!石を奪ってから、小僧と同じ末路を負わせるのだ!」
「御意!」
ヴォルデモートが叫び、クィレルがエリナの手を掴んだ。だが、すぐに手は離された。エリナは尻餅をついてしまう。
「ご主人様!!小娘を……小娘を捕まえられません。手が!!私の手がああ!!!」
クィレルの手は焼け爛れていた。エリナには、直接触れないらしい。エリナは、とっさに手を伸ばし、クィレルの顔を掴んだ。
「あああああああアアァァ!!!」
今度は顔も焼けただれてた。
「何をやっている!?殺せ!殺してしまえ!!」
*
「んっ。…………ハッ!ここは、どこだ。」
ここはどこだ。何やら真っ白な広い空間にいた。さっきまで、禁じられた廊下の最深部にいたのに。妙に眩しい。
「気づいたかい?」
何かが俺に囁いてきた。すると、目の前には俺と同じ姿をした奴がそこにいた。違うのは、髪がクシャクシャしてるのと、瞳が全てを見通す赤い物になっている事くらいだ。
「誰だ!?それに、ここはどこだ!?」
敵かも知れない。俺は、強めの口調でそいつに問いただした。
「まあまあ。そうカッカしないで。僕か。そうだな。君が8歳の時の出来事に密接に関係するんだけどね。この場所は、いわば君自身の精神世界だ。」
「俺の精神!?」
「そう。今、少し気を失っているんだよね。」
「場所は分かった。でも、俺が8歳の時の出来事に密接に関係するってどういう事なんだ?」
「君は、8歳になってしばらくしてから、原因不明の高熱になったのは知っているよね。」
「でも、それはただの夏風邪だって義祖父ちゃんから聞いた。」
「君にはそう伝えているんだよ。でも、魔法界の成人になったら、君のお義祖父さんは本当の事を話すつもりだったんだよ。あの時、君に何が起きたのかをね。」
「え?」
「君のかかった病気は唯の夏風邪じゃない。ロイヤル・レインボー財団が厳重に管理していたウイルスによる感染症だ。君達の様な人間だけに感染し、死に至らしめるね。」
「ウイルス?死なせる?」俺は、こいつが何を言ってるのかが分からなかった。
「ロイヤル・レインボー財団は、W-ウイルスと呼んでたけどね。」
「W-ウイルス?」初めて出た単語に戸惑いを隠せない。
「正式名称Wizard-virusさ。その名の通り、魔法使いだけに感染して、長時間苦しませて殺す。正確には、魔力を持った生物に死を与える。魔力を持った生命体からしてみれば、究極の天敵となるんだよ。」
「ちょっと待てよ。そいつに感染したんだったら、何でおれは生きてるんだ?」
「それなんだけどね。本当に極稀に、ウイルスを克服しちゃう奴が現れるんだ。その1人が、ハリー。君だよ。」
「お、俺が?」
「そう。殺すつもりで僕は魔法使いに感染したのに、君は生き残っちゃった。こうなってしまうと、君に僕は従う事になるわけだ。まあ、僕は君が今までの魔法使いと何かが違うというのが感じて分かったからね。それはそれでいいかなって思ったけど。」
「お前は、俺の姿をコピーしたW-ウイルスって事なのか?」
「うん。」
「W-ウイルス。いや、ダブルって呼んでもいいか。」
「呼び方は何でも構わないさ。僕に、生命の概念は無いからね。」
「俺、今までヴォルデモートって奴を抹殺する為に学校に入るまでの6年間、訓練してたんだ。その時は復讐しか考えられなかった。でも、唯一生き残っていた妹の存在を知って、そして彼女と実際再会して、こうやって友達も作れて復讐よりも手に入れた物を守っていきたいと思ったんだ。」
「うん、そうだね。来る前に、友達を作ったね。だから蛇じゃなくて、獅子を選び取ったんだからね。君の心の中を通して、それは知ったよ。依然、敵対者には結構容赦無いけど。」
「それは言い過ぎだ。」
「ごめんごめん。」
「ダブル。今のままじゃ、クィレルやヴォルデモートに勝てない。俺は一度、父様と母様を失っている。ここに来て、妹まで失うなんて嫌だ。友も失うのも同じ位にな。だから、俺の願いを聞いてほしい。」
「何だい?」
「俺に、力を貸してくれ!もう何も失いたくない!」
俺は、力いっぱい頼んだ。それに、プライドも捨てて俺の姿をしたダブルに頭を下げた。
「僕の力は、本来破壊の力。気を抜けば、君を乗っ取るかもしれないよ。君の闇や絶望の象徴とも言えるからね。そんないつ敵になるかも知れない奴に、頭を下げるとはバカなんじゃないの?」
「お前は、俺の絶望でも、闇でも、敵じゃない。それは、お前は俺の希望で、光で、完全な味方だからだ。どっちが上かじゃない。対等な立場で一緒に戦いたい!!!」
意外過ぎるその言葉に、ダブルも驚きの表情を隠せない。いつも自分は、忌み嫌われていた。その扱いには慣れたが、適合した魔法使いの体を隙を突いて乗っ取ってきた。でも、口は悪いがはじめて自分を嫌わなかった目の前の人間が、目の前にいる。
面白い。退屈しのぎも兼ねて、この人間の行く末を見てみようじゃないか。ダブルはそう思った。
「この僕が希望で、光で、完全な味方……か。アハハハハハ!初めてそんな事を言われたよ!面白い事言うね、君。なら、どこまで僕の力に耐えられるか試してあげよう。思う存分、W-ウイルスの力を使うといい。でも一応、忠告しておくよ。力を使いこなしたつもりで、僕に支配されないようにね。」
口ではそう言いつつも、ダブルのその顔は、まるで演技ではない穏やかなものとなっている。
「すまん。恩に着る。」
「別に礼は要らないよ。君の大切な人のもとに早く行ってあげなよ。」
そして、俺は現実に意識が舞い戻っていく。クィレル、、待ってろよ。本当の戦いは、ここからだ。
ハリーの精神世界、一応第1話で既に伏線は張っておいてあるんです。気付きにくいかと思われますが。次回、ハリーの逆襲が始まります。