Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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1週間ぶりの投稿になります。今回から賢者の石に移るわけです。テーマは、『再会』です。


賢者の石
第1話 マホウトコロの英国人


 1991年7月7日。南硫黄島。一見何もない無人島に見える。しかし、その島の頂上には羊脂玉(ヒスイの中でも最上質のもの)で飾られている豪華絢爛な校舎が存在していた。ここはれっきとした学校なのだ。それも、ただの学校ではない。魔法という特殊能力を持った者達の養成機関、魔法学校である。名を魔法処(マホウトコロ)という。

 

 この学校は、世界の優れた魔法学校11校の一角として知られる。生徒数は少ないが、評判は高い。魔法の腕前においても、クィディッチにおいても。マグル文化との融合も理念に取り入れており、マグル世界とは密接な関係を持っている為、純血主義は殆ど絶滅している。4月から始まる3学期制である。

 

 7歳から学校に通うことが出来るが、寄宿出来るのは11歳からなのだ。11歳になるまでの間は、大きなウミツバメの群れの背中に乗せられ、毎日家に送り返される。

 

 入学すると、体格や成長に合わせて大きさが変わる魔法のローブを受け取る。初めは淡いピンク色。しかし、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、黒、銀、金の順番にランクが上がっていく。後から挙げた物ほど優秀と見做される。

 

 一方、ローブが白に変わってしまった場合、これは大変不名誉な事とされている。法律を破ったり、機密を漏らした事になるからだ。ヨーロッパで闇の魔術を使ったと言えば分かりやすいだろうか。白いローブの者は、問答無用で退学処分となり、日本の魔法省で尋問を受ける事になるのだ。

 

 そんなマホウトコロで今日も授業が終わり、11歳未満の生徒が帰ろうとする。殆どが日本やアジアの国から来ている。しかし、ここにはただ唯一のイギリス人の男子生徒がいる。彼は、同級生5人とウミツバメの所まで向かいながら雑談していた。ナナカマドに猫又の尻尾の毛で作られた25センチの杖を弄びながら。

 

「今日のマグル学面白かったよな。」

 

「そうだな。週に1回アニメ映画見るからね。」

 

「この学校がマグルの製品を普通に使えるってのも大きいよね。イギリスの学校とは大違いだよ。」

 

「そうは言うけどさ。ハリー。曲がりなりにもイギリスって君の故郷じゃん。ディスっちゃっても大丈夫なの?」

 

 大抵の生徒のローブは淡いピンク色。しかし、他者とは違う異国風の顔立ちをした銀色のローブを着たハリーと呼ばれた少年は、同級生からそう聞かれる。

 

「別に。俺自身、日本での生活の方が長いからね。自分で言うのもアレだけど、日本の方が住みやすいよ。しかも、イギリスの魔法界は今も中世的なシステムだってエイダ義姉さんが散々愚痴ってたんだよ。」

 

「ここではローガー先生って言った方がよくないか?」

 

「授業終わった後だから問題無いだろうね。」

 

「そうか。日本語が流暢だし、英語も問題なく話せるよな。」

 

「英語と日本語は叩き込まれたからね。将来イギリスで暮らす事になっても、日本で暮らす事になっても良いようにって保護者から言われててね。」

 

 大きなウミツバメの前まで辿り着く。ハリー達6人は最後の1羽に乗ろうとした。しかし、走りながらハリーの名を呼ぶ若い女性の声がした。

 

「ハリー!ちょっと待ってください!!」

 

 黒髪黒目の腰まで伸びている髪と日本の着物を着ることで気品さを出している女性が駆けつけた。

 

「皆、また明日ね。」

 

「分かった。じゃあな。」

 

 ハリーは、同級生を先に帰らせた。

 

「どうしました、ローガー先生。」

 

「今授業は終わりましたから、普通にエイダと呼んで大丈夫ですよ。」

 

 エイダと名乗る女性がハリーに優しく微笑む。

 

「校長先生とお爺様が待っています。」

 

「義祖父ちゃんもいるんだ。今、イルヴァーモーニーのキットの所に行って無かったっけ?」

 

「予想以上に早く用事が住んだようですよ。だから1日早く日本に来れたのですから。詳しい話は、校長室で。」

 

 校長室に辿り着き、中に入る。見た目20代後半から30代前半の白衣を着たメガネの女性と30代後半のスーツ姿のイギリス紳士が出迎えた。

 

「ハーイ。よく来たわね。」

 

「どうもです。校長先生。」

 

「罰則じゃないから、緊張しなくても良いわ、ハリー。」

 

 イギリス紳士の方が、アラン・ローガー。ハリーの育ての親であり、義理の祖父であり、保護者だ。樹海にいた赤ん坊のハリーを保護してくれたのもこの人なのだ。ちなみにハリーは、何で樹海にいたのか、何があったのかはロイヤル・レインボー財団で全て教えて貰っている。

 

 マホウトコロの校長先生。校長という割にノリが軽いのだ。ただ、年齢の話はNGだ。話題を振って来た者が翌日、ビクビクしていたのだから。

 

「佐緒里。そろそろ話した方が良い。」

 

「そうね。アラン。ハリー、あなたもそろそろ11歳よね。あと4週間弱で。」

 

「はい。」

 

「11歳になる寸前で銀色のローブになっているあなたを2学期から寄宿制度の下に入学させようと思っています。」

 

「もうそれは確定事項じゃないですか。それの最終確認ですか?」

 

「いいや。ところが、ある書類がロイヤル・レインボー財団の新宿支部宛で、今日の昼に来たのだよ。」

 

 アランは、懐から手紙を取り出し、ハリーに手渡す。ホグワーツ魔法魔術学校と書かれていたのだ。手紙もパラパラと読む。

 

「まさか、この俺にイギリスに行けって事!?」

 

 ハリーは動揺していた。イギリスなんて記憶が殆ど無いのに。そして何よりも、住み慣れた日本と、それまで出来た友人といきなり離れろなんて理不尽にも程がある。

 

「私もそう言ってやったよ。だが、あそこの校長は何が何でもハリーを引き抜きたいらしい。本人の意思を無視して無理やり来させるのは、本人にとって苦痛以外の何物でもないと言っておいた。」

 

「それで、どうなったの?」

 

「最終的は、ホグワーツに行くのかはハリーの決断が最優先されるという事になった。」

 

「メリットは?」

 

「この学校のカリキュラムと、イーニアスによるホグワーツ式の魔法を終了させているハリーなら、成績に関しては問題ない。ホグワーツを卒業出来た時点で、マホウトコロの卒業も同時に出来るわけだ。」

 

「ふ~ん。それは良いけどさ。何か条件を加えたんじゃないの?」

 

「ああ。言ってやったさ。もしホグワーツに行く事になっても、あくまでマホウトコロの留学生という形で入学だと。そして、条件も付け加えた。ハリーを危険な目に遭わせない事。月に1回、報告をする事。そして、本当に危険な事態になったらハリーは問答無用でマホウトコロに戻すという魔法契約を交わした。」

 

「そうか。俺の事をそこまで……行くよ。元々、卒業してから生き別れた妹を探すつもりだったけど、それが早まるからね。それに、ヴォルデモートの一味とのけじめもつけておこうと思っていてね。」

 

 ハリーは、今までの真実をおさらいする。1985年。5歳になったばかりの頃だ。もうこの時には、ハリー自身では行けそうにない場所に行こうと思ったら、気が付かないうちに到着しているし、近くの遊び場で常識では考えられない危ない遊びを無傷でやったりしていた。

 

 それにアランは気が付き、ハリーを呼び出した。ハリーは、覚醒した超能力がバレて怒鳴られるのではと内心冷や汗をかきながら、新宿支部に来ていたアランのいる部屋に入った。

 

「ハリー。良く聞きなさい。お前が最近超能力と呼んでいるものだが、半分正解で半分間違いだ。その目覚めた力の名前は魔力。お前は、生まれながらの魔法使いだよ。」

 

 怒られなかったが、屹然とした態度で告げられたのだ。この時、ハリーは一瞬頭がフリーズした。いきなり魔法使いだと言われて素直に受け入れる奴なんざいないに決まっているからだ。

 

「お養祖父ちゃん。冗談キツイよ。僕が、魔法使い?受け止める方がおかしいけど。」

 

「そうだな。あの時お前だけを見つけていたら、私はこんな事は一言も言わないだろう。だがな、ハリーよ。お前の持っていたこの手紙を見て本当のことだと確信したのだよ。」

 

 そう言って、デスクに一枚の封筒を置いた。そして、アランは話を再開する。

 

「この手紙を書いた者を知っている。何故なら、私も魔法使いだからだ。」

 

 その言葉はハリーに、今までにない衝撃を与えた。それだけ、インパクトが強かった。冗談を言う人ではなかったし、真顔で魔法使いだと言ったのだ。

 

「魔法使いの世界にいなくてもいいの?」

 

「ああ。こちらの方が住みやすい。……話を戻そう。お前の素性を教える。今も、仲間の魔法使いに調べてもらっているが、まだ謎が多くてな。分かったことだけ話す。」

 

 アランの話では、1970年からヴォルデモートという最悪の魔法使いが魔法界を支配しようとしたそうだ。一家全滅したところもあるそうだ。アランも妻と息子夫婦、初めての孫を失っている。ところが、そのヴォルデモートを倒せる子供が生まれるという情報が入ったのだ。

 

 ターゲットは、ポッター家の子供。どちらも殺そうとしたそうだ。ハリーの実父と実母は死んだが、彼と妹は何故か助かった。というか、実の妹の存在をそこで初めて知ったハリーである。呪いを受けたのは妹の方で、ハリー自身は何の外傷も無いとの事。

 

 そして本来ならば、2人共プリペッド通りのダーズリー家に預けられる予定だった。しかし、どういった経緯かは分からないがハリーだけアランがトップを務めるロイヤル・レインボー財団に保護されたということだ。

 

 それを聞いてから、ハリーは7歳になるまでに色々やった。エイダ・ローガーはマホウトコロの先生もやっているが、ハリーには加えて剣術と魔法の実技を、彼女の2歳下のイーニアス・ローガーは、ホグワーツでの自分の教科書を使って戦略と魔法の理論、更に2歳下のアドレー・ローガーは、護身術と砲術、ロイヤル・レインボー財団会長であり彼ら3人の実の祖父であるアラン・ローガーは交渉術と精神と心に関する魔法をそれぞれ教えた。

 

 元々飲み込みは早い方だと言われていたので、9歳の時点で大抵の事はこなせる様になった。更に、もう1つ所持している新しい魔法の創造に最適な杖。27センチの、マツの木に人魚の髪で作られた杖で幾つか魔法も自作した。

 

 また、ブローチが無事な限り半永久的に再生し続ける白色のマントを使った体術にも自分の力で着手し始めた。マントの究極奥義『瞬間移動(テレポーテーション)』も最近身に付けた。

 

 ハリーは、周りからは天才だと言われている。しかし、いつも一発で成功をさせていたわけではない。むしろ、自分ほど失敗を重ねている人間はそうそういないと思っている。

 

 それでも、血の滲む様な努力に成功への機転や閃き、執念や計画性があったからこそ成功していると思っている。ただ、努力の度合いが他の人間よりも強いだけの平凡な人間だと思っている。

 

 それに、8歳の時に謎の熱で2か月間生死を彷徨ったことがある。今こうして生きているので、完治している。そこから時々、過去の自分に関係する出来事を夢で見るようになった。なぜ自分と妹が襲われたか、そしてそう仕向けたのは誰なのか等、だ。

 

 見たのは、1つ目が7月とヴォルデモートを倒すみたいなこと言っている女性で、どこかラリっていた。一種のトランス状態なのだろうか。それをねっとりした髪の男が割り込んでくるところ。

 

 2つ目は、ネズミみたいな男が変態ヘビ顔の男に何か言って、変態ヘビ顔の男が高笑いしてるところ。いい年したおっさんがあんな笑い方では流石のハリーでも引いた。あの変態ヘビ。見た目は大人、中身は中二病の末期患者だと。夢にしてはリアル過ぎなので、ロイヤル・レインボー財団が作り上げた再生の水晶玉(プレバク・ピラクリスタル)に保存しておくことにした。

 

 義理の祖父であるアラン・ローガーにも予知夢のことを伝えた。

 

 ハリーのやる事は決まった。目標はこうだ。まずは、崩壊したポッター家の再興。ヴォルデモートと死喰い人の完全抹殺だ。当事者は勿論のこと、一族もろとも死んだ奴以外は滅ぼす。何故なら、そういった一面を知りながら放置してきたそいつらも同罪だからだ。

 

 法が裁かない。いいや、裁けないのであれば、俺自身の手で裁いてやろう。シロだろうが関係ない。自らの人生を歪ませたのだから、それ相応の代償を奴らには払ってもらう事にしよう。ハリーは、そう心に誓った。

 

 とはいえ、今行ったら物理的にも社会的にも抹殺されるのがオチ。ならば、連中が行動を再開するまでは力を蓄える事にする。そこまで心の底から湧き上がる憎悪の感情を押し殺して耐え忍ぼうとハリーは思ったのだ。

 

 現に、マホウトコロの授業と並行して呪文の創造を行っている。それが、ついに完成させた。どんな呪文かというと、悪霊の火よりも威力の高い碧い炎を出す呪文「邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)」と、それを始めとする全ての炎を自在に操る呪文「炎よ我に従え(プロメス)」の2つを作ったのだ。

 

邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)」は、悪霊の火すら焼き尽くす紺碧の炎を出す。水をかけても消えない代物だ。悪霊の火以上にコントロールが困難で、並大抵の者には扱える呪文ではない。

 

 それを解決したのが2つ目の「炎よ我に従え(プロメス)」だ。紺碧の炎を鎮火させるだけでなく、形態変化させることが出来る。応用すれば、碧炎以外の炎も操れるのだ。しかも、魔力消費は少ない。その他にも、作った呪文はあるが、それはいずれ明かすつもりだ。

 

 そこまでの回想を終了させる。どうやら2人の間で話は纏まったらしく、すぐに留学の返事をホグワーツに送ったのだった。

 

「それでは、ハリー。英断感謝します。」

 

「1週間後にイギリスへ行こうか。それまでは準備を終わらせておくように。」

 

「了解。」

 

「それでは、私と共に帰りましょう。」

 

 ハリーとエイダは出て行った。

 

「アランさん。ここから先は、お願い致します。」

 

「分かっている。もし、ヴォルデモートの脅威が本格的になったらすぐさまマホウトコロに戻す。あの時ダンブルドアに付けた条件は、それを見越しての事だ。まあ、途中で戻る事になっても、元々入学時点の段階で能力自体は卒業レベルまで到達しているから問題は無いだろう。勿論、マグル世界の知識もこの国で言う所の高校卒業レベルまでな。」

 

「そうですね。やはり、ホグワーツの校長は信用出来ませんか?」

 

「絶対何かを強要してくるのは明白だ。だから牽制を掛けておいた。では、失礼しよう。」

 

 アランも出て行く。初孫があんな事になったのだ。絶対にハリーを二の舞にさせてなるものか。そう誓ったアランであった。

 

 




再会と因縁の章は、原作で言う所の賢者の石と秘密の部屋に相当します。

修正
ルビの部分を直しました。

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