Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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クリスマス後半。


第17話 みぞの鏡

 俺は、必要の部屋に突入する。目的は、半純血のプリンスが持ち主の上級魔法薬を隠す場所を求めるからだ。願ったのは、あらゆる物を隠す場所だ。これなら誰も思いつかないし、巧妙に隠せる筈だ。そもそも、この必要の部屋の事を知っているのは俺以外いない。というのは言い過ぎかも知れないが、少なくとも片指で数える位しかいないだろう。多く見積もっても、2桁で数えられる程しかいない筈だ。

 

 軽くスキップしながら、本棚の分かりやすい場所に隠す。区別がつきやすいように、マグルの世界で売ってあった付箋を貼った上でだ。

 

「結構あっさりと終ったな。ここで泊まるのもアリかな?いや、ここを物色するのもいいかもしれない。」

 

 ここにあるのは、持ち主の栄誉の証や盗んだもの等だ。もう死んでいる奴もいる。戴くのもアリかもしれない。現に、ここは様々な魔法具や禁書がそろっている。それも、かなりの貴重品も少なからずある。

 

 そう思った時だ。奥の像が見えた。上に、汚くて古ぼけているが何だか賢くしてくれそうな小さな髪飾りが被らせてあった。

 

 俺は、興味本位でその像に近付いていく。像の正体は、『老魔法戦士の像』と言う物だ。そこは、どうだっていい。そこに被せてあった小さな髪飾りを手に取る。何か価値のありそうな物だが、何か禍々しい気配を持った髪飾りだ。しかも、手に持った者の精神に働きかけようとしてくる作用もある。実際、開心術をこちらに掛けてこようとして来ているし。

 

「興味本位で手にしたと思ったらこれか、全く以って目障りなブツだ。普通の奴なら、直ぐに操られるだろうな。」

 

 あくまで普通の奴、ならな。だが、この俺は違う。義祖父ちゃんを始めとしたローガー家の人々に、心や精神に関する魔法をイヤと言うほど叩き込まれたんだ。

 

 この程度の開心術など、この俺の前では無力。これならば、義祖父ちゃんやローガー家の人々の開心術の方がまだマシだ。

 

 よろしい。心や精神に関する魔法の分野における格の違いを見せてやろう。

 

幻覚を見せ付けろ(パンタミューム)!」

 

 ここは……ホグワーツではないようだ。森、なのか?それに、今の時間帯は夜だ。決して、昼の筈が無い。にもかかわらず、昼なんだ。

 

誰かいる。いるのは、気に縛り付けられた農民の男性とかつては美しかったであろう容姿が少し崩れ始めている男だ。男の方は、農民の男性に棒のようなものを向ける。マズい!止めないと!

 

「やめろ!!」

 

 男を力ずくで止めようとしたが、すり抜けてしまった。そうか、これはあくまで記憶。何やっても無理なのか。記憶とはいえ、男は農民を殺そうとしている。知りながらも何も出来ない自分にこれまでにない憤りの感情が生じた。

 

 男は、杖から緑の閃光を放つ。農民は、糸が切れたように事切れた。男は、何やらブツブツと言い始める。すると、何か青白いものが男の中から出てきた。それが、男の持っていた小さな髪飾りの中に入っていった。

 

 気が付くと、俺は必要の部屋にいた。戻ってきたのか。そして、小さな髪飾りを見つめる。こんな危険な代物、さっさと処分してしまおう。

 

邪神の碧炎(ファーマル・フレイディオ)炎よ我に従え(プロメス)!!」

 

 悪霊の火を焼き尽くせる紺碧の炎を出す。そして、鎮火を兼ねた形態変化で小さな髪飾りだけを焼き尽くすようにする。小さな髪飾りはブルブルと震え、真っ黒な物が出て消え去る。また、小さな髪飾り本体は少し焼けた跡が残り、真っ二つに割れた。髪飾りにはこう書いてある。『計り知れぬ英知こそ、我らが最大の宝なり』と。

 

「何だこれ?義祖父ちゃんに早速報告・連絡・相談してみよう。ダンブルドアの爺さんに聞くのもいいが、捨て駒にされそうだからやめておこう。」

 

 俺は、目くらまし呪文を使って、必要の部屋を後にした。真っ二つに割れた小さな髪飾りを持って行って。

 

 1991年12月26日。少し徹夜したのか、9時に起床。俺は、手紙と小さな髪飾りを同封して、学校管理のフクロウにロイヤル・レインボー財団本部宛に送らせた。

 

 少し、遅めの朝食を食べに行く。すると、グラントからエリナがおかしいと言ってきた。

 

「何があった?お前の話は端折り過ぎて、分からんかったぞ。」

 

「いやぁ、だからよぉ。エリナちゃんが、これでパパとママに会えるって言って周りが見えなくなってるんだって。」

 

「錯乱の呪文にかかったんじゃねえのか?」

 

「まあ、俺口下手だからよぉ。エリナちゃんから直接聞いた方が良いんだよな。」

 

「直接本人に聞くしかないか。……ありがとな、グラント。」

 

 俺は、大広間の暖炉を見つめているエリナを見つける。

 

「おはよう、エリナ。昨日は眠れたか?」

 

「うん、まあね。」

 

「グラントがお前の事を心配してたぞ。昨日何があった?」

 

「うん、透明マントを使ってね……」

 

 エリナによると、透明マントで夜の学校を彷徨っていたらしい。何でも、ニコラス・フラメルの事を調べるためだそうだ。その途中で不思議な鏡を見つけたとのこと。見つめると、父様と母様が見えたらしい。

 

「成る程な。分かった、今夜一緒に行こうか。エリナは透明マントで。俺は、目くらまし呪文を使ってその鏡のとこまで行く。」

 

 翌日になるかならないかの夜の時間。俺とエリナは、図書館の入り口前で合流。早速、その鏡の場所に向かう。一時間弱ほどかけて寒い廊下を彷徨う。そして、ようやく例の鏡の部屋を見つけた。エリナがマントをかなぐり捨てて鏡へ向かった。俺も、呪文を解いてその鏡に直行した。

 

ふと鏡の上を見てみる。そこには、『すつう をみぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ』と書いてあった。どういう意味だこれは?

 

「鏡……か。左右反転、文字反転。……!!?これ、逆から読むのか?」

 

 急いで、書かれた文字を逆から読む。

 

「私はあなたの顔ではなくあなたの心の望みを映す…………ねぇ。だから、エリナには父様と母様が見えたのか。」

 

「ハリー!!見てみて!!」エリナが、急かす様に俺に言う。

 

「そんな急かさなくても、横取りする奴なんざいないよ。」

 

「だって、本当にパパとママがいるんだもの!!しかも、手を振ってる!」

 

「エリナ、俺の話……」

 

「いつまでもここにいたいなぁ。」

 

「頭冷やせ、このおバカ。水よ(アクアメンディ)。」

 

冷水をエリナにかける。少し落ち着いたようだ。

 

「な、何を……」

 

「鏡の上、逆から読んでみ。」

 

「『わたしは あなたの かお ではなく あなたの こころの のぞみを うつす』?」

 

「あくまで見せるのは、心の中の望みさ。あった事がない家族に会いたいという思いが、父様と母様を見せたんだな。」

 

「へぇ~」

 

「せっかくだから、俺も見てみますか。」

 

俺も鏡の前に立つ。見立て通りなら、ヴォルデモートの一味を全員魂すら残さずに完全抹殺をする。その後にポッター家の再興を成就しているものかと思うな。きっとそうだ。そうに決まっている。

 

だけど、映していたのはそのどちらでもなかった。思い出した。あの時の、あれだ。

 

「ハハッ、何だこれ。忘れて無かったのか。そういや、あの言葉を言ってたからなぁ。キットと一緒に立てた夢の宣言。唯の言葉だと思ってたのに。まだ、俺は捨てきれてなかったのか。」

 

 俺が見たもの。望みでも夢でも、ましてや野望でもなかった。あの時宣言した、俺の本当の願い。俺の『夢の果て(・・・・)』。

 

「ハリー。大丈夫?」

 

「あ、ああ大丈夫だ。」

 

「ハリーは、何が見えたの?」

 

「いや、言えねえな。そもそも、望みかどうかも疑わしいし。それに、丁度、俺達を付け回しているストーカーもいるみたいだし。そうでしょう?校長。」

 

入り口付近の机に座っている人物が、姿を現す。

 

「ええ!?ダンブルドア先生が何で!!?」

 

「良く見破ったのう。ハリー。でもストーカーは言い過ぎじゃよ。わし、涙目。」

 

「茶化さないでいただきたいですね。」さっさと要件を言えと促す。

 

「いつから気づいたのかな?」

 

「俺を見くびり過ぎですよ。一度出会った魔法使いの魔力の感知なら、すぐに特定が出来る術を持っていますので。」

 

「アランから教わったのかの。して君は、何を見たのじゃ?」

 

「ノーコメントで。」

 

「それは残念じゃ。」

 

 そう言いつつ開心術を俺にかけようとするが、少しどころか一切入り込めないらしい。俺は、笑顔でそんな程度の物は効かないという意思を伝える。

 

「見事じゃ、全く以って見事じゃよハリー。この鏡の考察も含めて、グリフィンドールに20点与えよう。確かにハリーの言うとおり、この鏡は望みを映してくれる。ただ、それだけじゃ。知識や真実を示してくれるわけではないのじゃよ。だがのう、過去にはそれを受け入れる事が出来ずに、発狂してしまった者も多い。2人共、この鏡は明日よそに移す。探してはいけないよ。例え再び出会ったとしても、もう大丈夫じゃろう。夢に耽ったり、生きる事を忘れてしまうのは良くない。それをよく覚えておきなさい。さて、ベッドに戻ってはいかがかな?」

 

 そろそろ戻ろうか、とエリナを促す。しかし、エリナがダンブルドアに質問する。

 

「あのぅ……先生。一つだけ質問してもいいですか?」

 

「何でも答えよう、エリナ。」ダンブルドアが微笑んだ。

 

「先生はこの鏡で一体何が見えるんですか?」

 

「わしかね?厚手のウールの靴下を一足持っているのが見える。靴下はいくつあってもいいものじゃ。なのに今年のクリスマスには靴下は一足も貰えなかった。わしに来るプレゼントは、本ばかりじゃよ。」

 

 こうして、俺達の冒険は終わった。それぞれの寮に戻った。ジジイ、絶対何か隠してるな。少しだけだが、魔力も乱れていたし。そんな事を言う俺も隠しているから、人の事言えないけどな。実の妹にさえにもだ。それより、これからどう過ごそうかな?宿題終わっちゃったし。そう思いながらベッドで眠りの世界に入っていった。

 




早くも髪飾りが破壊。ただ、ハリーは正体には気づいていない模様。そして、ハリーの望みは?謎が多くなります。

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