Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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お久しぶりです。ハロウィーンの前編です。


第14話 ハロウィーン(日常編)

 翌日、グレンジャーは俺に近付かなかった。まあ、口煩いハエがいなくなったような気分だから、大歓迎だがな。

 

そこから、1週間の月日が流れる。その朝、俺には大コノハズク6羽が運ぶ、大きな包みが送られてきた。その直後、もう1羽が飛んできて、包みの上に1通の手紙を落とした。俺は手紙を急いで開けた。こう書いてあった。

 

《包みをここで開けないように。

中身は新品の「ニンバス2000」です。

あなたが箒を持ったと知れると、皆が欲しがるので、気づかれないように。

今日の夜7時ウッドがクィディッチ競技場であなたを待っています。

最初の練習です。

M・マクゴナガル教授》

 

「何が来たんだい?」

 

 送られた手紙を渡す。

 

「ニンバス2000だって!僕、触ったことすらないよ。」

 

 ロンの声が聞こえた。

 

 1時間目が始まる前に2人で箒を見ようとロンと共に出て行くと、エリナと出会った。それ何と聞かれたので、1週間前の事を話す。その後に、エリナが凄いね、頑張ってと応援してくれて別れた。純粋に嬉しかった。

 

 さっさとその日の授業をやり過ごす。

 

 夕食後、ロンに手を引かれ、寮で箒の包みを開けた。ロンと一緒にニンバス2000をひとしきり見た。7時近く、1人で競技場へ向かった。まだウッド先輩は来ておらず、少しの間飛び始めた。

 

「おーい!ハリー、降りてこーい!」

 

ウッド先輩の声がした。見てみると、箱を持っている。

 

「ルールは知っているみたいだから、早速練習に移っていこうと思う。ただ、もう暗いからスニッチを使った練習はまた後日だ。今回はコイツを使う。」

 

 取り出したのは、ゴルフボールが沢山入った袋だ。数分後、ウッド先輩と共に飛び上がる。ウッド先輩は、ありとあらゆる方向にゴルフボールを思い切り強く投げ、俺にキャッチさせた。

 

 元々、体を動かすことは好きだし、スポーツの経験もあるから1つも逃さなかった。ウッド先輩は、大変喜んでいた。

 

「君、チャーリーより上手くなるよ。ああ、そうそう。これからは先輩っていう堅苦しい呼び方と口調で言わなくてもいいよ。くだけた感じで、オリバーってこれから呼んでほしい。チームの皆そうしてるからね。」

 

「分かりました……いえ、了解。オリバー。こんな感じでよろしくて?」

 

「ああ、そういう感じでいいさ。」

 

 クィディッチに熱が入らなきゃ、案外気さくなんだなこの人。

 

 毎日のように宿題があるのに加えて、週3回の練習もあったので忙しくなった。まあ、元から1年の内容など復習のようなものなので、2日かけて終わらせている俺からすれば微々たるものだ。むしろ、今までが歯ごたえがなさ過ぎていたとも言える。クィディッチの方も、実戦向きの練習に徐々にシフトしていった。そんなこんなで2か月の月日が早くも経っていく。

 

 10月31日 ハロウィーン

 

 朝、6時に起床し、洗顔をする。モーニングヘアウォーターで髪を整えて、外へジョギングしに行こうとする。そういえば、カボチャの臭いがするな。ハロウィーンだっけ。でも、その行事は本気で楽しむことが出来ない。

 

 何故なら、両親がヴォルデモートに殺された日であり、俺とエリナの全ての始まりを決定づけた因縁の日でもあるからだ。

 

ハロウィーンの日は、みんなお菓子の焼けるにおいで朝から浮ついていた。それもあって、『妖精の魔法』担当のフィールド先生がそろそろ物を飛ばす魔法の練習を始めていきましょうと言った時、皆は歓声をあげた。

 

 俺はゼロと、ロンはグレンジャーと組む事になった。ロンが俺を恨めしげに見ていたが、それ以上に一番気に入らないあの女と組まされたことにカンカンだった。それは、グレンジャーも同じだった。俺、ゼロ以外の人と組んだこともあるけど、別に俺に反感的に接する人でなければ良好な関係を築けている。すぐに自分の課題を終わらせた後に組んだ人のサポートに回って、すぐ出来る様にしたからね。教え方が上手いから10点あげようと、フィールド先生も言ってくれた事もあったわけだ。俺に頼めば、すぐに出来るという風潮が立ち始めていた。

 

 逆にグレンジャーは人気が無かった。いや、理論や実技は確かに良く出来てるよ、あいつは。ただ、それだけ。注意の時に、どうしてもきつい口調になってしまっている。それで相手を反発させ、すぐに自分も激昂する。悪循環だ。誰かに教えたり、解説したりという訓練を嫌と言うほど積んだ俺と、それをやった事も無いグレンジャーとでは当然、天と地の差になる。

 

「いいかい皆。ビューン、ヒョイだよ。やってみよう。」

 

実技が始まった。

 

「ウインガーディアム・レヴィオーサ!」ゼロが呪文を唱えるも、効果はない。

 

「惜しいなゼロ。ウィンの部分が少し違ってるぜ。こんな感じだ。浮遊せよ(ウィンガーディアム・レヴィオーサ)。」

 

呪文を唱えると、羽は机を離れ、頭上5メートルに浮いた。

 

「おや、ハリー。やるね。1年生だと1.2メートル前後が限度なんだが、約4倍の高さまで浮上させるとは。大したものだ。私も、思わず脱帽したよ。よし、ボーナスだ。グリフィンドールに10点!」

 

 フィールド先生が拍手をして叫んだ。これに感化されて、皆も俺に続いて、自分も成功させるべくやり始めた。

 

「ウィンガディアム・レヴィオーサ!」ロンの呪文が聞こえてくる。

 

「言い方が間違ってるわ。ウィン・ガー・ディアム・レビ・オー・サ。『ガー』と長ーく綺麗に言わなくちゃ。それと、『ヴィ』じゃなくて『ビ』よ。」

 

グレンジャーだ。間違った事は言っていないが、そこまで頭ごなしに言われればロンもむかつくぞ。

 

「ウィンガーディアム・レビオサー。」

 

 しかし動かない。ロンはヤケクソで杖を振るが、何も起こらない。すると、グレンジャーは業を煮やす。

 

「ちょっと待って、ストップよストップ! あなた呪文間違えてるわ。いい? 『レビオーサ』よ? あなたのは『レビオサー』」

 

「そんなに良くご存知なら、君がやってみろよ!!」ロンが怒鳴っている。

 

「よく見てなさい。浮遊せよ(ウィンガーディアム・レヴィオーサ)。」

 

 当然だが、グレンジャーも成功する。1.2メートルまで浮上した。

 

「おー!ハーマイオニー、良く出来たね。皆注目して!ハーマイオニーがやったよ!」

 

 グレンジャーは、フィールド先生から5点貰った。

 

 クラスが終わった時、ロンの機嫌は最悪だった。ちなみに、ゼロと一緒に3人で歩いている。そう言えば気のせいかも知れないけど、ゼロと一緒にいる時だ。彼の周りにはいつも風が吹くのだ。城の中はそよ風レベルだけど、城の外は最大で暴風が吹き荒れる時もあるんだ。まあ、風は好きだし、俺も大して気にしてないけどな。

 

「あ~あ。俺、終了間際でようやく1.5メートルまでしか浮かせられなかったぜ。理論は大丈夫だけど、実技が芳しくない。」

 

「ま、ゼロの場合は振り方と呪文のスペルは問題ないな。理論は出来てるよ。それこそ、俺やグレンジャー以上に。あとはイメージの問題だよ。兄のフィールド先生は、確かにあの歳で闇払いや教師をやっているから凄いけどさ。お前はお前だろ、ゼロ。すぐ出来なくても良いと思うけど?お前のペースで習得していけば良いと思うぜ。俺は5歳から予習してるけど、その時なんて100回は軽く失敗してるからさ。それに比べたら全然早いよ。」

 

「マジかよハリー。すぐに出来そうなイメージがあったわ。」

 

「天才でもなきゃ完璧じゃねえよ俺は。寧ろ、出来損ないだよ。あそこまで1回で出来たのは、今までの血の滲む様な努力があってこそさ。」

 

「エリナと正反対のように見えるけど、結局誰かの見えないところで努力しているって意味では兄妹ってわけか。根っこの部分は同じなんだな。」

 

「そういう事だ。ゼロよ。」

 

「君らは良いよな~。呪文を出せただけまだマシさ。僕なんて魔法が出なかったよ。」

 

「それもあるが、グレンジャーもいたからだろ?」

 

「ああそうさハリー。ハーマイオニーの奴、あんな言い方しなくてもいいのに。」

 

「あんなきつい言い方じゃあな。」と、ゼロ。

 

「うんうん、分からなくもない。」俺も同意する。

 

「『いい、レビオーサよ。あなたのはレビオサー。』だから、誰だってあいつには我慢出来ないって言うんだ。全く、悪夢みたいな奴だよ。ハリーやゼロよりも実技の成績が劣っている癖に調子に乗っちゃってさ。」

 

 ロンが廊下を歩きながらこぼした。俺は何だか雲行きが怪しくなったのを感じ取った。そろそろ次の話に移ろうぜと提案しようとしたその時、グレンジャーが隣を歩いていたゼロにぶつかった。急いで追い越していくグレンジャー。その顔を見ると、泣いているのが見えた。あ、流石に言い過ぎたなこりゃ。

 

「今の言葉、丸聞こえだったようだな。もう少し時と場所と状況を考えとくべきだったな。この俺を含めて。」

 

 と、俺が2人に伝える。

 

「それがどうした。」とロンだ。

 

「まあ、友達いなさそうだよな、グレンジャーって。もう少し、丸くなれば近付いいてくる奴も出てくるだろうに。……まあ、ここらでいいか。じゃあ、2人共、俺はここで。」

 

「ああ。」

 

「じゃあね、ゼロ!」

 

 ゼロは、次の教室に向かった。そして、入れ替わるようにエリナと会った。

 

「ハロー!2人共!次って同じ薬草学の授業だから、一緒に行かない?」

 

エリナが元気な声で挨拶する。次の授業に行こうと言って来た。

 

「悪くないな。ロン、お前はどうだ?」

 

「うん。いいね。行こう。」

 

「そういえば、ハーミーを見たんだ。泣いてたけど、何かあったの?」

 

「グレンジャーの事か。」

 

 俺は、エリナに前の授業の事を言った。

 

「ハーミーの言い方も直さなくちゃいけないけど、これはロンが悪いね。」

 

「ええ!!?ハリーだけじゃなくて、エリナも言うのかい?」

 

「正直やり過ぎたな。俺ら。まあ、今日は薬草学で終わるし、後で考えようぜ。」

 

 グレンジャーは結局、薬草学の授業に来なかった。授業が終わって大広間に行く。途中、パーバティ・パチルがラベンダー・ブラウンに話しているのが聞こえた。地下のトイレで泣いていて、1人にしてくれと言ってたらしい。流石のロンも、バツが悪くなっていた。

 

 大広間に向かうと、豪華な飾りつけを見て、素直にハロウィーンを祝えない俺でも凄く感動した。ちょっと夕食まで時間があるので、外に出た。湖の畔までニンバス2000を使って飛んだ。

 

 俺は水面を見つめる。別に今置かれている状況を悪いとは思っていない。良い人達にも巡り合えたし、その人達が俺を引き取って育ててくれた。だが、あの時少しでも早く助けがあったら、何か状況が好転していればと思うと、あなた方は死ななかったかもしれない。そうでしょう、父様、母様。

 

 そう思いに更けていると、俺の左肩に誰かの腕が触れていた。かなりデカい。後ろを見ていると、ハグリッドがいた。

 

「ハリー。こんなところにいたのか。どうした、少し涙が出ているぞ?まさか、マルフォイの奴らに何かやられたんか?」

 

「いいや。そもそもマルフォイに負ける要素なんて持ってないよ。世間では楽しいハロウィーンだろうけど、俺にとっては素直に楽しめないんだ。だって今日は……」

 

「そうか、すまん。なんたって今日は、お前さんとエリナの両親、ジェームズとリリーの命日だからな。」

 

「そういう事。それに、謝らなくていいよ。悪いのは、あの変態野郎と、奴に俺の両親を売ったクズ野郎だからね。」

 

「そうだな、うん。ジェームズとリリーか。あの2人は、俺の知っとる中で一番優れた魔法使いと魔女だったよ。学生の頃は、2人共ホグワーツの主席だった。『あの人』が、なんでもっと前に2人を味方に引き入れようとしなかったのか謎じゃった。どうしてなのかは分からん。ただ、10年前の今日にお前さんを含む4人が住んでいた村に奴が現れたってことだけだ。お前さんとエリナが1歳になったばかりだよ。あいつがやってきた。そして……そして……」

 

 突然水玉模様のハンカチ(汚い)を取り出して、ボアーッと霧笛の様な音を響かせながら鼻をかむハグリッド。

 

 「すまん。だが、本当に悲しかった……お前さんらの父さん母さんの様な良い人はどこを探してもいやしない……そういうこった。」

 

 それで、俺達が残ったわけか。

 

しばらくの間、黙祷を両親に捧げる俺とハグリッド。時間が経っていた。もう夕食は始まったか、残念。その後、ハグリッドに連れられて城に戻る俺。しかし、何やら騒がしい。生徒が我先にとそれぞれの談話室に戻っていく光景が見えた。

 

「何だこれは!?何がどうなっているんだ?」

 

「俺にも分からん。」

 

 その時、マクゴナガル先生が俺とハグリッドに気づく。

 

「ポッター!!何処へ行ってたのですか!?みんな心配してたのですよ。」

 

 少し怒っているが、これは本当に心配している態度の裏返しだろうな。

 

「すみません。今日は、私の両親の命日だったので感傷に浸り過ぎてました。謝って済む事ではありませんが、申し訳ございません。」

 

 マクゴナガル先生は、急に申し訳なさそうな表情になった。

 

「いいえ、そういう事情でしたら、仕方ありません。さあさ、ポッター。早く寮にお戻りなさい。」

 

「寮に戻れって、何が起こっているんです?」

 

「トロールが地下室に侵入したのです。」

 

 トロール?何でそんなのが。ん?地下室?……あ!

 

「先生、地下室のトイレにグレンジャーがいます。あいつ、トロールの事を知らない筈です。それに、俺のフクロウから最近4階をウロチョロしている奴がいるという報告を受けています。」

 

「何ですって!?」取り乱したように言う。

 

「落ち着いてください。恐らくトロールは陽動かも知れません。先生は、4階に行っていただいて良いですか?俺はグレンジャーを救出しに行きます。あいつは嫌いですが、殺されるのはそれ以上に目覚めが悪いので。俺、これでもロイヤル・レインボー財団で鍛えられていますので。」

 

「いけません!トロールに1年生のあなたが相手に――」

 

 と言いかけたところで俺は遮る。

 

「確かに、今先生の言うことを聞いて寮に帰るのが一番賢明な判断でしょうね。俺もそうは思っています。だけど、1人も救えずに安全な所へ向かうっていうのが賢い判断だって言うなら、俺は一生バカで良いです。」

 

 マクゴナガル先生は、俺を見る。俺は、何が何でも行くぞ、と言う決意を前面に出した態度を取る。

 

「分かりました。但し、無茶だけはしない様に。危険だと感じたら、すぐにお逃げなさい。逃げる事も人生です。良いですね?」

 

「はい!!」

 

「では、お行きなさい。私は、4階へ行きます。グレンジャーを頼みましたよ。」

 

 俺はマクゴナガル先生と別れ、地下のトイレに向かう。待ってろよ、グレンジャー。死んだら許さんからな。

 

 マクゴナガル視点

 その時の私には、後ろへ走り去っていくハリーの両隣に、かつての教え子であるジェームズとリリーの姿が見えたのです。

 

『ジェームズ、リリー!……ハリーはアランに似ているかと思いましたが、確かにあの2人の実の子供だというのが良く分かりますね。恐らくハリーは、一度こうだと決めたら簡単には曲げないタイプでしょう。それに、アランの話だとホグワーツのカリキュラムはあらかた終わらせている。他の生徒よりは、勝機があるかもしれませんね。』

 

 




湖畔でのイベントは、ルドラの秘宝のBGM『Crime of the Heart』が流れているのかな、とイメージして書きました。

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