Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章 作:純白の翼
俺は、マクゴナガル先生に連れられて城の中を歩く。扉を守護するガーゴイル像の目の前まで来たわけだ。
「雷鳥!」
雷鳥?日本固有種の鳥の名前か?それともお菓子の名前か?ダンブルドアは動物、或いは鳥好き、はたまたお菓子好きなのか。分からん。
すると、ガーゴイル像が扉の前から立ち退いた。すると、その背後にある壁が左右に割れて螺旋階段が現れる。階段は自動で動く。まるでエスカレーターだ。樫の扉には、怪獣グリフィンをかたどったノック用の金具がついている。部屋は美しい円形。紡錘形の華奢な脚がついたテーブルの上には、奇妙な銀の道具が並び、クルクル回りながら煙を吐いている。壁には歴代の校長の写真が掛かっていて、大きな鉤爪脚の机の後ろの棚には、組み分け帽子が乗っている。扉の裏側には、金色の止まり木がある。鳥フェチなんだろうか?
すでに先客がいた。そこには、アルバス・ダンブルドア唯一人がいた。
「ハリー。こうして会話するのは初めてじゃろうから、自己紹介をしておこう。わしは、アルバス・ダンブルドアじゃ。よろしくのぉ。」
目を合わせようとしている。開心術か。生徒にやるか普通。佐緒里先生だってそんな事しないのに。だけど、無駄だね。普段から感情のコントロールを教え込まれた俺にはそんなチャチな開心術は効かない。デフォルトで閉心術を発動している俺には。
「では、私の方からも自己紹介をします。まあ、既に知っているでしょうが。私の名は、ハリー・ポッターと申します。以後、お見知りおきを。」
「それではハリー。夕飯が始まる前に少しばかり今週の学校の感想を聞いておきたいが、よろしいかな。」
スネイプの話ではなさそうだと、俺は感じる。だが、油断は出来ない。相手は、並外れた開心術師だ。生じた隙を突いて、心の中を見られかねない。
「ええ、分かりました。今週の報告ですか。まあ、それなりには上手くやっていたかなと思っています。本当に、他の同級生と同じレベルですよ。」
抑揚の無い感じで報告する。
「ほほう、ありがとう。ミネルバ、何か言いたい事があるんじゃないのかね?」
ここにきて、今まで無言を貫いていたマクゴナガル先生に話のバトンを渡してきたではないか。
「それでは、ポッター。なぜ、ここに連れてきたのか分かりますか?」
「全く以って見当が付きません。」きっぱりと答える。
「私から言いましょう。ポッター、実力をごまかすのはおやめなさい。」
「どういう事ですか?」何故様子見のことが分かったんだ。
「あくまでシラを切るつもりのようですね。私は長年、様々な生徒を見てきました。最初の授業で、ミス・グレンジャーやあなたの妹のミス・ポッターのようにすぐに出来る子は少数ながらそれなりにはいました。しかし、意図的に中途半端な変化をさせた子は、殆どいません。あれは、かなり高度なコントロール能力がないと出来ません。あなたならば、その気になれば最優秀の成績を取れるのに、なぜ力を隠すのですか?マホウトコロからも、アランからもお墨付きの能力を持っているのに。」
成る程。様子見がてら手加減していた事に対しての質問か。
「マクゴナガル先生。私は、名誉の類に興味は一切ありません。そんなものは、欲しい奴に勝手にあげればいいと思っています。もう、生き残っていた男の子と勝手に持ち上げられる生活には、正直うんざりしています。少しでも普通の学校生活が送りたいから、出来ないフリをしていました。」
「そうですか。ですが、授業には本気で臨みなさい。アランのよこした手紙によれば、もう1年生レベルは問題無いそうですからね。」
「連絡のやり取りをやっているのですか?」
「そうです。これでも、仲は良かったですからね。」
「では、そうしましょう。失礼しました。」
俺は、校長室を出ていこうとする。しかし、また呼び止められた。アルバス・ダンブルドアによって。
「ハリー。あと一つだけ、いいかのう?」
「……無駄に長くならなければ。」
「ありがとう。さて、ハリー。スネイプ先生の事じゃ。」
「スネイプ教授がどうかされたので?」
「エリナと違って君は全てを知っているようじゃから、誤解の無い様にしておきたいのじゃよ。」
「こんな変哲もない私が、何を知っているというのです?」
「殆ど全てじゃよハリー。よく聞きなさい。スネイプ先生は確かに、君の父君との確執があった。君は、どうやら父君の非は認めている。しかし、母君に対する認識は誤解を持っておる。スネイプ先生は、リリーを愛しておった。彼女に危険が迫って来た時、彼は取り返しのつかない後悔と、それを平気でやってしまった自分に対する絶望を味わった。」
「それは、何かの言い訳ですか?」
「そうではない。スネイプ先生は、君達兄妹を護ろうとしている。それは、リリーの遺志を引き継ぐ為じゃ。彼女と、彼女の家族を引き裂いてしまったと言う酷い事をしてしまった。それに対する贖罪じゃよ。彼も、苦しんで悔いておる。それだけは、分かって欲しい。」
「ストーカーの如く思い続けた挙句に、マグル出身の私の母への救いようのない差別発言をした人間に、そんな感情があるとは思えませんがね。それを差し引いても、仕事と私情を混合させる人間を理解する気などありません。確かに父が彼にやった行為は決して許されるべきではないし、私もその部分についてはスネイプ教授の肩は持ちます。」
一旦、呼吸をする為に喋るのをやめる。
「ですが彼は、私達兄妹の両親を死に追いやり、挙句に俺とエリナの人生を歪ませた。それとこれとでは話は別です。そういうあなたこそ、光と闇を中途半端に行き来している彼に対してもう少し警戒心を持ったほうがよろしいのでは?」
「わしは、スネイプ先生を信じておる。何があってもじゃ。」
「……まあ、それがあなたの考えであるなら何も言いませんよ。尤も、私としては自分の考えを押し付けるのはイヤですし、逆に頭ごなしに考えを押し付けられるのも承服しかねますが。」
つまり、何も言わないが、自分の考えを俺に押し付けるのはやめろと伝えているわけだ。
「ダンブルドア校長。あなたが、私の持っている情報の修正に関しては感謝しています。ですが結局のところ、それをどう受け止めるかは俺次第ということです。そこをお忘れなく。そろそろ、夕食が始まりますので、これで失礼してもよろしいですか?」
「うむ。少々時間をかけすげてすまぬのぉ、ハリー。行ってよろしい。」
「ありがとうございます。失礼しました。」
俺は、校長室を退出した。
ダンブルドア視点
セブルスから今日あった事を聞いた。憎悪の感情が見えたと言っておった。しかも、わしの開心術が全く通用しなかった。アランは、心や精神に関する魔法の分野においてはわしどころか全ての魔法使いにおいて右に出る者はいないと言われている。じゃから、彼の下で育ったハリーもその類の魔法には精通していてもおかしくはないのは分かってはおった。じゃが、あれ程とはのぉ。
「アルバス。どうでしたか。」
「いや、全くハリーの心が読めなかった。わしとしては、ハリーの心のわだかまりを解いて、闇に傾く要素をすべて取り除きたかったのじゃが。それに加えて、アランも含めて自分の陣営に引き込めたら何も言う事はないのじゃ。」
「アルバス、それは欲張り過ぎです。アルフレッドの一件があれば尚更ですよ。話を戻しましょう。ハリーについては、他の先生からの報告ですと、仲間と認めた人には大変親切に振る舞っているそうです。献身的なサポートもしています。しかし、それ以外の人には未だに心の壁を作ってはいます。」
「やはり、わしは無力なのか。教え子の痛みと、心にある憎しみを取り除くどころかその真実にすら辿り着けていない。」
そうなのだ。最終的にヴォルデモートを完全に倒すには、エリナ・ポッターが必要不可欠なのだ。その為にセブルスに動いて貰っている。だが自分はどうだ。
それ以前に、ハリーの魔力の質にも気付けていない。いや、正確には気付いてはいた。あのヴォルデモートなど比ではない黒く、冷たく、禍々しい魔力の質。普段は白く、暖かく、神々しいものだが、負の感情が表面化すると吹き出て来るあの魔力の質。
そして、その力を向けているのが自分達か、闇の勢力に対してなのか。あの反応を見る限りは、闇の勢力に対して向けておる。今の所は敵ではない。しかし、邪魔をするのであればわしらにもその力を向けてくるじゃろう。無理を言って編入させたが、彼はマホウトコロからの留学生。保護者のアランや、マホウトコロの方を信じているだろう。いずれにしても、早急に対処しなければならない。
もし、神がいるとしたら今はこう願っている事だろう。どうか、ハリー・ポッターという少年が闇に走らないことを。そして、破壊神としてではなく、救世主として世界に変革を齎さらんことを。
*
「待てやー!」グラントの声が聞こえた。
「うわああああああ!!フォオオオオオオオオオオイ!!!」
マルフォイは追っかけられていたのだ。何故かというと……その理由は無い。強いて言えば、グラントの虫の居所が悪いから。故に彼はマルフォイにこう言ったのだ。
「むしゃくしゃするから殴らせろ!」
そんな事、当然出来る筈も無い。クラッブとゴイルは既にやられている。前にも上級生が立ち向かった事もあるが、全員無事に帰って来られた者はいない。魔法を使おうにも、グラントの身体は殆ど全ての術に強力な耐性を持っているのだ。まるで巨人族やドラゴン並みである。そして碌に反撃も出来ないまま、杖という名の鈍器で殴られる。しかも、リアルファイトの経験があるので、その威力は良くて半殺しで済むのだ。
「理不尽にも程があるぞ!それに、周りの動物もリドルに付き従って僕に襲い掛かるし。」
今にも泣きそうになるマルフォイ。実家の権力は何故か効かない。上級生の半数以上はグラントを恐れて何も手出し出来ない。スネイプに言えばスリザリンが減点。反撃しても、殆どの魔法は全く効かない。魔法使い、特にスリザリン生からしてみれば悪夢そのものである。
行き止まりまで追い詰められた。動物達は今にも襲い掛かってきそうだ。だが、グラントが静止。彼の手には、バットがあったのだ。
「新しく買ったよぉ。このプラスチックバットの殴り具合を試したかったんだぁ。」
マルフォイの悲痛な叫びが城中を駆け巡った。グラントは罰則を貰う羽目になった。フィルチと一緒に校内掃除である。が、フィルチも感心する程の清掃テクニックを見せつけ、彼に気に入られたのだった。