Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

11 / 53
第10話 組み分けの儀式(後編)

 エリナ視点

 広間中が静まり返り、好奇や尊敬、畏怖、侮蔑等のありとあらゆる様々な視線がボクを包でいる。そして、当のボクは緊張しまくっている。帽子を被る。

 

 いろんな視線がボクを見つめる。こういうの苦手なんだよな~。早く終わって欲しいよぉ。

 

『フーム。難しい。どこの寮でも無難にやってはいけるようじゃな。しかし、君の場合はだ。元々勉強は嫌いな方だから、まずレイブンクローは除外されるな。』

 

「じゃあ、グリフィンドールかハッフルパフかスリザリンなら良いって事?」

 

『そうなるね。どれがいいかな。』

 

 組み分け帽子は、調べる。頭、悪くない。非常時においては、大いに頭を使う。狡猾か?全くないとは言わないが、常人と比べてかなり低いようではある。規則も守るが、いざと言う時は破る性格。更に、あの力。自分の力を使ってみたいという欲もある。だけど、勇気も持ってる。本人は無いとは言い張っていたが、芯は他の人間よりは何十倍もある。それに優しいし、努力家だ。本人が自分で誇っているのは、そこか。それが1番だと思っている。

 

 なら、もう少し本音を言って貰って、決めてみるとするか。

 

『君の気持ちを教えてくれないかな?』

 

「ボク、勇気なんて持ってないし優しさもあるかどうかわからない。それに、嘘をつくのも下手だし、狡猾かって言われてもそうとも言えないんだ。勉強も苦手で。今まで、何をやってもドジをしてたんだ。それでも、出来ないなりに努力は人一倍してきたんだよ。ねえ組み分け帽子さん。こんなボクでも、ホグワーツで上手くやっていけるかな?」

 

『その為の私だ。心配しなくてもいい。少し心の奥を見せて貰ってもいいかな?レディの心をここまで深く見るのは、趣味ではないがね。君の様に複数の寮への適性持った子に関しては、私だけでは決められないからね。』

 

「うん。どうぞ、組み分け帽子さん。」

 

 組み分けは、エリナの心を見た。何をやってもうまくいかない。それでも、少しでもそこから脱することが出来る様にみんなの見てないところで苦労を重ねてきた。また、他人の悪いと思ったことは、自分の身を顧みずちゃんと意見する勇気も持っている。そこが実ってき始めた上に、人間関係にも良い方向に変化が現れたことを読み取った。

 

『ジェームズと同じく勇気も持っている。だが、それ以上にリリーに良く似て優しい心を持っている。他人の幸せを共に喜び、不幸を共に悲しむ心を持っているようだな君は。君をよく知るものは、君を高く評価している。ならば勇気よりも、従来持っている優しさと、目的の為に今を耐え忍ぶ覚悟の方に可能性をかけてみよう。その名も……』

 

『ハッフルパフ!』

 

 ハリー視点

 そうか、それがお前の答えか。随分な番狂わせだけど、エリナはとても嬉しそうだ。ハッフルパフの列も、生き残った女の子を取ったことに狂ったように喜んでいた。ハッフルパフのテーブルに向かうエリナは大歓声で迎えられた。ハンナやスーザンと握手していた。次は、俺だな。

 

「ポッター・ハリー!」

 

 今度は、マジで広間は一瞬水を打ったように静かになった。やがて騒めきが広がっていくのが分かった。唖然としている奴も少なくない。ま、死んだと思われていた人間が生きていたなんて知ったら、誰だって驚くよな。だからって俺を見世物の様に見るのは気に食わんが。そんなわけで、教職員テーブルを見渡すと、殆ど全員が苦笑している。また生徒のテーブルを見渡しても、生徒達の俺に対する反応はエリナ以上だな、これは。

 

 教職員テーブルに視線を戻して育ち過ぎた蝙蝠みたいな男『セブルス・スネイプ』を見ると、怒りと憎悪に満ち溢れた目で見ている。が、同時に母様の面影も見出しているらしく、完全に俺を憎みきれないらしい。やはり、義祖父ちゃんの得た情報は正しかったようだ。あのセブルス・スネイプとかいう男、本当に俺の父様と確執があったらしい。別に俺にどんな感情を持とうが勝手だが、仕事と私情を切り離しておけよと思いつつ、俺は帽子をかぶった。

 

『部分閉心術』を使用し、組み分け帽子だけに俺に真意が分かる様にしておく。

 

『ふーむ。エリナ・ポッター以上に君は難しい。』

 

 低い声が俺の耳元に聞こえてきた。

 

「どこにも適性が無いのか?」

 

『いや、違う。寧ろその逆だ。君は、優しさや慈愛にも満ち溢れている。頭も悪くない、それどころか良過ぎる方だよ。また、常人では決して持ち得ない並々ならぬ勇気も持っている。だが、敵対者への容赦のなさや、邪魔者を徹底的に叩きのめす為の力への渇望、自分の人生を歪ませたヴォルデモート卿と死喰い人への尋常ではない程の憎悪、大切なものを護る為なら自らの手を汚す事も躊躇わない一面を持ち合わせている。さて、どこに入れたものか……』

 

「組み分け帽子。俺はな、正直最初はスリザリンに入るつもりだった。同族殺しも辞さない程の覚悟を持って死喰い人やヴォルデモートへの復讐や完全抹殺をしようと思った。だが、ホグワーツに行く途中で出会った同級生達を見てそれ以上に、友や仲間、繋がりも欲しくなった。それは本当だ。現にアンタ以外には俺の心の中を見せないように閉心術をアレンジして発動させているんだ。」

 

『うむ、成る程。今、私以外には心を閉じているのか。まあ、話を戻そう。確かに今は、その友や仲間、繋がりが欲しいという気持ちの方が上回っている。それでも君の資質であれば、間違いなくスリザリンが一番適任だ。だが、君のその思いを私は汲み取ろう。君の行くべき寮はむしろ……』

 

『グリフィンドール!』

 

 最初、広間はまだ静まり返っていた。しかし、グリフィンドールの席から狂ったよう歓声が上がった。

 

「ありがとう。後、今回の俺とのやり取りは、誰にも言わないでくれるとありがたい。」

 

『了解した。約束を守ろう。ダンブルドアにさえもね。』

 

「恩に着る。」

 

 俺は、早速グリフィンドールの席に向かう。向かってみると、Pのバッジを付けた少年が俺との握手を求めてきた。別に悪い気はしないので、素直にそれに応じる。双子の赤毛は、「ポッターを取った。ポッターを取った。」と狂ったように叫んでいた。一方のエリナを取ったハッフルパフは、少し残念そうだった。

 

「あなたのお兄さんに関しては、残念だったわね。」

 

 と言ったのは、ハンナだ。

 

「ううん。出来たら一緒が良かったけど、ハリーはハリー。ボクはボクだよ。だから、ハリーの決断は尊重する。」

 

「見かけによらず強いな君って。」

 

 アーニー・マクラミンが、感心するように言う。

 

「あら、貴方もグリフィンドールに組み分けされたのね。7年間よろしく。」

 

 グレンジャーは相変わらず言い方に棘がある。何か上から目線で威張ったような感じだ。無視しよう。しばらくは距離を置いておくか。

 

 そう思っていた時、「リドル・グラント!」と聞こえた。ダンブルドアが目を光らせた。結構乱暴だが、気の良い奴なのに何神経を尖らせているんだ、あの爺さん。グラントの組み分けは、超感覚呪文を使って聞いてみる。早速ハッフルパフとレイブンクローは除外された。通常版と特別版を選べと聞こえた。グラントは、何となくだが通常版を選択。その瞬間に、『スリザリン!』と宣言された。マルフォイの顔から生気が消えていくのが見えた。

 

 今度は、シエルの出番だ。どうやら、スリザリンかレイブンクローかで言い争っているらしい。祖父や友達のイドゥンと同じスリザリンにしろと言っているらしいが、組み分け帽子はレイブンクローが相応しいと言ってどちらも譲らなかった。10分後、結局シエルが折れたらしく、レイブンクローに決まった。

 

 2人の組み分けを聞いた俺の感想。どちらも意外っちゃ意外だなってことだ。

 

「ウィーズリー・ロナルド!」という声が聞こえた。だから俺は、顔を前に戻した。思い更けているうちに、そこまで組み分けが進んでいたのかよ。早いな。ハグリッドは俺に手を振っていたので、俺もそうする。続いてダンブルドアと視線が合った。ゴブレットを右手に持って、乾杯の動作をしてきた。俺は、少し一礼をして組み分けに視線を戻した。

 

『またウィーズリー家の子か。決まっておる。その名も、グリフィンドール!』

 

 帽子が叫び、グリフィンドールのテーブルから歓声があがった。ロンは安堵した様子で歩いてくる。彼の兄弟らしき3人がロンを褒めている。

 

「ロン、よくやったぞ。偉い!!!」

 

 パーシーがもったいぶって声をかけた。

 

 最後の一人である「ザビニ・ブレーズ」がスリザリンに組み分けられた。マクゴナガル先生が巻紙と帽子を片付け、教職員のテーブルに戻る。アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。皆に出会い、または再会出来てこの上ない喜びだと言わんばかりの笑顔だ。

 

「おめでとう!新入生の諸君、おめでとう!歓迎会を始める前に二言、三言言わせていただきたい。……と言いたいところじゃが、皆に説明せねばならん事があるからのう。」

 

 そう言うとダンブルドアは俺の方を見つめてきたではないか。

 

「ハリー・ポッター君についてじゃ。彼は、マホウトコロからの留学生という形で入って来ておる。ヴォルデモート、いや正確には謎の魔法使いに襲われて、殺されたと言われておった。実際そのように、わしも皆に語った。しかし、運の良い事に彼はとある団体に秘密裏に引き取られていての。魔法界でも探すことは出来なかった。故に、わしも彼の生存を知ったのはつい最近の事じゃ。情報伝達が遅れて申し訳なく思う。ハリー・ポッター君の生存に関しては、明日の『日刊預言者新聞』に詳しく載るので、見たい人は必ずチェックをするのじゃ。」

 

 そう言ってダンブルドアは悪戯っぽく笑った。あっさり俺の生存をバラしやがった。全くもって食えない狸ジジイだぜ、俺はそう思った。

 

「さて、こんな老いぼれの話を聞いてもお腹はふくれんじゃろう。だから、そろそろ終わりにしようかの。……行きますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらフォーイ!以上!」

 

「!?」マルフォイが、分かりやすく狼狽えていた。

 

 出席者全員が拍手喝采した。いや、茶目っ気があり過ぎだ。それでいいのかホグワーツ校長。俺は全くそのノリについて来れなかったぞ。マホウトコロの校長でも、そこまではしないのに。よく天才は大抵頭のネジが明後日の方向に向かっているみたいだし、天才と馬鹿は紙一重のようだから、ああなんだろうな。

 

 テーブルに視線を戻すと、流石の俺でも呆気にとられた。大皿が食べ物でいっぱいになっている。ローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、ゆでたポテト、グリルポテト、フレンチフライ、ヨークシャープティング、豆、にんじん、グレービー、ケチャップ、そして何故あるのかは知らんが、ハッカ入りキャンディ。

 

 料理はどれもこれも美味しかった。食べている最中に「ほとんど首なしニック」が挨拶しに来て、サー・ニコラスと呼んで良いかと聞いてみた。快く了承してくれたよ。続いて、家族の話題になったりした。同時にデザートが現れた。俺に関しては、予めダンブルドアが説明してくれたので、質問攻めに遭わずに済んだ。そこは、ダンブルドアに感謝だな。皆が食べ終わった頃、再びダンブルドアが立ち上がった。

 

「エヘン――全員よく食べ、飲んだことじゃろうからまた二言、三言。新学期をむかえるにあたって、いくつかお知らせがある。1年生に注意しておくが、構内にある森には入ってはならん。これは上級生にも、何人かの生徒に特に注意しておきますぞ。」

 

 ダンブルドアは双子のウィーズリーを見た。

 

「管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意があった。気を付ける様にするのじゃぞ。」

 

 悪戯っぽく笑っている。恐らくは、バレない所で使って良いと言っているのだろう。

 

「今学期は2週目にクィディッチの予選がある。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するのじゃ。」

 

 クィディッチか。話には聞いているが、見るのは初めてだな。

 

「3つ目じゃが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱいは4階の右側の廊下に入ってはならんぞ。断じてじゃ。」

 

行ってみようかな。別に死ぬ心配なんてないし。今の俺なら、楽勝だがな。

 

「さて、最後は新しい先生を紹介で終わらせようかの。前年度までの呪文学及び、レイブンクローの寮監を担当して下さったフリットウィック先生に代わり、闇払いを5年近く続けてきたフォルテ・フィールド先生が引き継ぐことになった。ではフィールド先生。一言お願いしますぞ。」

 

「皆さん、始めまして。私が、フォルテ・フィールドと申します。教師としては、まだ新米ではあります。しかし、皆さんのこの学校生活をより良い物にしていく努力をします。それでは、皆さんはもう眠いかと思うので、この辺までにしておきましょう。」

 

「ありがとう、フィールド先生。では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

 各自が好きなメロディーで歌った。飛び切り遅い葬送行進曲で歌っていたフレッドとジョージにあわせてダンブルドアが指揮を杖でしていた。

 

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。さあ諸君、就寝時間。駆け足!」

 

 グリフィンドールの1年生はパーシーの後に続いてグリフィンドール塔へ向かった。途中、ピーブズが襲撃してきたが、パーシーが見事撃退(笑)した。そしてようやく「太ったレディ」の肖像画に到着した。カプート・ドラコニスが合言葉で、入り口が開いた。みんな談話室では止まらず、直行で各自の部屋へと向かった。

 

 俺はロンとロングボトムとの3人部屋に割り振られた。程々に自己紹介しつつ、俺を含めた3人はベッドに潜り込んだ。疲労がかなり溜まっていたのか、直ぐに眠りの世界に足を踏み込んだのだった。明日からは、授業が始まる。最初の1週間は様子見するかと決めておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッフルパフ寮。エリナは、直ぐにジャスティン、アーニーとも仲良くなった。ザカリアスは割り込んでこなかった。ハンナやスーザンと一緒の部屋になった。お休みと言って寝た。

 

「zzzzzうう~、ケーキが一つ、ケーキが二つ……」

 

 レイブンクロー寮。合言葉はないが、問題に答えるシステムになっている。範囲は幅広い。フォルテ・フィールドの弟だけあって、ゼロはあって難なく入ることが出来た。疲れたので、さっさとゼロは寝た。

 

「おやすみ、ゼロ。」

 

「ああ。また明日。」

 

 スリザリン。マルフォイの災難は続く。殆どはグラントによるものだが。

 

「スリザリンか。強い魔法使いが多いっていうから、まあいいか。」

 

「なんで、よりにもよってこんな穢れた血と部屋が一緒になるんだ!」

 

「俺に向かってその口の利き方は何だ!?ああ!!?」

 

「ヒイィ!!」

 

「まあ、楽しくやってこうぜ。正しいのはいつも俺。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの。な。なんとかフォイ。」

 

 言っている事が殆どジャイアンなのは、気のせいだろう。

 

「そんな理不尽があってたまるか!いつか思い知らせてやるからな!!」

 

「ほーお。」獲物を仕留めるような目でグラントは、マルフォイを見つめる。

 

「ひ、ひぃ。」

 

 深夜のスリザリン寮。殆どが寝静まっているが、マルフォイは起きていた。

 

「ぐかぁ~すぴ~……」いびきがうるさいグラント。

 

「うるさいぞ……リドル」

 

『ピクピク。』

 

「うっ。……気のせいか。」

 

「……すぴー、すぴー……」

 

「うう……父上……母上……」

 

 マルフォイは翌朝、速達でパパフォイにグラントの事をチクったのだった。しかし、マルフォイ家から帰ってきた返事はマルフォイをどん底に陥れた。そいつには、下手に関わるなと書いてあったからだ。

 




エリナの組み分けは、誰が予想出来ただろうか。そしてハリーの特殊な閉心術。組み分けだけにか真意が分からない仕様となっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。