斯くして一色いろはは本物へと相成る。   作:たこやんD

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お待たせしました!

今回は少し切るとこをミスっちゃいまして、長めになっております。


それはさておき、土日忙しかったんですけど合間を縫ってサイトをチェックしたところなんと...

日間ランキング23位にこの作品の名前が...

嬉しすぎてちょっとテンパりました笑


お気に入りもいつの間にか100件を超えていたようで、活動の励みになっております!



それでは三日ぶりの本編、どうぞ!


6話 斯くして二つの報告は事なきを得る。

忘れていたというのはただの方便で、実は振り返った瞬間から…いや、さっきのイモ男子が呼びに来た時からなんとなく想像はしていた。想像というか、期待?みたいな。

けどそのことを智咲たちに悟られないように、とにかく逸る気持ちを抑えての対応だったのですが……なんか勘付かれてませんかね?なんで二人ともニヤニヤしてるの?

 

ともあれ、とりあえずは平静を装って席を立った。

なんだかんだ早く先輩とお話ししたいので…。

 

そんなわたしの心情を知ってか知らずか、ポッケに手を入れて廊下を眺めている先輩は気付いているはずのわたしの姿に反応しようとしない。

 

先輩のくせに無視とは生意気ですね...。

 

これは少しお仕置きが必要かもしれません。

 

 

「せーんぱいっ!急にどうしたんですかぁ?...あ、もしかして昨夜の続きをご所望ですかそうですか。せんぱい“初めて”でしたもんね~。でも、毎日はちょっとわたしもしんどいですよぉ…」

 

ガタッ!と教室内から椅子を鳴らす音が聞こえてきた。

ちょっとやりすぎたかな。と思ったけど、目の前でみるみるうちに赤くなっていく先輩を見ると、効果はあったようなので気にしない方向で行きましょう。

 

「ちょ、ちょっと一色さん!?誤解する言い方はやめましょうね??悪評が流れるのは慣れてるけど警察のお世話にはなりたくないからね??…とりあえずみなさん携帯しまってくれませんかね…!」

 

おぉ、先輩がめっちゃ流暢にしゃべってる…。

屁理屈を言うとき以外で先輩がこんなに言葉を継いでいるのを聞いたのは初めてかも。

 

「せんぱいキョドりすぎですキモいです…。ちょっとからかっただけじゃないですかぁ~、何焦ってんですか?」

 

「ばっかお前、ちょっと身の危険を感じただけじゃないですかぁ~」

 

む。真似してきやがりましたよこの人。

 

次はどうしてやろうかと頭をひねってみたけど、これ以上やると本当に先輩が通報されかねないので今回はこの辺で手を引くことにした。

 

「全然似てないしキモチワルイです。…それで、せんぱいが訪ねてくるなんて珍しいですけど、どうしたんですか?」

 

「ん。ちょっと放課後のことで連絡しとこうと思ってな」

 

「あー、例の件を奉仕部に正式に依頼しに行くんですよね?忘れてないですよ?」

 

わざわざ確認しに来るとか、わたしのことなんだと思ってんですかねぇ。

と、思ったがそうじゃないらしい。

 

「いや、そこまで過保護じゃねぇよ...はぁ」

 

お前こそ俺のことなんだと思ってんだよ。って感じで短くため息をつく先輩。

吐いた息とともに、警察に突き出されかけた緊張感も一緒に抜けて行ったのか少し柔和な表情になる。

ちょっとドキッとしてしまいました。チョロいな。わたし。

 

「そうじゃなくて、放課後平塚先生にちょっとした雑用頼まれてな。部室行くの少し遅れそうなんだが…一人で大丈夫か?」

 

 

……いや、それを過保護って言うんじゃないですかね…。

 

別にそれぐらいちゃんと自分で説明できますよ。失礼しちゃうなぁ。

 

 

でも…ここでそれを口に出すほどわたしはフラグブレイカーではありません。

せっかくなので、心配してくれている先輩にしっかり甘えとかないと♪

 

「なるほど…だったらわたし、生徒会室で待ってるので用事終わったら来てもらえますか?せんぱいいた方が安し…じゃなくて、使えるので!」

 

おっと危ない、つい本音が。

 

「お、おう。…てかなんで言い直したの合ってたよね今の」

 

「んんっ。せんぱいのくせに細かいとこ気にしすぎですよ?」

 

「こっわ、いろはす怖い。目が怖い。どっから出してんだよその声…」

 

「気にしすぎですよ?」

 

 

 

「…は、はい」

 

うむ。よろしい。

 

「…じゃあ、用はそれだけだ。昼飯邪魔して悪かったな」

 

「え、もう行っちゃうんですか~?もう少しお話ししましょうよ!」

 

「なんでだよ購買終わっちまうだろ」

 

そう言って先輩は踵を返す。

時計を見ると確かに購買が終わってしまうギリギリの時間だったので引き止めるわけにもいかず、いつも通り丸まった先輩の背中をしぶしぶ見送ることにする。

 

先輩が階段の踊り場に消えていくのを見届けてからわたしも踵を返すと、いつの間にか沈黙していたクラスのみんなが一斉に私から視線を逸らしたのが分かった。

 

どうやら少しはしゃぎすぎたみたいですね...。

 

最近先輩と喋っているときの自分がうまくコントロールできなくて、後々になってやらかしたと思うことが多いのは困ったことだ。

 

席に向かって歩き始めると、クラス内は少しずついつもの喧騒を取り戻し、わたしが爛々と輝く4つの瞳が待ち構える机に戻ったころには普段通りの昼休みの雰囲気に戻っていた。

 

この二人を除いて…。

 

「ふーん、なるほど。あれが…」

 

「いろはちゃんやるね~、年上いいなぁ」

 

なんか既に二人して納得していらっしゃるし...。

しかも、奉仕部についてじゃない方の内容だけを勝手に理解されてしまったようで、さっきまでの悩み告白ムードはきれいさっぱり消え去っていた。

 

 

「で、いろは。大体わかったんだけど、やっぱり本人の口から直接聞きたいじゃん?ね、茉菜」

 

「うんうん、色々詳しく聞きたいなぁ~」

 

 

ムードなんてなくても吐かされるようです♪

 

仕方ない、もう一度気を取り直して話すとしましょうか。

 

 

すぅ…っと息を吸い込んで…

 

 

「わたしね…実は……」

 

 

「......ということです。ここ最近私の勘違いで心配かけちゃったみたいで、ごめんね?」

 

 

わたしはこれまでの経緯を全て、二人の友人に話した。

 

大切な空間のこと。

 

大切な人たちのこと。

 

大切な……私の気持ち。

 

全てを話し終えるまで、二人は口をはさむことなく静かにわたしの言葉に耳を傾けてくれた。

その様子を見ていると自然と言葉は溢れてきて、全てを話し終えるのにそう時間はかからなかった。

あんなに話すのをためらっていたのに、不思議なものだ。

 

わたしの大切な気持ちを大切な友人たちに自分の口で告げられたことで、わたしの気持ちはいつになく晴々していた。

 

「じゃあその奉仕部?の人たちが、ずっといろはちゃんを助けてくれよったんやね~」

 

「そうそう!すごいんだよ、あの人たち。いつもは軽口の応酬してたり黙々と本読んでたりするだけなのに、そうかと思うとあっという間に解決策が導き出されちゃったりしててさ」

 

 

先輩たちはいつもわたしを優しく導いてくれる。

そんな先輩たちのことを二人に知ってもらえたことがたまらなく嬉しかった。

 

 

「いろはは…あの噂はもちろん知ってるよね?」

 

「噂…あぁ、先輩の、文化祭の時の?」

 

「そうそう、まぁ知ってるならいいんだ。いろははちゃんと知ってて、そのうえであの先輩を選んだんだとしたらその気持ちは本物だと思うし...。それに私も、いろはが選んだ人がうわさ通りの極悪人だなんて思わないからね」

 

「もちろん!それに、智咲たちならそんな噂に惑わされたりしないってわかってるから喋ったんだよ?」

 

「うんうん、わたしたちはそんなの全然気にせんよ~」

 

先輩の話をするとたいていの人は噂を思い出し、あの嫌われ者の話か、と勝手に納得してしまう。

ある女子は、わたしと先輩が一緒にいるのを見て勝ち誇ったように笑みを浮かべる。

ある男子は、なんで俺じゃダメなのにあんなのと一緒に、という顔をする。

 

先輩のことを何も知らないくせに、勝手なこと言わないでよ。

 

そう思うことが少なからずあった。

自分がコソコソ噂されているのは気付いても特になんとも思わないのに、先輩のことになると無視できなくなるっていうのもちょっとおかしな話だけど。

 

 

でも今目の前にいる二人は、さも当然のように噂のことを判断材料から外す。

 

 

「じゃあいろは、今度私たちのこともちゃんと紹介してね」

 

「よろしくねいろはちゃん」

 

 

そうやって二人は二人なりに先輩のことを、私の好きな捻ねデレさんのことをちゃんと知りたいと願ってくれる。

 

 

「うん、そのうちね!あ、でも先輩のこと好きにならないでよー?ただでさえ強敵揃いなんだから…」

 

 

そしてわたしは今一度、この二人に話してよかったなぁと、心から思った。

 

 

 

   × × ×

 

 

 

ギリギリお弁当を食べ終わった頃に昼休みが終わり、そのまま午後の授業も問題なく過ぎて行った。

放課後、生徒会室で待っていたわたしを先輩は約束通り迎えに来てくれた。

 

「なんかやけに静かだな今日は…」

 

隣を歩く先輩が、ふと疑問に思ったんだけど、という感じで呟いた。

静かというのは、学校がではなくわたしのことを指しているのだろう。

生徒会室を出て鍵を返しに職員室へ行き、そのまま奉仕部の部室に向かう間、まだわたしは一言も言葉を発していない。

だがその静寂も、居心地の悪くなる沈黙ではなく、どこか心地良い雰囲気を作り出してくれる。

 

「たまにはこういうのもいいじゃないですか~」

 

「…まぁそうだな」

 

先輩も同じだったらしく、わたしたちは二人でその暖かな空気を共有しながら足を進めた。

 

特別棟に入ったあたりから生徒の数も減り、わたしたちの周りだけでなくその場全体が静寂に包まれる。

 

廊下にはリノリウムの床を鳴らすわずかに高さの違う二人分の足音が、同じピッチで重なり合って響いているだけだ。

 

何も言わずに歩幅を合わせてくれる先輩の優しさが、音を伝って体中に響いてくるように感じる。

 

やっぱりたまにはこういう静寂も悪くないな、と改めて思う。普段のわたしからは全く想像できない雰囲気だけどね。

 

 

もう少しだけこうしていたい...。

 

 

しかし、そう遠くない奉仕部の部室へはすぐに着いてしまい、ささやかな幸せはしばしお預けになってしまった。

 

先輩が半歩前を行き、部室の引き戸を開けると、それに気づいた中の二人はいったん会話を止める。

 

「あ、ヒッキー!いろはちゃんも、やっはろー」

 

「こんにちは。一色さんは今日も来てくれたのね」

 

「結衣先輩、雪ノ下先輩、こんにちは~」

 

「おう。悪い、遅くなった」

 

せ、先輩が自らナチュラルに謝罪を…。

 

「別にかまわないわ。…それより、昨日はちゃんと一色さんの話を聞いてあげたのかしら」

 

二人分の紅茶を淹れながら、雪ノ下先輩は先輩に問いかけた。

わたしの、はなし?

 

「おう。今日一色はその話も兼ねてきたんだと」

 

あぁ、なるほど。

昨日の放課後突如二人きりになってしまったのは、どうやら雪ノ下先輩の意図するところだったらしい。

 

やっぱり雪ノ下先輩はすごいなぁ。

 

こんな人がライバルだなんて、いくらわたしでも勝てる気がしない...。

 

て、弱気になってる場合じゃないよね!

勝算がないからって諦められるほど、この気持ちは軽くない。

 

「それで一色さん、話というのは」

 

「あ、はい。実はですね......」

 

 

 

   × × ×

 

 

 

「…というわけなんですけど、どうですかね?」

 

どうですかね、と言ってみたもののこの二人が却下するとは正直思わない。

問題はその次なわけで…

 

「いいじゃん!うん…すごくいいと思う!」

 

結衣先輩が、うんうんと頷きながら賛同してくれる。

その純粋な笑顔は、見ているこっちまで暖かくなるような不思議な力がある。

 

「ええ、そういうことなら喜んで部室を提供するわ。私も小町さんや城廻先輩にはこの一年、随分お世話になったもの」

 

そう言ってくれると嬉しいです!

嬉しいんですけど…

問題はこれからなのだ。

 

...。

 

少し不安になってつい先輩の方を見てしまった。

 

慌てて目を逸らしたわたしの姿は、目の前にいる雪ノ下先輩には不自然に映ったみたいです。少し訝しげに眉根を寄せて、雪ノ下先輩が問うてくる。

 

「まだ何かあるようね。それに、その内容なら昨日のうちに話しづらかったことへの理由付けがなってないもの」

 

うぅ…。

 

やっぱり雪ノ下先輩にはいろいろと見透かされているようで、そのことが余計にこの後の話題を打ち出すのをためらわせる。

その話題を出して雪ノ下先輩が不機嫌になるとか、そういうことはないと思う。だけどこれまで奉仕部と関わってきた中で、はるさん先輩が絡んだときに何とも言えない違和感を感じることがあったのは事実だ。

そのことを思い出すと、今から自分がこの空間に歪を生じさせてしまうのではないかと悪い想像ばかりが巡ってしまう。

 

 

やっぱりここで言わない方がいいんじゃないかな…。

 

 

そんな消極的な考えがちらつき始めたとき、いつの間にそこにいたのか、先輩がわたしのすぐそばに立っていることに気が付いた。

 

 

「まぁ、そんなに考えすぎるなよ。大丈夫だ」

 

 

ぽす…と、先輩の言葉とともに暖かい感触がわたしを頭から包み込んだ。

 

突然訪れた心地良い感触に、目をぱちくりさせながら呆けていると、先輩が慌てたようにわたしの頭から手を放した。

 

名残惜しいという感情が前面にでていたはずのわたしの目から逃れるように、頬を掻く先輩の姿がそこにあった。

 

 

「あ、いや、すまん…つい小町用接待スキルが…」

 

 

言い訳をしながら赤くなる先輩は、どこまでもいつも通りで、不安に駆られていたわたしの心をゆっくりと溶かしてくれるような温もりがあった。

 

大丈夫、と先輩に一言そう言われただけなのに...。

 

...。

 

よし…!

 

と、先ほどの先輩とのやり取りを黙って見ていた雪ノ下先輩に向き直る。

 

もう、逃げない。

 

 

「その…はるさん先輩も呼ぼうと思うんですよ、城廻先輩もその方が喜んでくれると思うんですよね!」

 

 

…。

 

やっちゃったかな…。

 

 

「あー、めぐり先輩と仲良かったもんね!」

 

「そういうことね...。それでは、私が姉さんに連絡を入れておけばいいかしら?」

 

「え、え?」

 

「別に驚くことではないわよ。家族なのだから」

 

「え、ま、まぁそうですけど…」

 

あれ?全然頭が付いてこないぞ…?

 

先輩はというと、だから言ったろ?という顔をして少しにやついている。ちょっとキモチワルイ。

 

そうやって私が混乱している間に、話はどんどん進んでいく。

 

「あ、それならさ!大志君も呼んだらどうかな!お姉ちゃんも総武高校なんだし、来年から小町ちゃんと同じでここに入学するんだよね?」

 

「おいまて、却下だ。姉はともかくあのひっつき虫だけは小町から遠避ける必要がある。断固拒否だ」

 

「…ならそちらの連絡は任せて構わないかしら、由比ヶ浜さん」

 

「うん!任せてっ!」

 

「…スルーですか、さいですか」

 

 

…なんかもう、わたしの気持ち返してくださいよー!

 

うぅ…色々想像していた自分が恥ずかしくなります。

 

 

「場所はここでいいとして…いろいろ用意する必要がありそうね」

 

「んーそれなら、食べ物とか用意して、なんかパーッとやれる感じがいいと思う!」

 

「そうね、お祝い事なのだしどうせなら最大限楽しんでもらわないと」

 

 

よし!考えても仕方ない!

 

考えるのやーめたっ!

 

こうなったらもう何も気にする必要ないってことだよね!

 

 

「じゃあじゃあ、ケーキ焼くのとかどうですかね!」

 

「あらお帰りなさい一色さん。…その案、私も賛成ね」

 

あ、た、ただいまです...。

そんなにフリーズしてたのかわたし?

 

「ですよね!」

 

「それなら、調理室を貸出ししてもらった方がいいかもしれないわね。…そこの、えっと、ひ…比企…ひきが……。ガヤくん。もう小町さんにアポはとったのかしら?」

 

「おいこら、人を取り巻きのその他大勢みたいに呼ぶな。というかそこまで思い出したならくっつけるだけだろうが」

 

「…あらごめんなさい。いつも一人でいるあなたはその他“大勢”にすら属さなかったわね。失念していたわ。悪かったわね、モブガヤくん」

 

「モブのガヤとかさらに扱い酷くなってねぇかそれ…」

 

 

こういう軽口の応酬を聞いていると、本当にさっきの話のことなんて全く気にしていないんだな、って思いますけど…よくわかんないけどちょっと悔しいです。

 

ともあれ、わたしの杞憂に終わったのならよかった…

 

 

「で、どうなの?」

 

「ん。あぁ、13日なら空いてるみたいだぞ」

 

「そう、日曜日ね。それなら朝から準備して午後に開始、という段取りが妥当かしら。...午前中の調理室の使用許可を取っておかないといけないわね」

 

先輩たちも乗り気みたいですし、盛り上がりそう!

 

「それならわたし、料理手伝いますよ~」

 

チラッと先輩を見つつ...。

 

あ、目合っちゃった。

どうです?料理できるアピールですよせんぱい!

 

あ、目逸らされました。

 

向こうでボソッとあざとい言ってるの聞こえてますからね…むぅ。

 

「そうね、じゃあ一色さん、手を貸してもらえるかしら?」

 

「はい!まっかせてください!」

 

ここで先輩の胃袋を掴んでおいて、さらに妹さんにも家庭的な女だと思わせれたら一石二鳥ってわけです♪

 

「あ、あたしも手伝う!」

 

と、結衣先輩が前のめりで挙手している。

結衣先輩も先輩にアピールしたいのかなぁ。

 

あれ?でも、結衣先輩って…

 

「ゆ、由比ヶ浜さんはその人と会場の飾りつけをお願いするわ」

 

「ゆ、ゆきのーん!」

 

「会場設営は大切な役割よ。部屋の雰囲気が良くないと第一印象から楽しめないもの」

 

いや、それはちょっと苦しいんじゃ…

 

「ぜひ由比ヶ浜さんに、やってほしいの」

 

「っ、そ、そぉ?ならやろっかな…。うん、あたし頑張るよ!」

 

 

チョロかった。

 

結衣先輩チョロすぎですよ…。

 

まぁ、わたしも人のこと言えませんけどね?

 

「なんか結構おっきいイベントになりましたね!今から楽しみですよ!ね、せんぱい」

 

「ん?あ、あぁ。そうだな。俺も早く小町の喜ぶ姿が見たい」

 

「シスコンめ…」

 

 

そう言ってジト目を作って先輩を睨むわたしの心には、ここの部屋に入ってすぐのような不安は一切存在しなかった。

 

二月の寒さなどどこかに置き忘れたのか、春の陽気のようなこの部屋の空気は、無意識のうちに不安と緊張で固まってしまっていたわたしの心をゆっくりゆっくり溶かしてくれるようで、いつまでもこの温もりに浸っていたいと思うのでした。

 




いかがだったでしょうか!

この作品は陽乃さんを悪者扱いしちゃっている節があるのですが、自分は陽乃さん結構好きなので決してそういうつもりはありません笑

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