“冥府の炎王”コロナ・ティミル   作:冥府の炎王

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第9話

 

 

 新暦75年9月8日。振動破砕のグローブも完成しました。後は管理局に預けているデバイスを貰えば大会に参加できます。さて、着々と準備が進んでいる中、今日からお母様とお父様は仕事でお泊まりです。つまり、自由です。そんな訳で、今日はお庭でコロナの代名詞である、ゴライアスを作ってみようと思います。

 

『怒られてしまいますよ』

「問題ありません」

 

 セッテと一緒に庭に錬成陣を書き上げていきます。要らないかも知れませんが、最初は必要です。

 

「さて……躁主イクスヴェリアが命します。来て、ゴライアス!」

『何故私の名前なんですか?』

「なんとなくです」

 

 錬成陣から沢山の土が盛り上がり、巨大な人型を形成します。それは三メートルから四メートルはありそうな巨大ゴーレムです。

 

「ん、出来た?」

「駄目です」

『コロナ』

「ふんっ」

 

 魔力を込めて思いっきり殴ると、殴った場所が粉砕されて巨大な穴が開きました。その後、爆発炎上し、火柱をあげていきます。

 

「脆すぎます。劣化断空拳ごときでこれとは全然なっていません」

 

 手を振るって炎をかき消します。

 

『覇王の断空拳はごときじゃないと思います』

「ん」

 

 劣化ですからね。所詮は体格も出来ていない六歳の少女が、大人の断空拳をまねて放っているだけです。威力も押して知るべしです。

 

「再生、ゴライアス」

 

 直ぐに炎も取り込んで再生していきます。今度は少し赤いです。

 

「錬成、鋼鉄化」

 

 素材を土から鋼鉄へと変化させます。これで少しは防御力がましになるでしょう。

 

「武装、貧弱」

「ですね。では、取り敢えず両肩にバルカンと四連式ミサイルランチャーを設置し、両手にはダブルガトリングガンを設置しましょう」

「ん、名案」

『どこの戦術兵器ですか』

「いえいえ、この程度では駄目です。背中にアハト・アハトを装備させましょう」

 

 サテライトキャノンみたいに肩に担いで撃つスタイルです。

 

「太もも、ミサイル」

「そうですね。それも鉄板です」

「ちょっとまったぁぁぁっ!」

 

 声が聞こえてきましたが、気のせいです。錬成してしまいます。ゴライアスのサイズに合わせて、武装も大きいです。

 

「あの、イクスヴェリアさん?」

「なんですか?」

 

 振り返ると、そこには管理局の制服を着た二人の少女と女性が一人居ました。イクスヴェリアと言われたら、ちゃんと振り向いて返事をしないといけません。私とイクスは一つですから。

 

「あの、初めまして。私はスバル・ナカジマと申します」

「ティアナ・ランスターです」

「陸軍から来ました、ギンガ・ナカジマです」

「はぁ……それと私はコロナ・ティミルです」

「す、すいません」

 

 セッテは直に私の後ろに隠れました。

 

『どうしたんでしょうか?』

 

 わかりませんが、聞いてみましょう。

 

「それで、本日の要件はなんですか? 確か、離れて陸軍の人が護衛するとの事だったのですが」

「それが、その先日の件で担当の人が変わりました」

「先日? なにかありましたか?」

(わかってないみたいだよ、ティア)

(跳弾の雨にさらされたら普通は警護なんてしたくないわよ)

(だよね)

「……貴女達の模擬戦の件だが、それはいいです。今回、お母様から長期に家を空けるとの事で、私達が面倒を見るようにお願いされました」

「え? お断りします」

「駄目です」

「信じられません」

「これが証拠です」

 

 ギンガさんが通信端末を開いて、私に渡してくる。そこにはお母様が、笑顔で写っていた。

 

『2人にしたら、ものっすごく心配だからお父さんの知り合いのナカジマさんにお願いしたわ。お仕事があるそうだから、機動六課という所でお世話になりなさい。地上本部の方は公開意見陳述会で忙しいそうだから。それじゃあ、ちゃんという事を聞くのですよ。それと六課の人が付き添いなら、外に出る事を認めます』

「ちっ」

『コロナ?』

「いえ、わかりました。どうかご心配なさらないでください」

『そう、ならいいわ。それと庭はちゃんと戻していきなさいよ』

「っ⁉」

 

 冷や汗がだらだらと流れていきます。

 

『帰ったらお仕置きだから』

 

 そう言って、通信が切れました。

 

「これでわかりましたか?」

「はい。仕方ないのでいきましょう。ゴライアス、移動をしてください」

 

 命令すると、移動を開始しようとするのですが、間接が重量にもたずに崩れていきます

 

「『あっ、やばいです』」

 

 私と私にしか聞こえないイクスの声が同時に発せられます。ゴライアスは崩れた事で炎上します。それはつまり、たっぷりとセットされている弾薬に引火するという事で……私は慌ててセッテと一緒に地面に倒れます。

 

「え?」

「え?」

「やばいやばいっ、伏せなさい!」

 

 ティアナさんも理解したようで、皆で伏せます。その瞬間、銃弾がそこら中に発射され、大変な事になります。ただし、家も壁もベルカの術式で強化してあるので大丈夫です。外にもいきません。内部で急いでシールドを張って耐えるだけです。

 

「ふぅ、特殊弾でなくて助かりました。でないと大変な事になります」

『非殺傷設定になっていてよかったです』

「セッテ、大丈夫ですか?」

「ん、平気」

「よかったです」

「よかないわよ! なんつう危険な物を作っているのよ! 六歳児でしょ!」

「そうですか? 結界を貫通も破壊も出来ない程度の攻撃など大した事はありませんよ。ねー?」

「ねー」

「わ、私がおかしいの?」

「どうだろ? 私もわかんないよ。なのはさん達も凄い事してたし」

「普通におかしいですからね。それとこれ、管理局で預かっていたデバイスです。問題ないようだったので、お渡ししますね」

「ありがとうございます」

 

 受け取ったデバイスはリング状で、宝石を嵌め込む仕掛けになっています。ここに振動破砕のデバイスをセットします。これでいつで呼び出し可能です。どうせなら色んな武器を使いたいですからね。

 

「取り敢えず、泊まる準備をしてきます」

「では、お手伝いしますね。一人にすると逃げる可能性があると、言われていますから」

 

 流石はお母様です。娘の行動をしっかりと把握していますね。取り敢えず、トレーニングウェアと着替えやお泊り用の物を持っていきましょう。それと製作中のデバイス達も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やって来ました二度目の機動六課です。前は直に逃げ出したんですけどね。案内された部屋は何故か、大きなベッドが中央に置かれている部屋でした。

 

「……まさか」

「ここは私達の部屋だよ。大丈夫、私達が何が有っても守ってあげるからね」

 

 部屋に居たフェイトさんがそういって頭を撫でようとしてきますが、私は瞬時にバックステップで距離を取ります。

 

「断固拒否です! 一人部屋かセッテとの二人部屋を要求するのです!」

「駄目だよ。それに年の近いこの子も居るからね」

 

 フェイトさんの後ろから、ヴィヴィオが顔を出してこちらを見てきます。

 

『彼女は……』

『聖王オリヴィエのクローンです。ドクターからかっぱ……こほん。貰ったデータにありました』

『そうですか、聖王オリヴィエの……それにしては似ていません』

 

「それで、出来たらヴィヴィオとお友達になってほしいな」

「お断りします」

「ふぇっ」

 

 涙目になるヴィヴィオ。泣く子供はキライです。

 

「どうしても?」

「どうしてもです」

「でも、コロナはお友達が居ないって聞いたよ」

「ぐっ!? いっ、いえっ、セッテがいます!」

「ん、違う」

「セッテ!?」

 

 まさかのセッテからの否定に私の心はクリティカルダメージが。

 

「マスター。友達、違う」

「えっと、セッテちゃんは従者?」

「ん」

 

 こくこくと頷くセッテ。これは本格的に一人ですか!

 

『コロナには私がいますよ』

『そうですよね。イクスさえいれば問題ありませんね』

『脳内友達という奴です!』

『イクスぅぅぅぅぅっ!』

 

 確かに、私とイクスは二人で一人なので間違っていません。

 

「えっと、涙目にならなくても……」

「泣いていないもん」

「ごめんね。でも、ヴィヴィオと友達になればいいよ」

「……おねがい」

 

 ヴィヴィオが抱き着いて、上目遣いでお願いしてきた。

 

「だが、断る」

「ちょっ!?」

「うぇええええええええええんっ!」

「ヴィヴィオ、よしよし。コロナちゃん、どうして……」

「え、だって何れ戦う人ですから」

「戦うって……」

「DSAAか他の大会かは知りませんが」

「いや、ヴィヴィオは……」

「どちらにしろ、泣き虫は嫌いです」

 

 私は部屋から出ていきます。

 

「そうです、冥府の炎王に友達など不要です……」

 

 セッテがとてとてと付いて来ます。扉の前でお辞儀してから、しっかりと扉を閉めてまた付いて来ます。取り敢えず、セッテと手を繋いで探検し、何処かの部屋を占拠しましょう。

 

 

 

 

 良い部屋がありました。デバイスの制作機材も揃っています。ここを占領しましょう。扉のプレートにもコロナとセッテの部屋と書いて貼り付けておきます。まあ、占領するのですから、少しぐらいは仕事をしておいてあげましょう。

 

「さて、ゴライアスを完成させますよ」

「ん」

 

 まず、機体重量を支えられるだけの設計を考えないと。というか、砲台なのですから足など不要。キャタピラで問題無いです。いえ、そもそも限られたリングの中だと動く必要もないのでは? 上半身だけでいい気がしました。これはアレですか。偉い人にはわからないと言われるジオング現象という奴ですか。

 

「回転するくらいは必要ですね」

「ん」

 

 しかし、あれですよね。ヴォルテールとかとガチの喧嘩を出来るくらいにしたいですね。

 

「ルーちゃんやキャロちゃんに負けるのも癪です」

『怪獣対決?』

「ですです」

『ちょっと、見てみたいです』

「ふふ、任せてください。管理局本局でぱく……貰って来た動力炉のデータもあるので、それを再現してゴライアス・フルアーマーを作りましょう」

『ロボットは楽しみです』

「でも、これは乗れません」

『ロボットがいいです』

「それは別に作りましょう」

『やった。じゃあ、アーマドコアがいいです』

「そういえば、管理局でゲームをやっていましたね。コジマ粒子の再現は無理そうです」

『コロナなら、名前からして太陽炉でいいじゃないですか』

「もっと無茶ぶりが来たのです。ですが、ある意味可能ですね。木星までちょっといってきますか」

『いけるんですか?』

「無理……戦艦を作ればいけますよね。全部、ゴーレムのオートモードで」

『頑張ってください、期待しています』

「任せてください。イクスの為なら、ちょっとやそっとの無茶は……知識や技術はガレアの記憶からありますし、おや。意外に無茶じゃないですね。というか、そもそも太陽炉だって普通に作れそうな気が……ガレアにはブラックホールエンジンとか、反物質炉とかありましたし」

 

 取り敢えず、予定に書きこんでおきましょう。で、今はゴライアスです。戦闘機人のデータを使って、ロボットにしてしまいましょう。そうだ。ドムのようにホバー移動にしましょう。

 

「セッテ、強度計算をお願いします」

「ん、終わってる」

「流石です。えっと問題ないですね。よし、では後はガレアの術式をふんだんにつぎ込んで、呪術も使っていきましょう。生きていない分、呪いがとっても有効です」

「ん」

 

 そんな話をしていると、鍵を閉めた扉が思いっきり叩かれました。五月蠅いです。作業の邪魔なので、ヘッドフォンをつけて音楽をききます。セッテにもつけてあげます。

 

「私の力を見せましょう~。それはとても小さな力です~」

 

 あの時代からみたら、ガレアの中でも私はちっぽけな存在です。

 

 

 

『なに勝手に開発室占領しとんねん!』

 

 二時間くらいしたら、急に通信用のスクリーンが開いてはやてさんが怒鳴ってきました。

 

「え、流石に子供もいる三人の愛の巣に入る勇気はないです」

『違うから、違うからな! ちょっ、そこほんまに違うから! それはなのはちゃんとフェイトちゃんだけやから!』

 

 何か、他の管理局の人が後ろでひそひそと話しています。

 

『こほん。取り敢えず、そこの部屋は駄目や。仕事でつかうんやからな』

「むぅ、では二人部屋で……」

『キャロちゃんと一緒の部屋でええやろ。それなら、そちらの条件もあうやろ』

「それなら、いいです。その代わり、訓練施設使わせてください」

『まあ、ええか。殺傷設定は禁止やで。何故かONOF機能の設定が任意になっとったから、修正しといたけど、弄ったら駄目やで』

 

 くっ、修正されていましたか。無念。

 

『じゃあ、荷物はこっちで運んどくから、訓練場に行くとええで』

「はい。行くよ、セッテ」

「ん」

 

 必要な物は持って出て行きます。後ろから叫び声が聞こえてきますが、無視して訓練場に向かいます。確かこっちです。アニメでみました。もう、忘れかけですが問題ありません。

 

 

 

 

 

 

 海は広く、管理局の膿も酷い。なんて事を思ってしまいましたが、訓練場のシステムを教えて貰ったのでちょっとはっちゃけます。そろそろ禁断症状がやばいので。

 

「セッテはここでいてください。壊したら直してくれると嬉しいです」

「ん」

「では、お願いします」

 

 私は訓練場に作られたレイアー施設に入ります。海の上に都市を再現する素晴らしい技術です。ヘッドフォンとマイクをつけて、軍服になれば準備完了です。

 

「来い、ゴライアァァァァァァス!」

 

 指を鳴らしつつ、ゴライアス・フルアーマーを作ります。全長数十メートル。黒鉄製に無数の武器類。消費魔力はなんと170万。とんでもないレベルです。まさに黒鉄の城。ブレストファイアーはありませんが、ブラックホールエンジンを再現し……したかったのですが、まだ無理でしたので腹部を開いて撃つのは単なる魔力砲です。

 

「これより、動作チェックを行います」

『ん』

『楽しみです』

 

 一通り、歩いたりしてビルとかを殴りつけて破壊し、踏みつぶしたりした後、砲撃チェックに入ります。設置した武装はフルアーマーの状態のせいか、巨大化しているのでそれだけでもえげつない威力になっていました。街が一瞬で穴だらけに。ミサイルを撃つと更地に。

 

「火力主義、ここに極まれりです?」

『ガレアでは普通でしたよ』

「デスヨネー。セッテ、ここから本番の訓練です。結界をちゃんとお願いします」

『ん、任せて』

 

 ゴライアスを移動させ、海にいかせて一定の距離を歩かせると反転させます。

 

「ふふ、準備が出来ました。出でよ、ガレア軍!」

 

 海岸沿いに無数のアハト・アハトを設置。更に小型砲台と機械兵も設置していきます。さらに海に防壁を作って、これで完成です。

 

「防衛完了です。ゴライアスの操作を自動殲滅モードに30秒後移行」

(イクス、操っていいですよ)

『いいんですか!? ロボットですよ、ロボット』

「ええ。ではいきます。セッテ」

『ん、ゲームスタート』

 

 巨人ゴライアスがこちらに歩いて……こずにいきなり背中のアハト・アハトを装備。

 

「ちょ!?」

『開幕ぶっぱは基本ですよね、こ・ろ・な』

 

 こちらのアハト・アハトとの大きさは数十倍以上。威力もおかしく、一瞬で防壁を貫通させて一撃で都市深紅に染まって壊滅しました。私も吹き飛ばされてダウン。

 

「や、やりなおし! やりなおしです! 私はまだ撃てていません! だいたい都市防衛ごっこで、なんで上陸すらしないんですか!」

『最小の時間と資源で最大の戦果をあげるのが基本ですよ、コロナ。まだまだあまいですね』

「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃっ! そっちがその気なら、やってやるです!」

『受けてたちます』

 

 再度、防衛隊を生成します。魔力がごりごり削られます。駄目ですね、700万くらいの魔力じゃ一瞬で消えそうです。もっと増やさないと。でも、地上本部から出たからあてがないんですよね。あそこでは実験の名目で魔導炉から魔力を拝借して、私の生成量を徹底的に強化したんですけどね。痛みをカットしていなければ、何度廃人になった事やら。

 

『ゲーム、スタート』

「撃てぇぇぇぇっ!」

『撃ってください!』

 

 放たれる砲弾は圧倒的にゴライアスの方が大きく、こちらの弾丸は簡単に弾かれてしまいます。でも、砲弾をあてる場所と方向次第では軌道を逸らせられます。

 

『ゴライアス、ロケットパンチです!』

「そんなの無いはずです!」

『私が組み込みました!』

「だから予想よりも魔力消費が多かったのですか!」

 

 飛んでくるロケットパンチ。しかも、ダブルガトリングつき。弾丸をばら撒くちょっとしたビット兵器です。

 

「くっ、こんな豆鉄砲じゃ勝てないです!」

 

 轟音が轟き、硝煙の臭いと弾丸や砲弾が降り注ぐ地獄のような光景。私は走り周りながら、弾丸や砲弾を避けつつ壊されていく武器を修復していきます。

 

「ええい、こうなれば次元歪曲ミサイルでっ!」

『その前に倒します!』

 

『ヘイムダル』

 

 楽しく遊んでいると、急に温度が低くなり、声が聞こえた瞬間。空から巨大な氷山が降ってきました。それは受け止めたゴライアスを押し潰すほどの質量で汗と涙の結晶、ゴライアスが沈んでいきました。

 

『私のゴライアスが……』

 

 イクスを気にしている暇はありません。何故なら、空にとっても怖い人が居るからです。

 

「なあ、私は確かに訓練場を使ってもええといったけど、ここまでしていいなんていってへんで?」

「どこまでなんて、きいてない、です」

「それでもな、限度ってもんがあんねん。ミッドチルダの方から轟音が多数轟いているが、何事だって地上本部から多数の苦情がよせられてんけど。だいたい、なんでこんな事でリミッターを解除せなあかんねん!」

 

 降りて来たはやてさんにほっぺたを思いっきり抓られる。

 

「にゃにをしゅる~」

「そんなに戦いたいなら相手したるわ。やけど、覚悟しいや」

「ふぇ?」

「幸い、今日は私も隊長達も暇があってなぁ……」

「ま、まさか……」

「うん。ちょっとおいたがすぎるね」

「これは、やりすぎかな」

「ふむ。楽しませてもらえそうだ」

「あの時の借りを変えさせてもらうぜ」

 

 隊長四人にはやてさんとか、とっても凄いメンバーなんですけど。

 

「私も参加しよう」

「私も」

 

 ザフィーラさんにシャマルさんも追加。これは楽しみです!

 

「機動六課の隊長陣が相手したるわ。ああ、安心してええで。私以外はリミッターありや」

「あはっ。本当にいいんですか? 私相手にリミッターなんかつけた状態で」

「やる気まんまんだな」

「あながち嘘とはいえん。油断するな。相手は……冥府の炎王イクスヴェリアだ」

「ああ」

「もちろんや。じゃあ、配置につこうか。ルールは簡単や。準備時間をあげるから、用意できたら言ってな。こっちの方が人数おおいから、ハンデや」

『あの、コロナ……ハンデとかいってますけど、この人』

(うん、魔導炉のバックアップうけてますね)

 

 流石はこたぬき、汚いです。

 

「後悔させてあげますよ」

 

 離れた位置で、とりあえず準備をする。

 

『ところで、コロナ』

「なんですか?」

『魔力、もうほとんどないんじゃ……』

「あっ。ど、どうしよう、イクスっ」

『どうしようもないのでは?』

「あのたぬきめぇぇぇぇぇっ!」

 

 どうしてくれようか。確かにリミッターを解除させたのは悪いけれど。

 

「でも、せっかくのチャンスだし。うん、殺ろう」

『コロナ?』

「ごめん」

 

 フェアリーソードを複数を召喚して立体魔法陣を形成する。この魔法で撒き散らかされた魔力をミッドチルダの街からも集める。更には海の生物からも強制的に魔力、魂の一部を徴収する。

 

「幾億幾千と屍を城築上げてきた、ガレアの力を見せてあげましょう」

 

 たのしい戦争の時間です。

 

 

 

 

 

 

 

「……はやてちゃん」

「どうやら、まじもんの魔王みたいやね」

「大規模な収束魔法だけじゃない。シャーリィ」

『はい。海で魚が浮いて来たりしています。どうやら、生命力も吸収しているみたいです』

「こんなのをミッドチルダ全域でやられたら……」

「できねえんじゃねえのか? 流石に……」

「いや、収束の方が出来ているのなら、おそらくこちらも出来るだろう」

「ガレアって本当に恐ろしい所なんだね」

「というか、これは魔女の術式だな。魂を操るのはやつらの専売特許だ。ガレアはその技術も吸収しているというだけだ」

「魔女も参加してやがったからな……」

「だが、どちらにしても長くは持つことあるまい。奴の身体は六歳の少女のものだ」

「確かにそうだね」

「駄目だよ。それだったらコロナちゃんが死んじゃう」

「ならば、行くしかないだろう」

「どうやらあちらは準備できたみたいや。カウントダウン開始や」

 

 

 

 

 

 

 時間がないので、カウントダウンが終わると同時に着弾するようにミサイルをたっぷりと放つ。ゴライアスや、列車砲、カノン砲も砲撃させる。私は移動しながら。

 しかし、流石は隊長陣。瞬く間に機械兵が殺され、ゴライアスも潰されていく。私の居るところまで直ぐに来るだろう。

 

「おらぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ヴィータさんが実際に飛んできた。大きなハンマーで容赦なく叩いてくる。私はハンマーの先端に触れて、軌道をずらす。

 

「うにゃあぁああああああああぁぁぁぁっ!」

「奇襲で声を出すとか、馬鹿ですか。ねえ、シグナムさん」

「まったくだ」

 

 斬りかかられた剣を掴んで止めて、刀身を振動破砕で粉砕する。同時に足元に小型の砲塔を作って、砲弾をプレゼントする。私の運動能力はともかく、反応速度と技術はベルカの近衛騎士なみですよ。頑張ってプログラムしましたから。

 

「何っ」

「これぞ天地魔闘の構えです……な~んて」

「ふざけやがって!」

「馬鹿者、不用意に近付くなっ!」

「そうですよ、そこは私の領域です」

「え?」

 

 ヴィータさんの足が、地雷を踏み抜いて吹き飛んでいきました。空中に機関銃を生成して追い打ちをかけます。

 

「喰らい潰しなさい、バーストイーグル」

 

 マリアージュの小型戦闘機が彼女達を狙っていく。嫌な気配がすると、身体が勝手にしゃがむ。すると、そこを雷の大剣が通りすぎていく。瞬時に後ろにはねて、フェイトさんの腹部にずつきをくらわせる。

 

「本当に強いね。でも、王様の戦い方じゃないよ?」

「……確かに。参考にした人が駄目でしたか。では、こちらです」

 

 無数のフェアリーソードを召喚して、フェイトさんに放つ。彼女と戦うとなると、速さからまともに相手はできない。その性格と特性。筋力の付き方、頭のでき、今までの戦闘データから動きを予測して、フェアリーソードと砲弾、銃弾で逃げ道を防いでいく。

 

「くっ」

 

 強引にダメージを負いながらも突撃してくるフェイトさん。私は剣を構えて向かいうつ。こららに駆け抜けてくるフェイトさんの進路を予測して、後方で爆発を起こして感覚をくるわせる。連続した爆発の衝撃は身体を揺さぶって五感を崩してくれる。そこに剣を捨ててマグナムの銃弾を叩き込む。額に命中したフェイトさんは吹き飛んでいく。追撃に空からバーストイーグルを突撃させ、自爆させる。

 しかし、なのはさんのスターライトブレイカーがゴライアスを瞬殺し、空からヘイムダル・ファランクスシフトが降ってくる。味方事。

 

「でも、今からなら逃げられます」

「させません」

「ああ、させぬ」

 

 緑の光と、鋼鉄の鎖が私を拘束する。何時のまにか、そこにはシャマルさんとザフィーラさんが居た。

 

『狼さん……もふもふしたいです!』

 

 確かにしたいですね。あとでさせてもらいましょう。

 

「これで終わりです、イクスヴェリアちゃん! だから……こ」

 

 何か勘違いされています? まあ、どうでもいいですね。既に勝てなくても引き分けには持ち込めますから。

 

「いいえ、まだですよ。最初からあなた達の道は途絶えています」

「なに?」

「私に準備させた事。それこそが失敗でしたね」

 

 埋立地の下に海の中を通して、突き立てた無数のフェアリーソードが起点となり、大規模な魔法陣を形成する。他にも町中に埋め込んだフェアリーソードが魔法陣をつくりだし、一つの立体魔法陣を完成させる。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が(イクスヴェリア)の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!」

『間違っていません! 間違っていませんけど!』

「知りません」

 

 莫大な量の熱量を持つ炎が繰り出され、フィールド全てを焼き払う。まるで地獄の業火のように。いえ、呪いの術式も入っているので間違いではありません。

 

「しかし、串刺しにできないので、完全に再現するのは無理でしたね」

 

 吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)はジャンヌダルク・オルタが使う宝具、必殺技です。この人も基本的に丁寧な言葉で話す上に煉獄の炎使いなので、私とあっています。

 

「さて、いきますか」

 

 バインドを粉砕し、倒れている二人にとどめの銃弾を叩き込んで、進んでいきます。

 

「させるかよ。はやての所には絶対にいかせねぇ!」

「ああ、そうだ」

「まだ立ちますか。見上げた忠誠心です。では、ご褒美をあげましょう」

「何?」

「え? 避けろっ、シグナム!」

「なっ!? がぁっ!?」

 

 ヴィータを()()、シグナムを攻撃させる。ヴィータさんからの攻撃はないと油断したシグナムさんはあっさり、直撃を受けました。

 

「なんで、なんでだよ! 解除されたはずじゃ!」

「何を言っているんですか。ちゃんと言いましたよ。時間が経てば解けると。それが何時解けるとは私は言っていません」

「ちっ、ちくしょぉおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ! お前なんて大っ嫌いだ!!」

「私は好きですよ。おちょくりがいがあって」

『コロナ、凄いノリノリで悪役しています』

 

 吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)なんて撃ったせいで、竜の魔女さんみたいになってしまいました。

 

(駄目ですか?)

『いえ、そんなコロナもカッコよくていいですよ』

「ありがとうございます」

「て、てめぇっ!」

「ああ、貴女は私の操り人形らしくそこで遊んでいてください」

「まて、まてぇええええぇぇぇぇっ!」

(ここで爆弾を持たせて特攻させるのは、流石に可哀想ですしね)

『それは駄目ですよ』

(わかっています)

 

 てくてくと、剣と銃を持って灼熱の煉獄の中を歩いていく。もう、回復した魔力もほとんどありません。残った兵器軍は機械兵が数体と、グローブ。それに今、持っている剣と銃だけです。しかし、敵はまだ高町なのはさんと八神はやてさんが健在。本当に、絶望的です。もう、用意した切り札は後一つしかありません。

 

『コロナ、代わりますか?』

「どうしましたか?」

『私も、少し戦ってみたいです』

「構いませんよ。でも、この状態ですよ」

『コロナ、私は冥府の炎王です。初代の力を見せましょう』

 

 私とコロナが入れ替わる。イクスは服装もガレアの民族衣装みたいなのに変えて、悠然と歩いていく。その後ろから……いえ、壊れて入って来た海水から、無数のマリアージュが産まれてくる。それは、私が魔力欲しさに殺した魚達だ。その死体が変形し、人型へと変化する。それはまるで深き者共のようで、SANチェックを要求されそうです。

 

「さぁ、行ってください。イクスヴェリアが命じます。我が騎士達よ、敵を討て」

「「「躁主の御心のままに」」」

 

 マリアージュ達が崩壊した都市を埋め尽くすように、狙っていく。お二人は、流石に私の全力の一撃を受けて、飛行できなくなったのか、地面で互いに背中を預けて戦っていました。そんな姿を近くの盛り上がった道路の端に腰かけながら、イクスヴェリアが優雅に見ています。その近くには護衛の機械兵達がいます。このまま、二人の魔力が切れるのを待つのでしょうか?

 

『イクス、攻撃しないのですか?』

(コロナ、勘違いしていませんか? 私、攻撃魔法なんて覚えていません!)

『そ、そうでした』

「私にできるのはマリアージュ達を産みだして、命令を下すだけです」

 

 楽しそうに指揮して、追い詰めていくイクスを見ていると、やっぱりガレアが生んだ冥王様だなあ、と思いました。

 

「余裕のつもりか!」

「でも、このままじゃまずいよ、はやてちゃん。魔力がもう……」

「なのはちゃんはリミッターがかなりかかっているから……」

「王を甘く見るからそうなるのです。この程度、ベルカではよくある光景でした」

「今はそんな時代じゃないよ!」

「それは……」

『イクス、後ろからなんか来てる!』

 

 イクスが振り返る前に、その刃がイクスの首に届く。はずでしたが、あっさりと機械兵が身代わりになって、抱き着いて自爆しました。

 

『機械兵、ぐっじょぶ!』

「フェイトちゃん、大丈夫!」

「いたたた、なんとか……」

 

 突撃してきたのはフェイトさん。雷光の悪魔とかよばれそうですよね。

 

「大人しく寝ていればよかったのに……」

 

 イクスが悲しい顔をします。というか、皆さん……これ、模擬戦ですよ? イクスも結構ノリノリのようですけど。

 

「ママたちをいじめるなぁあああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」

「ひぐぅっ!?」

 

 そんな事を思っていたら、どこからともなく、ヴィヴィオが降ってきて、イクスの顔面に蹴りを叩き込みました。というか、私の身体なんですけど。

 

「きゅう~」

『イクスっ、イクスっ! おのれ、聖王ぅうううううううううううううぅぅぅぅっ‼‼』

「ヴィヴィオ。大丈夫!?」

「ぶい!」

 

 塞がっていく視界の中、上を見るとフリードに乗ったキャロとエリオが居ました。つまり、あそこから飛び降りて蹴りを入れてくれたと。断固として許しません。後で虐めてやるんだから!

 

 

 

『勝者、コロナ・イクスヴェリアチーム。管理局チームはレギュレーション違反』

 

 

 

 

「……あ、これ模擬戦だったね」

「せやった。ちょっと忘れとったわ。しかし、リミッターなしの私と隊長陣にシャマル達も合わせて勝てへんとは……ほんまに化け物やね」

「あの、言いにくいんですけど……」

「なんや、エリオ?」

「彼女、色々と準備してましたよ。建造物とかに設置したり。特に最後の方の炎の柱は……海の中を剣を通して複雑怪奇な魔法陣を作っていました」

「……」

「言われたよね。甘く見るなって。これははやてちゃんの失策じゃないかな~」

「私が、わるかったんか……」

「うわぁぁぁん、はやてぇえええええぇぇぇぇっ!!」

「おお、ヴィータ」

「助けて!!」

「なんや、模擬戦は終わったで?」

「ち、違う、シグナムから!」

「え?」

「ヴィータぁぁぁぁぁぁっ!」

「ああ、うん。ごめんな」

 

 

 

 

 

 

 


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