“冥府の炎王”コロナ・ティミル   作:冥府の炎王

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第6話

 私、コロナ・ティミルはミットチルダの屋上。給水塔の上で寝転がりながら日向ぼっこをしています。

 

「いい天気です」

『そうですね~』

 

 そんな風に時間を潰していると、地面がぐらぐらと揺れて叫び声が聞こえてきます。

 

「イクス」

『大きな召喚獣が地震を起こしているようですね』

「じゃあ、もう少しですね」

『ここも崩れる可能性がありますよ』

「ちっ」

 

 寝転がったまま、掌を床に触れて魔力を流します。私の周りに複数のベルカ式魔法陣が浮かび上がります。

 

「アクセス」

『目標付近の砲塔と視界をリンクします』

 

 直ぐに回りの景色が変わり、七個の画面が映し出されます。そこには虫型の大きな召喚獣が雷を纏いながら暴れています。

 

「イクス、チャージはどうですか?」

『問題ありません』

「では、実験(戦争)を始めましょう」

 

 空中に拳銃の形をしたトリガーが出現する。リンクされた視界の先では、仕掛けておいた術式により、七つの砲塔が生成されていく。私は拳銃を手に持って寝転がったまま、空に向かって引き金を引く。すると、遠くで轟音と共に弾丸が発射される。

 巨大な虫は弾丸を喰らってよろけるけれど、たいしたダメージは入っていないようで、命令を忠実に実行している。

 

「やはり、ただの迫撃砲では駄目ですね」

『弾丸が悪いのですか?』

「そうでしょう。ですが物から変えましょう」

 

 魔力を流して、砲塔を再構築させます。作ったのはもちろん、口径150mmのカノン砲であるK18です。小型より、やはりこちらがいい。次に弾丸は普通のを使うのではなく、魔法を使って面白いのを作ります。まず、先端をドリルの形状に変化させ、内部に可燃液と爆弾、マリアージュのコアを配置。その上にモーターをセットして発射後も高速回転を行うようにします。バンカーバスター……いえ、ドリルを元に高い貫通力を持たせて対象の内部へと侵入。そして、内部から爆発させます。

 

「完成です。撃ってください」

『撃ちます』

 

 イクスの言葉と同時に砲撃が開始されます。先程のよりも口径が大きく、弾丸も大きいです。着弾後、モーターが焼き切れる勢いで更に高速回転して、虫の硬い皮を突き破って内部へと侵入していきます。

 

「起爆してください」

『可哀想ですが……』

「仕方ないですね」

『コロナ……』

 

 虫の悲鳴が響く中、私は容赦なく起爆スイッチを押す。七つの爆弾を体内に潜り込まされた虫は盛大に爆発しました。

 

『こ、コロナ……』

「実験対象に感傷など無用です。ただの的なのですから。どちらにしろ、これで静かになりましたね」『 』

「失礼な……といいたいですが、否定はできませんね。でも、大丈夫です。イクスが居てくれれば、私は大丈夫です」

『そうですね。私がしっかりしないと!』

 

 イクスが行き過ぎた私のストッパーとなってくれるでしょう。何個か考えた物はイクスに却下されていますし。マリアージュのコア自体の強化とか。圧縮を行い、密度を増やしてコアの内部に核融合を再現するというのは禁止されました。世界に核の炎を……といった感じで案だけはだしたのですけどね。作る気はありませんでしたけれど。

 

「ハレルヤ」『 』

「いえ、イクスに感謝をしておこうと思いましてね」

『?』

 

 起き上がり、俯けに寝ながら今度は手元にアンチマテリアルライフルを生成します。スコープを覗きつつ、ポテチの袋を開けて食べていきます。

 

「イクス、イクス」

『なんですか?』

「穴蔵から獲物さんが慌てて出てきました」

 

 スコープではルーテシアが外に出てきて、高速道路に逃げた所で捕まっていました。何故か虫の死骸を持って泣いています。なんででしょうか?

 

『コロナが殺したからじゃないですか?』

「虫ですよ? 虫なんて踏みつぶしたり、引き裂いたりしてなんぼの奴ですよ」

『コロナ、虫は嫌いですか?』

「嫌いです」

 

 とりあえず、あちらは放置です。目標を近くを飛んでいるヘリコプターに変えて、その辺りを観測します。ヘッドフォンをつけて、機械に繋いでスイッチを入れます。

 

「熱探知と超音波探知を発動します。イクス、隠れている獲物を識別してください」

『はい。対象は……いました。今、表示します』

 

 おばさんと砲を構えている女性が視界に映し出されます。幻影で隠れていい気になっているおばさんの頭部へと照準を合わせます。

 

「コロナ・ティミル。狙い撃ちます」

『? どうぞ?』

 

 ロックオンさんの真似をしつつ、引き金を引くと肩がはずれました。痛……くはないです。痛覚を切っているので。しかし、六歳の少女が撃つような物じゃないですね。

 

「ヒットです、コロナ」

『凄いですね、流石はコロナです』

「えへへ」

 

 肩を嵌めてから起き上がります。砲の子が射線をこちらに向けていますから、さっさと逃げます。それに怖い人達も来るでしょうから。それに次の仕込みもあります。

 

「忙しい、忙しい、です」

『コロナ、次の予定は止めませんか? 危険すぎますし、恥ずかしいです』

「やです。王の軍勢(ガレア軍)を完成させるのには必要な物ですから」

『危険になったらすぐに撤退しますよ』

「あは~」

『コロナっ!』

「わかっていますよ、イクス。ここはあくまでも通過点なんですから」

『まったくもう! ところで、大量に設置した砲はどうするのですか? 錬成はしていませんが』

「それは今の所、必要がないので放置です」

 

 まあ、最終戦では使えるでしょう。使えなくても放置しておけばいいのです。ああ、召喚術を覚えたいですね。ルーちゃん、教えてくれないでしょうか? 多分、無理そうですよね~。キャロさんに頼みましょうか。

 

 

 

 

 

 

 


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