“冥府の炎王”コロナ・ティミル   作:冥府の炎王

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第2話

 

 幼い子供だからか、驚異の魔法技術だからかはわかりませんが、リハビリが二ヶ月で終わり、私は家に軟禁される事になりました。何をしでかすかわからないからだそうです。やれやれ、過保護な両親です。まあ、修行は家の中でもできるので問題ありません。

 デバイスに魔力の負荷をかけた状態で五体の完全操作による生活を行えば、普段の生活が修行になります。それにこの状態で筋力トレーニングのプログラムを組めば、勝手に身体がやってくれます。痛みはカットして生活すれば問題ありません。もちろん、デバイスに警告表示を出させるようにして、治療も適度に行います。

 これが退院してからの私の日常です。そして、ここにいよいよゴーレムクリエイトを行います。まず作るのは剣のゴーレムです。並列思考は既に習得していますが、流石に剣術とかは知らないのでそこは習いましょう。もちろん、勝手に。

 さて、この剣はお気づきかと思いますが、王の財宝ことゲート・オブ・バビロンに似せた魔法を作る為です。

 

「壊れてもいいので、内部構造にマリアージュの燃焼液をたっぷりと注入します」

 

 声に出しながら、しっかりとイメージをして剣を作り上げる。それを操作してみますが、速度が足りません。カズマさんのアニキさんも言っていたように速度は大事です。となると、いっそ後方でも爆発させて加速させしょう。ゲートの女の子がしたみたいに。銃と同じ感じで打ち出せばいいのです。これをするとほとんど射角は直線に固定されてしまいますが、一応操作出来るように訓練しましょう。どちらにしろ、着弾したら内部から爆発させて燃やしてブロークンファンタズムにするのです。

 作ったのはなんですが、これはまだ使えません。流石に家の中で実験する訳にはいかないので、次です。無数の剣を作り出して操作する練習です。この剣の名前はフェアリーソードにしておきましょう。妖精の剣。マリアージュという名の可愛い妖精さんが炎獄に案内してくれるでしょう。

 取り敢えず、目標は剣の乱舞です。後は自動迎撃プログラムも作らないといけません。これは歴代のベルカの騎士達の剣術をイメージすればいいでしょう。

 

「コロナ、ご飯よ~」

「は~い」

 

 下に降りると、お母様が私の身体を触ってきます。それどころか、服を脱がして確認していきます。

 

「内出血しているじゃない。こっちは打ち身ね」

「ごめんなさい」

「なんで家にいてこんなに怪我をするのかしら……」

「家の中で運動しているからですね。だから、外に……」

「駄目です」

 

 お母様に治療して貰ってから、お昼ご飯を食べます。ご飯の後はお母様にデバイスの勉強を見て貰います。

 

 

 

 三時になるとおやつタイムです。それが終ればお母様の監視下でなら庭で遊ぶことは許可されているので、遊んでいる風に見せかけて訓練します。やるのはテニスです。ラケットを持って壁にボールを叩き付けて跳ね返ってくるのをひたすら打つという物です。これによって反射神経と操作制度が鍛えられます。ちなみにどんどん玉を増やしていき、両手でラケットを持って行います。

 

「コロナはどこを目指しているのかしら……」

「最年少で公式魔法戦競技会の世界最強です」

「頑張るのはいいけれど、無茶はやめてね?」

「善処します」

「この子は……」

 

 こんな感じで魔法面も肉体面も鍛えていきます。

 

 

 

 

 六歳になり、小学校に入りました。St.ヒルデ魔法学院初等科です。主席で入る事がお母様が外に出る事を許可してくれる条件だったので、主席を取ってあげました。そうしたら、なんとも言えない顔をしていました。まあ、既にデバイスマイスターの資格は所持しているので学校にいくなんて思わなかったのでしょうけど。でも、コロナはお外に出たいの。ちなみに学校は必要な授業以外、ボイコットします。いえ、一応は身代わりとして私そっくり……というか、私の身体を使った身代わりを用意しました。中身がイクスなだけですからばれません。多分。そう、イクスヴェリア。一年が経つと同時に起きてきたのです。もっとも、身体はないので私の身体を使わせてあげています。本人は悪いと思っているようですが、私は小学校の間はデバイスで作った訓練空間……精神世界に潜って必死にプログラムを作っています。

 

「今こそ、我等が奮起の時ぞっ!」

「憎き聖王国の者どもを滅ぼすのだ!」

 

 私の精神世界はベルカの戦乱の時代を記憶から再現しています。これは、戦闘データをネフィリムフィストに取り込み、かつゴーレム兵にも使っていきます。

 

「ふふふ、ここは私にとって宝の宝庫です。なにせ、一番の敵であるエレミアのデータすら手に入るのですから」

「いいのですか? 何か、子供が見るにはすごく悪影響がある場所なのですが……」

「問題ありません。それよりもどうしましたか、イクス」

「問題がわかりませんっ」

「仕方ないですね」

 

 入れ替わると、黒板を前にしていました。

 

「コロナさん、どうしましたか?」

「いえ、なんでもありません」

 

 すらすらと問題の解説と答えを書いていく。これは中に居るイクスにも説明するためです。

 

「証明終了です。どうですか?」

「ま、間違いはありません。ここまで詳しく書かなくてもよかったのですが……」

「先生の手間を省いてみました」

「あ、ありがとうございます。席に戻っていいですよ」

 

 席に戻って、イクスと入れ替わって元の作業に戻ります。

 

「ありがとうございます」

「いえ、成績が下がると困るので。むしろ、イクスが楽しんで変わってくれていて助かります」

「あはは、こういうのは新鮮ですから。もっと勉強したいです」

「では、引き続きお任せします」

「はい」

 

 イクスが消えたので、このベルカの世界でデータの収集を再開する。ある程度収集できれば、聖王陛下のデータと私自身が戦う。私の稚拙な操作技術は彼女の巧みな操作技術が大変勉強になります。完成した暁には、あのセリフをエレミアとヴィヴィオに宣言してあげましょう。

 

 

 

 小学校が終わり、イクスと入れ替わって帰宅します。ただし、走りながら海辺の砂浜に移動します。人気の無い砂浜に到着したら、結界を展開して内部を外がわからなくします。

 

「イクス、結界の維持とかをお願いします」

『任せてください』

「では、いきます。フェアリーソードα」

 

 まずは普通に放ちます。速度はだいたい時速40キロくらいです。全然遅いです。ですが、海面に衝突させると仕掛けた爆破術式が起動して、剣の内部にある大量の燃焼液に引火して爆発を起こします。

 

「威力が全然たりませんね」

『えっと、そうですか?』

 

 海面に炎が残る程度では駄目です。次。

 

「フェアリーソードβ」

 

 次の剣は持ち手の部分にも爆発術式と燃焼液を仕掛けてあります。起動するとαとはくらべものにならない速度で、海面を吹き飛ばしながら爆発しました。

 

「やはり、こちらの方が威力が高いですね」

『殺す気まんまんですね』

「そうですか? 目的とするものにはまだ火力がたりません」

『どこまでやる気なのですか!』

「戦争は火力ですよ、イクス」

『DSAAは戦争じゃなかったような……』

「いえ、古代の覇王や聖王、エレミアと戦うのですから、戦争です」

『私はそんな事を望んでいませんが……』

「私、コロナが望んでいます」

『はやまりました……』

「まあ、流石に殺し合いはしませんよ。ちゃんと競技の中でです」

『本当ですか?』

「もちろんです。たぶん」

『今、たぶんっていいました!』

「未来は未定ですからね」

 

 そんな話をしながら、少し考えたとっておきを作ります。

 

「フェアリーソードγ」

 

 作った剣は更に改良式で、爆発させて加速させます。着弾と同時に燃焼液に満たされた中に圧縮された酸素が爆破術式の起動と同時に解き放たれます。すると大きな爆音が響いて、大爆発が起きました。その影響で海面が吹き飛んで波がいっせいにきます。

 

「わわっ!? わぷっ⁉ しょっぱい」

 

 波に飲まれて、ごろごろと転がされましたが、なんとか無事でした。しかし、火力としてはまずまずです。

 

「実験、成功です。後は圧縮率をもっとあげていけばブロークンファンタズムを再現できますね」

『まだ威力をあげる気なのですか? さっきのでも大砲クラスですが……』

「エースオブエースの必殺技はキノコ雲が出ます」

『……どこの戦略兵器ですか?』

「最低限でもそれぐらいの威力がないと十代最強なんていえません。だって、あの人9歳でそれを撃ったんですから」

『化け物ですか……』

「冥府の炎王としては負けられません」

『勝たなくていいですよ』

「やだ」

 

 ちなみになのはさんより、シュテルの方が好きです。故になのはさんにも勝たなくてはなりません。

 

「圧縮と増幅術を仕込めば……どうにかなりそうですね」

『何をする気ですか?』

「ちょっと、思い付いた術式があるので試します。フェアリーソードΔ」

 

 今度は三本のフェアリーソードを作り出し、放ちます。海面に着弾すると同時に爆発はせずに、三本の剣により三角形の魔法陣を作り出します。ベルカの増幅術式を起動し、一斉に起爆させます。γよりもさらに高圧縮しておいた燃焼液と酸素が混じり合い、更に増幅されて先程の比ではない大爆発が起こりました。ちなみに私は土のドームを作ってしゃがみ込みました。

 波が引いて、壊れた土のドームを土の棒を地面から生やして弾き飛ばして外に出てみると、大きなクレーターが出来ていました。そこにどんどん海水が入り込んでいきます。

 

「あはっ、あははははっ、出来たっ、出来たよっ!」

 

 三本でこれですから、六本にして六芒星の増幅魔法陣にすれば更に火力は上がります。それに大量に撃つことによってどれかは不発と見せかければ更に有利になります。

 

『コロナ、大変です』

「はい?」

『結界が解除されています。それと、侵入者です』

「え?」

「お嬢ちゃん、時空管理局や。ちょっと危険魔法使用の件でお話を聞かせてくれへんかな?」

 

 背後からそんな声が聞こえ、私はダッシュで逃げる。ここで捕まる訳にはいかないのです。捕まれば監禁生活まったなしです。

 

「おっと、逃がさねえぜ!」

「くっ⁉」

 

 逃げようとしたら、赤いのが何時の間にか接近して私を捕まえてきました。

 

「夜天の書、守護騎士ヴィータ。コード56666454574644138964」

「え?」

 

 私を捕まえていた赤いの、ヴィータが私を離す。

 

「ヴィータ? どないしたんや?」

「わっ、わかんねえ! でも、身体が動かねえ! 逃げろ、はやてっ!」

「いや、動いて……ちょっ、なにすんの!」

 

 ヴィータがはやてを拘束していく。二人はもつれあったまま倒れる。私は顔を隠しながら近づいてはやてにも触れる。

 

「な、なにをする気や!」

「証拠隠滅です」

 

 私の映像データと音声データを二人から消して、回りの監視装置からもデータを消しておく。後は海にもう一発γを打ち込んで波を起こして足跡も消せば問題なし。

 

「では、さようなら」

「またんかい!」

「やです」

 

 剣を放って波を起こして逃げる。これで大丈夫なはずです。

 

 

 

 

 

 

 

 高町なのは

 

 

 

 

 

 

「おーい、はやてちゃん。大丈夫?」

「大丈夫やない!」

 

 私ははやてちゃんからの緊急要請を受けて、現場にきたんだけど……はやてちゃんはヴィータちゃんに抱き着かれて胸に顔を埋められている。その上から海水をかぶったのか、服はびしょぬれで所々に海藻が付着している。

 

「シャーリィ、どう?」

『駄目ですね。データは完全に消されています。凄腕ですね』

「そっか。それでヴィータちゃんに掛けられているのは?」

『恐らく、操作魔法でしょうけど……』

「あ~アイツ夜天の書やアタシの名前、コードがどうたらこうたら言ってたぞ」

「つまり、ベルカの関係者かな」

「せやろな」

「おい、それだとアタシはアイツに操られたままなのか!」

『いや、それは大丈夫だと思うよ。というか、多分ただの操作魔法だから』

「え?」

『夜天の書とか言われて、油断したでしょ。その一瞬の隙に身体を操られたんだよ。その子、多分高レベルの操作魔法の使い手だね。そんな相手になんの対策もなく触れてたら、そりゃ操られるよ』

「て事は、大丈夫なんだな?」

『うん。今、解析して術式を破壊するから、ちょっと待ってね。うわぁ、これ、古代ベルカの術式にミッドの術式を合わせて複合化されてるし……というか、増幅に侵蝕ってえげつなすぎ!』

 

 不穏な言葉がどんどん聞こえてくる。取り敢えず、ヴィータちゃんとはやてちゃんを六課の基地に運ぶ事にしよう。

 

「ん? これは……」

 

 六課に向かおうとした私の足元に落ちていた物を拾って、みる。

 

「はやてちゃん、ヴィータちゃん。どうやら相手は可愛い女の子みたいだよ。それも、結構おっちょこちょいな」

「ん?」

 

 拾った物をポケットに入れつつ、私はフェイトちゃんに連絡を取る事にする。

 

 

 

 

 


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