“冥府の炎王”コロナ・ティミル 作:冥府の炎王
新暦12月24日。クリスマスイブに新居が完成しました。当初の予定とは違い、海岸沿いとその端っこにある山も含めてすべてを購入しました。というか、区画そのものが管理局の関係者によってすべて買い上げられ、管理局関係者が住む区画になってしまいました。なのはさんやはやてさん、フェイトさんのお母さん達もこっちに来ています。ここの区画の戦力は明らかにおかしい状態になっています。これ、どう見ても私とドクターに対する監視体制です、ありがとうございます。むかつくので、機械兵のハイエンドを100機ほど巡回させています。不審者が何人も侵入してきましたが、全て撃退されています。
さて、新居です。この新居は私とセッテで設計し、地下の通路を通じて山に作り上げた秘密基地に通じています。ドクターの家からも伸びており、頂上にこっそりと聖王のゆりかごも運び込んであります。ちゃんと管理局には届け出が出してあるので問題ありません。そう、この秘密基地は管理局と共同開発で、資金は全て私が出しています。ここには機械兵の生産ラインやデバイスの生産ラインも作ってあります。
人体実験は出来ませんが、それ以外の事なら出来ます。まあ、こちらはいいです。今日は楽しみにしていたクリスマスパーティーです。久しぶりお父様とお母様が帰ってくるので三人で一生懸命に飾り付けしています。嘘です。三人が良かったのですが、大々的にみんなで祝う事になりました。それとクリスマスパーティーですらもなく、ただに新居完成の祝いです。ですが、そんなのは知りません。サンタコスチュームをイクスとセッテに施してあります。
「ん、出来た?」
「ケーキは焼き上がりましたよ。生クリームを塗ったり、トッピングが必要です」
「手伝う」
「お願いします」
今日のお祝いはそれぞれの家庭で料理を持ちあってするものです。なので、私はスイーツ担当になりました。芸術品的作品を仕上げてあげます。
「では、イクス。後は任せますので、指示通りに」
「はい」
瞬時に入れ替わりに、イクスに作らせていきます。楽しそうにセッテと一緒に頬っぺたとかにクリームをつけながら頑張る二人は可愛くてほっこりします。
ケーキを冷蔵庫に入れて、北京ダックを焼きます。これは他の人が作らないかも知れないので、作っておきます。オーブンの時間をセットしてから、外に出て飾り付けを確認します。事前に設定した通り、機械兵達がやってくれていますので、それの確認です。
「居た!」
「?
イクスが聖王と呼んだ通り、ヴィヴィオは何かが違う。
「勝負です! 冥府の炎王イクスヴェリア! 今日こそ一撃を入れて友達になってもらいます!」
元気に声をあげ、格闘の構えをします。ストライクアーツですか。
「いいでしょう。どうやら、戦っても問題無いようですね」
「もちろんです!」
『イクス? 殺すんですか?』
(大丈夫ですよ、コロナ。彼女は正真正銘の聖王になりました)
「セッテ、コインを投げてください」
「ん」
セッテがコインを投げました。地面についた瞬間、ヴィヴィオが突撃してきます。子供の腕で殴りかかってきますが、イクスはそれを横に飛んで躱しながら回し蹴りを叩き込みました。それをヴィヴィオは腕をあげてガードしますが、吹き飛ばされていきます。壁に激突して身体を埋め込まれてしまいますが、直ぐに出てきます。なんと、無傷です。
「やはり、戦う資格はあるようですね。いいでしょう」
イクスの、私の身体から炎が上がります。
「ふふふ、負けませんよ」
「掛かって来なさい、聖王」
互いに走りより、拳を突き出すと中間で激突して炎がヴィヴィオを焼いていきます。いえ、ヴィヴィオの回りにはバリアのような物が存在し、それが炎を防いでいます。
「相変わらず、聖王の鎧は厄介ですね」
「イクスとコロナが求めているのはこれだって聞きました! だから、お父さんにお願いしてつけて貰いました! いくよ、レリックウエポン、セットアップ! 聖王モード!」
ヴィヴィオの姿が18歳くらいになりました。
「いいでしょう。コロナ、セットアップです」
『無茶ぶりしますね!』
「できませんか?」
『やってあげますよ!』
機械ではなく私自身で演算してバリアジャケットを作ります。変身魔法は使いません。そんなもの、必要ありません。白い服に赤い炎が描かれている服に黒いマントに白い炎が描かれているといった感じに仕上げました。鎖も身体に巻き付けています。漫画にあったイクスの姿です。
「うりゃぁぁぁぁっ!」
「甘い」
飛び蹴りを放ってくるヴィヴィオに対して、イクスは片手を振るって炎の壁を作り出します。その中を平気で突っ込んで蹴りを放ってきます。その蹴りをイクスが掴んで、後方に放りなげます。そして、背後から無数のフェアリーソードを放ちます。
「そんなので、今のヴィヴィオは止まらないんだから!」
拳でフェアリーソードを弾くヴィヴィオ。
「コロナ」
『バースト』
弾く瞬間に起爆させて、回りもろとも爆発させます。
「うにゃぁぁぁぁぁぁっ!!!」
空高く巻き上がっていきました。その状態でも容赦なくイクスはフェアリーソードを作り出し、無数に放ちます。更には地面に手をついてゴーレムを錬成します。
「ゴライアス、断ち切りなさい」
大剣を持ったゴライアスが、上段から爆風で翻弄されながら空中で必死に魔法弾を撃ってフェアリーソードを防いでいるヴィヴィオに振り下ろされます。そのまま地面に激突し、砂埃が張れると両手をクロスさせて大剣を立っている状態で防いでいるヴィヴィオが居ました。それなりに強いですね。
「ミサイル、16発、撃ってください。それとバルカン、発射してください」
「わわっ!?」
足に取り付けられた八連式ミサイルポッドからミサイルを発射させます。同時にゴライアスの肩に装備させたバルカンを放ちます。ですが、バルカンは聖王の鎧を貫く事はできませんでした。鉄板くらいは簡単に貫通するんですが。
「ふぅ~~~えいっ!」
なにを思ったか、巨体のゴライアスの大剣を弾き上げ、そのまま剣身を掴みました。指が食い込み、逆にゴライアスが持ち上げられました。そこにミサイルが来るのですが、ゴライアスが盾にされて壊されてしまいました。
「ふむ」
「えへへへ、ヴィヴィオ、凄いでしょ!」
「調子に乗っていますね。いいでしょう」
イクスが本気モードに入ったようです。両手を合わせてから、スペースを開けて開いていきます。そこには膨大な熱量を持つ白い炎の塊がありました。
「コロナが作っていた未完成の魔法です。受けてみてください」
「えっ、えっとぉ~」
膨大な熱量により、蜃気楼が発生します。それはどんどん大きくなって白い球体へと作り変えられていきます。使われている魔力量はとんでもない量で、魔力量で無理矢理使っているようです。あまりの温度に回り地面が黒く変色し、草が発火しだしました。
「確か、ディヴァイン・コロナでしたか。このまま投げるんでしたか?」
『ちょっと違います。魔法陣を三つ展開して放つのです。増幅、外殻作成、加速ですね』
「わかりました。では、いきますよ、聖王」
「待って、待って、それ死んじゃう!」
「ならば死になさい。ディヴァイン・コロナっ!」
「ひぃぃぃっ! ええい、聖王の鎧一点集中!」
「うそっ!?」
聖王の鎧を拳に集め、ディヴァイン・コロナを真正面から拳で受け止めました。
「うりゃぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
更にはそれを上空に弾き飛ばして、上空で光が一瞬集まった後、大爆発を起こしました。昼だというのに世界に衝撃が走って、空が燃えました。
「ふふ、ヴィヴィオだってやればできるんだからね!」
「いいでしょう」
イクスが両手を開いて左右に先程と同じ魔法を作り、それを圧縮して両手に纏いました。イクスさん、ちょっとやり過ぎだと思います。でも、ディヴァイン・コロナを弾頭にして打ち出すのも楽しそうですね。
「喰らいなさい、聖王っ!」
「そっちこそやられちゃえっ、冥王っ!」
互いに近距離で殴り合う二人。どちらもおかしな感じになっています。次第に衝撃波を放ちながら殴り合っています。ですが、近接格闘術の技術はイクスの方が上です。私が沢山練習していますし、身体が覚えています。逆にヴィヴィオの動きは不思議です。まるで歴戦の戦士のような戦い方です。それも、それは私に近いです。
『まさか……イクス、少し調べます』
「わかりました」
どう考えても聖王の鎧を手に入れたとしても、戦闘能力が高くなりすぎです。彼女のを観測して、しっかり調べると魔力のラインがありました。それは山の頂上に続いています。
『コイツ、聖王のゆりかごと繋がっています!』
「そういう事ですか!」
「気付かれちゃった。でも、問題ないよね!」
「ちぃっ! 戦闘データをゆりかごから引っ張り出していますね!」
「そうだよ! お父さんに頼んだの! 絶対に勝ってやるんだから!」
ドクターの仕業ですか。確かにレリックを渡しましたが、ここまでやるとは……
「勝ったら、お話して友達になるんだから!」
『こいつもやはり高町家ですか』
「負ける訳にはいきません!」
互いの蹴りが合わさり、二人が吹き飛び即座に色取り出りの弾幕が放たれます。私も手伝います。相手がゆりかごを使っているならもっと手伝って問題ありません。
『砲塔を生成。列車砲、砲撃を開始』
錬成したドーラがその姿を現すと同時に砲弾を放ちます。砲弾は魔弾の雨を突き抜けて、ヴィヴィオへと届きます。しかし、即座に砲弾を見切られ、手を添えて軌道を変えられて避けられます。イクスはそのまま突撃し、飛び蹴りを放ちます。ヴィヴィオはそれを腕をクロスさせて防ぎます。私は腹を目掛けてアハトの砲弾を放ち、私機械兵を生成して近距離から銃弾を放ちます。しかし、銃弾は聖王の鎧に阻まれました。
『ならば』
機械兵に取りつかせて動きを封じます。
「無駄だよ!」
聖王の鎧が一気に広がって機械兵が吹き飛ばされました。イクスは空中で炎を噴射しながら空中から攻撃しています。イクスの攻撃だけは確実に避けています。
「ふふふふ」
「あはははは」
楽しそうに笑う二人。
「ディヴァイン・コロナ」
「スターライトブレイカー!」
空からイクスが膨大な魔力の籠った拳を放ち、同じくスターライトブレイカーを纏った拳を互いに合わせる。それだけで中間点で爆発が起きて周りに被害がでそうなので、二人を鉄の壁で覆ってしまいます。鉄の壁は一瞬で崩壊しました。その瞬間、私の頬っぺたに拳が入り、ヴィヴィオの頬っぺたにも拳が入っていました。二人はそのまま倒れました。どうやら、ヴィヴィオも大人モードもとい聖王モードが解除されたのか、小さくなっていました。二人共、何処か満足そうにしていますが……そんな二人に近付く人物が二人。二人はデバイスを持って怒り心頭のようです。
「ふふふ、なんでこんな事をするかな?」
「これはお話しないとね。喧嘩のレベルじゃないからね。どっちか、起きてるよね?」
「っ⁉ わ、私は悪くないです! 二人がやりました!」
「問答無用だよ」
私達は連行され、正座された状態で説教されました。
「横暴です! お二人がそういう権利はありません!」
「どういう事かな?」
「だって、3年生くらいでスターライトブレイカーとか撃ち合ってます!」
「うっ」
「そうだよ~それから友達になったって聞いたもん。だから、ヴィヴィオだって、そうしたんだよ。ママ達を見習っただけだもん」
「でも、あれは海上でしかも結界も張ってたんだよ? 二人はそんな事、してないよね」
「「うっ」」
「だって、友達になりたかったんだもん!」
ヴィヴィオが泣き出しました。とりあえず、ジト目で二人を見ます。
「全く。今度からこういうのは無しだよ。やるならちゃんとしかるべき場所でね。格闘技だけなら別にいいけど」
「いいの?」
「まあ、今回だけだよ」
「そうだね。わかった?」
「「は~い」」
「じゃあ、私は地上本部に連絡して後始末をしてもらうね」
「うん、お願い。私達はお片付けと準備をしようか」
「うん。えっと、イクス……一撃いれたから、いいよね?」
「まあ、仕方ありませんね。王は約束を守るものですから。友達になってあげましょう」
「ありがと~!」
抱き着いてくるヴィヴィオにイクスも笑っているので満更でもないようです。友達、いませんもんね。その後は盛大にパーティーをしました。ヴィヴィオはイクスにくっついていましたが。それと、外でドクターが吊るされていました。その状態でフェイトさんに説教を受けていました。
「娘に頼まれたからやった。反省も後悔もしていない」
「なら、娘として言ったら、聞いてくれるんですか?」
「そうだね、聞いてあげようじゃないか」
「はぁ……わかりました」
あちらも大丈夫なようです。しかし、ヴィヴィオの聖王モード、相手にとって不足無しですね。まあ、ゆりかごのバックアップがなければあそこまで強くはないでしょうが。