“冥府の炎王”コロナ・ティミル   作:冥府の炎王

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STS編エピローグ1

 

 新暦10月25日。地上本部公開意見陳述会から一ヶ月の時が過ぎました。その間に起こった事は、管理局に反発した者達の反乱がありました。その大部分は私の計画通りに抑えられましたが、抑えられない場所も当然あります。なのはさん達機動六課の皆さんは大変、忙しそうに働いていました。私には残念ながら要請がありませんでした。それどころか、護衛という名の監視が付けられて本局の宇宙で軟禁状態です。

 しかし、これは仕方ないでしょう。この本局で大規模な錬成を何度も行って機械兵を大量生産していたのですから。その機械兵達が戦場に送られ、圧倒的な物量とオーバーSによる戦力で瞬く間に敵を滅ぼし、逮捕して鎮圧していったそうです。紛争地域に対しても武力介入が大々的に行われ、紛争状態を強制的に解決しました。その後、発足させた第三者機関に調停を行って貰い、紛争状態の原因究明を行ったそうです。犯罪行為についても詳しく調べたそうで、大量の逮捕者が出たそうです。彼等は強制労働就労施設にでも送られたんでしょうか?

 まあ、どうでもいいですね。どちらにしろ、私にとっては笑いが止まりません。何故なら、この一ヶ月で私の口座にはおかしい量のお金が入ってきているからです。

 

「イクス、イクス、見てください! 機械兵だけで一ヶ月10桁ですよ!」

『いっぱい稼げましたね。スイーツ何個分でしょうか……』

 

 スイーツで換算する辺り、イクスも大分染まってきていますね。良い事です。数十億のお金によって私の老後は安泰です。だって、これ月単位ですから。機械兵1体の使用料は一ヶ月で私の手取りが1万から5万です。Bランクが1万でAランクが5万。普通に雇うよりも圧倒的なコストパフォーマンスにより、大量に注文されました。民間に販売するのはまだですが、その時はもっと値段を上げる事になるでしょう。こちらは就職の事に関してもありますからね。職を奪う事になって恨まれますし、調整は大事です。

 

 

 さて、もう一つの資金源である若い日々をもう一度。こちらは法的な兼ね合いもあるので、管理局や現地の法的機関に送られるDNAの登録と実際の身体をスキャンしてデバイスが勝手に若い頃の姿を作成してくれるようにしてあります。独自に変更できる点は肌の潤いや染み、身体の体形の変化などです。具体的には肥満体型を変身魔法のエネルギーとして脂肪を燃焼させて解決したり、ソバカスやニキビを消したりです。髪の色や瞳の色も変えられます。しかし、身長は変えられなくしました。長時間の運用が考えられる上に色々と危険があるからです。短い時間なら問題はないでしょうけど、普段から身長を変化させていると、戻る時に大変かも知れません。せこい犯罪に使われる可能性もあるので、使用する年齢は30歳以上という指定を入れました。決められる年齢は18から上です。変身魔法は悪用が出来るので、その対策もしっかりとしています。もちろん、変身後の姿も公的機関には送られております。ちなみになのはさん達に使ったのは実験用の物だという事にしてあります。アレは魔法薬ですしね。あちらは特別仕様ですから。

 

『コロナ、これって盛大に使わないと不味いお金ですよね。経済的にコロナに富が集中して大変な事になります』

「ええ、わかっていますよ」

 

 流石は王様です。でも、お金は盛大に使います。まず、ミッドチルダ地上におっきな敷地を買います。海岸沿いの立地のいい場所をお金をばら撒いて立ち退いて貰います。相場の8倍も出せば誰も文句を言ってきません。ついでに自宅の警備兼使用人に出来る有機タイプの機械兵を無料でさしあげれば文句もでません。特に男性や女性が一人暮らしの人には大喜びされました。それぞれ異性タイプを欲しがり、一部機能の取り付けをしてあげたら大喜びでした。当然、容姿も彼等の要望を聞きました。老夫婦や夫婦は孫や子供が欲しいという人も居たので、そちらも対応しました。特に老夫婦にはとても大事な事になるでしょう。

 

「イクス、これって儲けの種になりますよね」

『コロナ、何処まで稼ぐ気ですか』

「福祉施設としていいと思います。税金対策にもなりますし」

『せこいです』

「駄目な政治家とかにお金を出したくないです。良い所には喜んで出しますけど」

「政治家に、なる? コロナなら、全てを支配下にできる」

 

 セッテの言葉にちょっと考えてみます。資金源は充分にありますし、管理局の後押しも可能です。機械兵の貸し出しなどを色々と制限すればいくらでもなってくれるでしょう。まずは現状、空いている地上本部のトップになって、レジアス中将がやっていたように発言力を徹底的に叩きあげげればいいです。有力者の人達とも伝手があります。

 

「あれ、普通にいけそうですね」

『可能ですね。コロナには人心掌握術や帝王学も教えていますし』

「世界中の愚民共を支配し……痛いっ」

 

 後ろから抱きしめられて、頭を小突かれました。上に視線をやるとフェイトさんが居ました。そのまま頬っぺたをぷにぷにしてきます。

 

「冗談でも、シャレにならないから駄目だよ」

「は~い」

 

 私の護衛兼監視として管理局の御偉方はフェイトさんを配置しました。リミッター無しのオーバーSの魔導師をです。戦力に余裕が出来たからでしょうが、フェイトさん自身が希望した事もあります。というか、多分、私を個人である程度抑えられるのってなのはさんかフェイトさんぐらいです。はやてさんはヴォルケンリッターありで回りの被害を考えないなら、大丈夫でしょうが流石にそこまで遊ばせる余裕はないです。そして、なのはさんはフェイトさんがどうしても居ない時用です。何故なら、なのはさんと私が戦えば管理局の本局が大変な事になるからです。だから、なのはさんの時は無人世界に研究機材を持ち込ませて放置されます。なのはさんとちょっと、本気でバトルしたら訓練施設が崩壊して、余波で管理局本局の機能を麻痺させてしまったのが原因です。互いに立体魔法陣を使った大規模な魔法の撃ち合いは結構楽しかったです。無人世界にある何個かの惑星は焼け野原やクレーターだらけになってしまいましたが。

 フェイトさんの場合は速過ぎて接近状態ならまず勝てません。最低でもこちらが準備していないと話になりません。瞬間移動とか、そんなレベルです。なんでも、高町家に伝わる技術を教えて貰ったそうでそれと雷を使われてはとても対応できません。もっかの課題はフェイトさんの速度に対応する事です。雷の変換資質がとても欲しいです。もしくは、フェイトさんの攻撃は威力がそれほどでもないので、もっと魂を吸収して防御力を鍛え上げるしかありません。ただ、斬られるだけなので、肌で止められるレベルになればどうとでもできるでしょうし。

 

『現実的な解消手段ですね。惑星を10個くらい食べたらいけますよ』

(惑星ですか。買ってみましょうか)

「何か、変な事を考えているのかな?」

「なんでもないです」

 

 抱っこされて、膝の上に乗せられます。この人、一ヶ月ですでに体内の薬をある程度操作して12歳から15歳くらいには変化できるようになっています。今は中学生くらいですか。頭に胸が当たって気持ちがいいです。いい、クッションです。

 

「それで、身体はどうですか?」

「とっても調子がいいよ。それにこれは潜入にも情報収集にも使えるからね。執務官としては結構使えるよ。それに子供達と遊ぶ時にも同じ目線になれるからね」

「なら良かったです。それで、ドクターとかはどうなりましたか?」

「うん。無罪とはいかないけれど、監視付きである程度自由に動けるようにはなったよ」

「監視役はナカジマ家ですか?」

「そうだよ。主にギンガさんかな。コロナちゃんが買った土地の回りを購入して、ドクター達が住むそうだよ。その同じ敷地の隣にナカジマさん達が引っ越して、クイントさん達と一緒に住むみたい」

 

 そう、クイントさん。ゲンヤ・ナカジマさんの妻で8年前に殺されたと思っていたのですが、ドクターがメガーヌさんと一緒に保存しており、和解する条件として彼女の事を話したそうだ。ただ、クイントさんの手足は戦闘で破壊されていたので、戦闘機人の腕や足を取り付けたらしい。それに体内の悪い部分も全て機械に代用されて今では元気いっぱいの半分サイボーグみたいになっている。私も頼まれたので若い姿の状態で、女性としての特徴もしっかりと考慮してドクターと二人で組んで完璧に仕上げました。外見はほぼ人と変わらず、その出力は戦闘機人以上に仕上げ、かつ一人の女性としての機能も完璧完備。子供を産めるようにしたので、これで勘弁してくれというドクターにお二人は大喜びで納得しました。駄目押しにゲンヤさんに若返りの薬をあげたので大喜びでした。ただ、娘二人は微妙な表情をしていましたが、クイントさんの性格のせいか直に戻りました。ただ、家に居たくないそうで、スバルさんはアパートをティアさんと借りたそうです。ギンガさんは監視という名目でドクターの一家に逃げ込んでいるそうです。

 

「そうですか。御隣ですか、それは楽しみです」

「私達は反対側に住むよ」

「え?」

「いやなの?」

 

 悲しそうに言うフェイトさんに勝てるはずはないです。

 

「フェイトさん達はいいですよ。でも……」

「ヴィヴィオの事、まだ駄目なの?」

「聖王は嫌いです」

「同い年だから、仲良くして欲しいな。それにヴィヴィオはイクス達が知る聖王じゃないよ。全くの別人だからね」

「わかっています。ですが、弱いのが気に入らないだけです」

「そっち!?」

「最低でもフォワード達くらいの実力が無いと困ります」

「初等部の生徒に求めるレベルじゃないからね!? イクスとコロナがおかしいだけだから」

 

 ちなみにフェイトさん達はどうやら、私とイクスを勘違いしているみたいです。ですが、それはそれで充分に楽しいのでそのままです。だって、害はないですしね。イクスは楽しそうにしていますが、私達は既にどちらの名前でも反応するので問題ありません。イクスは学校でコロナとして過ごしていましたし、私も後継者としてイクスの名を名乗ったりもします。そう、私達は一心同体。コロナ・ティミルでもあり、イクスヴェリアでもあるという事です。イクスもノリノリで楽しんでいるので問題ありません。ただ、ヴィヴィオに関してはイクスが顔を蹴られた事がトラウマになっているようで頑なに拒んでいます。案外、真面目に殴り合えば解決しそうですが……イクスと喧嘩して最低限生き残れるレベルがフォワード達ぐらいです。イクスはダメージエミュレートを超えて平気でダメージを与えていきますからね。

 

「ふふふ、報復は許しましたが最低限、壊れないようになって貰わないと駄目です」

「そっか……ヴィヴィオに伝えておくよ」

「ところで、セッテちゃんと何をしていたの?」

「これですか? 家の設計図ですよ」

『古代ベルカ式のお城です!』

「どう見ても城だよね。却下」

「何故ですかっ!?」

「建築法違反だから。取り敢えず、高さが駄目だね。地下も1階か2階が限度だよ。

 10階とか無理だから」

『「……」』

 

 身も蓋も無い理由でした。

 

「……む、だ……?」

「い、いえ、大丈夫です。そうだ、メガーヌさんの所に建てましょう。あそこなら、行けるはずです」

「いいけど、ちゃんと二人と相談するんだよ?」

「もちろんです。さっそく連絡を入れます」

「うん」

 

 通信端末でコールすると、メガーヌさんとルーテシアさんの姿が移りました。ルーテシアさんはメガーヌさんの膝の上に乗って、抱き着いてスリスリしていました。それをメガーヌさんは優しく撫でています。

 

『どうしたの?』

「二人がそっちで建物を建てたいって」

「これ、そっちで作っていいですか?」

 

 データを送ってみます。

 

『これは……お城ですね』

『お城?』

 

 ルーテシアさんも興味があるようでみています。

 

『構わないけど、こんな広いのは対応できないわ。それに……どうせなら楽しい遊び場みたいにしてくれるかしら? ここは遊ぶ場所が無いですから』

『……遊園地がいい……』

「無茶ぶりですね! ですが、いいでしょう! 手伝ってください。意見を取り入れますので」

『頑張る』

「では、後程メガーヌさんと一緒に色々と考えて送って来てください。その後、こっちで色々とやりますので」

『はいはい、任せて。ルーちゃんもいいわね』

『いい』

「それじゃあ、そっちはいいとして……そちらの現状、大丈夫ですか?」

『はい、大丈夫ですよ。ゼストたい……ゼストさんも居てくれてますし、定期的に食料とかも送って来てくれますしね』

「わかりました」

 

 ゼストさんも身体をサイボーグ化して、元気になっています。基本的にやはりルーテシアさんの事が心配なのか、あちらに居るようです。数ヵ月したら、現場に復帰するつもりのようですが。偶にシグナムさんとクイントさんの二人でリハビリがてらの戦闘訓練をしていますが、毎回ドクターとギンガさんに怒られています。やりすぎで壊してしまうのです。まったく、あの人達の戦闘狂には困ったものです。

 

『嬉々として参加しているコロナには言われたくないと思います』

 

 心の中が読まれました。プライバシー侵害です。訴えますよ、イクス。

 

『元から一心同体で読めるので、プライバシーなんて存在しません』

 

 なんとっ!?

 

『自分自身を訴えるなら、それはそれで痛い娘ですよ』

 

 これはやられました。諦めましょう。

 

「では、畑を作るんですね」

『ええ。でも、人手がやっぱり欲しいわね』

「でしたら、コロナちゃん、イクスちゃん。機械兵を何体か送ってあげていいかな?」

「? ああ、全然いいですよ。そうですね。重機タイプとメイドタイプでも送っておきましょう。開拓用に取り敢えず、適当に送っておきます」

『ありがとう。ほら、ルーちゃんもお礼を言って』

『ん、ありがとう』

「いえいえ、ルーテシアさんのお願いなら大概は聞いてあげますからね」

『ん』

 

 嬉しそうなルーテシアさん。これは必要な事です。

 

『虫さん、容赦なく殺しましたからね』

 

 虫は嫌いですから、仕方ありません。ですが、後悔はしていません。なんせ、敵対していましたからね。戦争状態で殺し殺されるのは普通の事です。

 

「じゃあ、また連絡します」

『ええ』

 

 通信が終わり、私は早速用意していきます。

 

「何を送るつもり?」

「ハイエンド仕様です」

「ハイエンド?」

「はい。戦闘ランクはAAA。小型の魔導炉を完備し、自立思考に自己学習を取り込んだゴーレムです」

「駄目だよ」

「え?」

「それって戦闘機人って事だよね?」

「っ!? ち、違います。あくまでもゴーレムですから」

「めっ」

「くっ、仕方ありません。でも、自立思考を外せばいいんですよね? 自己学習だけならいいですよね?」

「それは……いいと思うよ」

「ん、誰か来た」

 

 部屋がノックされたので入室を許可すると、目に隈が出来てふらふらなユーノさんが入って来た。

 

「やぁ」

「ゆ、ユーノ? どうしたの?」

「いや、はやてにかり出されてたせいで仕事が溜まっててね」

「あ……ごめんなさい」

「いいよ。それよりも、イクスちゃん、人手をください。本当にお願いします」

「私からもお願い……」

「わ、わかりました。とりあえず77機でいいですか?」

「ありがとう、本当に助かるよ。出来たら装備は火器厳禁で刀剣類で頼むよ」

「分かりました」

「お礼に司書の推薦状も書いてあげるよ」

「それは助かります!」

 

 あそこは知の宝庫ですからね。とっても勉強になります。仕事は機械兵に任せたらいいだけですしね。そんな訳で、私は無限書庫に出かける事になりました。当然、フェイトさんもセッテも一緒です。そこで、大量に追加召喚してあげたら大喜びでした。未探索区画も大量にあるそうなので、いっそのこと千単位で投入して、一気に進めてしまいましょう。ユーノさんと他の司書さん達に泣かれました。そんなに嬉しいのですか。良い事をした後は気分がいいです。

 

『果たして、それは嬉し泣きでしょうか? 私には急激に進む開拓で仕事が増えて泣いているように見えますが……』

 

 コロナ、子供なのでよくわかりません。そっぽを向いてそういう事にしておきましょう。さて、帰ろう。そうすると、ユーノさんに肩を掴まれました。セクハラです。何故、抱き上げて椅子に座らせるのですか? 目の前に映し出されるスクリーンは探索されてどんどん増えていく資料の数です。

 

「分類別け、よろしくね」

 

 そう言って、本人はどこか行きました。ゆっくりと後ろを向くとフェイトさんは困った顔をしていました。

 

「私も手伝うから、頑張ろう」

「うぅ~わかりました。指揮官タイプを作ってやります!」

「そっちに頑張るんだ」

「当然です」

 

 そんな訳で、無限書庫特別バージョンを作ります。そうですね、PCタイプにしておきましょう。自動で開拓して、分類別けして、本棚に整理してデータベースに登録する、そんなゴーレムを作りましょう。しかし、ここは図書館。図書館なのですから、オディーリアにしましょう。アトリエ、大好きですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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