「あの…諸星さん!これ…どうぞ」
「ああ、名取さん。ありがとうございます」
今宵はバレンタイン。女性が多い鎮守府ではほとんどの人からチョコや贈り物を例年より多く貰っている次第である。…え?大学時代はどうだったかだって?……察してくれ。
今の名取さんので何人目だったかは覚えてはいないが、結構な人からチョコを貰っていた。ただ、そのほとんどが相談室の常連、もとい蓮也の被害者なのがまた何とも言えないものだ。女の子だからか、かなり手の込んでいる物が多い。正直、食べるのがもったいないくらいだ。まあ中には買ってきた物を渡してくれた娘もいたけど、それでも嬉しい事には変わりない。……ただ、雪風ちゃんからチ○ルチョコを貰った時はどう反応すればいいかわからなくなったけどな。
流石にこの日に相談室に来る人はいなく、俺はとりあえず鎮守府内を彷徨くことにした。
執務室の前あたりまで来ると、山城さんが何やら扉の前でウロウロしているのが見えた。
「あの…山城さん?何やってんですか?」
「あ、諸星さん…。実は、姉様から言われてチョコを提督に渡そうとしてるんですが…ちょっと抵抗が…。あ、これは諸星さんのです」
「ど、どうも」
俺が受け取ったチョコは綺麗にラッピングされているものだ。蓮也のは…め、明○の板チョコか…しかも、ラッピングも何もされてないとは…。
山城さんの気持ちはわかる。上司としてチョコを渡さなければいけないのはわかるが、その上司があいつだからなぁ〜。
「…よし。諸星さん、私、提督に渡してきます!」
そう言うやいなや、山城さんは扉に向かっていった。そして、扉に手をかけると…
「提督、はいっこれ‼︎」
何と、扉を少しだけ開けた途端、おそらく全力でチョコを投げつけ…ってええ⁉︎マジか…!
それに満足したのか、山城さんはそのまま立ち去っていった。
「蓮也、大丈夫か?」
「おうジャック、平気だよ〜♪これで七回目だからもう慣れた」
見ると蓮也は綺麗にチョコを受け取っていた。しかもロゴの部分をこちらに向けて、まるでCMのそれみたいになっていた。
「お前も山城から貰ったのか。…ハッ!この差か、あっからさまに僕の事嫌ってるね〜。ま、あいつに限った話じゃないけどね」
机を見るとこれまでに貰ったであろうチョコが置いてあったが、幾つかが市販の物や雑なラッピングの物だったりしていた。
「それは日頃の行いだろうが」
「ま、別に食えなくないから良いけどね。だけどでち公と鬼怒は許さん」
「あ〜あれか〜」
うん、あれは駄目だな。ゴーヤチョコはまだ良いとして、一つ以外全部辛いロシアンチョコって絶対逆だと思うんだ。
「多分この後も何人か来ると思うよ。あそうだ。お前ここに居ろよ。その方が向こうも楽だろうしね。僕とお前のチョコの差も見てみたいし」
まぁ、こちらとしては構わないが、良いのか?向こうも別々に渡したい娘もいると思うんだが…。(青葉ちゃんとか)
「あー全員に伝える。ジャックは執務室にいるから渡したい奴は執務室に来い。以上」
言っちゃたよ…。
※ここからはダイジェスト風にお送りします。
〜金剛の場合〜
「ヘーイテートクゥー‼︎ワタシのloveが入ったチョコ、受け取るネー!それと、諸星サンもどうぞデース!」
そう言いながら金剛さんはチョコを渡したのだが、蓮也のチョコがラッピングがすごいことになっていた。よっぽど好感度上げたいんだなぁ。
「あ、どうも」
「まさかと思うが紅茶とか練り込んでたらぶっ飛ばすからな?」
「モチロン、そんな事しないヨ!あと、他に何人来ましたカ?」
「お前で28人目」
どこの死神部隊だよ…
〜朝潮の場合〜
「司令官!諸星さん!これをどうぞ!ちゃんと味見と毒味はしましたので大丈夫です!」
「いや毒味って…お前が作ったんなら問題ないだろ?」
「俺もそう思うんだけど…」
「いえ、材料の方に問題があると思いまして!」
「あっそう…」
「では私はこれで」
朝潮ちゃんはそう言って出て行った。
「蓮也…何かあの子、真面目なんだけど、真面目の方向性を間違ってる気がするんだけど…」
「あの馬鹿真面目さが取り柄だと思うよ?僕は」
「馬鹿は余計だろ」
〜フラッt…空母五人組の場合〜
「おう来たか板チョコ共!」
「誰が板チョコや(よ)‼︎」
「そうそうに喧嘩吹っかけんなよ…」
「とりあえず上司として渡しておきます!」
「それと諸星さんにも日頃の感謝を込めて渡します」
瑞鳳さんから渡されたチョコも、大鳳さんが蓮也に渡したチョコも、あからさまに立体的なチョコである事がみてわかった。弄られないように作ったんだろうけど、そうでなくても弄るのがあいつなんだよな…
「ほぅ、少しは学習してんのか。今度から板じゃなくて、直方体って呼んでやんよ〜♪HAHAHA♪」
「っ〜〜‼︎」
ほらな、五人は真っ赤になって歯を食いしばってるけど、別に仕返しせてもバチ当たんないからやってもいいよ。
だけど五人は怒りを抑えてそのまま帰っていった。
「蓮也、もう俺戻るわ。みんなにもそう言ってくれ」
「ん〜わかった〜」
〜叢雲の場合〜
※ここから蓮也視点です
扉の隙間から電探がチラチラ見えてるけど、あの形は多分叢雲だな。
「用がないなら扉閉めてくれるか?寒ぃんだけど?」
「えっ⁉︎あっ、じゃあ入るわよ!」
やっぱ叢雲だったか。手に持ってんのはチョコだな。
「何の用?」
「こっこれ!そこでに落ちてたわよ!私のじゃないから、あんたのじゃないの?早く持って来なさいよ!」
ほぉーなるほどなるほど。そういう事ね〜。よ〜し、なら、その言葉にノッてやろ♪
「いや、それ僕のじゃないな〜?お前が貰っていいけど」
「えっ⁉︎いやっその…」
「だってお前のじゃないんだろ?なら貰ってもいいんじゃない?」
「そんな…」
おーおータジタジして。わかりやすい嘘つくからそうなるんだよ♪ま、おちょくるのはこれくらいにするか。
「なんてな、冗談だ。それは僕が貰っておくよ」
「…!しょ、しょうがないわね!そんなにいうならあんたにあげるわ!」
そこまで言ってねぇけどな。
「あっそうそう。落とし主がいたら言っておけ。
「…⁉︎そ、そう。わかったわ…」
ちなみにこの後、陽炎やら曙やら素直じゃねえ渡し方した連中がいたから散々からかった後受け取ってやった。み〜んな顔真っ赤にして悔しそうにしてたよ♪
ん〜実に面白い♪こういう娘達は弄るに限るねぇ〜♪
〜青葉の場合〜
「し、司令官!これ、青葉からです!」
何か青葉が声うわずってるが、初対面の時にあれだけ
「ん。どうも。それとそのカメラ何?」
「あ、これはですね、司令官がチョコ受け取ってるとこを写真にして今度の艦隊新聞に載せようかと。良いですか?」
「別にいいよ」
「ありがとうございます!では、渡されるとこ撮るのでもう一回渡しますね!」
後日、艦隊新聞にてその写真が使われたが、元の写真はプリントアウトして青葉が大切に持っているのは秘密であったーー
〜大和の場合〜
※主人公視点に戻ります
今、俺はとんでもない事を聞いたぞ?
「あの、大和さん?チョコのスープはまだ理解できます。ホットチョコというのがありますからね。でもさすがにステーキにチョコは冗談ですよね?」
「………」
「冗談ですよね⁉︎そうなんですよね⁉︎何とか言ってくださいよ大和さん‼︎」
どうなの⁉︎ねぇ、そこんとこどうなの⁉︎超不安なんですけど⁉︎
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その後
結局大和さん何も言わなかったよ…。大丈夫だよな?
「ようジャック。ちょっといいか?これお前が貰ってくれるか?」
そう言って蓮也が渡したのは幾つかのチョコであった。
「何でまた?」
「これ、那智とポーラから貰ったんだが、アルコール入りなんだよ。僕が前に食った時どうなったか覚えてるだろ?」
「あーそうだったな。わかったよ」
「どうもね」
そうだった、こいつアルコール取るととんでもない事になるんだった。ここでパーティ開く時気をつけないとな。
…ちなみに、綾香だが駆逐艦の娘達から感謝の意味で貰ったんだがその時狂喜乱舞した後倒れたらしい。…本当、なんでこいつ憲兵になれたんだ?
大和さんのステーキにチョコ発言は冗談だと信じたい(切実)
出せなかった艦娘達についてはご了承を。
ではまた次回まで