毒舌提督の所為で相談室は暇無しです   作:NTK

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今回は会話多いです。


第八話 提督の本心は?

節分で蓮也に豆を当てられなかった所為かわからないが、相談室に来る艦娘が増えてる気がする。来る日も来る日も不満を言い、俺もその都度アドバイスをしているが、一向に減る気配がない。よくもまあそんなに毎日毒を吐けるなあいつ。ああ、仕事が暇だったあの時が懐かしい…。

 

「失礼しまーす」

 

「青葉ちゃんか。また蓮也になんか言われたのかい?」

 

「いえいえ、ちょっと諸星さんにお話がありまして。ーーもう少ししたらバレンタインですよね?」

 

「うん、そうだけど?」

 

そっか、バレンタインか。でも、なぜその話を?

その疑問は次の言葉で解決した。

 

「女性が男性にプレゼントするわけですから青葉、ちょっと聞いてみたんですよ。司令官と諸星さん、どっちがいいかって」

 

「なるほどね」

 

これは確かに気になるな。みんなからどう思われてるかは今後のためにも聞いておきたいところだ。

……ぶっちゃけ、あいつがどんだけ嫌われてるかが知りたいし。せめてあいつには人徳面で勝ちたい。

 

「そしたらですね、結論を先に言いますと諸星さん派が多いんですが…」

 

よしっ‼︎と、俺は心の中でガッツポーズを決めた。

 

「ただ、その比率が6:4なんですよねぇ」

 

「え?」

 

これは意外だ。なんせあの毒舌だ、いっても8:2くらいかと思ったが、どういう事だ?

 

「意外って顔してますね?でも、なんとなくわからなくもないんですよ」

 

「と言うと?」

 

「前に諸星も言ってましたが、普通にしてれば司令官は優しい(ほう)なんですよ、でもそれを上回るくらい毒を吐いたりからかったりしてるんですけどね…」

 

それはわかる。ここにくる艦娘達の悩みのほとんどがあいつに対する不満だからな。

 

「諸星さんは青葉達が中破以上のダメージを受けるとどうなるか知ってますか?」

 

「ああ、確か服が破けちゃったりするんだよね?それがどうしたの?」

 

しかも、人によってはほぼ全裸に近い状態になるらしい。少しみてみたいような気がするが、そこは押し黙っておこう。

 

「司令官、誰かが中破以上のダメージを受けた報告を受けると、必ずその人数分の毛布を持って港まで行って渡してくれるんですよ」

 

「えっ?あいつが?」

 

「正確には投げつけるに近いですね」

 

信じられん。あいつがそんな気の利いた行動を起こすなんて、どういう風の吹き回しだ?

 

「さすがに青葉も気になって聞いてみたんですよ、そしたら『お前らがそんな格好で彷徨かれると僕の責任問題になるからな。ま、見られて興奮する性癖なら構わないよ、そう説明するから』だそうですが、本心じゃないですよね?」

 

「うーん…でも確かにあいつ普段は優しいからなぁ…わからないな…」

 

「前の司令官がそういった処罰を受けた事はないんで、ほぼ間違い無いと思います!」

 

あそうか、言われてみればそうだ。ならあいつが普段言ってる事ってもしかして…

 

「曙ちゃん達と同じ照れ隠しじゃないですか?」

 

「…何で俺の思ったことがわかったの?」

 

まあそれは置いといて、あいつの毒舌は本当は単なる照れ隠しの類なら高校時代にあいつの友人が妙に多かったのも頷ける。…俺が気づかなかったのは俺への毒舌が本心から来るものだからか?

もちろんそうでない可能性もある。毛布を持って来るのは単なる気まぐれかもしれない。でもあいつが霞ちゃんみたいに照れ隠しの表現が辛辣なタイプなら妙にしっくりくる。ツンデレを嫌うのも同族嫌悪からかもしれない。

 

「…なんか、あいつを好む娘が多いのがわかった気がする」

 

「ええ、みなさん司令官が実はツンデレなんじゃないかって薄々感づいているですよね。青葉も怒られた後ちゃんと謝ったら頭撫でて笑って許してましたし」

 

へぇ、あの後そんな事が。

 

「しかも、諸星さんもですが司令官も結構イケメンな方ですよね?」

 

「あ、ああ…それはどうも」

 

「となると司令官は、『イケメンでしかも天才、だがドSで毒舌な上司だけど実はツンデレ』っていう女性向けの恋愛漫画から出てきたようなキャラになるですよ。そりゃ好意を持つ人もいますよ〜」

 

「なるほどね。でもそれはみんなが思っている事で本当にあいつがそうとは限らないだろ?」

 

「そうかもしれませんけど、青葉の勘に間違いはありません!ちなみに司令官を上司として好んでいる人を数に入れてます」

 

「そういえば、さっきから気になってたけど、青葉ちゃんはどっち選んだの?」

 

俺が質問すると青葉ちゃんは若干狼狽えた後、しばらくして気まずそうな顔をこっちに向けた。

 

「し、司令官…です…ごめんなさい…」

 

「いや、別に気にしないから大丈夫だよ」

 

「……」

 

あれ?何で頰が少し赤くなって……あ、まさか…!

 

「ひょっとして青葉ちゃん、あいつに惚れたりしてる?」

 

そう聞くと青葉ちゃんは耳まで赤くなって小さく頷いた。…何この可愛い生きもの。

確かにメタクソに言われた後きちんと謝ったらその本人から優しくされたらそのギャップから好きになる可能性も無くはない。

 

「あいつを落とすのはかなり難しいと思うけど、頑張って。恋愛の悩みも乗るからいつでも相談に来な」

 

「あ、ありがとうございます…その、この事は司令官には…」

 

「もちろん、言わないよ」

 

つーか、誰があいつになんか言うもんか。

 

「わかりました…では青葉はこれで」

 

安心した顔で青葉は出ていった。

…青春だねぇ〜って、二十歳前半の男が何思ってんだが。

 

「な〜にニヤニヤしてんだ気持ち悪ぃ」

 

「うぉっ⁉︎蓮也いたのか⁉︎」

 

全く気がつかなかった…。

 

「どーせロクでもない事を考えたんだろ?ほれ、言ってみろ」

 

「誰がてめえなんかに言うかよ」

 

「ほー、なら今から執務室にいって館内放送でお前が中学時代に書いたノート暗唱するぞ?僕は記憶力がいいから一言一句違わずに言えるからな?」

 

「待て、何でお前それ知ってる⁉︎」

 

「引き出しには鍵をかけとくべきだったね〜♪」

 

くっ…マジかよ…!仕方ない、毛布の事だけでも話して納得させるか…真相を聞きたいのもあるけど。

 

「いやな、お前、中破した娘達に毛布やってんだって?」

 

「は?」

 

「しかも理由が自分の責任問題って、前の提督が何も処罰食らってないからお前にしてはすぐバレる嘘つくね〜親切するのが恥ずいからってそれは…」

 

「お前、何か勘違いしてね?僕があいつらに毛布投げつけるのは親切心じゃねぇからな?第一、それくらい僕も知ってるっつの」

 

「…え?」

 

どういう事だ?親切心じゃないなら、何故毛布を渡してんだ?

 

「毛布投げつけるのは大した意味ないから。何ていうかなぁ…例えるなら、公園で鳩や鯉にエサをやる感覚っていうか、コンビニでお釣りの1円玉を募金箱に入れるみたいに毛布があったから渡してやるって感じだね。特にやめる理由ないから続けてるだけ」

 

「なっ…!」

 

「そういや毛布渡す時に何人か顔赤くする奴いたけど、露出多い格好してる割には恥っていう感覚あるんだね〜w」

 

違う、そうじゃない。そうじゃねぇよ。

結論。あいつはやっぱ嫌な奴だった。

 

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その夜、執務室にてーー

 

「ジャックの奴、どっからあの情報を…青葉だな。()をつくのは苦手だけど、()()本当の事だから、まぁいいか。それに、艦娘のケアは本来は提督の仕事の一つだしね〜」

 

そう呟く蓮也の顔は、何か含みのある笑みを浮かべていた。




何となく気がついている人もいるかも知れませんが、主人公、ムッツリです(笑)
最後の提督の台詞、果たして彼が言っていた残り半分とは何なのか?親切心なのか、それとも…?
次回バレンタイン回にするつもりです。
ではまた次回まで。

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