「一ついいかな?」
「はい、何でしょう?」
「さっきから僕をずっと隠し撮りしてるあれは何だ?」
振り返ると確かにカメラを持った女の子が物陰に隠れていた。あ、これやばいな…。
「あ、バレてましたか。ども、青葉といいます〜。いや〜新しい司令官が来ると聞いてちょいと気になりまして。そちらの方は?」
「諸星士、カウンセラーだ。」
「ちょっといいか?」
「はい?」
蓮也は青葉と名乗った艦娘に冷めた目を向けてこう言った。
「お前、失礼じゃないか?」
「え?」
あーあ始まった。こりゃ手遅れになる前に止めないとな。
「え?、じゃない。なに人を隠し撮りしてる訳?新しい司令官が気になるのはわかるが、だからと言って隠し撮りしていい理由になんないだろ?それとも何?お前は人と面を向かって写真を撮れないの?だからこんなコソコソやってるの?」
「い、いえ…違いますけど…」
「だったら何で普通にこっちきて写真撮ってもいいですかの一言も言わない?僕は勝手に写真撮られるの嫌なんだよ。お前だって知らない人から勝手に写真を撮られたりしたら嫌だろ?」
「は、はい…。」
「だろ?自分がやられて嫌な事を何故人にやる?そんな基本の事もできなくてよく今までやってこれたね?しかもその様子だと何回もそういう事やっているよね?その中で怒られたりしなかったの?」
「いえ、怒られた事は何回かあります…。」
「何でそれで反省しなかったの?学習能力ないの?バカなの?トリ頭なの?三歩歩いたら忘れちゃうの?」
うわ、メッタ切りだよ。そろそろ止めないとまずいな、青葉ちゃんちょっと涙目気味になってきてるし、大淀さんも引き気味だし。
「おい蓮也。やめとけ、初対面なんだからあんまきつく当たるなって。」
「お前は黙ってて。僕はこいつに話ししてるんだ。いい?僕はお前が隠し撮りした事を怒ってるんだ。普通に頼めば僕は許可したしここまで叱らないよ。お前が頼む手間を省いて隠し撮りしたからこんな事になってるの?わかる?」
「はい、青葉が悪かった、です…。」
「わかったらとっととさっきの消して。」
「はい…わかりました。」
青葉ちゃんはカメラをいじったあと蓮也に渡して消したのを確認させた。蓮也はというと納得したのかカメラを返した。
「んじゃ、もう行って。あとさ、何で泣くん?僕は当たり前の事話してるのに何で…」
「もうよせよ⁉︎反省してるじゃないか⁉︎」
俺がそう言うとやや不満気な顔で口をつぐんだ。すでに嗚咽してるのにこれ以上追い討ちしてどうするつもりだよ。青葉ちゃん逃げるように出てったし。後で慰めておこう。
「それで、大淀。僕はこの後何すればいいの?」
「え?ああ、とりあえず引き継ぎ事項を済ませてから全艦娘に挨拶の予定です。」
「ん。了解。」
「えっと、俺は?」
「諸星さんは部屋で休んで置いてください。時間になったらお呼びします。」
そう言われたので早速俺はさっき案内された自室へと荷物を運んだ。にしても、本当に容赦しなかったなあいつ。着任早々これだと、一体何人があいつの被害に遭う事やら。この分だと俺は暇じゃなくなりそうだな。カウンセラーは暇な方がいいんだけどなぁ。
さてと、早速仕事を始めますか。地図を頼りに青葉ちゃんの部屋まで来ると案の定泣き声と慰める声が聞こえてくる。確かこの部屋には古鷹、加古、衣笠って艦娘もいるんだっけ?顔と名前覚えなきゃな。
扉をノックすると青葉ちゃんに似た娘が出てきた。多分この娘が衣笠だろう。
「えっと、どちら様ですか?」
「今日からここで生活する事になった諸星士といいます。あの、青葉ちゃんいますか?」
「青葉ですか?青葉は今、ちょっと話せる状態じゃないんですが…。」
見ると青葉ちゃんは古鷹ちゃんと加古ちゃんに背中をさすられながら泣いていた。
「あー、やっぱきつかったか。」
「事情は聞きましたが酷すぎじゃないですか?バカだのトリ頭だのってもっと別の言い方があるんじゃないですか?」
「あれがあいつの悪いところなんだよなぁ。オブラートに包まないで直接言っちゃうのが。まぁそれはそうと、俺カウンセラーやってるから何かあったら相談室に来るよう伝えといてくれる?」
「わかりました。」
さてと、言うことは言ったから相談室で持って来た本でも読んで時間潰すか。
ニ十分程したところで館内放送が流れてきた。
『皆さん、新しい提督が来ましたので至急大広間まで来てください。』
大広間か。そこに行けば何か指示あるだろうし行くとするか。
大広間に着き、大淀さんの指示に従って壇上にて待っているとぞろぞろと艦娘が集まってきた。青葉ちゃんはというと落ち着いているようだが少し目が腫れている。
にしても、噂には聞いてたけど本当に美人揃いだな。軽くハーレムできるなこれ。まぁあいつには無縁だな、あいつ女の好みうるせえし、何よりあんな性格の奴好きになる奴の方が珍しい。失礼だと思うが多分そいつはよっぽど物好きか神経が図太いかドMかだ。
とか思ってたら早速あいつに熱い視線向けてる娘が何人かいたよ。君達、騙されちゃだめだからね?あいつ顔はイケメンだけど言うことえげつないからね。つい二十分前に初対面の女の子泣かせたような奴だからね?幻滅しても知らないよ?それとそこの紫っぽい服着てるお姉さん、目が若干ギラついてるよ。それだとなんか婚期逃して焦ってるOLみたいだから。
「では、紹介に移ります。提督、どうぞ。」
「今日からここの提督を務める事になった、妃蓮也だ。よろしく。それと横のこいつはモブAだ。気にしなくていい。」
「誰がモブAだおい!マイク寄越せ。…えっと、今日から君達のカウンセラーをする事になった諸星士です。よろしくお願いします。普段は相談室にいるので何かあったら来てください。」
よろしくお願いします!と綺麗に敬礼をする彼女達を見て、やっぱここ軍なんだなと改めて実感したよ。この娘達が海を守ってるのか…。
紹介が終わり、俺は再び相談室に戻り待機してると、扉を叩く音が聞こえた。早速か、まぁ誰かわかる気がするけど。
「どうぞ。」
「失礼します。」
扉を開けて入って来たのは、予想通り青葉ちゃんだった。
青葉ファンの皆様、すみません。
他にもこう言った毒舌を振りまく事があるのでご容赦ください。