生物兵器の夢   作:ムラムリ

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6. 警護ミッション 1

 ファルファレルロとなった片目との相性の為か、檻の割り振りが変更された。

 案の定と言うべきか、自分ともう一体、元々別の組織に属していた古傷とで割り振られた。

 自分の檻で入れ替わりが起き、自分が出て行かなかったのは幸いだった。

 入れ替わりは急で、排泄する為の砂場に隠してある注射器を咄嗟に持ち出す事など出来なかっただろう。

 そしてそれから、片目が一度外へ連れて行かれた。

 長い時間が経った後に、片目が戻ってくると、腹に縫い痕が出来ている代わりに、首輪が無くなっていた。

 ……透明になれるのを生かす為に、腹に爆弾を埋め込まれたのか。

 体力を消耗したのか寝込む片目を見て、注射器は迂闊に使えないと分かった。

 首輪ならまだしも、腹に埋め込まれたらもう、取り出す手段は人間に頼るしか本当に無くなってしまう。

 逃げるという手段に、人間に頼らなければいけないという事は同時に成立するとは思えなかった。

 注射器を使う時は、ファルファレルロとなり透明化の能力を得る時、それは最低でも首輪を外せる時でないといけないのだ。

 

 片目の腹の糸が抜かれ、傷も塞がる頃。組織の人間が複数来て、ミッションの時がやって来たか、と察した。

 ガスで眠らされ、そして気付いた時には別の大きな檻の中に入れられていた。

 自分も片目も古傷も選ばれていた。

 今回は、前回のファルファレルロと戦った時よりかなり多く、三十体位は選ばれていた。

 新入りは少なかった。

 そこまで複雑な事はやらされないだろうが、新入りには難しいような事なのだろう。

 

 言い渡された事自体は新入りでも理解出来るような内容だったが、やや難しく、そして嫌なミッションだった。

 敵対組織の基地があると思われる付近の道を、この組織の重要人物が通らなければいけない。

 その周りを、重要人物が乗った車が通り過ぎる前から警戒し、人間やB.O.Wが居たら処分せよ。

 万が一その車に被害が遭い、死ぬような事があったならば、連帯責任を負う。即ち、死ぬ。

 連帯責任を負うと言っても、区画ごとで別れ、仕留め損ねた区画だけの仲間が死ぬ、という事に関しては幸いだったが。

 

 三体ずつで、十の決められた区画に分かれて警戒をする事を命じられた。

 自分達最も古くから生き延びている中の十体がチームを決めた。

 相変わらずな奴は相変わらず、ただ自分と気の合う奴を仲間に引き入れている。色欲狂いとか、悪食とかはその筆頭だ。

 楽しんでいるな、と良く思う。支配されている事をとっくの昔に受け入れているようなその姿は、羨ましい所もあれば、理解出来ない面もあった。

 暫くすると、大体チームが纏まったが、ファルファレルロに変態した片目と同じチームになろうとする仲間が居なかった。

 仕方なく、自分が少し編成し直した。

 自分と片目、そして古傷とで組んだ。片目は今は、自分達同期の中でもファルファレルロと戦った仲間以外からは疎まれている。古傷は、入った時の事を知っている仲間の大半からは疎まれていた。

 それも当然と言えば当然だった。古傷は、敵対した時に仲間を多数殺している。

 片目に負けて、片目が引き入れた。

 戦闘能力は、自分よりも高い。

 そして組み分けが終わった後、当然のように最も一番危険らしい区域に配置される事が決まった。

 まあ、納得はある。

 最も強く、そして透明化の能力を得た片目。その次に強いと言っても過言ではない古傷。良く纏め役になる、最も古くから生き残っている中の一体である自分。

 危険な所に配属される役としては適している。

 

 深夜に、ミッションの区域からはやや離れた場所で降ろされた。

 ミッションの区域は森の中だが、ここは勾配のある荒地だった。隆起した岩や逆に凹んで水が溜まっている場所が多く、全員が降ろされると、ここからは歩いて行けと言われた。

 首輪が一定のタイミングで振動し始め、配属されたミッション区域に入れば止まると説明された事を思い出す。

 トラックが去っていき、人間がまた、十人程残った。

 ファルファレルロと戦った時に自分達を連れて行った男も居た。

 そして、その男が言った。

「じゃあ、行こうか」

 長い銃器を手に持ち、そして背には狙撃銃がある。腰には爆弾も複数あった。

 容易に背中を見せるその男を襲おうとする一匹を周りが止めた。

 背中を見せていても、距離は十分にあるし、そして何より、背中を見せていようとも自分達に意識を払っている。

 今、背中から襲っても蜂の巣にされるだけだった。

 それに、襲って殺したとしても待っているのは死でしかなかった。

 まあ、止めたのは、そんな事までは分からずに、この男がこの前、ただの小さな銃で近付けもさせずに即死させたのを見たからだろう。

 

 歩いている最中、月はとても明るく輝いていた。

 けれど、太陽のように眩しくて見れないという程でも無い、優しい輝きだった。

 何だろうか。

 それを眺めると、妙な気分になってきた。胸にこみ上げてくると言うか、頭を埋めたくなると言うか。

 立ち止まっていると、片目に背中を強く叩かれた。

 ……こんな気分になってては仕方ないよな。

 でも、いつか、好きなだけその気分に浸りたいと思った。




No.01:
片目
透明化能力を生かす為に爆弾を首輪から腹に埋め込まれる形に変えられる。
当ハンターは元から脱走するつもりは余り無い為、そんなに気にしていない。
今のところはファルファレルロになったからと言って異常はない様子。

No.97:
古傷
背中と腹に爪で出来た古傷がある。
ハンターα同士の戦いで、敵対組織に属していたハンターα。
主人公側の仲間を多く屠るが、最終的に片目に負ける。
片目は殺さずに仲間に引き入れた。
その時に、その古傷がまた仲間を害したら、連帯で片目も殺されるという誓約をされた。


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ぶっちゃけ飢えてる。

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