また書いた。難しいこと考えずにかけるから楽しいんです。
某日、今度は冷蔵庫の中。多くの食材が冷蔵され眠っている。そんな静かな環境の中、何かを呼ぶ声が響く。
「おい、そこのお前」
返事はない。
「そこの黄色いボディに茶色のアクセントがあってカップに入っているやつ」
まだ返事はない。
「子供も大人も皆大好き、超人気もののお前!」
少し声が大きくなったが、それでも返事はなかった。
「先程この家の長女に名前書かれたやつ!」
「あ、俺っすか?」
「そうや、お前やプリン」
冷蔵庫の手前の方で鎮座しているプリンが反応する。
「なんですかって…、あれ? どこから?」
声がした方、後ろを振り向いてみるが皆眠っていて起きている奴が見当たらない。
「ここや、ここ」
「え? どこ? …って、あ、よく見えないっすけど奥の方にいる…」
「そうそう。あ、今目があった俺や」
「あー、わかりましたわかりました。あなたは…、ゼリーさんっすか?」
「そうそう、ゼリーさんや」
どうやら互いを認識し合えたらしい。
「なんか用っすか?」
「まあな。名前なんか書かれてほんま人気やなーと思ってな」
「いやまあ…、それほどでも…。なんか風呂上がりに食われるみたいっす」
「おーおー、羨ましいこった」
ゼリーが妬ましそうに言う。それを聞いてプリンは苦笑いを浮かべた。
「ゼリーさんはって、そういえばなんでそんな奥にいるんすか」
「聞いてくれたな小僧。俺はな、ゼリーはゼリーでも普通のゼリーちゃう。あの、お歳暮の詰め合わせのやつなんや」
「そうなんっすか」
しんみりと語り出すゼリーにプリンが軽く返す。
「来てすぐは食ってくれたんやけどな、子供達の口には合わんかったんや。それから誰も手を伸ばしてくれんくて、新しくやって来たやつらに追いやられ続けた。今ではこんな奥まで来ちまってよ、皆の影で寝る日々や」
「お、お気の毒で…」
プリンは困っていた。既に消費されることが決まっている勝ち組の自分が、この負け組のゼリーになんて言葉をかければいいのかさっぱり思い付かないのだ。ぶっちゃけ、むしろ面倒くさいと思っている。
「最近じゃ誰も俺のことなんか覚えちゃおらん。そろそろ賞味期限もきれるっちゅうのに……。このまま放置されて、大掃除で発掘され破棄される未来しか見えへん」
「そ、そんなことはないんじゃないっすかね」
「もう3ヶ月、いや、それ以上こんな感じやぞ。それでも言えるんか?」
「それは……、もうめんどくせぇ」
プリンは小さな声で呟く。幸いにもゼリーには聞こえていない。
「ええなー、プリンは人気で」
「まあそんな言いなさんなよ」
違う方から声がした。プリンでもゼリーでもない。
「なんやお前は、ヨーグルトやないか」
「ゼリーさん、プリン君困ってるからその辺でやめてあげて」
ねちねち続けるゼリーを、今までのやり取りを見ていたヨーグルトが落ち着けようと試みる。
「おいヨーグルト」
「なによ」
「お前も毎朝奥さんに食ってもろうとるやろ」
「そうだけど…」
「やからお前も人気者や、プリンサイドや。けっ」
ヨーグルトはため息を吐いて諦める。その時、突然冷蔵庫が開けられた。
「あっちー、なんかないかなー」
風呂上がりのこの家の大黒柱、お父さんだ。お父さんは冷蔵庫を物色し始める。
「プリンあるじゃん。あ、でも名前書いてある。食ったら怒られるな」
一度手に取ったプリンをもとあったところに戻す。
「おとーさーん。プリン私のだから! 食べたら口きかないよー」
「わかってるぞー!」
遠くからの娘の声に大きな声で答える。
「他は…、ん、これは」
その手は奥の方へ伸び、色々な物の影に隠れていたゼリーをひっつかむ。
「賞味期限もうすぐじゃん。これでいっか」
冷蔵庫の戸がバタンと閉められる。
「ゼリーさん、行っちゃいましたね」
「よかったじゃない。あんなこといってたけど…」
ゼリーはぺりっと蓋を開けられ、滴が一滴ポロリと垂れた。それはまさに嬉し涙のようだ。
何書いてんだろ…。
真面目に俺ガイルのSS書いてるので読んでもらえると嬉しいです。