初回はゴキブリの話。想像はしない方がいいです。苦手な人はやめといた方がいいかも。これはスルーして、そのうち更新される次の話を読んでください。
某日、とある家の冷蔵庫の裏。皆が大嫌いなものたちの集会が行われていた。通称G、ゴキちゃんである。
「皆、今日は集まってくれてありがとう。感謝する」
集団を前にボスと思われる1体が声を上げる。それを聞いて静まりかえった。
「今回は緊急集会であるのだが…」
ボスが切り出したところ集団の中の一人が質問を飛ばす。
「緊急って、何かあったんですか?」
その一言で周囲はざわざわと声を漏らし始める。それにかき消されないようボスは一際大きい声を出した。
「静かに! 緊急の理由だな。一部のやつは知っていると思うが、ここ最近人間にやられた同士が続出している。ここ三日で5人も殺られた。皆気が緩んでいるのではないか?」
ドスのきいたボスの声にすっかり集団は沈黙してしまう。
「我々は基本タフな生き物なのだ。にもかかわらずポンポンやられて、情けない。今の時代、人間たちの武器も進化して厳しくなってはいるがそれでも情けないとは思わんか」
ボスは一同を見回して続ける。
「だからここで我々のあり方をもう一度振り返り、気を引き締めるための緊急集会だ」
集団は静かにボスの話に耳を傾けている。
「ではまず我々が人間の家に住むときの基本、一番大事なことだ。これがしっかり出来るか出来ないかは命の危険に直結する。はいそこのお前! 何だかわかるか?」
前の方で話を聞いていた若い1体をボスが指名する。
「はい! 人の前に姿を現さないことです!」
元気よくその若造は答えた。
「うむ、その通りだ。我々はまず気づかれてはいけない。1体でも見つかると家の主は他にもいるのではと警戒する。よって自分だけではなく他の奴らの命まで脅かされるのだ。今回はもう手遅れだがな」
集団の元気がそれを聞いてなくなる。
「では次は見つかった時の対処だ。まず大事なのは刺激しないこと。鉢合わせでビックリしているのは向こうも同じだからここでサッと姿を隠せればよい」
その発言に1体が声を上げる。
「ここの家主は全然驚かないんですが!」
「ああ、この家の主は人間の中でもなかなかの強者だ。一度見つかれば逃げ切るのは難しい。しかし我々は力は強くないから、逃げの基本をしっかりおさえて実行するしかないのだ。わかったか?」
「はい…」
どうやら彼らはなかなか過酷な環境にいるらしい。
「といっても基本は簡単だ。素早く物陰に隠れじっと身を伏せ相手が諦めるのを待つ。隙を見ては更に相手の手の届かない奥へと逃げる。これだけだ」
「はい!」
ボスの言葉に一同が声を揃える。
「よし。なら次に万事休すって場面だ。周りの物陰もなく、人間が立ち塞がっているとき。そんな時は……」
「「「思いきり飛ぶ!」」」
「そうだ。皆わかっているじゃないか」
集団の息はぴったり合っていた。それを聞いてボスもどこか満足そうである。
「よし、これで復習は終わりだ。くれぐれもしっかり気を付けるように! では解散!」
ボスの終了宣言で集団の力は少し抜ける。各々がお気に入りの場所へ帰ろうと動き出したその時、異変に気づく。
「ん、なんか煙くね?」
「ああ、本当だ」
「あれ、なんかボーッとしてきたー」
先程まで集団をまとめていたボスがはっと何かに気づき大声を上げる。
「皆聞け!この煙は吸うな! 急いで煙のないところへ逃げるんだ!」
ボスの声に皆が慌てふためく。それぞれバラバラに逃げて行くが続々と力尽きていく。ボスもそれを見て崩れ落ちた。
「ま、まさかバルサンを焚かれるとは……、無念…」
緊急集会も虚しく、彼らは散ったのだった。
「はー、最近ゴキブリたくさんいたからこれで大丈夫でしょう」
彼らが力尽きた後、部屋にはいってきたおばちゃんが窓を開けたがら言う。残った煙と一緒に、たくさんの小さな魂が空へと上っていった。
んー、疲れてるのかな。アホなこと考えてしまった結果がこれですね。
では。