チームZリーダー、カラスが死ぬことでアリス、創造主への道が現れる。
だが、その先に待っていたのは罠だった。
「罠だッ!」
すぐにそう気づいた俺たちはエレベーターから真っ先に飛び出た。獣型のLOSTはエレベーターに向かって突進し、エレベーターを破壊した。
胴体や頭は犬や狼といったものに近く、尻尾の先にヘビのような頭がついていた。そして何よりも恐怖を感じたのは、目が3つあり、口から大きな八重歯が出ていたことだ。
「ッ!退路を絶たれた。」
「オルガ、これはマズイぞ」
エレベーターから下り、左に避けたキラとオルガはすぐに周囲を確認する。
「ルナ!」
逃げ遅れたルナがエレベーターの近くで足を抑えて倒れている。
俺はすぐにルナのところへ向かい、ルナを抱えるとその場から逃げるように壁際を走った。
「大丈夫か?」
「ちょっと足ひねった・・・かな」
俺を見たLOSTは俺に狙いを定めて飛び込んでくるが、間一髪避けたため、壁に激突する。
(この獣・・・海都、こいつの腹のなか不味いことになってる)
「どうした、タマ」
(腹のなかに、何人もの死体を抱えている・・・。どういう意味かわかる?)
「要するに、
(正解!)
「クイズやってる場合じゃねぇよ!」
LOSTは俺を追いかけ、少しでも間合いが狭まれば、爪と牙で俺に襲いかかろうとする。
「うらぁッ!」
俺たちを狙っていたため、他に反応できなかったのか、横からのシュウの攻撃をまともにくらう。
「ったく、ルナをこっちに!」
「わかりました!」
俺はルナをオルガのところに連れていくと、キラと共にLOSTに攻撃する。
「p、α、p、α・・・」
LOSTは変な鳴き方をする。まるで何かを呼ぶような・・・
「柊、気をとられるな!今は目の前の敵に集中しろ!」
「・・・は、はい!」
LOSTはオルガとシュウの斬撃と、キラと俺の炎によって動きが鈍くなる。そして討伐から数分後、途中から女のような悲鳴をあげ始めた。
だが、こちらも無傷とはいかない。
キラは右腕を負傷し、オルガは天銀のほとんどが使い物にならない状態になってしまう。
だが、
「これでどうだァーーーッ!」
キラは右腕の骨を折りながらも、LOSTの首目掛けて鋭い攻撃を放つ。
「P、ααααααααα!」
LOSTの頭は悲鳴をあげながら胴体と離れて首に落ちた。そしてLOSTは灰になって消えた。
「はぁ・・・はぁ・・・やっとか。」
「LOST、いくらこの大きさでも侮れないな・・・」
『見事だよ、チームO』
再び放送が入る。
「アリス・・・」
『この先の扉を進め。罠はない。だが、タイムリミットはある。それは、私があなたたちの監督に止めをさすまでだ』
「何!?」
『今、私は一階に来ている。もうすぐ地上で待つ四人のところへ行くだろう・・・では、』
放送が終わり、キラは左拳で地面を殴る。
「キラ、今は地面に怒りをぶつけている暇はない。急ぐぞ」
「・・・今はお前の命令に従ってやる。考えが一致したからな」
俺たちは重たい体で扉を開け、先へと進んだ。
★
「お前は・・・」
「チームOのみなさん、こんばんは。私はアリス。この事件の首謀者です」
監督や玲華の前に現れたアリスは手ぶらで、季節的にはまだ遠いフードつきのコート羽織っていた。もちろん、アリスの顔はフードを深く被っているためか、あまり良くは見えない。
「今、あなたたちの仲間は地下からの脱出を試みています。入ってきたエレベーターはLOSTによって破壊。扉の先は出口なんてない大迷宮。あとはあなたたちを倒すだけですね」
「アリス、見えないか?監督の前に私たちがいることを」
そう言い、監督の前に四津野と玲華の二人と、監督を庇うようにリリーが立つ。
「そう・・・私の
アリスは手のひらを3人に見せるように、手を前に出す。
「何?・・・ぐぁ!」
次の瞬間、3人は地面に這いつくばるかのように倒れる。全員が立ち上がろうと必死に抵抗するが、まず腕や足が動こうとしない。
「チームZは無能力者の集団じゃ・・・」
「確かにチームZは無能力者が多い。だが、私はその中で数少ない能力者の一人。これを隠して四年間、長かったよ」
「だからデータにないわけだ・・・」
「そして、もう一つ。私は5年前に起きたE-vil事件の生き残りの一人、アリサ・ハズソード。・・・驚いたわ、殿堂杯のとき、チームAのスパイ二人にバレるなんてね。まぁ、その二人は今ごろ寝室で永遠に寝ているけど・・・フフ」
アリスはコートの中から短刀を取り出すと、それをリア監督に向けた。
「う、腕が・・・」
リア監督の肘や膝は曲がらない、腕や脚は動かない、棒立ちの状態。アリスの短刀は、抵抗できない体に少しずつ入っていく。
「あ、が・・・痛ッ!」
「ほら、悲鳴をあげて。聞きたいな・・・大の大人が痛みで叫ぶところを」
次の瞬間、アリスと監督の間に、衝撃波が生まれた。
アリスは短刀を離し、受け身をとる。
「来たか・・・アリス」
フロアの南口、非常口のピクトグラムが光る下に立っていたのは勅使河原だった。
「勅使河原・・・まさか、校長室から出てきたっていうの?」
「校長にトイレって言ったら出してもらえたよ。尿瓶を出されたときは焦ったがな」
今まで事務仕事の手伝いをしていたはずの勅使河原がそこにいた。
勅使河原は監督の方へと歩き、監督の脇腹に刺さるナイフを抜くと、ちょっとした回復魔法で治療する。
「それはリリーの能力・・・どうして。」
「能力を盗む能力。これ、なんだと思う?・・・勅使河原 八野地、21歳。名前から歳まで全部嘘。髪も染めて、口調も変えて正解だった。まさかこんな場所で決着をつけることになるとは思わなかった」
「
「ご明察。お前の能力を知ってる人、案外近くにいたな」
「お前の能力は、手のひらを見た物の筋肉を好き勝手に操る能力だ!」
「だが、今お前が使える能力はリリーから奪った回復魔法。それでどうやって私と戦うんだ?その能力で奪える能力は一つのみ。前に奪った能力は上書きされてしまう」
「そう。だから俺はこの能力をある人から受け継いだ。波動という優秀な能力をな」
勅使河原は指を鳴らす。そこに生まれた波がアリスへと飛んでいく。アリスはそれを避けると、勅使河原に手のひらを見せる。
勅使河原は目を閉じて見ないようにするが、アリスの投げた短刀を避けられずに当たってしまう。切り傷で済んだか、それでも腹から血が流れ始める。
アリスは床に落ちたナイフを拾うと、目を閉じたままの勅使河原に攻撃を仕掛ける。
「ここだッ!」
「ッ!・・・きゃあっ」
勅使河原は周囲の波でアリスが近づいたことを知り、アリスのみぞおち目掛けて掌底を浴びさせる。
「やるな、アリス。」
勅使河原は痛覚を頼りに傷を探し、リリーから奪った力で傷を癒す。
「能力が無意味な状態の私じゃ、あなたを倒すことは厳しいみたいね。なら、これなんかどう?」
アリスの出した考えはとても卑怯なものだった。
「ほら、あなた達の監督。そして私の盾になるもの。さぁ、あなたに攻撃できるかしら?雨のなか、青山の刺客によって傷ついたあなたを、まるで捨てられた猫を拾うかのように拾って六年間も育ててくれた、最愛の母を!」
アリスは監督の首にナイフの切っ先を当て、人質のような扱いをする。
「いつまで私があなたの術中にハマっていると思う?」
『Delete』の文字が空中に浮かぶ。アリスが気づいたときにはもうすでに遅かった。リアは既に動けるようになっていた。リアはナイフをもつアリスの腕を掴む。
「残念だね、アリス。これであなたも終わり。データ化開始!」
「や、やめろ!・・・なんて言うと思ったか?私の役はもう終わった。既に!計画は最終段階まで進んでいる!」
さぁ、創造主様よ!この学校に!チームZに!平和をもたらせ!