Creatures.E   作:駿駕

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あらすじ
チームZの校舎(敵地)に乗り込んだチームO+α。
そこであったのはチームZのリーダーのカラスと、黒いローブと白いローブのチームZのメンバー。

そしてクロサクはカラスによって腕を失ってしまう。



チームZの掟

「私を殺せ!」

 

俺とルナとシュウを一度、監督のいるロビーへと帰った。この女を監督に渡すためだ。女の手と足には手錠が付けられていた。

監督のデータ解析はその人の秘密や、思考を暴くためにも使うことができる。現に遅刻したときに使われた。

「殺さない。死んだら情報は得られないからね。今、あなたはリリーの治療を受け、死にたくても死ねない状態にある。舌を噛みきってもまた新しい舌が生えてくるから安心して」

「ッ!」

「えっと、あなた・・・フフ」

「何見てんだよ・・・」

「ごめんなさい、あなたの秘密見ちゃった」

「今関係ないだろ、それ!」

女は顔を赤らめ、監督に吠える。

「ごめんごめん。でも、あなたみたいな可愛い子もいるのね。いつも殺伐としてるから」

「私たちが被ってるこのマスクは人に顔を見られないようにという理由もあるけど、それぞれ色んな理由があるんだ。見られたくないから、他人に表情で感情を悟られたくないから、行動を読まれたくないから・・・私は自分を隠すためにしていたんだ。本当はこんな殺伐とした殺すことしか考えてないチームにいたくはないんだよ」

「私、確かにあなたを可愛いと言ったけど、あなたに慈悲は無いわ。チームZメンバー全員にね」

データ解析を終了した監督は言葉を女に吐き捨てて、女から離れ、俺たちにデータを渡した。

「三人とも、このデータを元に頼むよ。私はもう少しだけ、彼女から情報を炙り出そうと思う」

そして女の近く戻るとまたデータ解析を始めた。

「なかなか酷いことを言うものだな、お前のところの監督も」

「ブラックジョークじゃないかな?・・・そうであって欲しいな」

「そうかもなあ"ッ」

「大丈夫か?」

「平気だ。このくらい」

腹の傷が痛むのか、シュウは腹を押さえていた。

「とりあえずデータ見よ、地下へ行く方法があるかも」

ルナは小型通信端末を取りだし、データを送信する。

受信した端末の画面にはルナの言った通り、地下へと続く階段が写し出されていた。

だが、そこの近くで二つの動くマークと一つの動かないマークがあった。それはオルガとキラとクロサクだった。

 

「クソ・・・がァッ!」

苦戦するオルガとキラ、そして二人係で止まらないカラス。そして倒れたまま身動きをとらないクロサク。

二人はクロサクを庇いながら戦っていた。

「クロサクに近づけさせるな。今、監督が三人をこちらへ向かわせるように指示した。すぐに応援ならくる」

「なら良いけどよォ!こいつの攻撃を防ぐのはもうキツイぜ」

「お前も弱音、吐くんだな」

「俺だって弱音の一つや二つ吐くさ」

「応援が来るのか・・・やっかいだな」

二人はカラスの声を聞き、すぐに距離をとる。そしてキラは足元のクロサクを見て少しだけ前に出た。

「私はカラス。チームZのリーダーだ」

「そんなことは知っている。そしてお前らが悪行を働こうとしているのもな」

カラスは鎌の刃を地面に付けて、マスクの奥でため息を吐く。

「悪行?人の敷地に土足で入り込み、警備員を殺す君たちこそ、悪じゃないか?」

「ッ!」

キラはカラスの言葉に舌打ちをする。

「もちろん、私たちの警備兵は心のないロボットだが」

「黙って話を聞いてればよォ、まるで自分達のやってることが正しいことのようにいいやがって・・・」

「何を言っている?全て正しいことだ。創造主の復活は平和を意味する。もちろん、今回の作戦は私の指揮の範囲外だが」

カラスはもう一度、鎌を構えるとキラを攻撃する。

「私はあくまでも侵入者の排除が目的だ」

「クソッ!こんな細い体のどこにこんな力があるんだよ!」

キラは鎌を防ぐことができずに、左手の装甲を剥がされた。悪魔の契約によって装備された黒い鎧は左腕の部分だけが剥き出しになる。

「キラさんッ!」

やっと三人が到着する。

柊はクロサクを見ると、すぐにベルトを使って止血をする。すでに多量出血で危険な状態だが、リリーのところへ運んだときに最低限の処置はしていないと、リリーも能力での治療は厳しいだろう。

「クロサクはすぐに運びます。ルナも着いてきて」

「ちょっと待って、クロードが」

「クロード?おい、そこの女!」

カラスは鎌をルナに向ける。

「今、クロードと言ったか?クロードはどこにいる!」

 

ここだ、カラス。

 

カラスの声に、クロードは霊体となって前に現れた。

カラスはそれを見て、

「クロード!どうしてそんな体に!」

と言いながら、クロードの足元へと向かう。

「殺されたんだよ、それで今は幽霊さ。」

「・・・クロードを知ってるんですか?」

「クロードは私の友人だ。ここ数ヶ月姿を現さないからどうしたのかと心配していたんだ」

「良く言うな。お前のところのアリスってやつのせいで、この体になったんだ」

「アリスが?・・・話してくれ」

クロードはカラスに全てを話した。ルナの側にずっといたことからアリスの発明したメビウスプログラムまで。「アリス・・・。私の部下が酷いことをした。どうやら、悪は私達だったようだ。アリスからはこう聞かされていた。創造主が甦れば、この学園は平和になり、能力者、無能力者同士で争わなくて済む・・・と。」

「カラス・・・。」

「なら、部下を止めるのが、リーダーの役目じゃないか?なぁ、オルガ」

「そうだな・・・。キラにしては正しいこと言うじゃないか」

「俺にしてはとはどういうことだよォ・・・」

「そのままの意味だ」

カラスはペストマスクを外し、俺達に顔を見せた。

「これでいいだろう。私は君たちの味方だ」

「いいのか?」

「かまわない。私は平和のためにチームZのリーダーをやっていたからな」

 

『あなたがZを裏切るとは残念です、カラスさん。』

 

その声が聞こえたときには遅かった。カラスの胸に穴が開き、血が流れていた。

「クソ・・・」

『今、私は地下にいます。エレベーターで降りてきてください。エレベーターまでの道はカラスの血が教えてくれるでしょう・・・では地下で会いましょう』

放送はそこで終わり、カラスの血が廊下の奥、突き当たりの部屋の、扉の隙間を入っていった。

「あそこか・・・。準備はいいか?」

オルガの言葉にここにいた全員が返事をする。一人を除いて・・・

「・・・こいつはどうするんだ」

霊体として俺たちの前に出ていたクロードは、膝立ちで死ぬカラスを指差していた。

「クロード・・・」

ルナはカラスの血を持っていたハンカチに染み込ませ、袋のなかに入れた。

「彼の流した血は私たちの力になる。残念だけど、この戦いが終わったら墓を作ってあげよう」

「・・・わかった」

 

扉を開けると、自動で電気がついた。そこは会議室のような場所で、壁際にテーブルとイスが積み上げられていた。

そして普段議題を書くであろう黒板が真ん中で分かれ、エレベーターの扉が見えていた。

「こんなところにあったのか・・・。」

「いくぞ・・・」

エレベーターに乗った俺たちは一番下のボタンを押すと、エレベーターは静かに動き始めた。

「いよいよ・・・だな」

「クロサク大丈夫かな・・・」

クロサクとカラスは放送を聞いてやってきた監督によって運ばれた。

カラスは生き返らないが、クロサクはまだ息はあった。

(そういえば、海都も腕切られたときあったよね)

あったな、そんなこと。シュウとの初試合で殺されかけたんだよな。

(あのときは大変だった。何日も目が覚めない状態が続いたから、もう心配したよ)

心のなかでタマとそんなことを話しているうちにエレベーターの扉が開いた。

 

そこに待っていたのは大きな部屋と、その先に待つ巨大な獣のLOSTだった。


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