ルナはチームZの刺客であるロカに下校中を襲われるが、クロードから教わった血の魔術と、会議をサボったキラによって返り討ちにして見せた。
俺は何を信じて生きればいい・・・
チームA隊長、東条 アキネ。隊長事務室にて行方不明。
チームA監督、グリフォン。行方不明。
チームA隊長補佐、ロカ・セルナード。校外戦闘による戦死。
周りの重要人物が消えていくなか、俺は一人残されてしまった。俺は何かに助けられて生きてたんだなとあらためて感じた。
超能力なんて持っていても、守るべきものを守れなかったら意味のない力だ。・・・姉さんが言っていたな。
「おい、シュウー」
前から柊が俺の名前を呼びながらこっちへ来る。
「・・・シュウ?」
今の俺にこいつと和気あいあいと話せるような力はなかった。
悪いことをしたな、と後悔をしながら俺はその場を離れた。
(お前はそんなに弱いやつなんだな)
柊の憑き狐の声が聞こえるが、今の俺には言い返す気力も残っていなかった。
俺は外に出て噴水の見えるベンチに座るとため息をつく。こんなにも寂しいのか、孤独というのは・・・
「東条 シュウさん・・・ですね?」
前から、手に俺の刀くらいの大きさの刀を持ち、奇妙な仮面を付けた男一人が話しかけてきた。その後ろにもそれをコピーしたような同じ姿の男が二人。
「そうだ。」
「我々はチームZ、創造主の使徒です。あなたをチームZへと招待しに来ました。今のチームAでは負の道を進むに過ぎません。ぜひ、チームZに入っていただきたい」
チームへの招待。校則上、ないわけでもない。むしろその手があったな・・・。しかし、
「俺はな、いくら雑魚になってもチームAのエリートの称号だけは手放したくないんだ。姉さんが死んだと確定するまではな!」
「三人相手に刀を握りますか。チームZの戦闘班をなめないでください」
「三人か・・・ちょうど俺も三つ能力があるから同等だな」
刀への能力エネルギー強化付与と瞬間移動のための足への能力エネルギー移動はできた。そして目に能力エネルギーを移動させている最中に突如、大きな槍でも刺されたような痛みが俺に襲いかかった。
急に首から胸の中心にかけて痛みが走り、目から涙が溢れだす。
(ッ!・・・こんなときに)
俺は目の下を手の甲で拭う。手の甲に太めの赤い線が一本通っていた。
「どうやら、三つの能力を同時に使うことは不可能みたいだな・・・さらばだ、東条 シュウ!」
能力三つ使えずとも、お前みたいなモブキャラなら、何人でも余裕だ。
俺の刀はヤツの腹を通る。
「ッ!一人殺られた!」
「次はお前だ。」
姉さん、ごめん。反省してなかったみたいだ・・・。
「やーい、やーい!シュウのバーカ!」
俺が能力に目覚める前、人よりも体が弱く、運動も勉強もできない、いじめられる対象のような子供だった。
「またウチの弟を!」
「げッ!シュウの姉ちゃんだ!逃げろー!」
「お、お姉ちゃん!」
「シュウ!大丈夫?怪我はない?」
「大丈夫・・・だよ」
姉さんはあの頃から心配性で、俺がいじめられているとすぐに駆けつけて、俺を助けてくれた。俺の体を見て回ってケガがあったら、すぐにポケットから消毒液、ハンカチ、絆創膏を出して応急措置をしてくれた。
「俺・・・いつかはお姉ちゃんを守れるような男になりたいな・・・」
「あはは、シュウにできるかな?もっと強くならないとね、まずは私に腕相撲で勝てないと」
「勝てるよ!・・・今は無理だけど・・・」
そして姉さんに着いていくように、この学校の中等部に入って能力の勉強をした。この体に生まれた三つの能力はその証。
「君、すごいね。普通、能力ってのは一人1つなんだが。君は三つも使えるのか」
そしてチームAの監督に声をかけられ、やっと姉さんを守ることができると思った。しかし・・・
姉さんを守れなかった。
「もう・・・いない、のか・・・。」
俺は四肢バラけた三人の死体の真ん中で、刀の頭に両手を添えて杖のようにしていた。
「シュウ!」
そこに柊がやってきた。俺が彼の呼び掛けに無視したことが気になって、俺を探しまわっていたのだろう。すでに肩に落ちた雨が肘まで浸透していた。
「柊、俺にチャンスをくれないか?」
「ほら、入ってきて。・・・まぁ、みんな知ってると思うけど」
俺は壇上に立つ。以前見た顔ぶれが唖然としてこちらを見る。
「チームA兼チームOの作戦に参加することになった、東条 シュウだ。よろしく頼む」
★
学校まであと少し・・・まさか向かう途中でLOSTが暴れているとは思わなかった。
さすがエース。LOSTを簡単に倒すなんて・・・。
「おい、東条」
「なんですか?」
「お前、俺が消えたチームAはどうなってる?」
「それが・・・」
私は頭角を現したロカがチームZのメンバーだったことを話した。エースはロカの名前を聞いて、何か思い当たる伏があるのか、目を閉じて自分の唇を触っていた。
「・・・確かに腕は良かった。1、2年って感じではなかったな。確かにお前やお前の弟みたいな天才もいる。だが、アイツはどこか違う何かを持っていた。まるで死を実感して、そこから何かを得たような・・・」
「それでロカは人間ではなく、アンドロイドでして」
「ん?それは知っていたぞ。」
「え?」
「前にアイツと戦ったんだ。まだ九尾に完全に侵食されていない頃な。そのときに、アイツから機械のような音が聞こえてな。ほら、動物って野生で生きていく中で聴覚とか進化していくだろ?それでわかってた、でもチームZのメンバーだったとはな」
「で、今はそのチームZが悪事を・・・」
「じゃあ、目標はそれだな」
「目標って?」
「チームZを倒す・・・ってところだな。チームOもいるんだろ?あそこには俺の弟がいる、なんとかなるさ・・・ほら、見ろ!明かりだ、もう近いだろうな」
「急ぎましょう」
★
「準備はできたか?」
監督が全員に聞く。
全員は通信機を二つ腰に装着し、フードのある服を着て、各々が普段装備する武器を持っていた。俺やキラは武器を持たないが、普段何も持たないクロサクは雷帝のものと思われる短刀を持っていた。
「何かあればすぐに私とリリーのところに通信を入れてから来てくれ、すぐに治療はする。・・・では、行くぞ」
夜、廊下をできるだけ音をたてずに歩く。チームZは俺たちとは別に教室以外に専用の教育、訓練施設を持つ。理由はチームZだけが、能力者兵器として政府から援助を受けているからだろう。
「・・・緊張しますね」
「ルナはあまり実戦に参加してないからな。まぁ、いつも通りで良いと思うよ。十分な戦力だし」
「・・・大丈夫ですかね。」
「?・・・全員、一度止まれ」
先頭を歩く監督が手を挙げ、「止まれ」と指示を送る。
「・・・どうやら、相手もそこまでアホじゃないみたあだ、見ろ。警備兵だ。」
施設前に設置されたアンドロイド型の警備兵。こちらにまだ気づいていないようだ。
「二体か・・・誰かあれを静かに壊すことはできないか?」
アンドロイドまでおよそ100メートル、この場から壊すことはクロサクの雷や、シュウの眼で余裕だが。
「陽動作戦なんてどう?誰かが出ていって、二体の眼を欺いてさ」
「四津野その役やるか?」
「じゃあ誰か二人、暗闇に潜り込んでヤツらを倒してね」
(本当にそれでいいのかな・・・)
タマやその他何人かが心配するこの作戦。
四津野が茂みからアンドロイドに歩み寄る。
「やぁやぁ、どーも。あ、私、知ってます?ちょっとあなたのところのリーダーさんに用がありましてね」
「見かけない顔だな、名前はなんだ?」
「いやー、私。チームOの四津野 千理といいましてね」
「アイツ!名前を言ったらあの服装の意味ないじゃんか」
「チームOだと!排除し・・・ろ・・・ォ」
アンドロイドが武器を構えたときにはもう遅く、アンドロイド二体の頭は、キラとシュウによって壊されていた。
「ナイス、四津野。」
「キラOk!シュウもやるじゃん」
「暗殺訓練はチームA内でもやっていたので」
キラは悪魔の契約による鎧を外し、四津野とハイタッチをする。速さなら二人が適任だというオルガの軍配がこの結果をもたらした。
「よし、行くぞ!作戦開始!」