チームZのアンドロイドを破壊した訓練中のチームOメンバー。だが、戦場に閉じ込められてしまう。
扉は強固な魔法陣で鍵がかかっていたが、オルガと玲華の連携によって魔法陣は破壊された。
「クロード、ちょっといいかな?」
私は昼休みにクロードと話すことに決めた。
私たちは海都、タマのようにあまり話すことがない。前まで長い間寝ていたのもあったし・・・。
何よりも一緒に戦う仲間として、コミュニケーションを取るというのは大事だし。
(なんだ?昼の間は戦わないのなら少し寝かせてくれないか?)
「ちょっと話したくてね。ほら、私たちあまり話してないじゃん?」
(・・・わかった。で、何か話題はあるのか?)
「話題・・・えっと・・・そうだ。クロードは吸血鬼なんだよね?やっぱり十字架とかダメなの?」
(ダメだな。昔、十字架のような形をした剣を振る男に会ったが、あのときは苦戦を強いられたものだ)
「男って?」
(オシャレな男だ。背中に十字架の形がはっきりと・・・思い出すだけで死にそうだ、違う話はないのか?)
「えっと、じゃあ・・・」
(・・・正直、お前と仲良くなれるとは思えない。)
「え?」
クロードは私の前に思念体として現れて椅子に座ると、私の持っている剣を机の上に置いた。
「俺は正直、なぜこんなことになってしまったと思っている。能力とはなんだとな。前にお前の体に俺の心臓が入っていると聞いたとき、本当にあの女を憎んだ」
「確かに、あの人はひどいことをしたと思う。死んだって考えると、今こうやって生きているってのはすごいことだけど、他にも方法はあったんじゃないかなって」
「・・・俺は一つ考えた」
「何?」
「お前にこの剣を渡して、俺はこの世を去る。そうすれば、お前は自由に生きれるんじゃないかって」
「それはできないよ。クロード聞いてなかったの?私たちの魂は二人で一つ。たぶん片方が消えたらもう片方も・・・」
「そう言い切れるか?今の状態は、海都とタマのような二つの魂と言えるんじゃないのか?」
「でも、海都は言ってたよ。夜になると、タマは実体になって現れるって」
「・・・俺は無理だ」
「そうだね・・・でも」
「赤井さん、ちょっといいかな?」
私が気を落とすクロードを励まそうとしたそのとき、リア監督が来た。
「どうしました?」
「ちょっと四時限目早めに始めるっての聞いてなかった?」
「あ!もうそんな時間でした?」
私は腕時計を見た。時間はすでに四時限目の開始時刻を越えていた。
「すぐにむかいます!」
(・・・)
クロードはそれから数時間黙ったままだった。
教室。
久しぶりに全員が集まっている。いつもは保健室と教室を行き来しているリリーもそのときは教室で、薬箱のチェックをしていた。
「それで監督。四時限目をいつもより十分も早く始めるって、いったい何事だ?」
監督は黒板前に能力で映像を映し出す。
そこに映っていたのはチームZのメンバーの教室だった。
一人の女の声しか響いていない教室。全員が黒板を見ていた。何よりも不気味なのは全員がさまざまな種類の仮面や被る、またはフードを目深に被るなどして表情が見えないということだ。
「これはチームZの授業風景だ。私が極秘で撮影した。」
「これってバレたらヤバイんじゃ・・・」
「それほどのことが今から始まろうとしているんだ・・・。
今、チームZのメンバーはLOST討伐部隊、派遣戦闘員などあらゆる場所で戦っている。特に今見てもらったのはチームZの中でも戦うことしか考えていない集団だ。あのなかで聞こえた声、あれはリーダーのコードネーム、アリスだ。本名はわからない。
ここ最近、今の教室にいた戦闘員が怪しい動きをしている。以前に発生した戦場Zでのアンドロイドの襲撃もこれだと思われる。
「監督ー。」
キラが挙手する。
「どうした?」
「なぜ、ヤツらは俺たちを襲撃したんだ?ヤツらに関わるようなことはしてないと思うのだが?」
「おそらく、チームZがあることを成功するために私たちが邪魔なのではと考えた。チームAはリーダー、東条 アキネを失ったことで今、あのチームを動かせる人材は0に近い」
「チームAの監督がいるじゃんよ」
「・・・キラ、知らないのか」
オルガはため息をつき、キラを見た。
「あそこの監督は東条 アキネが消えた次の日にアキネを探しにいって帰って来ていない。そう、新聞が取り上げていた。」
「学生新聞を見るヤツなんて真面目なヤツしかいねぇよ!新聞を読むのが一般常識だと思うなよ、真面目野郎」
「呆れたものだ」
「続けていいかな?・・・で、チームZの今の作戦、目標であることも私は知っている」
この学校の初代校長にして、この島を能力によって作り上げた創造主、クリエイターの復活だ。
「クリエイター・・・だと?」
勅使河原だけがその名前を聞いて反応した。
「どうした?勅使河原」
「・・・ザザエルも言っていた。クリエイターってな。確かあのときは、戦争に勝利するための鍵みたいなことも言ってたな」
「勅使河原、あとでそのことを教えてくれないか?」
「わかった」
「・・・話を戻すが、クリエイターの復活がチームZの目標だ。クリエイターの復活はこの世界の終末そのもの。そこでチームAと結んだ契約が鍵になる。我々、チームOはチームAと手を組み、クリエイターの復活を阻止する!」
話が飛び過ぎたせいで、クリエイターのことを知っている勅使河原以外は、話を理解できずにポカンと口を開けていた。
「質問いいか?」
オルガが挙手する。
「俺が勉強不足なのは先にあやまる。そのクリエイターってのは復活させてはいけないものなのか?」
「オルガー、チームZだせ?どうせ、悪者に決まってる。オルガさんはチームZのこと、悪者と思ってねぇのか?」
キラはオルガの質問を聞いて煽り始めた。
「オルガ、キラの意見に根拠は見えないが、ザザエルはクリエイターを能力者戦争の鍵、破滅を作り出す者とまで言っていた。あの生きるか死ぬかの状況で嘘を言うとは思わない」
「・・・わかった。ようするに根拠のある悪ってことだな」
オルガはやっと理解し、納得したようだ。
「・・・どうした?ルナ?」
「あの映像の声、聞いたことがある。あれって・・・」
ルナの額から顎にかけて嫌な汗が一粒流れた。
「有栖川 剣城さん・・・?」
作戦会議は終わって、リア監督はすぐにデータを消した。普段は会議の書類やデータはファイルして、チームOの全員が見れるようにしているのだが、今回だけは他に流出してはいけないのですぐに消したらしい。
「ルナ、有栖川 剣城って誰なんだ?」
「ここに来る前に廃れた博物館あったでしょ?そこで出会った女性なんだけど・・・。でもまさかあの人がここにいるなんてね」
「有栖川・・・アリスの本名は有栖川だったのか」
「でも、この前の殿堂杯にいたアリスって人と声が違うんだよね。あのとき聞いたのはもっと優しい声だったような」
「声か・・・」
そんな話をしていると寮前まで来ていた。もちろん、男子と女子で寮の入り口は違う。
「それじゃあ、また明日!」
「じゃあな」
私は寮に入ってすぐにある人に止められた。
「待って。赤井さん」
「あなたは・・・」
そこに立っていたのは、数週間前に教室に来て柊と戦ったロカさんだった。
ロカさんも終わったばかりなのか、いつものチームAの優等生が着る制服を着て、鞄を提げていた。
「ちょっと話がしたいのだけど・・・いいかな?」
「どうしました?・・・やっぱりアキネさんのことですか?」
「うんうん、違うよ・・・」
チームZのアリスさんの話なんだけど。
私はそれを聞いてすぐに剣を抜いた。
「警戒しないでください。そんな棒切れでは勝てませんから」
私は剣を振り、ロカを攻撃した。だが、剣は空を切った。まるでロカの前で空間が歪んだような・・・
「これって!」
「カウンターモード。」
私はロカの周りに浮いた三日月の形をした何かに当たって吹き飛ばされる。それは強くはないが、私を玄関から突き出す程度の力はあった。
「ごめんね、赤井さん。私はチームAのメンバーとしてあなたを殺したくないんだけど、アリスさんが命令を出す以上、やるしかないんだよね」
私はあることが気になった。なぜ、この事態に誰一人として駆け付けないのか、周囲に人の気配が全くないのか。
「あなたと柊君以外、今日はほとんどの能力者が戦略会議や補習授業に参加している。もちろん、あなた達の先輩もね」
ロカは不気味な笑みを浮かべながらこちらへと一歩ずつ歩いてくる。
「さぁ、始めましょう?どちらが死ぬか、戦闘をね?」