Creatures.E   作:駿駕

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あらすじ
チームAの隊長が東条 アキネになり、チームAとOは停戦契約を結んだ。

最後と思われるチームAとの戦闘、柊に勝負を仕掛けてきたロカは柊を圧倒し、監督命令による戦闘終了によって幕を閉じた。

そして今、学校にある人物が現れた。


インタビュー

「久しぶりだな、この施設」

 

赤い染みだらけのマントを羽織った男はフードを目深にかぶり、校内をまわる。

肩にはこれまた赤い染みのついたボンサックを背負い、とある場所を目指して歩く。

まるでダンジョンを進んでいるかのように・・・。

「アンタ、あやしいね」

湿布やら包帯やらを付けた巻いた髪をした女は男を不振に思ったのか、声をかけ、男の足を止めた。

「おい、フェローサ」

「黙ってて。アンタ、この学校の人間じゃないよね?この学校に何の用?ヘタしたら、アンタの周りに撒かれた粉が火を吹くよ」

男はフードの中から、辺りを見る。周りに粉が浮いているのが見えた。

「・・・やっかいだな」

男はついにフードを取った。

「アンタは・・・!」

 

「俺は勅使河原 八野地。伝説の一人と言えば理解できるか?」

 

粉はあくまでも空気に舞った状態で、男に近付こうとしない。なぜなら、勅使河原が空気をとある能力で操っていたからだ。

「ッ!」

「チームOの監督に用がある・・・案内してくれないか?」

 

「それなら私がやりますよ」

 

フェローサは現れた女に嫌な顔をする。

「げ・・・アリス」

三人の前に現れたのはチームZのアリスだった。

フェローサが嫌な顔をするのはチームA内で殿堂杯以来、あまりアリスに関わるなと言われているからだ。

「どうしましたか?私の顔に何か付いていますか?」

「ひぇ・・・」

フェローサは顔を近づけてきたアリスによって仰け反り、後ろに倒れた。

「誰でも良い。・・・頼んだ。」

「わかりましたー。・・・それではまたどこかで」

アリスはフェローサに手を小さく振ると、勅使河原と共に、歩いていった。

「なんなのよ、アイツ・・・」

 

 

「ところで勅使河原さん」

ただただ黙り込む勅使河原にアリスは話しかけた。

「どうした・・・」

「どうしてまたここに戻ってきたんですか?やっぱり雷帝さんが気になって?」

「・・・それもあるが、違う理由でだ。」

「理由は・・・話すわけないですよね。まぁ、いいですけど」

「・・・リアに新規メンバーの戦闘訓練の講師をしてくれと言われたからだ」

「話すんですね」

「あまり有害ではないからだ、アリサ。」

「なんでもお見通しってわけですね・・・」

アリスは勅使河原の方を見た。勅使河原はポケットから手を出し、アリスに手のひらを向けている。

「波動・・・波を使った能力。いつでも殺す気満々ですね。」

「有害ではないと思っているが、無害とは思っていない。その短刀、お前ならいつでも抜いて俺を殺せるだろう?」

「さすが二代目伝説の栄光を得て、この学校を去っただけでもあります。・・・話もこれまでですか」

アリスの目の前にはチームOの教室があった。

何があったのか授業中だというのに他の教室と違って盛り上がっている。

「チームOだな。ありがとう。礼は後で返す」

「どうも。暇だったらチームZにいつでも来てくださいね。楽しみに待ってますから」

そう言うと、アリスは来た道を戻っていった。

 

 

「新聞部だぁ?」

「はい!今日は元チームA、エースを倒した柊さんをインタビューしにきました。」

首から提げたカメラが特徴的な女子が訪ねてきた。新聞部なんて俺と無縁そうな言葉がチームOの教室に入ってくる。

「・・・悪いがそういうのは」

「いいんじゃねぇの?別によぉ。」

「キラ!」

「だってよぉ、新聞になるくらいすごいことをこいつはやったんだぜ!」

「・・・それを言われると仕方ないな。取材許可するよ」

「ありがとうございます・・・」

話がどんどん進んでいく。どうやら、俺に選択肢は無いようだ・・・

 

テーブルと椅子を真ん中に二つ残し、他を壁際に寄せると、そこに俺は座らされた。

前の席に新聞記者が座る。

「じゃあ質問一つ目です。柊さんの能力って具体的にはなんですか?試合中では、いきなり美人さんに変身したり、炎出したりしてましたけど・・・」

(美人!?・・・わかってるね。)

「俺の能力は狐術?ですかね・・・具体的にっていうとあまり説明しにくい能力なんですけど」

「狐術ですか。エースさんも狐術って能力名でしたね。エースさんと何か関係があるのですか?」

「エース・・・あの人は昔、俺の兄だったみたいです。記憶は残っていないのですが」

「なるほど・・・血の繋がりがあったということですね?」

「・・・」

俺はそこが気になっていた。あくまでも義理の兄だったのか、血の繋がりがあった兄なのか・・・。タマに聞いても「それはどうかな~~~。」とか、「まぁ、そこは悩みなよ」と言って、話から逃げるだけで、話そうとしない。

「・・・正直なところ、その部分はわかってないです。その記憶ってのも十数年前のことですから」

「なるほど・・・えっとでは二つ目です。試合中に見せたあの変身。あれで出てきたあの狐の尻尾が生えた女性はいったい誰なんですか?今、噂では試合上は普通に流れてましたけど、裏でルール違反だとか言われてるみたいですよ」

「まぁ、ルール上変身といえど、能力本質の違う者への変身は能力窃盗とか言われそうだからな・・・」

キラの説明が入る。

能力窃盗とは、他の能力者の能力を伝承や習得以外でコピーする。他の能力者に成り済まして能力を扱うなどのことをいい、ルール上では、それがわかった瞬間、退場となり、今後数ヵ月間は試合に出れず、成績も0点になってしまう。ひどければ学園追放まで存在するとかしないとか・・・

「えっと、それは」

(私が出ればいいんだよね?)

何を解釈したのか、タマが俺の代わりにまた全員の前に現れた。俺はまたあの全面本棚の部屋に閉じ込められる。

(おい!タマ!)

「おぉー!・・・えっと名前は」

「名前のない狐です。主の海都にはタマなんて残念な呼び方で呼ばれてますが」

「タマさんですね。やっぱりいつ見ても美人ですね」

「いやー、それほどでも。やっぱり一人の妖狐として美を保つことが大事なんで」

(何が一人の妖狐なんだか・・・)

「なるほど、柊さんの能力の源はあなたですか?」

「はい、そうです。海都なんて、私がいなければただの一般人ですから」

久しぶりになんでこんなヤツと契約をしてしまったのかと考えた俺だった。

「そうなんですか!?・・・でも、あなたという強い能力を体に宿すことのできる柊さんもすごいと思いますよ。私がそんなことしたらオーバーヒートしちゃいそうですし」

新聞記者の言葉にタマが納得したことがわかった。確かに普通の一般人だったら、こんな壮大な能力値、体が壊れてしまうだろう。でも、俺はあってすぐにタマを宿して戦えた。

なぜ、そんなことができたのか未だに謎が多い・・・。

「えっとタマさん・・・?」

いつの間にか、俺が椅子に座っていた。

「うわ!・・・驚きますよ、いきなり光ったかと思ったら柊さんに変身するなんて」

タマ、急にどうしたんだ?

(ちょっと考えさせて・・・)

「えっと、ちょっとタマに変身するのに限界が来たみたいで。」

「やっぱり変身って、あまり長時間は保てませんよね」

タマは黙り込む。記憶の本棚にはタマと昔あったとか、そんな記憶は無かったし、能力者に関係あることも書かれていなかった。・・・なら、すんなりとタマを体に入れられたんだ?

「えっと、柊さん?」

「あ!す、すみません!」

「大丈夫ならいいのですが・・・じゃあ最後の質問をしてもいいですか?」

「大丈夫ですよ?」

「じゃあ、最後の質問です。柊さんは最終的に何を目指してますか?殿堂入りとか、Lost討伐部隊の参加とか」

「・・・ところで新聞記者」

オルガが話に割り込んできた。

オルガは剣をどこからか取り出すと、新聞記者に向ける。

「な、なんでしょうか!?」

「さっきから気になっていたんだが、お前何者だ?思い出したが、この学校に新聞部なんて部活はない」

「・・・今回、初めて作られまして。新聞部初の相手はこの前、格上の相手を倒した柊さんにしようかな・・・と」

「そうか・・・ところでその右耳に入れたその機械。お前はインタビュー中に音楽を聴くなんて趣味があるのか?」

「こ、これは・・・もう、いいです」

新聞記者は立ち上がると、耳につけた機械のスイッチらしきボタンを押す。

「スパイか・・・」

「怪しかったよね、途中から」

キラと四津野がオルガに便乗して立ち上がる。

「どこのスパイだ?Aか?Zか?」

「・・・ッ!」

新聞記者は胸元から球体を取り出す。それは地面に当たると光を放った。

「閃光弾!?・・・逃がすな!」

スパイは教室の出口へと向かう。

「待て!」

キラは体を悪魔の契約で黒く染め上げ、光を無効化する。

だが、スパイは体勢を変え、どこからか取り出したナイフで攻撃する。

「ッ!」

スパイはキラの隙を見て、教室の扉を開けた。だが・・・

「ドンッ!」

そこに立っていた何かにぶつかって倒れてしまう。

 

「教室で騒ぐとは良い度胸じゃねぇか・・・」

 

それは倒れたスパイの胸ぐらを掴んで無理矢理起こした。

「そのセリフ!・・・まさか!」

「おい、嘘だろ?」

「・・・帰ってきたのか、ヤツが」

「「「勅使河原隊長!」」」

先輩三人が口を揃えて名前を発した。

「勅使河原・・・隊長?」

 


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