殿堂杯が始まって早々、雷帝とクロサクは殿堂の中でも二番目に強いと言われるイーグルに会ってしまう。
二人はそこから一度退こうとするが、イーグルによって地下へと落とされたしまった。
コインが落ちた。
次の瞬間、イーグルの周りに雷の牢獄が作られる。
「ッ!こいつ・・・」
「最初から正々堂々やる気はねぇ!お前を倒す!それだけだ!」
牢獄の四方から放たれた雷を避けたイーグルは、牢獄を能力で破壊して突破するが、その先にも雷帝の罠は置かれていた。
それは電気の貯まったコインだった。
「畜生!気づいたか!」
「こんな罠にはまるか!」
イーグルの手を雷帝は紙一重で避けていく。たまに、髪や服を攻撃することはあるが、その程度では体まで破壊できない。
「せいッ!」
雷帝は近づいてきたところを雷をまとった拳で攻めるが、イーグルはその拳を手のひらで受け止めた。
雷帝はすぐに自らの手を切り落として逃げる。
「雷撃、兎」
雷帝の足の裏から飛び出した兎はイーグルに向かって飛んでいく。だが、イーグルはそれを羽織っていたコートでかき消した。
「雷帝、もう終わりだ。」
雷帝の逃げた先は行き止まりだった。
イーグルは雷帝に少しずつ近づいてきた。
「終わりだな。雷帝・・・」
「あぁ、お前の終わりだ!イーグルッ!」
雷帝は両手を地面につけた。地面は光始め、地面から壁まで雷が壁材を押し上げ始めた。
「あの兎はダミーだ。これを発動させるためのな!」
雷はそのまま立っていたイーグルに襲いかかる。
避けようと後ろに下がったときにはもう遅く、イーグルに攻撃が当たり始めていた。
「ぐあああああッ!ぐ、だが、俺は負けん!」
「な、あのなかをやつは動けるのか!?」
「ぬぉぉらッ!こんなことで負けてたら、殿堂やってられんわーーーッ!」
手を伸ばして、その雷のなかから雷帝を掴もうとする。
雷帝はジリジリと近づいてくるイーグルを警戒して一歩ずつ下がる。
次の瞬間、雷の中から一気に飛び出したイーグルの手のひらは雷帝の右肩を触れた。
「ッ!・・・しまった!」
破壊に抵抗しながら、少しずつヒビが入っていく雷帝を見て、イーグルは少しずつ手を近づけていく。
「さらに促進させてやろう」
イーグルの手があと少しで触れそうなそのとき、
「でりゃぁぁぁぁああああッ!」
上に投げられたクロサクは片手にエネルギーを溜め、イーグルの伸ばした右腕目掛けて落ちてきた。
肘から曲がってはいけない方向に曲がった右腕はそのまま、下に落ちて燃えてしまう。
「このガキが!」
イーグルの逆鱗に触れたクロサクは、イーグルの重たい蹴りを食らって這いつくばる。
「あ、がぐ、がはっ・・・」
その蹴りによってクロサクの脇腹の骨が折れ、肺に刺さる。そして痛みや苦しみを吐き出せないクロサクの声が、壊れていく雷帝の耳に入ってくる。
「き、キサマ・・・」
クロサクが苦しみもがくのを見た雷帝の脳裏にとある二文字が過った。
「やるしか・・・ないのか」
雷帝は立ち上がると、崩れていく右肩をわざと左手で破壊した。
「何をしている!雷帝!」
イーグルもその光景に思わず、重たい口を開けた。
「クロサク!お前とのこの数ヵ月間。なんやかんや、色々とあったが、俺の能力を使いこなせるのはお前しかいないということがわかった」
「ら、雷・・・帝・・・」
クロサクは苦しみのなか、雷帝の方を見る。
そのときの雷帝はすでに右肩から先がなく、心臓部や顔半分にまで破壊のヒビは達していた。
「頼むぞ!チームOを・・・みんなを!」
雷帝は残った左手を倒れたクロサクに向ける。
雷帝の足にまでヒビが入り始め、そこから雷が漏れ始める。
「俺の能力!承けとれ!クロサクーーーーッ!」
クロサクは次の瞬間、体に雷が落ちたような衝撃に襲われた。肺に刺さった痛みが弱い痛みに感じるくらいの雷撃が、クロサクの能力値の器に異変を起こした。
能力者は器を持っている。能力値はそこで作られ、そこに貯められる。器が大きければ大きいほど能力者としての才能があり、能力への耐性が強いということだ。
雷帝の雷はクロサクの器を大きくし、そこに雷帝の元々持っていた能力値が注ぎ込まれていく。
「耐えろ!それさえ耐えれば!お前は進化できる!さらに上へと!」
イーグルは目の前で起きたことが未だに信じられなかった。この五年間、この学校で様々な経験をしたが、こんなことが起きるのは初めてのことだった。
「能力を引き継いだというのか・・・?」
煙のなか立ち上がる男は雷をまとい、さっきまでのダメージがほとんど回復し、最初にあったときとは全くの別人のようだった。
「これが、雷帝の力か・・・いくぞ!イーグル!」
最初の一歩はとても弱そうだったが、その次からは違った。その一蹴りで、イーグルの顎をとらえていた。
「ぐあぁっ!?」
イーグルは瓦礫の山に飛んでいく。
「これがクロサクだというのか・・・」
「雷撃、跳弾!」
クロサクの右人差し指の先から放たれた、銃弾の形をした雷のエネルギー弾はイーグルの腹部を貫き、壁の亀裂を反射して膝を撃ち抜いた。
「ッ!足が!」
イーグルは転び、地面に叩きつけられる。
クロサクはまた指先から次の銃弾を放った。
「この野郎!」
イーグルは左の手のひらで銃弾を破壊すると、手のひらにエネルギーを溜めて放つ。
「エネルギー弾など、それなりの能力値さえあれば誰しもが撃つことができるものだ!・・・殿堂をなめてもらっては困る!」
イーグルのエネルギー弾は次の銃弾もかき消すように飛んでいくが、跳弾と名付けられた雷の銃弾は、エネルギー弾をも反射して地面や壁への反射を繰り返して、イーグルへと飛んでいく。
「跳弾は狙ったものを必ず仕留める銃弾だ」
「何ぃ!?」
イーグルは左の手のひらで破壊することができず、銃弾を左肩に受けてしまう。
「俺は雷帝から戦い方以外に色々なことを教わった。そして自分自身に自信を持つことを教わった!俺はお前みたいな根の腐った野郎には負けない!」
「ッ!調子に乗るな!」
イーグルの左腕はすでに動かなくなっていた。
「雷帝、この戦闘が終わったら、すぐにお前の墓を建てにいく。約束だ」
★
「戦闘終了!殿堂のイーグル・ウィント、戦闘不能だーーーーッ!」
会場が一度静寂に包まれた後、一気に歓声によって盛り上がった。
それを聞いて、隣にいたキラはそっと胸を撫で下ろす。
「雷帝からやクロサクからの情報は途絶えたけど、倒せたみたいだな」
「ですがカメラの映像に雷帝選手の姿がありません!クロサク選手と戦闘不能のイーグル選手の姿はあります!もうすでに違う場所へと移動しているのでしょうか?はたまた、どこかでカメラでとらえられないだけでしょうか?」
俺たちは司会の言葉に思わず、言葉が出なくなった。
司会は濁したのかわからないが、俺はその言葉選びに「雷帝の死」を考えた。
「う、嘘だろ・・・雷帝が・・・」
キラもそう考えたようだ。
「続いて、戦場Fの王宮前でも戦闘が行われているようです・・・なんと、チームZのほとんどがすでに戦闘不能になっているではありませんか!相手は殿堂の二人!精神の具現化、阿修羅の使い手の修羅選手と、天使が一人、ツバサだー!対するはチームZのアリス選手のみです!」
俺とキラはそれを聞いて、王宮の扉を見る。
そのときにはすでに遅かった。カメラと映像で少し差があるのか、扉は破壊され、破片がそこらに飛び散り始めていた。
「カァーーッ!いるねぇ、いるねぇ。チームAとチームOのお荷物がさァ!」
その男は後ろに六本の腕を持ち、三つの顔を持った阿修羅のような形の何かを出し、そいつの前で笑っていた。
赤い短髪は逆立つように立ち、上下黒ベースに赤いラインの入ったジャージと、動きやすい格好をしている。
見るに、後ろのそれが戦いそうだが・・・。
「知らない人もいるみたいだから、言っておくぜ!俺はチームUの隊長、三年の修羅様だ!好きな言葉は正々堂々だ!よろしく!」
能力者解説
雷帝
チームO ?年生
能力:雷、電気etc.
雷や電気を操る。また身体を電気へと変化させることで、攻撃から身を守ることも可能。
クロサクに頼まれたときだけ、学校に来て訓練に付き合っていた。その結果、他の一年生と比べて、クロサクはずば抜けた身体能力を得た。
普段は酒を飲む、寝る、食べるを繰り返している。
とある一族の一人で他人より二倍の早さで歳をとる。