Creatures.E   作:駿駕

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あらすじ
今回から屋外授業(訓練)開始。

クロサクと一戦交えた柊。
そして訓練のときは刻々と近付いていた。



蛍ノ島へ

船の上。

ギリギリ全員が乗ることのできる船に俺は乗っていた。

「この船はこの学校の研究員が作り上げた船で、動力は私たちが持つ能力値で動いている。まぁ、今は私だけの能力値でだけどね」

この船の行き先は屋外授業が行われる島、蛍ノ島。

そこは今、ある能力者によって一年中ずっと雪が降り積もっているらしい。しかも、大雪だという。

前までは夏になると、蛍が飛び回る綺麗な島だったが、こうなると蛍も飛ぶことができないようだ。

「しかしよォ。日本の南に存在するんだよな。なのに、お前ら、その情報すら知らなかったのか?」

「私は知ってましたよ。前にニュースで見ましたから」

「・・・」

俺はほとんどニュースを見ない、新聞を読まない。そんな現代っ子のような男だった。こっちに来ても、部屋にあるテレビはバラエティー番組と、深夜帯にやるアニメくらい。

「まぁ、普通男なんてなぁ!わかるぞ、柊。」

キラはそう言って俺の肩を一発、二発と強く叩いた。

「ほら、見えてきた!あれが蛍ノ島よ!」

俺たちは目の前に蛍ノ島を見た。

雪が降り、地面は白くなり、木や建物にも大量に雪が降り積もった島。ここが、今回の"戦場"になる。

 

「こ、ここが蛍ノ島か!・・・寒い!」

南の島とだけ聞いていたため、タンクトップにジーパンのキラは寒さで凍える。それをアホかと思いながら、笑いをこらえるオルガと四津野とリア監督。

「おいおい・・・寒いヤツは船から上着を持ってこい。今回のことを予想して、全員分のオーバージャケットを持ってきたから」

「さすが、オルガ。さすオル!」

「ただし、特訓のときは脱いでもらう」

「そりゃあないぜ、オルガ・・・」

オルガと雷帝以外はオーバージャケットを着用し、雪が降り積もる世界に足を踏み入れた。

ほとんど前の見えない世界で、俺たちは宿を探す。

リアの話によると、船を降りて少し歩いたところに、今後泊まる宿があるらしいが。

「おいおい、こんなところに人がいるのか?さっきから雪に埋もれた家しか見かけないのだが・・・。」

「おかしいな。前に来たときは、こんな積もってなかったような」

「前っていつですか?」

「去年?」

「ずいぶん前ですね・・・」

俺らの行く先に人影が見えたのは船から降りておよそ15分後。人影が見えるとともに、リアが先行して話しかける。

「すみません、ここらへんに宿があると思うのですが」

「・・・」

その人は明後日の方向を向いたまま、リアの顔を見ることはない。

「あの、もしもし」

リアはその人の顔の前で手を振る。そのとき、リアの手がそいつの鼻に当たる。

「・・・お、おい。これってよ・・・死体じゃねぇか!?しかも凍りついている・・・うぉ!?粉々になりやがった!」

鼻は粉々になって、雪と混ざりあう。そして死体は一気に粉雪になって雪のなかに埋まった。

「これが・・・ここにいる能力者の力なのか・・・」

「体だけじゃない、服やスマホまで粉々だ!」

その男が凍死したときに握っていたと思われる携帯は、オルガが掴んだ瞬間、角から粉々になり、雪になって消えた。

「柊、これはちとマズイかもなぁ・・・」

キラは俺の肩に手を置く。その手は熱くなっていた。

「でも、それが」

「燃えるんだよな。キラ」

「お?わかるか~四津野」

「もう二年も面倒見てるからね・・・柊、ルナ、クロサク。お前たち、キラを見習わなくていいぞ」

「おい!・・・まぁ、俺が何人も増えるのは嫌だがな」

キラがそんなことを言って笑っているなか、雷帝は島の中心にある山をずっと見ていた。船を降りたときからずっとそうだ。雷帝はずっと山の方を見ている。

「どうしたんだ?さっきから山ばっか見て。心ここにあらずって感じだけど」

それに気づいた四津野は雷帝の背中を叩く。

「いや、あの山のあの部分になにか見えないか?何か、旗のようなものが見えるのだが」

山はこちら以上に吹雪いているため、俺たちには全く見えない。雷帝と四津野だけは例外だが・・・

「その旗はどんな色とか、模様とかわかるか?」

「そこまではわからない。わかるのはただ旗がある程度だな」

雷帝はなぜか、電気の槍を作るとその方向へと放つ。槍は吹雪のなかを進み、旗にいくまでに何かによって妨害される。一瞬だが、俺たちにも見えるほどのバリアが吹雪の中で光った。

「・・・やっかいなことになったな、リア」

「まさか国が来てるなんてね」

「国とは?」

「国家能力者研究団体ね。やっぱりこの島の能力者のことが気になってるみたい・・・」

オルガはそれを聞くと、俺らの前に出た。

「全員、彼らだと思うものに会ったら、自分達のことを絶対に話すな。彼らには一言、『迷った』と言うように」

「戦うことになったら?」

キラが嫌なことを言う。彼らと戦うということは名前的に国や政府と戦うことになる、ということだ。

「もしも戦うことになったら、情報を知られないようにしろ。そして、戦うことがないように行動しろ」

「へいへい。」

キラは返事をして、嫌な笑みを浮かべた。何か悪事を考えているような、悪魔のような顔を。

 

少し歩くと、港の近くよりも雪が深く積もる場所の先に、少し大きい建物を見つけた。看板はほとんど見えないが、雷帝の電撃によって雪を溶かしたことで『ホテル』という文字が雷帝には見えたようだ。

その情報を聞き、俺たちは雪の中を歩きそこへと向かうことにした。

「・・・待て、何か聞こえないか?」

オルガが突然奇妙なことを言い出す。

「ここに国の人間が来てんだろ?なら、きっとその足音じゃねぇか?」

キラがそんなことを言うが、確かに何かがこっちに向かってくる足音がする。しかも四方八方からだ。

「急げ!早くあそこに入るんだ!」

オルガの言葉に全員が急ぎだす。

木の影や雪の中から現れたそれは人間を型どった雪像だった。

「これもこの島の能力者の能力なのか!?」

「さすがに能力でこれほどのものを、しかもこの数作れるなんてことはありえない。もしも、そうだとしたら相当な能力値を持つことになるぞ!できるとしたら、ランクSの殿堂入り能力者くらいだ!」

 

突然だが、この能力者専用の学校にはランクが存在する。E判定からしだいにD、C、B、Aと上がる。戦績や成績によっては最高ランクであるSになる。

そしてランクSの中でもさらに高成績、高戦績を持っているものは殿堂入りというランクになる。

殿堂入りはほとんどいない。

 

「そんなこと今はどうでもいい!ドアを開けて、早く入れ!」

ホテルに先に到着したキラはその扉を蹴り開けようとするが、ホテルの扉の表面を氷が覆っているためか普通以上の強度をみせた。

「なんだ、この頑丈な扉はッ!?クソがッ!」

「なら、データ!」

リア監督が扉に手をかざす。すると、扉はデータファイルなって、その強固な氷をデータにした。

「いらないデータは捨てるまで!」

そして、そのデータ化した氷をそこらへんに投げ捨てた。

「みんな、入って!」

「なんスか!その能力!かっけぇ!」

「クロサク!今は入ることが優先だ」

クロサクは雷帝に腕を掴まれ、中へと飛び込む。それに続いて、全員が中へ入った。

雪像は扉に激突することで崩れていく。

「あまり、この雪像自身の強度は無いみたいね。みんな、大丈夫?」

「確認しました。全員、大丈夫みたいです」

「よかった。・・・とりあえず、ここは私の能力で封鎖しておくわ。だから、今のうちにこのホテルを探索して食料や暖をとれるものを見つけてきて」

リア監督は入った来たときから、扉に手を当てている。

扉から電子回路のようなものが、壁や床を這ってこのホテル内全てを侵食しているようだ。

「柊君も、私の能力が気になるのはわかる。でも、今は私の言うことを聞いて」

「は、はい。」

俺はルナやクロサクの後を追って、ホテルの奥へと入っていった。振り返ったとき、扉の前にいるリア監督が汗をかいているのが俺にはわかった。

 

 

 

 

 

 




★能力解説★
今回から(忘れなければ)作中に出てきた能力者の能力を一人ずつ(何人か)解説していきます。

リア監督
能力:データ
物体をデータ化し、今回のようにゴミ箱に捨てる(アンインストールする)ことで、その物体を消したり、データをインストールすることで、その物体に属性を追加させることが可能。例えば、その物体に爆弾としての能力をインストールすることでその物体を爆発させることができる。また、熱をインストールすることで熱を持たせることもできる。
(人間にも使用することができるが、それなりに疲労がたまる。また、大規模なものに使うとさらに疲れる)

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