復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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脱出、邂逅

 

 

閉じ込められていた黒兎と合流し、俺たちは街からの脱出を図る。とは言っても何も難しく考えることは無い。街の端まで移動して、この街を覆っている結界を壊して転移するだけだ。問題となるのは寄生者だけ。この事態を引き起こした首謀者の介入は魔寄草の危険性を考えると無いはず、出来たとしても監視の目がある程度だろう。

 

 

なので堂々と、パルクールとフリーランの要領で()()()()()()()()()()()()移動する。俺たち禍の団(カオス・ブリゲード)ではどんな状況下でも生存できるようにと様々な技術を曹操から叩き込まれているのでこれくらいは容易い。銀狼と黒兎の隊員たちも遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)だからというだけでなく、そう言った技術を納めているのか普通について来れている。

 

 

地上を移動しない理由は寄生者に接触しない為。寄生者を止めるには全身を吹き飛ばすしかない。全身に魔寄草の根が張り巡らされている為に頭や心臓を潰しても平気で動くから。そうなると携帯できる銃火器では火力不足。ヘラクレスやアスラでは接触を前提とした戦い方なので危険、黒歌は毒と仙術が通じないので無力。なので止めれるのは俺と曹操とジャンヌオルタとジャンヌくらいになる。

 

 

たった4人で50近い集団を守りきれるとは思えないので寄生者に確実に接触しない移動手段としてこうやってビルからビルを飛んでいるのだ。

 

 

「残り、5分」

 

「端まであと500m程です」

 

「悪く無いな……俺が先行して脱出予定ポイントの寄生者を駆除する」

 

「だったら私も付いて行くわよ」

 

 

ジャンヌオルタからの提案に頷きで返して、ペースを上げる。足場になっているビルを壊さぬように気を使いながら10秒程で脱出予定ポイントの上空に到着する。

 

 

そこには予想していた通りに寄生者が集まっていた。街に張られた結界によって逃げられなかった人間が寄生者に襲われた結果全員が寄生されたのだろう。目視出来るだけで500は優に超えている。

 

 

「「天昇せよ我が守護星ーーー鋼の恒星(ほむら)を掲げるがため」」

 

 

自然落下しながらジャンヌオルタと共に聖句(ランゲージ)を唱え、殺塵(カーネイジ)氷河姫(ピリオド)の星を起動させる。

 

 

まず着地したのは俺。着地と同時に分解のオーラを広げ、周囲にいた寄生者を纏めて塵に還す。それに続くように降り注ぐのはジャンヌオルタの放つ氷柱。1つ1つが2mを超える巨大な氷柱は地面に突き刺さり種子となった発芽、樹氷となって四方八方へと広がり寄生者を取り込んで氷河の庭園を築き上げる。

 

 

そしてその氷河の庭園を砕いながら残っていた寄生者を斬り捨てて塵に還す。ジャンヌオルタと俺の星は共闘するのに足を引っ張り合わない。いくらジャンヌオルタが無差別に氷河の庭園を築き上げようとも、俺は分解のオーラで守られている為に凍らない。唯一、気温だけがネックだがそれはその気になれば無視出来る。

 

 

樹氷に取り込まれた寄生者も、必要無いのに砕きながら塵に還す。本来なら無駄な行動。だが、この寄生者たちが()()()()()()()()()()。ただこの街に居た、それだけの理由で人としての尊厳を奪われた彼らが、哀れで哀れで仕方がないのだ。

 

 

だから残らずに、機械じみた作業にならぬように気をつけながら丹念に塵に還す。

 

 

「クリア、そっちは?」

 

「こちらもクリアよ」

 

 

1分も斬り続ければそこにいた寄生者の集団は全て塵に還っていた。周囲を確認しても取り残しは見えない。ジャンヌオルタが周囲を凍らせて壁を作り、この場に新たな寄生者が入って来れないようにする。

 

 

それを見ながら、俺は分解のオーラを纏わせた剣を全力で振るい、街を覆っている結界を切り裂いた。殺塵(カーネイジ)の分解は有機物無機物問わずに問答無用に分解するのだが、その反面非物質への干渉は鈍い。炎や光と言った実体の無いものは即座に分解とはいかないのだ。それは魔力にも同じ事が言えて、出力でどうにかなるとは言っても基本的には魔法魔術を分解するのには時間がかかる。

 

 

一太刀、二太刀、三太刀と結界を斬ってようやく人が横並びで3人は通れるほどの穴が開く。丁度その時に曹操たちも追いつい出来た。

 

 

「ここから出てくれ。出たらおそらく転移は使えるだろうからクリスと黒歌は転移でここから離れた場所に移動を」

 

 

流石に訓練をされているので慌てず騒がずに穴から街の外へ出て行く。結界から抜けてしまえば転移と通話は使えるようで、サムズアップと共にクリスと黒歌は転移で移動を始めた。

 

 

銀狼、黒兎、そしてジャンヌオルタたちが転移して、最後に俺と曹操とクリスが残る。

 

 

「よし、お前たちで最後だな」

 

「あぁ待て、少しやる事がある」

 

「奇遇だな、俺もだよ」

 

 

街を出た時から、俺の鼻にはある不快な臭いが届いていた。それは、()()()()()。ここからそう遠く離れていない場所に悪魔がいる事の証明だった。曹操も同じらしく、聖槍を握り締めながらある方角を見ないようにしている。

 

 

「ーーー殺す」

 

「ーーー滅ぼす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん、やっぱ魔寄草程度じゃ駄目みたいだね〜」

 

 

街から脱出し、転移で移動をしたレージたちの姿を見ながら残念そうにリゼヴィムは呟いた。魔寄草のお陰で目的だったレージの星辰光(アステリズム)は見ることは出来た。それでも確認出来たのはレージとジャンヌオルタのたった2つだけ。星辰光(アステリズム)を知りたがっていたリゼヴィムからすれば最も多くの星辰が見たく、たった2つでは不満だった。

 

 

「やはり魔寄草程度じゃ駄目か……」

 

 

レージの姿を見て顔を怒りで歪ませながら呟くのはユーグリット。彼からすればレージは愛する姉を殺した仇。出来ればこの手で殺してやりたいと思い、魔寄草で怪我でもあってくれればと考えていたが無傷で脱出されて残念そうにしていた。

 

 

ともかく、今回のアウトブレイクでは2人の望む結果は得られなかった事になる。リゼヴィムはたった2つの星辰しか見る事が出来ず、ユーグリットはレージに無傷で脱出された。

 

 

その為に街1つが無くなることになるのだが……2人からしてみれば、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「まぁ2つだけでも見れたから良しとしようかな?ユーグリット君、帰ろ」

 

「……はい」

 

 

リゼヴィムの要求に従い、ユーグリットは転移の用意を始める。とは言っても転移の陣は敷いてあり、あとは魔力を流すだけで転移出来る。

 

 

なのでユーグリットは魔力を魔法陣に流そうとしーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超新星(Metalnova)ーーー義なく仁なく偽りなく(Disaster)死虐に殉じる戦神ッ(Carnage)!!!」

 

「穿て、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)ーーーッ!!!」

 

 

上空から落ちてきた殺塵(カーネイジ)の斬撃と聖槍の一投によって中断させられた。聖槍の一撃を知覚してから範囲外に逃げ、殺塵(カーネイジ)の斬撃を気づいたリゼヴィムと共に障壁で受け流す。

 

 

「何だとーーー!?」

 

「アヒャッヒャッヒャッヒャッ!!まさか見つかるとは僕チンも予想外ッ!!驚き桃の木山椒の木でございますよーーーレージくぅん!!」

 

「ーーー黙れよ、薄汚え臭え臭え糞悪魔が」

 

 

自分勝手な欲望のままに街1つを滅ぼしたリゼヴィムとユーグリットの前に、復讐者と英雄が現れた。

 

 





はーいトトカルチョ始めるよーお題は《リゼヴィムとユーグリットが逃げられるかどうか》だよーさぁ張った張ったー


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