復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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三大勢力の理解とギリシャ神話の主神

 

「よっと……」

 

 

身体の調子を確かめる様に屈伸を数度、腕を伸ばしたりアキレス腱を伸ばしたり、その場で飛び跳ねたりする。

 

 

サーゼクスによってギリシャに飛ばされ、アテナに拾われてから今日で4日たった。俺がどうしたいのか聞いた後、アテナに休む様に言われて筋肉痛が収まるまでずっと寝ていたのだ。3日も痛みが続いて本当に筋肉痛かどうか怪しくなったので【憤怒】……ってのは名前としてどうなのかと思ったのでラースと呼ぶ事にした原罪(オリジナル・シン)に聞いてみたところ、

 

 

『身体の痛みが続き過ぎ?そりゃあ筋肉痛ってのもあるがそれ以前に身体が壊れかけてるからだな。餓鬼の身体に無理矢理深淵(アビス)からの力を詰め込んだせいで壊れる寸前だから寝てた方が良いぞ』

 

 

とのこと。思わず初めにラースとあったところまで殴り込みに行ってしまった。壊れる寸前ってなんだよぉ!!って叫びながら殴ってたら後少しで内側から弾け飛んでいたらしい。気がついたらマウント取って殴りまくってた。

 

 

だが4日も寝て、アテナからの看病を受けたお陰か身体の痛みはもう引いている。さっきから調子を確かめているけど前よりも力が付いてるのだ。その場で飛び跳ねたらてんじょうには頭ぶつけそうになった。

 

 

「どうなってんだ?」

 

深淵(アビス)からの力に馴染んできてんだよ。本当ならもっと時間がかかるんだが余程相性が良かったみたいだな。だが、忘れるなよ?そのタトゥーが咎人の証だ』

 

 

ラースが言ったタトゥーとは、俺の両腕に刻まれているもの。ギリシャに来るまでは無かったはずだがラース曰く、原罪(オリジナル・シン)に目覚めたから刻まれたそうだ。

 

 

原罪(オリジナル・シン)は本来はこの世界の物では無く、別世界からの物で、深淵(アビス)という場所から力を引き出すことが出来るらしい。だがそれは許されざる行為、言ってしまえば深淵(アビス)から力を盗んでいるのと同じ事。このタトゥーは深淵(アビス)から力を引き出す度に徐々に広がっていき、全身に広がった時には俺が深淵(アビス)に引きずり込まれ、そこの一部になる定めとラースは言っていた。

 

 

それを聞いて思ったのは()()()()()()()。ただの子供だった俺が魔王であるサーゼクスに復讐をしようだなんて何をしたって出来るはずがない。タトゥーが全身に広がるまでという執行猶予付きとはいえ、力が手に入るのならそれは歓迎すべき事だ。

 

 

「分かってますよっと」

 

「ふむ、寝た切りだった割には身体の方は衰えていない様だな」

 

 

いつか何処かで見た回し蹴りを見様見真似でやっているとアテナがやって来た。毎日長い時間俺といるので暇なのか聞いたところ暇だと即答されてしまった。なんでも昔は神々が世界の運営をしていたが人の発展を見て自分たちは人の世に不要だと悟り、最低限の干渉だけにして世界の運営を辞めたから基本暇らしい。例外としては人外が暴れている時には人の目に触れない様に始末する事だとか。

 

 

「調子は前よりも良いよ。ラースが言うには馴染んだからだとさ」

 

「ラースか……原罪(オリジナル・シン)なんて初めて聞いたがレージの姿を見ていると信じるしかないな。っと、レージ。三大勢力の特徴をそれぞれ挙げてみよ」

 

「悪魔は魔力に長けた種族で悪魔の駒(イーヴィル・ピース)という物を使って他種族を悪魔に転生させている。天使は聖書の神が創った種族で聖書の神が死んだ事で増える事は無いが魔に属する者を滅する光力を使う。堕天使は天使が欲に溺れて堕ちた種族で天使と同じ様に光力を使う事が出来る」

 

「うん、覚えているみたいだな」

 

「そりゃあ分かりやすく懇切丁寧に教えて貰えば覚えられるさ。それに天使とか悪魔とか空想の存在だと思ってた奴が実在するって言われればなぁ……」

 

 

寝た切りになっている時にアテナから教えてもらったのだが、この世界には空想の存在だと思ってた天使や悪魔、神々や妖怪などが普通にいるらしい。聞かされた時は本当に驚いた。信仰から成り立つ神々や畏怖から成り立つ妖怪は人間への干渉を最低限にして暮らしているらしい。だけどさっき挙げた三大勢力……悪魔と天使と堕天使は別だそうだ。

 

 

この三種族は昔に起きた戦争のせいで数を減らし、悪魔は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と呼ばれる物を使う事で他種族を悪魔に転生させて数を増やしている。天使はその戦争で聖書の神が死んでしまったのでこれ以上増える事は出来ないが信徒を増やす事で勢力として成り立っている。堕天使は天使を堕天させたり、人間と交わる事で数を増やしているそうだ。

 

 

だがそれは良い事では無い。悪魔は言葉巧みに、他種族の保護だと言い張って無理矢理悪魔に転生させている。天使は信徒をまるで使い捨ての物の様に扱い、自分たちの教えに従わない者や聖書の神以外の神を信仰する者を異端者として排除している。堕天使は二つに比べればまだマシだが、聖書の神が作った人間に宿る神器(セイグリッド・ギア)と呼ばれる物を宿している人間を殺して集めているらしい。

 

 

「神様とか妖怪とかの謙虚さを見習って欲しいよ」

 

「全くもってその通りだな。あれらが人の世に危害を加えるせいで人の世が不安定に成りつつある。悪魔のせいで寿命で死ぬはずだった者が生き長らえたり、天使や堕天使のせいで寿命を迎えていない者が死んだりして冥府は混乱している……まぁハーデスや死神たちのお陰で最低限に抑えられているがな」

 

「ハーデスって言ったらハデスの事か……確かゼウスの兄だっけ?父さんがギリシャ神話の神様でもマトモな神様だって言っていた様な」

 

「まとも……確かにまともだな。三大勢力は蛇蝎の如く嫌っているが身内には優しい。妾も可愛がってもらっている」

 

「そういえば関係は叔父と姪か」

 

 

アテナはゼウスの娘であり、ハーデスとの関係は叔父と姪になる。叔父(ハーデス)(アテナ)を可愛がっても何もおかしく無い。

 

 

「ーーーアっテっナっちゃ〜ん!!呼んっだっかな〜?」

 

 

その時、アテナの背後から金髪の男が現れてアテナに抱きついて来た。しかもその手の片方は腰に回され、片方は胸を鷲掴みにしている。

 

 

「ふんっ」

 

「グブェッ!?」

 

 

まぁそんな事をすればアテナが反撃するのもおかしく無いわけで。アテナは騒ぐ事なく当たり前の様に肘を金髪の男の鳩尾に叩き込んだ。音からしてメッチャ痛そう……ドスじゃなくてドゴォッ!!て音がしたし。

 

 

「……何故ここにいる?」

 

「おごご……ヘ、ヘルメスがアテナちゃんが男を連れ込んだって聞いたから……」

 

「あのお喋りヘルメスめ……」

 

「アテナ、こちらはどちら様?」

 

「ゼウスだ」

 

「……は?」

 

「信じたく無いだろうが本当だ……これがギリシャ神話の主神のゼウスだ」

 

「ちょっと!!これって酷くない!?父親に対する対応じゃないと思うんだけど!?」

 

「喧しい。娘である妾を女として見て狙っているお前なんぞこれで十分だ」

 

 

……うん、うん、落ち着け俺、落ち着くんだ……これがゼウス……ギリシャ神話の主神……うん、うん……

 

 

「信じたくない……!!」

 

「おや?君がアテナちゃんが連れてきた男かな……アテナちゃん、個人の趣味をとやかく言うつもりはないけどせめて精通してる相手にしなよ……」

 

「急に真面目になって話すな。精通も来ていない?そんな事は分かっている。来たと同時に……!!」

 

「アテナちゃんカムバァァァァァァァック!!それは堕ちちゃいけない道だから!!ショタコン(淑女)という修羅の道だから!!」

 

「幼いから惚れたのではない!!惚れた相手が幼かっただけのことだ!!」

 

「自信満々に言ってるけど幼い相手に惚れた時点でアウトだから!!ほら、君も何か言って!!」

 

「ウッセェ!!出会い頭に自分の娘にセクハラかます奴がゼウスだなんて俺は信じねぇ!!」

 

「ちょっ!?二人とも正気に戻って!!」

 

 




レージの原罪(オリジナル・シン)は使用制限付き。使えば使うほど同調は強くなってより深淵(アビス)から力を引き出せるがそれと同時にドンドン侵食して行って最終的には深淵(アビス)に引きずり込まれる。パラロスにはないオリジナル設定、なおレージには関係無い模様。

アテナのパーフェクト裏側教室。三大勢力や神話勢力、妖怪などの裏側の事を中立から見た情報をレージに教え、それからギリシャ神話から見た感想を教えている。なのでレージはそれぞれの勢力の事を正しく理解しており、ギリシャ神話目線での評価も理解している。

ギリシャ神話の主神、ゼウス登場。登場と同時に(アテナ)にセクハラをかます。部下(女性)にセクハラをかます。そして撃退されている。最近怖かった事は奥様(ヘラ)が消毒液とハサミを用意している姿を見た事。逸物が縮こまったそうな。


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