復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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短いです




復讐歌劇の幕開け・11

 

 

女が1人いた太陽を纏い月を踏み締めて陣痛に苦しみ新たな命を産み出そうとしている。

そこに私が現れたその姿は蛇であり龍7つの頭に7つの冠を被り10の角を持つ不完全なる者

私は新たな命を飲み干したかったその時を尾で星々を堕としながら待ち侘びていた

その時が来た産まれた赤子は天の祝福を受けておりそれを飲み干した時の絶頂を考えるだけで身震いは止まらない

 

 

宣言から紡がれたのは特大の呪詛だった。それまで放たれていた憎悪も殺意も、一切が赫怒に塗り潰されて赫怒となってレージの全身から放出される。

 

 

大気が軋みをあげる。校庭がヒビ割れる。尋常では無い赫怒に当てられて一誠の頭が呼吸する事を放棄した。サーゼクスはそんな事は無いが、それでも顔に一筋の汗を流してそれの危険性を察している様だった。

 

 

そしてその赤子は天へと連れて行かれたなら女をとだが女は荒野にへと姿を消し去った

だから怒った7つの頭と7つの冠に天への憤怒を10の角に天への憎しみを携えて私の配下を引き連れてミカエルが待ち受ける天界へと攻め入ろうーーー天から墜落し地に叩き落とされるその日まで

 

 

そしてレージの肉体に変化が起こる。背中からは5対の白い骨の様な物が翼の様に広がり、腰からは6つのドス黒い肉の触手が生える。レージは化物になると言った。まさに今のレージは人間を辞めて、憤怒のままに生きる化物になろうとしている。

 

 

止めなければ、正面から対峙している一誠はそう思うが肉体は行動する事を放棄している。この赫怒に当てられたといえば納得だが、そんな事よりもレージを止めなければという思いでいっぱいになる。期待を込めてサーゼクスの方を見るがサーゼクスも一誠と同じ様に動けないでいた。

 

 

さぁーーーー我が名を叫べ7(かんぜん)には足らぬ6(ふかんぜん)な我が名を

 

 

そして誰も止める事が出来ず、レージの化物への転身が完成するーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が名は憤怒の(サタ)ーーー」

 

「ーーーレージ、それはダメ」

 

 

ーーーその直前、上空から黒い小さな影がレージに向かって落ちてきた。その影は化物へ転身しようとしていたレージを()()()、その余波で局地的な地震と地割れを起こす。

 

 

「今度は何だぁ!?」

 

 

そのお陰で赫怒の呪縛から逃れる事ができたが地震で身動きの取れない一誠は叫ぶ事しか出来ない。

 

 

『今のは……いやまさか、ありえない……しかしこのオーラは……!!!』

 

 

一誠の神器(セイグリッド・ギア)に宿る赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン)のドライグは乱入者の正体に気づいた様だ。しかしそれを必死になって否定しようとする。あの龍神がこの場に現れる事などありえないと。

 

 

砂埃が腫れて出来たクレーターの中心、そこには仰向けに倒れているレージと、その上で座っている黒いゴスロリ衣装の少女ーーー無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスがいた。

 

 

「ダメ、あれはいけない。曹操も人間界でやるなって言ってたし、我もあれは嫌い。だから辞めて?」

 

「……あ〜曹操から言われて来たのか?」

 

「うん、レージが無茶しない様にって」

 

「心配性め……だけど熱くなりすぎた事は確かだな。もうしないから退いてくれる?」

 

「分かった、だからお菓子」

 

「無くなったから後でな」

 

 

そう言って立ち上がるレージからは憎悪も、殺意も、赫怒も消え失せていた。オーフィスが背中に登るのを微笑みながら見ている姿はただの優しい青年にしか見えない。

 

 

「ーーー辞めるのかい?まぁそれならそれで良いんだがな」

 

 

そしてこの場に新たな闖入者が現れる。鞘に納められた刀を突いて腰の曲がった背の低い老人。言葉とは裏腹にどこか残念そうな顔をしながら、鬼を模したヘルメットを被った偉丈夫と1()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()を背後に従えている。

 

 

「誰?」

 

五十嵐五十郎(いがらしごじゅうろう)、んでコッチのデカイのは緋色(ヒロ)ってんだ。お前さんたちがドンパチやらかしてるから止めて来いってある奴から言われてな」

 

「あ〜……確かに暴れすぎたな。これ以上オッサンの胃袋に負担かけるわけにはいかないし帰るか」

 

「テメェ!!親父殿に向かって何て口の効き方を!!」

 

「緋色、黙っとれ」

 

「ウスッ!!」

 

 

レージは五十嵐の事を知っているのか、それとも五十嵐の言うある奴の事を知っているのか納得した様子で頷き、帰ると宣言した。

 

 

「帰る?復讐しに来たんじゃ無いのかい?」

 

「今日は元々宣戦布告のつもりだったんだよ。まぁ熱くなりすぎたのは認めるがな」

 

 

そう、レージは元々は宣戦布告のつもりで今日は来たのだ。その際にサーゼクスの実力を知れたら良いなぁ程度で考えていたのだが真輝(マキ)の件で暴走してしまい、その上端役(一誠)に妨害されて星を使われてキレてしまった。それらは自分のせいだと甘んじて受ける。

 

 

「ーーーさて、それじゃあ帰ろうか」

 

 

そうレージが言うとジャンヌオルタに支えられたイザイヤが、殴られても平気そうな顔をしているアスラが、不完全燃焼だと不満げな顔をしているクリスティアンが、そして()()()()()()()()()()()()()()()()黒歌が集まってくる。

 

 

「っ!!小猫ちゃん!!」

 

「小猫?誰それ?この子は白音よ。私の大切な妹の、ね……」

 

 

一誠の言葉にそう返す黒歌の顔は冷たく、だが眠っている白音を見る顔は反対に優しかった。

 

 

「三大陣営の人外共、俺たちの事を忘れるなよ。お前たちの蒔いた種が芽を生やしてお前たちに仕返しに来るのだと覚えておけ」

 

 

そう言い残してレージたちはクリスティアンの魔法陣で姿を消した。黒歌に抱きかかえられた白音も連れて。

 

 

「……やれやれ、折角の会談だったのに大変な事になったな」

 

「自業自得じゃねえか」

 

 

サーゼクスの呟きに返したのは五十嵐。面倒ごとだと嘆くサーゼクスを見る顔にあるのはただただ拒絶だけだった。

 

 

人外(おまえさんら)人間(ワシら)にやった事がそのまま帰ってきてんだ。人外(おまえさんら)の問題を人間側(こっち)に押し付けんじゃねえぞ」

 

帰るぞ、ウスッ!!と五十嵐と緋色は問答をして100の武装したエネルギー体と共に駒王学園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、正史では三大陣営による『駒王協定』が結ばれる筈だったが復讐派の存在によりそれは結ばれなかった。

 

 

悪魔陣営の被害

・護衛の悪魔100人、全員死亡

星辰奏者(エスペラント)50人、全員死亡

・サーゼクスの女王(クイーン)グレイフィア・ルキフグス、死亡

・サーゼクス・ルシファー、右腕を欠損

 

天界陣営の被害

・護衛の天使と退魔師(エクソシスト)計100人、全員死亡

・大天使ミカエル、全身を殲滅光(ガンマレイ)に犯された上に魂を呪いに蝕まれて重傷

 

堕天使陣営の被害

・堕天使総督アザゼル、右腕を欠損

・白龍皇ヴァーリの離反

 

 

復讐派の猛威は確実に三大陣営に傷を残していた。

 

 





悲報。折角のロスパラ要素、オーフィスに止められる。まぁオーフィスに止められるなら仕方ないか……

詠唱はヨハネの黙示録を元ネタにしました。ロスパラみたいにヘブライ語を突っ込みたかったけど作者には無理でしたよ……聖書関係で良いネタ、もしくはヘブライ語翻訳で良いサイトを知っていたらメッセージで教えてください。お願いします。

突然乱入。五十嵐五十郎、イメージはスカイブルーの五十嵐五十郎です。側に控えていた緋色とエネルギー兵もそこから出てます。彼は人間側です。三大陣営が会談をしていると胃を痛めている伊達総理に命令されて派遣されました。つまりそれなりに強いです。

さて、駒王協定が結ばれなかったな……ま、問題無いな!!


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