「死が満ちる、死を満たせ、死を
狂乱と破壊と炎と災いで、見渡す荒野を深紅に染める
青銅の鎧を纏え。両手は槍を携えよ
戦車へ騎乗し突撃すれば、敵兵はものみな等しく髑髏の山と成り果てようぞ
おお、芳しきかな、人肉の脂が燃える
打ち震えるかな、無意味で無情な流血よ
ただ理不尽に散りゆく
野獣の如き蹂躙だけがこの身を至福へ誘うのだ。城壁の破壊者は、泰平をこそ打ち砕く
永遠たれ、凶兆たる災禍の紅よ。神々の弾劾さえ我が悦びを裁くに能わず 」
暗赤色の赫怒のオーラが滾り、
「巨神が担う覇者の王冠。太古の秩序が暴虐ならば、その圧政を我らは認めず是正しよう 。
勝利の光で天地を照らせ。清浄たる王位と共に、新たな希望が訪れる
百の腕持つ番人よ、汝の鎖を解き放とう。鍛冶司る
大地を、宇宙を、混沌を――偉大な雷火で焼き尽くさん
聖戦は此処に在り。さあ人々よ、この
イザイヤの魔剣に絶滅の
「有翼の帽子と靴を身に纏い、双蛇の巻かれた杖を手に、主神の言葉を伝令すべく地表を流離う旅人よ
盗賊が、羊飼いが、詐欺師と医者と商人が。汝の授ける多様な叡智を、今かと望み待ち焦がれている
石を金へと変えるが如く、豊かな智慧と神秘の欠片で賢者の宇宙を見せてほしい
願うならば導こう――吟遊詩人よ、この手を掴め。愛を迎えに墜ちるのだ 。
太陽へかつて譲った竪琴の音を聞きながら、黄泉を降りていざ往かん。それこそおまえの真実である 」
流れるように謳われるのは悲しき二面反背の
そして3つの魔星に続く魔星が2つある。
「散りばめられた星々は銀河を彩る天の河。巨躯へ煌めく威光を纏い、無謬の
ならばこそ、大地の穢れが目に余るのだ。醜怪なるかな国津の民よ。賎陋たるその姿、生きているのも苦痛であろう 。
燦爛な我が身と比べ、憐れでならぬ。直視に耐えん 」
紡がれる
「ゆえに奈落へ追放しよう――雨の恵みは凍てついた 。
巡れ、昼光の女神。巡れ、闇夜の女王。爛漫と、咲き誇れよ結晶華。これぞ天井楽土なり 」
故に、これはジャンヌオルタからすれば慈悲なのだろう。命を氷結させ華と化せば、いかに醜怪であろうとも美しく散るはずだから。
「
情欲と、愛欲と、繁殖と、豊穣よ 、
海に浮かんだ真珠の泡へ、どうか血肉を宿して欲しい 。
濡れた肢体に、滴る蜜は止め処なく。西風は魅了され、季節の女神は侍従となった。悶える雌雄の悦びで地表に愛が満ちていく 」
黒歌の
その正体は無数の機械蜂。いつの間にか結界内を埋め尽くす程に膨大な数の蟲型飛行物体が、鉄色の雲霞となって黒歌の周囲を滞空していた。
「さあ、若き王様。黄金の林檎をどうか私にくださいな 。
褒美として、理想の
木馬の蹄に潰されようと、禁忌の果実を貪りながら褥の奥へと篭もりなさい 」
百や千などでは到底届かぬ、万や億でも足りぬ程の大群は正に黒歌という女王蜂に従う眷属たち。その一匹一匹が星辰の煌めきを纏っていた。
「楽が束の間あるならば、そこは正しく桃源郷なのだから 。
繋がり抱き合い交わって、甘い巣箱に溺れましょうや 」
数こそが力であると語っているかのような異質な星が顕現する。
「「「「「
魔星顕在。
「ーーー
レージが掲げるは、殺戮の暗赤色の魔星。
「ーーー
イザイヤが掲げるは、絶滅の魔星。
「ーーー
クリスティアンが掲げるは、叡智の魔星。
「ーーー
ジャンヌオルタが掲げるは、氷結の魔星。
「ーーー
黒歌が掲げるは、群蜂の魔星。
ここに、奪われ集った5つの魔星が復讐の幕を開けた。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「滅びなさいッ!!」
警戒する三陣営のトップを無視して動くのは警備のために集められた悪魔と天使と
「塵になれよ、悪魔共がッ!!!」
一番槍は自分だと言外に宣言しながら爆進するはレージ。規格外の脚力に任せた跳躍で放たれる魔力や光の槍を暗赤色のオーラで消しながら悪魔だけを見て突き進む。
一斬。逆手に持たれた剣が振るわれて、範囲内にいた悪魔がボロボロと崩れて塵になる。それは端からは消滅しているように見えて、否応なしにサーゼクスの滅びの魔力を連想させた。
「人間が、滅びの魔力を使うだと……!?」
驚愕しながらそう呟いた悪魔はレージの一閃にて塵と化した。跳躍による上昇が終わりを告げて、落下が始まるかと思えば空中を蹴って更に高く跳びあがる。
「ガッ……!?」
レージから距離を取っていた悪魔にも異常が起こる。チクリと虫に刺されたような小さな痛みを感じた途端に身体をなんとも言えぬ快楽が襲い、飛ぶことが出来なくなって次々に墜落していく。その時の痛みすら快楽と感じてしまい、中には絶頂してしまう悪魔もいた。
「ふふ……蕩けるでしょう?私の毒は」
朦朧とする意識の中で聞こえるのは妖艶な笑みを浮かべながら機械蜂を操る黒歌の声。
「クソがぁっ!!」
機械蜂の危険性に気づいた悪魔が魔力を放つがそれで討ち取れた機械蜂は精々10か20。すぐに出来た穴を他の機械蜂に埋められて、目をつけられて群がられて他の悪魔と同じ様に快楽の中で墜落する。
機械蜂は一匹一匹こそ大した脅威では無いがそれを兆を超える数が覆す。機械蜂の毒は蓄積すればするほどに筋肉を弛緩させて、中枢神経を麻痺させる麻痺毒。
与えた者曰く、強力では無いが凶悪であると評価した魔星である。
「さぁ凍りなさいーーー!!!」
悪魔はレージと黒歌によって蹂躙されていた。それを横目で見ながらジャンヌオルタは空中に氷杭を精製し、飛んでいる天使と向かってくる
「こんなもの!!」
それを天使は光の槍で、
四方に伸びる樹氷の枝は天使や
あっという間に完成するのは天使や
斬と、四方へと無差別に伸びる樹氷氷華を切り裂き氷河の庭園を駆けるのはイザイヤ。天使や
何故イザイヤは物皆凍てつく氷河の庭園の中であって変わらぬ運動能力を発揮出来るのだろうか?その答えは上がる煙にある。
イザイヤの身体は
それは間違いなく暴挙である。イザイヤの
動く度に関節からは火花が飛び散り、滲んだ血は体表面から離れた途端に油の様に発火し、呼吸にすら
さりとてイザイヤの顔に苦痛の色は無し。生き地獄を味わいながら、その苦痛を気合に根性ーーー
そのイザイヤの愚行を目の当たりにしながら、近くにいたジャンヌオルタを始めとした復讐派の面々は何も言わなかった。何故なら、イザイヤの心境に理解も納得も、共感も出来るから。命に代えても報復したい、その為に命を磨り減らす事を厭わない。それに共感出来るから誰も何も言わないのだ。
「クッ!!」
レージたちを脅威と認識した悪魔や天使たちが距離を取ることを選んで引き始めた。そうして遠距離から魔法なり光の槍の投擲なりで攻めようとしているのだろう。その選択は正しい。だが、それが出来るとは誰も言っていない。
「逃さんよ」
呟きと共にクリスティアンの星辰が煌めき、距離を取ろうとしていた悪魔や天使たちを不可視の力で拘束し、コカビエルの時のように地面から黒い槍を生やして背中から生えている羽根をスダボロにする。そうして落下すればーーー下にいるレージ、黒歌、ジャンヌオルタ、イザイヤの餌食となる。
今回の会談でアザゼルはヴァーリ以外の護衛を誰も連れてこなかった。事前にアスラにアザゼルを殺すのは最後にしてやると伝えているのでこの場ではクリスティアンの復讐対象はいない事になる。なのでクリスティアンはサポートに回る事にしていた。
さり気無く距離を取ろうとする悪魔や天使たちを落とし、戦意を喪失して逃げ出そうとする
そしてこれはもはや戦いでは無い。一方的な虐殺でしか無かった。戦意を喪失し、魔王や大天使に助けを求める悪魔天使
そうして、最後の悪魔をレージが塵にしたところで増援は無くなった。
「さて、駒は無くなったぜ?サーゼクス」
悪魔であった塵を払い除けながら
「ふむ……君の
「そちらの老人は【磁力】ですかね?先程の黒い槍は砂鉄を固めたものみたいですし、金属が動いていたので分かりやすかったですよ」
「
そう、看破されたところでさして問題にはならない。赫怒と憎悪と殺意と共に磨き上げた魔星の輝きは看破された程度では一片も翳らない。そう思っているのはレージだけでなく、他の者たちも同じだった。
「さぁ、己が因縁を清算しようやーーー!!!」
レージと黒歌がサーゼクスに、ジャンヌオルタとイザイヤがミカエルに星の煌めきを強く輝かせながら向かう。
魔王と大天使に魔星たちはぶつかって行った。
詠唱長スギィ!!と読者は突っ込むだろう……でも、これがしたいのだからしょうがない。
ジャンヌオルタは
何故かイザイヤが英雄化してやがる……このままではイザヤライドになってしまうでは無いか!!……ありだな。