カツカツと、靴が床と当たる音が響く。俺が居る場所はとある組織の本拠地。ここに居るのはその組織と俺が協力関係にあって、会議があるから呼ばれたのだ。
この組織を知るきっかけとなったのは個人では無理だと悟って他の三大勢力に恨み辛みのある連中を探していた時、現代で英雄を目指す1人の青年と出会ったから。その青年は過去の英雄の子孫で、三大勢力の犠牲者でもある。三大勢力の被害に遭った時、彼は自分の祖先のような英雄を求めた。救ってくれる存在を求めた。だが、そんな都合の良い存在は現れなかった。だがら、彼は自分が英雄になる事にした。英雄となって、三大勢力に苦しめられている人間を救おうと決めた。そうしてかれはある組織を結成、その後に現在の組織から勧誘を受けて利用してやる腹積りなんだとか。
元々この話を聞いた時には彼との協力は乗り気ではなかった。何故なら彼が求めているのは救済で、俺たちが求めているのは復讐なのだから。その過程で救われる者が出るかもしれないが、それでも真逆の存在だからその時は協力を断っていた。
だが、その後彼らを勧誘してきた組織のトップがギリシャに現れて、俺たちに協力を求めてきた。見た目は愛らしい少女だったが中身が桁外れの存在だった。なんでもその少女の正体は世界に存在する中での世界最強、加えて……その少女の姿を見て妹を、サーゼクスに連れ去られた真輝を思い出してしまったので頷いてしまった。アテナに聞けばあの時の判断は英断だったらしく、下手に機嫌を損ねていたらギリシャが地図から無くなっていたかもしれないとの事だった。
「レージ、飴無くなった」
「ハイハイ、次は何が良い?」
「リンゴ」
「カッカッカ!!こうしてると大将もただの気の良いあんちゃんだのぅ!!」
俺の後ろに着いてきてるのは付き添いとして誘ったアスラ。そして俺の背中に張り付いて棒付きの飴を舐めている黒髪ゴスロリ姿の少女が組織のトップ、
だが、普通にしている姿はどうしても見た目通りの子供にしか見えず、真輝の事もあって甘やかしてしまいがちになる。具体的にはこうして背中に張り付かれても邪険にしなかったり、お菓子あげたりとか。
「レージ、飴無くなった」
「オーフィスペース早すぎぃ!!」
「おうおう龍の嬢ちゃん、俺の酢昆布分けてやろうか?」
「要らない、それ酸っぱくて我嫌い」
オーフィスの好みは甘味らしく、よく俺がミオスタチン関連筋肉肥大によるカロリー不足の為に持ち歩いている甘味を強請ってくる。アスラの場合、菓子の趣味がジジイだからな……酢昆布とか煎餅とか好んでる。
そんなこんなで歩いていると、物々しい扉の前にやってきた。その扉を開ければそこには大きな円卓が置かれて、すでに俺以外の奴らは席に着いている様だった。
「悪い、遅れた」
「遅いですよ」
「まぁ待てカテレア、時間には間に合っているのだから問題はないだろう」
「そうだぞカテレア、クルゼレイの言う通りだ……あまりにカリカリしてるとシワが増えるぞ?」
「ーーー誰が行き遅れたババアだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「おいおい、誰もプライドと男の理想が高すぎて婚期を逃しまくって行き遅れた頭の中お花畑のババアだなんて言ってねぇじゃねぇか」
「ンギィィィィィィィィィ!!!」
円卓に座っていたのは眼鏡をかけた女性カテレア・
行き遅れネタで弄られて発狂しているカテレアをみんなで笑いながら空いている席に着く。全体重をかけたことで椅子が軋むが壊れる気配は無い……最近体重が400Kgになったんだけどな……その隣にアスラが机の上に足を組みながら座り、オーフィスは俺の膝の上に座る。オーフィスの位置がおかしい?俺が来てからずっとここがオーフィスの定位置ですけど?
「それでは、緊急会議を始める」
発狂していたカテレアが落ち着きだしたのを見計らい、曹操が進行役を務めてこの組織ーーー
「さて、今回の議題だけど……先日のコカビエルによる聖剣騒動のことは耳に入っているかい?」
「知ってる。復讐ついでに日本神話勢力と総理大臣の依頼を受けて収拾したの俺らだし」
「噂によればミカエルは相当慌てたらしいな。何せ教会が管理していたエクスカリバー6本の内の4本が完全に破壊されたのだからな。ハッハッハ、愉快愉快」
「確か復讐したのはイザイヤとクリスティアンでしたね……流石は教会関係者絶対殺すマンと堕天使絶対殺すマンです」
「騒動終わってから帰ったらイザイヤが罰ゲームでミニスカメイド服着てたな……写真あるけど?」
「言い値で買いましょう」
「その言葉が聞きたかった」
ミニスカメイド服姿で部屋の隅で蹲っているイザイヤの写真をカテレアに手渡すとアタッシュケースが返ってきた。
「あ、ウチの派閥のホモ野郎共と腐女子たちが欲しがるだろうから焼き増しお願いね」
「イザイヤの痴態が拡散されてくなぁ……」
そう言いながらメモ帳にイザイヤの写真を焼き増しする事を書いておく。地味にイザイヤの写真は高値で売れるからな……活動資金の為だ。これは必要な犠牲、コラテラルダメージって奴なんだ。
「話が逸れたな……コカビエルの騒動のこともあって悪魔と堕天使と天使……三大勢力による会議が人間界、それも駒王町で行われるとの事だ」
「何?」
「それは本当ですか?」
「日本で彷徨いている悪魔に拷問した結果聞き出した情報だ、ゲオルグが真偽を確かめたから間違いないだろうね」
「まぁた伊達のオッサンの気苦労が……」
「レージ、お菓子」
「ハイハイ、チョコバーあげるから少し静かにね〜」
チョコバーをモソモソ食べるオーフィスの姿にほっこりしながら、伊達のオッサンがこれから負う気苦労に目頭が熱くなってくる。
悪魔陣営は先代魔王を、天界は聖書の神を、堕天使は
「全く、これだから現魔王共は……」
「下手に人間との関わりが強くなったせいで人間界が自分たちの土地だと勘違いしている。人間には人間の、悪魔には悪魔の領分がある事を忘れたのか……」
悪魔の現状を聞いて眉間にしわを寄せているのはカテレアとクルゼレイ。先代魔王の血縁であり、次期魔王として教育されていた2人からすれば現魔王の行いは許せるものでは無いのだろう。2人と初めて会って素性を聞かされた時は殺しに行ったな……オーフィスに止められて2人の目的聞いてから殺意は治ったけど。
カテレア・レヴィアタン、クルゼレイ・アスモデウスの目的は現魔王を倒して魔王となり、人間との関わりを断ち切ること。彼らからすれば
だが、もう1人いるシャルバ・ベルゼブブはダメだ。俺がよく知る悪魔と同じで人間を見下して道具としか思わず、しかも冥界を一度滅ぼして新しい悪魔社会を作るつもりだとか。後者に関してはまぁカテレアとクルゼレイも同じようなことを考えているのでどうでもいい。だが前者に関しては認められない。現魔王と同じ思考だ。何故いるのか2人に聞いたが戦力を増やす為に呼んだと言われた。
「その会議にニルレムは強襲をかけるつもりらしい……情報によるとセラフォルー・レヴィアタンが出席するらしいからな」
「ニルレムっていうと魔法使い連中だっけか?」
「あの魔王の恥晒しが……!!」
「これでレヴィアタンは魔法少女コスプレをするという風習が根付いたらどうしてくれるのだ……あぁ、もしそうなった時の為に用意はしてあるぞ」
「クルゼレイィィィィィィィィ!!」
「……魔法熟女」
「殺す!!」
「ハッハッハ、温い温い」
笑いながら腰に下げていた剣を抜いてカテレアが放ってくる魔法を切り刻む。しばらく魔法を放って頭を冷やしたのか、カテレアは息を荒くしながら席に座った。
「ニルレムの気持ちは分かるから止めるつもりは無いが、もしも近辺の住民に被害が出た時の事を考えるとな……誰か抑えに向かってくれないか?ちなみに俺たちは無理だ。その日は須弥山の帝釈天との会合がある」
「なら私が、ついでに私たちの存在も明かしておきましょう」
曹操の言葉にカテレアが手を挙げる。ニルレムの抑えがメインだがついでに
「なら、俺たちも行こう」
それに俺も、俺たちも行く意思表示をする。曹操、カテレア、クルゼレイからは驚きの目で見られた。それはそうだろう。俺たちは表舞台に上がることを避けてきた。目立つことを避けて、裏でコソコソとやってきた。唯一の例外はコカビエルの件くらいだけど。
「そうしてもらえると助かるが……良いのか?」
「そもそもだ、俺たちが今まで隠れてたのは復讐を果たす力をつける為だ。それもイザイヤとクリスがコカビエルと聖剣を相手に復讐を果たせた事で問題無いと判断した……だったら、復讐を始めるだけだ」
復讐の為の準備が整った。そう考えるだけで怒りと殺意が抑えきれない。溢れた怒りと殺意を感じ取ってか3人は顔を青くする。オーフィスは平然とチョコバーを齧っているが。
「……カテレア、無茶はするなよ」
「分かってます……下手をしたら巻き込まれかねませんからね」
「そうしない、とは断言出来ないな……ところで会議に参加するのは誰か分かってるのか?」
「あ、あぁえっと……天界からはミカエルとガブリエル、堕天使からはアザゼルと白龍皇、悪魔からは……セラフォルー・レヴィアタンとサーゼクス・ルシファー、それにリアス・グレモリーの眷属とソーナ・シトリーの眷属が参加するみたいだね」
サーゼクスが、父さんと母さんを殺し、真輝を攫ったあいつが参加する。それを聞いた瞬間、俺は抑えることを止めた。憤怒と殺意と憎悪で大気が軋む。
「レージ、顔怖い」
が、オーフィスに顔をペシペシと叩かれた事で我に返った……そうだ、まだ会議までには時間がある。その事に気付いて垂れ流していた物を霧散させる。3人は冷や汗を滝のように流していた。
「あ〜……悪かったな。そう言えば白龍皇って言ったらこの間スカウトしたって言ってなかったか?」
「心臓に悪いからやめて欲しいよ本当に……そうだね、現白龍皇ことヴァーリはこちら側に着いてくれている。参加者に関しての情報は彼から教えられたものだ」
「……なぁ、親父殿……アザゼルの現状について分かるか?」
とここて、今まで黙っていたアスラが初めて発言した。基本アスラは会議に着いてくることはあっても発言はしない。珍しい事だがアザゼルとの関係を考えると聞きたくもなるだろう。
「情報によると……かなり自堕落な生活をしている様だな。とある時期から酒に溺れて仕事にも手を付けていないらしい。部下がなんとか
「そっか……」
「気になるなら会いに行けば良いじゃないか」
どう見てもアスラがアザゼルの事を気にかけているのは分かる。会いに行けと言っても、どこか躊躇ってる様子だった。
「どの道会議で俺たちの事を明かすんだ。邪魔されずに話すとなればその前しかない。会うなら今のうちだぞ」
「……考えておくわ」
そう言ってアスラは目を閉じて考え始めた。アスラは風来坊の様に振舞っているが考えない訳ではない。考えた上でそんな態度を取っているのだ。
出来ることなら会って欲しいと願いながら、俺たちは今後の事を話し合っていった。
派閥間の中は筆頭格だけならさほど悪くは無い。ただしニルレムはセラフォルーへの憎しみが天元突破している上に引きこもり気質、シャルバは何考えてるのか分からない。
レージの心境・始め
「サーゼクスとかいう紅髪殺す」
「サーゼクスとアジュカ、悪魔すべて殺す」
現在
「サーゼクスとアジュカ、人間に被害を出す悪魔殺す」
……うん、丸くなってるな!!
↓それぞれの活動方針
曹操「人間を救う為に英雄を目指します」
カテレア・クルゼレイ「転生悪魔とかいう訳のわからないことをしている現魔王が気に入らないので現魔王を倒して悪魔たちを統率します」
シャルバ「現魔王を倒して悪魔社会を作り直します」
ニルレム「セラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺すセラフォルー殺す」