復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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※エクスカリバーと復讐者・5の最後の方に追加しました。そうしないと原作主人公たちが神の不在を知らなくなるから……




エクスカリバーと復讐者・6

 

「お疲れ様〜」

 

 

そんな言葉とともに転移してきたイザイヤとクリスを出迎える。復讐を果たしてきた2人の顔は何処か晴れやかで、それでも拭いきれない憎悪がある事を感じさせる。そもそも2人の復讐の対象は一組織一種族にまでなるのだ。高々個人程度に報復しても憎悪が晴れるはずがない。

 

 

「にゃ〜ん。もう黒歌さん疲れちゃった〜」

 

「あいあい、黒歌もご苦労様」

 

 

ぐで〜とだらしの無い姿で座っていた俺の膝に飛び込んできたのは黒歌。俺と同じ悪魔を復讐の対象にしているが、それよりも妹を優先したいとの事。まぁそこら辺は個人の感情なので好きにするように言ってある。だが、機会はあったのにヘタレて妹に会いに行けない黒歌の事を考えると無理矢理にでも妹と合わせた方が良いんじゃ無いかなぁと思ったり思わなかったり。

 

 

「あれ、オルタさんとアスラさんは?」

 

「ジャンヌオルタならつまらないって言って帰ったし、アスラなら暴れそうになってる堕天使見つけたから狩りに行ってもらった。あと少しで戻ってくるだろうから待っててもらえるか?」

 

「分かったが……お前はどうするのだ?口振りからしてどこかに行くのだろう?」

 

「あ、はいは〜い。私も付いてく〜」

 

「良いけど、暇だと思うぞ。単なる事後処理の報告だし」

 

 

実は今回のコカビエルによる聖剣騒動、日本神話以外にも処理を頼まれていたのだ。日本神話は監視の目があって直接見ていただろうがもう一つの方は被害の拡散を防ぐ為にこの町を封鎖して入らないようにしているらしいから知らないだろう。

 

 

「ちょっと内閣総理大臣のところに行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

日本の総理大臣官邸で、1人の初老の男が執務室の机に手を組みながら座って電話を待っていた。イラついているのか指を忙しなく動かして、椅子が軋むほどに貧乏ゆすりをしている。

 

 

彼の名は伊達勇(だていさむ)。現日本総理大臣である男だ。

 

 

そして机に設置されていた電話が鳴り、ワンコールで電話を手に取る。

 

 

「ーーー私だ」

 

『総理、お客様がお見えになられています。アポイントを取っていて、レージと伝えれば分かると仰られていますが……』

 

「あぁ問題無い。連れが居るのか?居るのなら一緒に執務室まで通してくれ」

 

『かしこまりました』

 

 

電話の相手は警備員の者だった。期待していたものとは違うが、会いに来たという人物が伊達が期待していた人物だったので安堵の溜息を吐く。

 

 

そうして10分もしない内に執務室の扉が叩かれる。入るように告げると入って来たのは顔の右半分に包帯を巻きつけた男性と、その男性背中におぶさっている着物を着崩した女性だった。

 

 

「ヤッホー総理大臣様、報告に来てやったぜ?」

 

 

包帯を巻きつけた男性ーーーレージはそう言うとニヤリと小馬鹿にする様な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……茶が美味い」

 

「ほんと、良い茶葉使ってるわね〜。これがブルジョワ格差か……!!」

 

「俺の妻の実家で作ってる茶葉だ。何も無い田舎だが空気は綺麗だし、美味い野菜は取れるし、良い茶葉も作れる。ちなみにこれは100gで400円だ」

 

「あら、意外とリーズナブル」

 

 

現日本の内閣総理大臣である伊達のオッサンに会いに来て、今は淹れられたお茶を飲んでいる。丁度喉が渇いてたんだよ。伊達のオッサンは色々と張り詰めていたみたいだが俺と黒歌が来たことで事態の収拾を察したのか安心してるな。そりゃあ自分が代表になってる国で人外による騒動とか勘弁して欲しいよな。

 

 

ちなみに伊達のオッサンだけでは無く、歴代の総理大臣たちも裏側の事情を知っているとの事。そうでなければ人外による被害の隠蔽なんて出来やしないしな。

 

 

「さて、どうなったか聞かせてもらおうか」

 

「堕天使コカビエル、【皆殺しの大司教】バルパー・ガリレイ、はぐれ悪魔祓いフリード・センゼルは排除、ついでに4本統合されたエクスカリバーも破壊完了だ。コカビエルに便乗するつもりだった堕天使はこっちの仲間が狩ってる。が、駒王町だけになると思うから他は任せるしか無いな」

 

「そのくらいならお安い御用だ。すぐに周囲を張らせていた者たちに探索を命じる……やれやれ、人外の揉め事を表側に持ってこないで欲しいものだな」

 

「駒王は悪魔が治めてるって自称している土地で、しかも赤龍帝がそこの出身らしいからな、龍のオーラは何でもかんでも惹きつけるらしいしトラブルは尽きないだろうよ」

 

「駒王だけにトラブルが集中してくれるならまだマシだ、そこだけに注意してれば良いからな……だが、はぐれ悪魔や教会のはぐれ悪魔祓いによる被害が多すぎて……堕天使も数は少ないがあるにはあるし……ホント嫌になってくる」

 

 

そう言って溜息を吐く伊達のオッサンの姿は定年手前で会社をリストラになったサラリーマンの様な雰囲気を醸し出していた……うん、気持ちは分からないでも無い、俺もその被害者の1人だからな。

 

 

そもそも、三大勢力による被害が多すぎるのだ。他にも人外は居るのだが、主だって被害を出すのは三大勢力に限定される。悪魔は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)による無理矢理人間を悪魔に転生、加えて逃げてきたはぐれ悪魔の被害。転生は教会から追放されたはぐれ悪魔祓いによる被害や過激な信者たちによる騒動。堕天使は神器(セイグリッド・ギア)関連による被害。

 

 

神話勢力は神代の時代はもう終わって今は人の時代だと引退しているし、妖怪勢力は人間との共存を図っているので基本的には無害。たとえ妖怪による被害が出たとしても即座に処理をしてくれるので被害は広まらない。

 

 

「今回の件は本当に焦ったぞ……前もってお前と繋がりを作ってなかったらどうなっていた事やら……」

 

「日本神話からも頼まれてたしな。それに、今回の件は伊達のオッサンもよく判断したと思うぞ」

 

「……止めろ、褒められたものじゃない」

 

 

そう言って苦しげな顔になる。そういう表情が出来るのは自覚があるという事、そしてそういう自覚があってもそれをする覚悟があったという事は俺は素直に褒められるべきだと思う。

 

 

「ねぇレージ、この人は何をしようとしていたの?」

 

「伊達でもオッサンでもおじ様でも良いぞ。個人的には最後のが一番くる」

 

「おい、妻子持ちが他の女に手ェ出そうとしてんじゃねぇよ」

 

「男はな、美人を見ると口説きたくなる生き物なんだよ……それに、それはお前に言われたくない」

 

「俺は手を出してねぇよ!!襲われるんだよ……!!」

 

「涙を流す程なのか……」

 

 

逆レとか本当にやめてほしい……しかも一々薬を仕込んでくるし……避けられないシチュで襲ってくるし……なんでヘラクレスさんでも千切れない様な鎖持ってきてるの?アテナはアテナで正妻は自分だが愛人は認めようとか言ってるし……

 

 

「あぁ……俺の心の傷を開いたけど……伊達のオッサンがしようとしていた事だっけ?万が一、コカビエルが止められなかった場合、()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

「……ハァッ!?」

 

 

万が一、俺たちがコカビエルを排除出来なかった場合、伊達のオッサンは自衛隊に駒王を爆撃する様に命令を出していた。その被害を最小に抑える為に適当な理由をつけて駒王への人の出入りを禁止して、出れず入れずの陸の孤島にしていた。

 

 

何故そんな事をしようとしていたかといえば、コカビエルの存在が理由だ。聖書に名を残し、三大勢力が行っていた大戦を生き残った強者。そんな存在が戦争をしようと駒王に現れた。なら、次は近場の町に被害が出るかもしれない。最悪、日本が存在を保てなくなるかもしれない。だったら町一つでコカビエルを止める方が良い。そう考えての判断だったのだ。

 

 

別に伊達のオッサンが俺たちの事を信用していない訳ではない。ただ一国の指導者として失敗した時の事を考えて保険を掛けておく事は当然の事だろう。伊達のオッサンに取ってもそれは苦渋の決断だったみたいだし、そうならなくて安心しているみたいだ。

 

 

「もうやだ……なんなの三大勢力とか……なんで我が物顔で人間界にチョッカイかけてくるの……なんで日本に被害集中してるの……他国の被害件数と日本の被害件数比べたらほぼ同じなんだけど……」

 

「マジお疲れ様……酒買ってきたけど、飲む?」

 

「お酌してあげようか?」

 

「……お願い」

 

 

そうして伊達のオッサンに酒を飲ませまくって溜まっていた愚痴を黒歌と一緒に酔い潰れるまで聞いていた。

 

 




オリキャラ登場……なんと日本の内閣総理大臣。ダンディーなおじ様、ただし三大勢力の被害で苦労しまくりの苦労人。国の指導者が裏側事情を知らないなんてありえないと思って登場させました。この世界の国の首相たちは裏側事情を知っています。おそらくはオリ設定。

これでエクスカリバー編は終了……次は三大勢力会議……荒れるな(確信

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