復讐者慟哭。幕上がるは復讐歌劇   作:鎌鼬

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エクスカリバーと復讐者・2

 

 

「ーーーみんな、頑張ってください!!」

 

「「「「「「「「ハイッ!!!」」」」」」」」

 

 

駒王学園の周囲でソーナの声に張り切って答えたのは彼女の眷属である7人の少年少女たちだった。

 

 

コカビエルからの宣戦布告を受けてソーナとリアスは魔王へ援護を要請し、彼らが来るまでの時間稼ぎをする事になった。だが、いくら地位は上級だとはいえ彼らは若い悪魔で、例え天地がひっくり返ったとしても大戦を生き残ったコカビエルを相手に時間稼ぎをするなんで無謀だった。それにコカビエルと戦う事で町に被害が出る。

 

 

そこでソーナとリアスが下した決断は、ソーナが眷属たちと共に駒王学園の周りに結界を張り、リアスが眷属たちと共にコカビエルの気を引くというもの。

 

 

眷属の数で言えばソーナの方が多いのだが数の多さだけではコカビエルには敵わない。対するリアスは最近、堕天使に襲われていたところを救って眷属に入った赤龍帝ーーー神滅具(ロンギヌス)の一つである赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を宿した兵藤一誠がいる。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の能力の一つの譲渡の力を使えば、限定的であるがコカビエルとも渡り合える。

 

 

そこでリアスたちはコカビエルと聖剣計画の首謀者のバルパー・ガリレイ、それとはぐれの悪魔祓いのフリード・セルゼンの相手を務め、その間の被害を少しでも減らすためにソーナたちは駒王学園の周囲を結界で覆う事にしたのだ。

 

 

無論、これは賭けだ。コカビエルの油断や慢心有りきでこの作戦は成り立っている。もしコカビエルがそれらを持っていなければ、もしコカビエルが結界を煩わしいと壊そうとしたら、そんな綱渡りのような作戦だが、それでも決行するしかなかった。

 

 

結界を通して、中の戦いの様子が伝わってくる。現在リアスたちはコカビエルが連れてきたケルベロスの相手をしている。懸念されているコカビエルの様子だが宙に浮かんでいる椅子に腰掛けてリアスたちの戦いを見ているだけで動く気配は無い。

 

 

このまま、このまま魔王が来るまで持ちこたえていればーーーソーナたちは結界を維持する為の魔力を注ぎながら淡い希望を持っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界の中ではソーナが知覚した通り、死闘が繰り広げられていた。

 

 

3つある頭のそれぞれから異なる唸り声を挙げ、ヨダレを垂らしながら校庭を駆けているのはコカビエルが戯れに連れてきたケルベロス。人間界の空気を吸い、目の前にいる悪魔たちを餌だと認識して飢えを満たす為に咆哮しながら突進する。

 

 

「ーーーハァッ!!」

 

 

それを紅い魔力を放ちながら牽制しているのは魔力と同じ紅い髪の少女、リアス・グレモリー。いかにケルベロスとは言えど紅い魔力に直撃してしまえば重傷になるのが分かっているのか、放たれる魔力に大袈裟すぎる回避をする。

 

 

「ーーーフフッ、それで良いのかしら?」

 

「ーーー隙ありです」

 

 

回避に気を取られたケルベロスたちに追い打ちをかけるのは黒髪の少女、姫島朱乃と、白髪の少女、塔城小猫。朱乃は空中から雷で、小猫は小さい体躯を活かしてケルベロスの下に潜り込み徒手空拳による打撃で攻め立てる。

 

 

朱乃の雷によってケルベロスは感電による麻痺で、小猫の打撃によって胴体に痛烈な一撃をもらったケルベロスは痛みに身体を硬直させる。

 

 

「イッセー!!」

 

「ーーーハイッ!!」

 

 

リアスの掛け声に応じたのは茶髪の少年、兵藤一誠。彼は紅く染まった籠手の付いた左手でリアスの肩に触れる。

 

 

『ーーーTransfer!!!』

 

 

すると紅い籠手から声が聞こえ、リアスの魔力は数倍に膨れ上がった。

 

 

これは一誠の神器(セイグリッド・ギア)である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の能力の一つの譲渡。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は10秒に一度、持ち主の力を倍加させるのだがこれにより倍加を他者へと渡せるようになった。

 

 

一誠の実力は決して高いとは言えない。そもそも数ヶ月前までただの人間であった者に強さを求めるのは酷な物。だが、これによって実力の高い者を更に強くさせる事が出来るようになった。

 

 

「喰らいなさいっ!!」

 

 

譲渡の力によって跳ね上がったリアスの魔力が放たれる。それは先程までとは比べ物にならない威力を誇り、朱乃と小猫によって足止めらされていたケルベロスだけでなく、他のケルベロスを飲み込んで跡形もなく消し飛ばした。

 

 

「ーーーヒャァッハッハッハ!!」

 

「ーーー」

 

 

狂ったような笑い声を出しながら光で出来た剣を振るうのはフリード・セルゼン。それと対峙するのはナイフを持った白髪の少女、マキナ・クルール。リアスの騎士(ナイト)である彼女は他の仲間たちがケルベロスと戦っている中、たった1人でフリードと対峙していた。

 

 

それは単純に、他の仲間ではフリードの相手をする事が出来なかったから。フリード・セルゼンははぐれの悪魔祓いで、光弾を放つ銃と光の剣を使って遠近共に戦える実力者だ。兵士(ポーン)である一誠と僧侶(ビショップ)であるアーシア・アルジェントは実力不足から、(キング)であるリアスと女王(クイーン)である朱乃は遠距離こそ強いが反対に近距離になると弱い、戦車(ルーク)である小猫は光弾を諸共せずに攻められるが光の剣を捌けるだけの技量を備えていないから。

 

 

だからマキナはたった1人でフリード相手に戦っていたのだ。他の仲間たちはケルベロスの相手に忙しく、手が回らないようだがマキナからしてみればこの状況はかえって有難かったりする。多対一で連携を気にしながら戦うよりも一対一で戦った方が彼女の戦闘スタイルとは異なるとはいえやり易かったから。

 

 

「どうした悪魔ちゃんよぉ!!少しは話したらどうだい!?無口じゃ社会に適合できないぞ!!」

 

「……私は無口じゃなくて狂人と話したくないだけです。それに社会不適合者の貴方にそんな事を言われたくはありません」

 

 

言い終わるのと同時に剣を弾き、身体ごとナイフをフリードの首目掛けて振るう。殺す事を躊躇せずに振るわれたナイフは銀の軌跡を描きながらーーーフリードの髪を数本切り裂くだけで終わる。フリードが剣を弾かれるのと同時に後ろに倒れる様に仰け反ったからだ。

 

 

その結果にマキナは思わず舌打ちをする。これまでに何度もフリードを殺すタイミングを見つけて仕掛けたのだが、フリードはその全てを回避したのだ。これまでで培ってきた経験と勘、それに超人的な反射神経から来る回避だろうと辺りを付けているがここまで来ると舌打ちの1つでもしたくなる。

 

 

躱され、突貫した事で距離が出来、フリードはリボルバー式の銃をマキナに向けて引き金を引く。ハンマーが下されるが銃声は一切出ず、光弾がマキナ目掛けて飛んでいく。それをマキナは余裕を持って回避した。銃は弾丸の速度こそ驚異的だが真っ直ぐにしか飛ばない。引き金を引くタイミングと銃口の向きさえ把握出来ていれば発砲の直前で身体をズラして射線上から逃げる事など容易い。

 

 

銃を牽制程度にしか使えないと判断したフリードは、()()()()()()()マキナに向かい突進した。効果があるのなら何でもするが、効果がなければそれを切り捨てる。銃は役に立たたず、邪魔にしかならないと判断したからだ。

 

 

そしてそこからはさっきまでの焼き直し。フリードからの攻撃をマキナが捌き、隙を見つけて仕掛けるがそれをフリードは勘と反射神経で回避してみせる。

 

 

「っ!?クルール先輩!!」

 

 

そんな彼らの元に、1匹のケルベロスが向かっていくのを一誠は見た。ケルベロスの狙いはマキナとフリード。フリードもコカビエルの一味であるのだがケルベロスからすれば関係無いらしい。殺し合っている2人に目掛けて3つ首の(アギト)を向けーーー

 

 

「ーーーハァァァァ!!!」

 

 

ーーー青髪の少女の持つ剣に切り裂かれて絶命した。

 

 

「済まない、遅れた様だな」

 

 

青髪の少女はゼノヴィア・クァルタ。コカビエルが奪ったエクスカリバーを奪還する為に教会から派遣された2人の退魔師(エクソシスト)の片割れ。もう1人はコカビエルと遭遇し、逃げる際に重傷を負った為に安全な場所に寝かせている。

 

 

「いいえ、丁度いいタイミングでした。感謝します」

 

「まさか悪魔から礼を言われるとはね」

 

 

フリードから目を離さずにゼノヴィアに礼を言うマキナ。確かに教会の者に感謝する悪魔は居ないだろう。だが助けられた事には変わりは無いのだ。なら礼を言うのが筋だろう。

 

 

どうやらゼノヴィアが切り捨てたケルベロスが最後だったらしく、これで動いているケルベロスは居なくなった。

 

 

「ーーー完成だっ!!遂に完成したぞ!!」

 

 

その時、コカビエルの下から嬉しそうな声があがった。そこにいたのは1人の司祭、それと神秘的な輝きを放つ一本の剣だった。

 

 

その司祭の名はバルパー・ガリレイ、聖剣計画の首謀者にして聖剣に対して異常なまでの情熱を傾けた老人。彼は大戦の最中で折れて7つに分かれたエクスカリバーを再び1つにしようとしていた。

 

 

その結果、コカビエルが教会から強奪した天閃の(エクスカリバー・)聖剣(ラピッドリィ)夢幻の(エクスカリバー・)聖剣(ナイトメア)透明の(エクスカリバー・)聖剣(トランスペアレンシー)、それとゼノヴィアの相棒である紫藤イリナに与えられた擬態の(エクスカリバー・)聖剣(ミミック)の4本を融合させる事に成功した。

 

 

「フリード!!融合した聖剣を使え!!これさえあれば悪魔や欠片でしか無い聖剣なんぞ敵ではない!!」

 

「ヒャッホー!!愛してるぜバルパーの爺さん!!」

 

 

バルパーが投げた融合した聖剣の柄をフリードはバルパーの方を見ずにキャッチする。それと同時に校庭に魔法陣が浮かび上がった。

 

 

「エクスカリバーの統合に成功したことでこの術式の別の効果が発動される。あと20分ほどでこの町は崩壊する!!」

 

「何ですって!!」

 

「止めたければコカビエルを倒すことだ!!」

 

 

エクスカリバーを統合したことで余程気分が良いのか、バルパーは統合の為に使った術式の別の効果を饒舌に説明した。

 

 

魔王への援護を要請したが早くて30分、遅くて1時間はかかると言われていたのだ。それが今から10分前のこと。つまり魔王の到着を待っていればこの町は崩壊してしまう、リアスたちがコカビエルを倒さなければ。

 

 

説明するまでもなく、それは不可能だ。リアスたちの役割はあくまで魔王が来るまでの時間稼ぎでしかない。いくら一誠の譲渡の力で差を詰めたところでコカビエルを打倒出来ない。

 

 

リアスたちを絶望が襲う。だが、そんな状況でもコカビエルたちへの敵意だけは衰えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーエクスカリバーが統合されたみたいだね」

 

 

駒王学園の上空1000m、そこで1人の少年が聖剣の気配を察知して憎悪と殺意を撒き散らしながら呟いた。

 

 

「ーーーその様だな。それにコカビエル……忌々しい烏もいる」

 

 

その呟きに答えながら少年に勝るとも劣らない憎悪と殺意を放つ初老の男性がいた。2人の目は血走り、それぞれの相手を見下ろしている。

 

 

「行こう」

 

「あぁ。黒歌、フォローは頼んだぞ」

 

「ーーー任せるにゃ〜」

 

 

そんな憎悪と殺意をまともに受けながらも気を抜けた声を出すのは着物を崩して着込んでいる黒髪の女性。黒歌と呼ばれた彼女は2人と自分に掛けていた浮遊の術式を解いた。するとどうなるか?浮いている為の力が無くなったことで、重力に引かれて落下を始める。

 

 

ドンドンと加速していく3人。そして駒王学園を覆う結界との距離が100mを切ったところで少年が虚空から一本の剣を出して握り、()()()()()()()()()()()()()。そうして出来た隙間から少年と男性が結界内に侵入し、黒歌は結界に着地し、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「悪くは無いわね……でもコカビエルを閉じ込めるには脆い。黒歌さんがいた事に感謝してね?」

 

 

簒奪した結界の術式を高速で書き換え、強度を先程よりも数十倍に引き上げる。これなら今のコカビエルが本気を出そうともヒビを入れるのが限界のはずだ。

 

 

「……頑張ってねイザイヤ、クリス」

 

 

そして結界の頂上に座りながら仲間の健闘を祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界の中へ侵入した少年と男性は突然の乱入に驚いている面々を無視して各々の相手に向き合った。

 

 

少年はバルパーとフリード、そしてフリードが持っている聖剣に憎悪と殺意を向ける。

 

 

男性は宙に座って見下しているコカビエルに憎悪と殺意を向ける。

 

 

「ーーー何者だお前たち。何しに来た?」

 

「ーーーイザイヤ」

 

「ーーークリスティアン・ローゼンクロイツ」

 

「「復讐しに来た」」

 

 

そして奪われた者たちの報復が始まる。

 

 

 





残りのメンバーが開示されました。原作から木場祐斗ことイザイヤと黒歌、オリジナルでクリスティアン・ローゼンクロイツ……通称クリスです。クリスのイメージはトライガン・マキシマムのマスターチャペルです。

そしてオリキャラ……リアス眷属になっていないイザイヤの代わりに騎士(ナイト)になったマキナ・クルールです。イメージは白髪の両儀式をしていただければ。

さぁ遂に始まるぞ復讐が!!序章に過ぎないが始まりなのには変わりない!!幕が挙がるぞ!!幕が降りるまでは誰も止まらん!!



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