覇王少女ネム育成計画(修羅場ルート)   作:万歳!

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前2話を読んだ作者の感想……なぜ自分が書いた作品でSUNチェックする羽目になってるんだろう?(´・ω・`)

今まで投稿した物を読み返した作者の感想。ありのまま起こった事を話すぜ。ほのぼのを書こうと思っていたらいつの間にかBADENDが確定していた……恐ろしい物の片鱗を味わったぜ。

なお感想は読んでます……来週あたりにまとめて返信しますので御容赦を。

また後書きにて作者が少しネタばらしをするため、お嫌な方は本編を読み終わった後、ブラウザバックしてくれると嬉しいです。

追記
感想返しはまたさせて頂きますが、とりあえず2点だけ。

まずなぜBAD確定なのかと言いますと、そもそもアルベドを粛清しないといけない時点で作者がBADと考えてるからです。また本文でも書きましたが、アルベドを殺そうとした場合、アウラも殺さないといけません。まあこれは現状判明している事だけでですがね?


またタイトルに関してなぜ覇王少女ネム育成計画なのかと言えば、これからさらにネムが強化されていくからです。


第15話 味方

 パンドラズ・アクターは宝物殿へ転移して、本来の守護領域に戻ってきていた……今までに溜まった、澱みを無視しながら……しかしここは宝物殿。自分しか存在しない場所だ……

 

 現在リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持っている存在が、何人か存在するが彼女達は訪れないだろう。特にアルベドはNPCを壊すのに忙しいのだから……故に、全ての感情をパンドラズ・アクターはさらけ出す……

 

「……私は! ナザリックで父上の家族になってくれる可能性がある者を殺してしまった! それだけではない! 全てのNPCを壊してしまった! 父上に申し訳が立たない!」

 

 咆哮があがる……自分のミスを認識してしまった。彼の口から……全て吐き出せば何かが変わると信じて……

 

「どうすればいい! どうするのが最善だ!……ネム様がいれば父上を幸せにしてくれるでしょう……それを他の者達にも見せて、アインズ様が本当にお望みである物にも気付いて貰うつもりだった! 家族に近づいて貰うつもりだった! アウラ殿なら時間はかかろうとも可能だったはずだ!……アウラ殿だけではない……アルベド殿も気付く事ができたはずだ……私は彼女を……まさか」

 

 パンドラズ・アクターは恐ろしい事に気づいてしまう……確かに彼女の部屋は、父上が望まないものだった……だがアルベドがそれを実行したのはいつだ? 自分が、アインズの傍に付き従い始めて、アルベドが父上に捨てられる可能性を抱いてからなのでは……

 

「……私は……私は何ていう事を……そもそも警戒すべき存在なんていなかった……いや、違う、違うはずだ……それを認めてはいけない……」

 

 パンドラズ・アクターは必死に目を逸らす……もしそれを受け入れてしまえば、自分が何もできなくなる事を考慮して……

 

「……父上はナザリックを捨てられない……NPCに彼らの面影を見ているから! 御自身の心を殺されている…… 殺されるしかない。支配者として君臨して貰う事こそ彼女達の願いなのだから! 私は父上の御負担を減らすために行動したはずだ……だが全てが裏目に出た!」

 

 後悔に思考を飲まれそうになる……いや実際飲まれているのだろう……

 

「…………思考を止めるな……後悔は、後でできる……今するべきは何が必要か考える事だ!」

 

 必死に自分を鼓舞する。何が必要か。どう行動するのが最善かを……

 

「ナザリックの者達で父上と本当に家族になれる者はもういな……いやルプスレギナがいますか……問題は彼女をどうこちらの味方にするか……ですね。そうなるとアルベド殿からどう守るかも考える必要がありますね……」

 

 必死に考える。ナザリックの崩壊を防ぎながら、カルネ村やルプスレギナを守り、ナザリックの者達を正気に戻すかを……

 

「アルベド殿の部屋の事を父上や、全てのNPCに伝えたとしましょう……仮に父上がアルベド殿を殺す決断をなされた場合、アルベド殿が間違いなく父上を殺そうとするでしょう……故にこの選択はできません……NPCに話して彼女の言葉を受け入れるなと言っても……無駄に終わる可能性がありますね……現状なら、アルベド殿が一時の気の迷いや、自分達や父上を捨てた者達を許せなかったと言えば……それに私の言う事が真実と受け入れられる可能性は低いですね……下手をすれば私の謀略とされかねない……アルベド殿の暗殺は不可能でしょう……私ではNPC複数人を同時に殺すのは不可能です……たっち・みー様の力を十全に振るえれば別ですが……やはり駄目ですね……」

 

(……私は間違いなく殺される……それに後悔は無い。しかし現状を認める事はできない……私の死後、代わりを務めてもらう人物が必要ですね……私を蘇生させるのは……アルベド達が反対するでしょうし……) 

 

 ……声に出しながら様々と考える……だが何も浮かばない。当然だ。既に盤面は詰みなのだから……故に決断を下す。最後の決断を……

 

「…………父上。お許しください。私はこれより、父上の御命令に逆らいます…………」

 

 パンドラズ・アクターは今だけ、全ての後悔を捨て去り覚悟を決める……家族の望まぬ形で決着を付ける事を……

 

 己の考えに従い、現状唯一の味方と断言できるデミウルゴスに連絡を取る。

 

『デミウルゴス殿ですか?』

 

『パンドラズ・アクターかい? 君から連絡とは……何かあったのですか?』

 

『……安心しました……あなたにはまだ連絡が言っていないのですね?』

 

『……何を言っているんだい?』

 

『……緊急事態が起きました……30分後に私がゲートを開きます……その門を通って、帰還して頂きたい。誰にも分からないように……』

 

『……しかし、アインズ様の御許可なくこの地を離れるのは……』

 

『アインズ様の御命にも関わる事です! 詳しい事はあった時に話しますが……現在ナザリックにいるNPCがアインズ様に反旗を翻す可能性が出てまいりました……』

 

『……一体何があったのですか! アインズ様はその事を御承知なのですか!』

 

『……アインズ様はお知りになりません……知ればきっと御自身の御心を殺されるのです……どうか手を貸して欲しい……既に私が殺されるのは確定事項でしょう……それも仕方ないと納得しております……それでも! アインズ様……いえ、父上の幸せを守りたいのです!』

 

『……今、父とお呼びになりましたか……分かりました……誰にも見つからないように行動しましょう……』

 

『……ありがとうございます! それともう一人味方になれる可能性のある、ルプスレギナも同席させます……そこで全てを、お話ししましょう……』

 

『分かりました……では後ほど……』

 

 デミウルゴスとの会話が終わる。必要になるアイテムを所持して、宝物殿を出る。その前に霊廟に向かい一言呟く……

 

「……至高の御方々……私はナザリックを破滅に導いた……大罪人です……しかし、父上の幸せをお望みくださるなら、どうか私に力を! どうかこの世界におられる事を……どうかナザリックを……父上を御救いくださいますよう……願います!」

 

 転移が実行され誰にも見つからないように隠密行動を開始する……彼にだけ許された至高の姿の一つで……

 

(……可能性は低いでしょうがね……どうかネム様……父上の心の支えであり続けて下さい……)

 

★ ★ ★

 

 パンドラズ・アクターは誰にも見つからないように密かに行動をしていた……ルプスレギナを連れて……現在アルベドの部屋にいる……アルベドはここにはいない……

 

(……熱は熱いうちに打てと言いますし……恐らくアウラを壊しているのでしょう……アウラ……私のせいです……申し訳ない)

 

「……どうしたんっすか? パンドラズ・アクター様?」

 

「……敬称は不要です……」

 

 ルプスレギナが自分の感情を読んだようだ――ルプスレギナに着替える時間を与えられなかった事が申し訳ない――ルプスレギナは旗の扱いを見て、怒り狂いそうになっていたが、デミウルゴスが着た後に話すから待てと頼んでいるため彼女自身も不機嫌そうだ……

 

「……そろそろ……時間ですね……門を開きます……」

 

 パンドラズ・アクターはルプスレギナの死角に移動して、ゲートを使う……

 

「……お待たせしました……それで一体何があったかお教え……あれは一体?」

 

 デミウルゴスから殺気が滲む……注意深く観察していたため、すぐに旗の扱いに気付いたのだ……

 

「……ここはどこですか? まさかあなたが……」

 

 デミウルゴスが戦闘態勢に入る……下手に答えれば、デミウルゴスも敵になるだろう……

 

「……あなたなら分かるはずです……この部屋を、もう少し注意深く御覧下さい……」

 

「……あれは、アインズ様の人形……まさか! ルプスレギナ、ここは誰の部屋ですか?」

 

「……我々を立ち入り禁止にした、アルベド様のお部屋で御座います……」

 

 ルプスレギナも普段の口調を改める……恐らく、事態の大きさに合わせた言葉遣いに直したのだろう……デミウルゴスが外に向かい出す……怒りの表情を滲ませながら……

 

「どこに行かれるので?」

 

「決まっています。アインズ様に御報告に行き、アルベドを討伐するように進言いたします」

 

「……無駄ですよ……アインズ様は御許可をだされない……仮に出した場合、アルベド殿に同調してアウラやルプスレギナ以外のプレアデス……シャルティア、恐らくはマーレ……下手をすればあなた方以外の全てのNPCが捨てられると認識して、アインズ様に牙を向き幽閉しかねない……いえ、恐らくはそうなるでしょう……」

 

 絶句だ……二人とも絶句している……何が起きたのか理解できずに絶句するしかないだろう……だってナザリックのNPC達の忠誠は不滅の筈なのだから……

 

「……一体何があったのですか?」

 

「……そうですね……まずどうしてこんな事態になったかを説明しましょう……先日、カルネ村から少女を招きました……ルプスレギナは覚えていますね?」

 

「……はい……何の関係が?」

 

「……私はアルベド殿に危険な雰囲気を感じておりました……それゆえ、彼女を一時的にシャルティアへの説教に行くように誘導しました……モモンガ様が、あの少女と楽しまれている間に……私もその場に行きました……彼女の真意を確かめるために」

 

 二人が注意深くパンドラズ・アクターの声に耳を傾ける……特にデミウルゴスは全てを読むかのように思考をフル回転させているのだろう……

 

「私は、彼女の真意を見つけるために、アウラやシャルティアの前で、叫びました……『この地を捨てた方とモモンガ様を比べるなぞ厚かましいにも程がある!』とね……」

 

 ……ルプスレギナから危険な香りがする……デミウルゴスには以前話しているため、問題は無い……過ちを理解しているパンドラズ・アクターは丁寧に話す事を心がける。同じ間違いをする訳にはいかないのだから……

 

「……話を続けます……シャルティア殿が怒りを上げた後『あなた方に全力で家族として愛情を向けられている!……私がナザリックを捨てるべきだと進言しても、却下されるぐらいにね?』…………この発言にお二人はルプスレギナのように呆然としました」

 

 それが当然だ……理解したくない事は理解しないのだ……それはナザリックの者達も同じだ……実はアインズが支配者に相応しい頭を持っていない事なのだ……直視すれば、デミウルゴスやアルベドは気付ける筈なのだから……

 

「……アルベドは違ったんだね?」

 

「……ええ。私からモモンガ様を取り上げるなと……そのため危険性の確認の為、彼女の部屋を査察しました……彼女は……この旗を見る限り、モモンガ様以外の御方々を怨んでいる……恐らく殺害を秘密裏に実行するでしょう……」

 

「……そこまで理解していながら、なぜアインズ様にお伝えにならなかった!」

 

「……モモンガ様は、アルベド殿の御方々への殺意を自分の責任と認識するでしょう……モモンガ様に御心労をかけないためにも……私はアルベド殿の事実を隠して、遠ざけるつもりでした……」

 

 二人の会話を静観していたルプスレギナが疑問の声を上げる。

 

「……だから、アルベド様に伝えるなと、我々に伝えられたのですか? 私をアインズ様のお傍に仕えさせようとしたのも、そのためでしょうか?」

 

 ルプスレギナが神妙な顔付だ……彼女からすれば、アルベドを遠ざけるためのだしとして利用されたと思って当然だろう……

 

「……それもあります。しかし、真の狙いは別にありました……時にお二人とも、モモンガ様の願いは何か知っておられますか?」

 

「……世界征服では…………まさか、あの時君は、モモンガ様は世界征服を望んでいないと言いましたね?」

 

 以前デミウルゴスとBARで会談した時に伝えた事を思い出したのだろう……

 

「……ええ」

 

「……私はそれを主の真意を考えて行動すべきと返事を致しましたが……それは現状では望んでいないという比喩ではなく……真実だったのですか?」

 

 デミウルゴスの声が震える……自分が主の望みを勝手に歪曲していたことに気付いたのだろう……

 

「……その通りです……だからこそ、私は世界征服を中止にするべきだと、私とあなたの間で合意したのです」

 

「……私は、何て愚かな事を……モモンガ様の真意を捏造するなんて……許される事ではない」

 

 デミウルゴスが自責の念を抱き始める……彼らからすれば、絶対の支配者の真意を捏造するなんて許される事ではないのだから……

 

★ ★ ★

 

 デミウルゴスの頭は絶望でいっぱいだった……当然だ……自分の浅はかな考えのせいで……主を苦しめる結果を招きそうになったのだから……

 

「……あなたが内で、私が外で汚れ仕事をするというのも……そのためだったんですね? 君がアルベドの代わりを務めたのも?」

 

「……その通りです……モモンガ様はあなた達が望む、絶対の支配者を演じる事を決意なされた……そのためにも私が、彼女の代わりを務める必要があったのです」

 

「……でも、それでしたら、アルベド様でも良かったのでは?」

 

 確かにその点は疑問だ……だってモモンガ様は見事に我々を支配しているのだから……

 

「……その点は、後で話しましょう……まずはモモンガ様の本当の望みを話しましょう……よろしいですね?」

 

 ルプスレギナの質問を先送りにし、自分達に問いかける……恐らく先送りにした内容は、今回の話の核心なのだろう……

 

「……当然です……これ以上モモンガ様の真意を理解しないで行動する事は、許されざる事です……」

 

「……私も同じです……」

 

「……モモンガ様は……共に歩いてくれる、『家族』を欲しているだけなのです」

 

 空気が止まる……予想だにしないセリフだったからだ……

 

「しかし、あなた達の願いは支配者として君臨して頂く事……そのために御自身の心を殺されている……」

 

「…………君が、モモンガ様にこの地を捨てさせようとした、本当の真意が理解できたよ……そうか……我々は知らず知らずの内に、モモンガ様をずっと苦しめてたんだね?」

 

「……ええ」

 

「だから……ルプスレギナとアウラだったのか……確かに二人なら、被支配者の『壁』を壊せたかもしれない……しかしアルベドも可能性は……いえ、それも理由の一つですか? 彼女が冷静に考えれば、気付く事もできたはずでしょうから……だから遠ざけたのですか?」

 

「さて、私にも分かりかねます」

 

 辛い表情だったはずの、パンドラズ・アクターがそこだけ強い口調で否定に近いニュアンスで返事をする……触れて欲しくないのだろう。

 

「……そういう事にしておくよ……それで、その少女に何の意味が? ここまでで関連性が特に見えないが……態々出したんだ……重要なんでしょう?」

 

「……その通りです……現状でモモンガ様に精神的に一番近いのは彼女です、至高の方々がいらっしゃれば別ですが……」

 

「……それは認めたくない事だね……だが君が言う事だ……真実なんだろう……ルプスレギナ……あなたはその少女を見ましたか?」

 

「……はい……確かにアインズ様と親しい御様子でした……考えてみれば、我々よりも……親しげだったかもしれません……あの少女に対しては威厳をだして、接していなかったと記憶しています」

 

「その通りです……私は彼女をNPC達に見せて、見習わせるつもりでした……外部の人間が、モモンガ様と親しげにしていれば、或いは気付く者が出てくると信じて……」

 

「……そうだね……アルベドが冷静であれば、気付けたかもしれない……君はヒントを出していたからね……」

 

「……ヒント、ですか」

 

 ルプスレギナはあの時、あの場いなかった……知らなくて当然だ……その後直接明言はしていないのだから……

 

「彼は『アインズ様はあなた方を、この地を去られた方々の子どもと、認識され愛されております!』とシャルティアが洗脳された時に明言していたんだ……私は何て愚かな……深く考えれば、この時点で気付けたはずだ……」

 

 デミウルゴスの悲痛な声に、ルプスレギナがより悲痛の声を上げる……人間に敬称を付けながら……

 

「……それなら私の方が愚かでございます……あの少女……ネム様の質問に、アインズ様は我々の事を『家族として愛してる』と明言されたのですから……」

 

「……それは、確かに人間と侮っては駄目だね……パンドラズ・アクターが、ネム様が一番モモンガ様に精神的に近いと明言するはずだ……我々は、一体何を……」

 

「……モモンガ様は常に心で泣いておられる……至高の御方々が去られた事に……あなた達が、『被支配者』として接する事に……その心を唯一慰める事ができたのが、ネム様です……ルプスレギナがネム様、モモンガ様と一緒に過ごされれば、いつかは自分で気付いてくれると信じていたのです……」

 

「……自分で、ですか?」

 

「……私はモモンガ様より『真実』を聞かされたため、モモンガ様の味方になる事ができます……妃になる者には途中まで自分で気付いて貰いたかったのですが、余裕がなくなりました……」

 

「……真実とは、一体? いえ、その前にアルベドが、一体何をしでかしたのか、我々に教えて頂きたい」

 

 その真実こそルプスレギナの質問で先送りした、事なのだろう……だからこそ先に、アルベドが何をしでかしたのか知らなければならない……

 

「……私の言葉でアルベド殿はさらに一歩、狂気に走ったのでしょう……『捨てられた』この言葉を利用して、アウラの心を壊し、自分の手駒にしたのです……」

 

 確かにそれだけ条件が揃えば、アルベドなら可能だろう……自分でもできるかもしれない……そんな事絶対にしないが。

 

「……そして、ルプスレギナを殺す振りをして、私を誘導した……」

 

「待って頂きたい……ルプスレギナを殺そうとした?」

 

 思わず声をだして止めてしまう……それほどまでに信じられない事だったのだから……その時の事を思い出したのかルプスレギナは震えている。

 

「……はい……私がモモンガ様の隣で常に付き従う時の話を聞かれて、お二人に殺されそうになりました……」

 

「……何てことを……」

 

「……しかし全ては、アウラを壊すための偽装でした……すでに彼女は創造主に命じられた服装すら止めている……恐らく、自分が何をしているかも気付いていないでしょう……モモンガ様に伝えた場合、そのまま反乱がはじまる可能性が高いため、伝える事はできませんでした……」

 

 アウラは幼く作られている……彼の発言で精神的に不安定になった時に、壊したのだろう。

 

「……さらに私は、アルベドと同じ行動を叱責した……それで彼女はより深く壊れた……アルベド殿に壊すのを手伝ってくれてありがとう、と感謝されましたからね……」

 

「……私が気絶した後にそんな事が……」

 

「ええ……そしてその場にいた全てのNPC達に、私がモモンガ様にナザリックを捨てさせようとした事を……アウラを慰めながら発言しました……」

 

 理解が進む。確かにそれなら、全NPCが彼を殺そうとするだろう……仮にモモンガが自分達を捨てようと少しでも行動すれば、どんな手段を使っても幽閉するだろう……

 

「……理解できました……確かに君の目的からすれば、この盤面は詰んでるね……もう、アルベド達がモモンガ様の家族になる事は無いでしょう……」

 

 もしなったとしても、それは家族という名の奴隷に過ぎないのだから……

 

(……彼が元気がないのも理解ができました……全て自分の責任と考えているのでしょう)

 

「……パンドラズ・アクター……あえて言いましょう。この事はあなたの責任ではない……君のヒントに気付けなかった我々が悪い」

 

「……しかし、私は……ナザリックを壊してしまった……」

 

「最低でも私は……私達はあなたの味方です……ですね、ルプスレギナ?」

 

 頷く事でルプスレギナは返事としたのだろう……デミウルゴスはここで慰めるのを止める。後は彼が自分の中で解決するしかないのだから……

 

「今までの君の発言を総合するなら、ルプスレギナはモモンガ様のお傍に仕えて、『被支配者の壁』を壊し家族になる……私は……君に代わり打開策を見つける……君が殺された場合は、君の代わりを務めるという事で良いのかな? 特にネム様は守る必要があるでしょう……モモンガ様の御意志を知らせて下さったのですから……そう簡単に、君を殺させるつもりは無いけどね……」

 

 彼が殺された時に、モモンガの心も完全に死ぬ事になるだろう……蘇生もアルベド達が阻止する筈だから……

 

「……よろしくお願いします……現状ネム様の護衛も付けていますが、我々には歯が立たない……それにアルベドの嫉妬で容易く殺されかねない程脆弱だ……ネム様が御自分の身を守れる程度にお育てせねば……」

 

「……分かりました……確かにネム様もモモンガ様の妃に相応しいだろうからね……間違いなくアルベドの嫉妬対象だ」

 

 パンドラズ・アクターは今まで、ただ独りで孤軍奮闘をしてきたのだ……第1功だろう……そして同じ仲間として彼を見捨てる事はできない……デミウルゴスはあまり話をした事が無いパンドラズ・アクターに親しみを感じているのもようやく理解していた。

 

(……この感情はもしかしたらウルべルド様から受け継いだのかもしれませんね)

 

 デミウルゴスは自分が彼に対しての親しみを……セバスに対しての敵意をそう解釈した……

 

「ところで、なぜセバスには言わないのかな? こちらからゲートを開く事はできるんでしょう?」

 

 実際アインズも部屋から、カルネ村を救いに行く時に転移してるのだから可能だろう……まして自分は敬愛する主と同じ行動で来たのだから……

 

「……セバス殿は信頼はできますが、信用ができません……カルネ村にモモンガ様が救援に行かれた時、アルベドや他の者達に救援に来た事が伝わっていなかったとの事ですし……それに、彼ではアルベド殿に対する憎悪を隠せないでしょう」

 

「……確かにその通りだ……ルプスレギナは……正妃の座を狙うライバルとして振舞わなければならないから、多少アルベドに敵意をだしてもばれないだろうからね……」

 

「……分かりかねます……もしかしたら本当に死ぬ事になりかねない……」

 

 ルプスレギナが覚悟を決めた目でパンドラズ・アクターに視線を飛ばす……何があってもやり遂げるという意思がそこには存在した……

 

「……やらせて頂きます……モモンガ様のために……」

 

「……申し訳ない……私の過ちで……」

 

「……それでだ……そろそろ『真実』とは何かを教えて貰いたいですね?」

 

「………………」

 

「パンドラズ・アクター?」

 

 パンドラズ・アクターから苦悩する感情を感じる……恐らく……それほど重要な事なのだろう……

 

「…………今から話す事は……父上から、決して話してはならないと言われた事です……この事をNPCに話していいのは……NPCの創造主だけだ、と……私から聞けば、後悔されるかもしれません……裏切りになるとも……それでも聞かれますか? あなた達はすでに他のNPCと敵対する道を選ばれた……今までの会話で十分だと私は感じました……ここで止めても、問題は」

 

「あるのでしょう? きっと『真実』を知らなければ、真の意味で『叔父上』の味方になる事はできない」

 

「……デミウルゴス……あなたは」

 

「私は、真の意味で家族となり共に歩む事はできません……しかし、だからこそ『叔父上』と認識してモモンガ様に仕えるつもりです……これからは」

 

 これがデミウルゴスにできる最大限の譲歩だ……自分では完全に『被支配者』の壁を壊す事はできない……それでも、絶対の神として仕えるか、身内と認識して仕えるかを選ぶ事はできる……

 

「……えっと、私も叔父さんのために頑張るっす! あれ、でもそうなると私が妃になると……近親相姦っすかね?」

 

「……ははは……はははは! いや、実際に血は繋がってないから問題ないでしょう! 繋がっていても問題ないかもしれませんね!」

 

 今までの暗い雰囲気を吹き飛ばすようにパンドラズ・アクターは笑い続ける。 

 

「……やれやれ、私が方法を間違えなければ、ここにアルベドもいたのかもしれませんね……ですが今だけは現状を見据えて、あなた方に真実を話しましょう……よろしいですね?」

 

「ええ」

 

「お願いするっす」

 

「……まずはどこから……そうですね、まず大前提として、我々が至高の御方と認識している方は……リアルの世界では人間でした……」

 

「……続けて下さい……」

 

「……その世界は末期で、外を出歩くこともできず、食べ物も碌に作れない世界でした……その中で支配階級は娯楽としてユグドラシル等のゲームを提供します……」

 

「ゲームっすか?」

 

「その通りです。我々はこの世界に転移するまで、ただのプログラムに過ぎなかった……心当たりは?」

 

「………………言われてみれば、思い当たる節がありますね……なるほど、我々に話すなと命令される筈です」

 

 この真実は劇薬だ……至高の御方が人間で、自分達がただのプログラムと言われているのだから……しかし二人はその程度を乗り越える覚悟は既に決めている……

 

「……そして至高の御方々は……自分達が生き延びるために、この地を離れなければならなかった……決して捨てたくて、捨てた訳ではない事だけは……理解して頂きたい」

 

 捨てられた事に悔いが一つもないとは言えない……だが自分達のせいで捨てられた訳ではないと聞かされれば、少しは心も軽くはなる……だが疑問も湧きあがる。なぜモモンガだけが、ナザリックに来る事ができたのかを……

 

 なぜ自分の創造主はこの地に来られなくなったのか……

 

「……父上がこの地に通い続けられたのは、家族もなくずっと独りきりだったからです……守るべき者が無かったから……」

 

「……ウルべルド様はなぜ?」

 

「……聞いた話によると、たっち・みー様とのリアルでの確執が原因だと思われます……」

 

「……確執とは?」

 

 パンドラズ・アクターが難しそうな表情を作る……言っていいのか悩んでいるのだろう……しかし沈黙に耐えきれず、小声で呟く。

 

「……分かりやすく言うのであれば……たっち・みー様はリアルの世界で勝ち組……支配階級に近い存在でしょう……対して父上やウルべルド様は、負け組。搾取される側だったと、認識して頂ければ分かりやすいかと」

 

 なるほど。言いにくい訳だ……創造主が負け組だったと伝えるのは心苦しいだろう……そして閃いた……

 

「……では、モモンガ様は……私の考えるような、知恵者ではないと?」

 

「……その通りです。報告書等もよく分かられておられません……そんな中、あなた達の望む支配者になろうと決意された……そのために私が傍に仕えるしかなかったのです……」

 

「……そうでしたか……私は本当に愚かだったのですね」

 

 後悔の念が後から後から湧いてくる……もしここで真実を知らなければ永遠に知る事ができなかっただろう……空間に重い空気が垂れ込む……それを吹き飛ばすようにルプスレギナが明るく語る。

 

「えっと! 私の創造主様はどんな方だったんすか?」

 

「……申し訳ない……あなたの創造主の事は詳しく聞いてないのです……父上のお傍に仕える間に聞いてみると良いでしょう……昔の思い出話ができて、とても喜ばれる筈です」

 

「……はいっす!」

 

「ルプスレギナ。君の仕事は大変重要だ……これからパンドラズ・アクターはモモ……叔父上の傍に仕える事が難しくなるだろう……私もできる限り、分かりやすい報告書を上げるようにするが……君も共に考えるんだ」

 

「……いやーそれ。私には向いてないんじゃないっすか? でも、頑張るっす」

 

 ……ここで話すべき事柄は、大体終わっただろう……後はこの場から見つからないように去らなければならない

 

(……まぁ簡単ですね……しかし彼の力は一体)

 

「……ところでパンドラズ・アクター君の力は一体どのような物かな? 有事に備えて、戦力を正確に把握しておく必要があると考えるんだが」

 

「そうですね……ここまで話した以上問題ないでしょう……私は父上達の8割の力を振るう事ができます……つまり等しく変身する事ができます……まぁたっち・みー様の力は無理なんですがね……」

 

「……それは何というか……君は文字通り影武者だったんだね?」

 

 パンドラズ・アクター……絶望の後に希望を演じる者……最初名付けられた時は違ったかもしれない……だが今はそうだ……仮に自分達を味方に引き込めなかった場合、文字通りNPC全てが災厄になり、彼だけが希望になっただろう……

 

「……ええ。影武者としての役目もあるでしょう……ですが私が今こうして、父上のために働く事ができるのも、ネム様達のおかげです……もし父上と彼らとの出会いがなければ、私もあなた方のように全てを押し付けてたかもしれません……」

 

「……ネム様達には……心から感謝をしなければなりませんね……彼女達の存在がなければ……」

 

 きっとモモンガが自分の心をさらけ出せる存在がいないと言う、不幸な結果になったかもしれない……それは望むものではない。

 

「……ルプスレギナ……役目上あなたの方が、ネム様とお会いになる機会も多いでしょう……感謝を忘れてはなりませんよ……」

 

「……もちろんでございます」

 

 いつの間にか彼女の言葉遣いが真面目なものに戻っていた……彼女にも思うところがあるのだろう……

 

「……ネム様はあのままお育ちになれば、父上の救いになり続けるでしょう……ルプスレギナは見習ってみるのも良いかもしれません……」

 

「分かりました……いえ、分かったっす。二人で……叔父さんの救いになって見せるっす!」

 

 ここで話すべき事は本当に無くなった。後は行動を開始するだけだ……

 

「……これで後顧の憂いは無くなりました……では解散としましょう……ルプスレギナは父上のもとへ……私は密かに動いて、現在のナザリックがどの辺りまで壊れているかを把握いたします……」

 

「……私は外にいる事になっているから……アルベドから連絡があった場合、同調した振りをして内部から何とかできないか試してみましょう……」

 

「……私は叔父さんの傍に仕えて、アルベド様達の牽制っすね! 他にも諸々がんばるっす」

 

「……あなたの役目が一番重要です。それと人間から、アンデッドになられた事で、何らかの異変が生じる可能性もあります……その点も見て頂けると幸いです……」

 

 ――――こうして3人の対談が終了した……パンドラズ・アクターはようやく孤軍奮闘をする必要が無くなったのだ。2人は全てを受け入れた上で、家族と思って下さる方に応えるために行動を開始した……そう他のNPC達との対立を理解しながら……敵はアルベドを筆頭に多数に上る……既に盤面は詰みの状況だ……それでもなお3人は抗う……ルプスレギナは姉妹たちとも戦う必要が出てくるかもしれない……唯一モモンガの傍に仕える事になるのだ……捨てられる可能性を認識してしまった誰もが、彼女に憎悪するだろう……それでも彼女は引けない……一部の真実ではなく、全ての真実を知ってしまったのだから……もう彼女はアルベドに殺気を向けられても、同じように気絶する事はないだろう――――




はい。色々ともっと後で使おうと考えていたネタをここで使用しました……

後、デミウルゴスとの会話を描写してないのは仕様です。だって彼との会話には今後の展開のほぼ全て描かれてましたからね! 一応リメイクも考えていますし。


作者は本当はナザリックのNPC全てをモモンガ様の家族にしようと考えておりました。

この作品のテーマは『愛』と『家族』でした。(あ、後『ロリコン』ですがここでは述べないです)見る影がありませんが……

そのためどうすれば、家族になれるかを考えた結果……NPC以外で一番親しいネムに白羽の矢が上がりました。またそれだけでは厳しいため、カルネ村の出会いを通してモモンガ様とパンドラズ・アクターを家族にして、少しずつナザリックの意識改革ができたらと考えておりました。

ほのぼの路線で進んでいれば、アルベドの嫉妬は軽い物になったかと思われます(まぁ100レベルの嫉妬だからそれでも死人が出そうですが……)

本当どうしてここまでねじれちゃったんだろう? 作者も不思議です。きっとカミーユみたいに発狂していたのでしょう。

嘘です。ごめんなさい。実は心当たりがあります。

作者は12月25日までに一区切りを付けたいがために急いで執筆をしすぎました……過程で途中を深く考えなかったため、こんな展開になりました。(後、やっぱり恋のライバルも必要と少し考えて気付いたら、ついついやり過ぎてました。本当はここまでにする予定はなかったんです……リメイクの方でどうぞ)

あと、鬱展開がお望みの皆様、今回は物足りないと考えた方もおられるのではないでしょうか?そんなあなたのためにある方から言葉をお借りします。

『恐怖というものには鮮度があります――――希望が絶望へと切り替わる瞬間……』

 次話はアルベド回だと思われます(´・ω・`)

 後現在のネムがどんな様子かも描写しようと思います。

 なお暫く作者は更新はしないで頭を冷やそうかと思いますので、ご了承ください。

 ハッピーエンドと絶望エンドでは先にハッピーエンドを終わらせようと考えています……お互いに引きずられたら大変ですしね……

 もちろんこちらでは愉悦部員の一人として丁寧に書くのでお楽しみに!


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