アイドルマスターシンデレラガールズ 〜彷徨えし真紅の幻想録〜 作:ドラソードP
第2話
所で彼女は何者なのか?
「すごい! まるでお城! 紅魔館みたいに大きいお城!」
「へえ、君の家はかなり大きいお屋敷なんだな」
「そうだよ! メイドさんや、お手伝いの使い魔や妖精さん、他には門番のめーりんや、魔法使いのパチェリーでしょ……?」
「つまり君はやはり、かなりのお金持ちのお嬢さんなのか……?」
俺はとりあえず少女を連れて職場である346プロに一旦帰ってきた。
雪が降っている外で話しているよりはこちらの方が断然暖かいし、周りを気にせず暫くは落ち着いて話せるだろう。
俺は少女を連れて346プロ内の室内カフェに向かった。
流石にこの雪でしかも時刻は八時になろうとしていたので、カフェ内には人も数人居る程度で俺にとっては都合が良かった。
「とりあえず……ここでなら落ち着いて話せそうだな」
俺はカフェの一番奥の目立たない席を取る。
長時間外を迷っていた少女の事も考え、俺はホットココアを一つと自分用のホットコーヒーを頼んだ。
「ご注文の品、お届けしました!」
「すまない、こんな夜遅くに注文して」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ〜」
頼んだ品を店員が運んできた。
しかし、都会の、それもプロダクションの中にあるカフェには不釣り合いな、メイドの格好をした店員だったが……彼女もまさか、アイドル的な何かなのだろうか。
さて、俺は何故わざわざこの少女を連れてきたのか気になるだろう。
確かに、この問題は警察に引き渡せばすぐに解決する簡単な問題だ。
だが俺は本能的に、まあ何故だがはよく分からないが彼女の場合は警察に引き渡してはい終わり! で済む問題ではないと思ったのだ。
まあ、それも俺の疲れが生み出したただの気のせいなのかもしれないが。
ともかく話を聞いてみるだけなら構わないだろうと思い、俺は一旦ここに彼女を連れてきたのだ。
「それで、繰り返しになってしまうが君は一体……」
「私? さっきも言ったけどフランドール、フランドールスカーレットだよ!」
少女、フランドールは先程とは違いかなり元気が良い。
迷子にしては不安がっていないというか、なんというかむしろこの状況を楽しんでいるようにも感じる。
「……いや、そうではない。君はその……なぜこの寒い中厚着もしないで、しかも一人であんな場所に居たんだ?」
「うーん……フランもあんまり良くわかんない!」
「……分からない?」
少女は言葉を続ける。
「フランね、館で絵本を読んでいたの。そしたら頭の中に声が聞こえてきて……気が付いたら白い光に包まれて館の外に放り出されていたの!」
少女は一生懸命に話してくるが何を言いたいのか意図が伝わらない。
まあこの年頃の少女ならまだ、空想世界に入り込むことはあるのかもしれないが……とりあえず俺はあまり子供の扱いに慣れていないので、こういった時にどう対処すれば良いのかいまいち分からないのだ。
警察に引き渡していればすぐに終わる話だっただろうに、まったく俺は彼女に何かを感じたと言ったが、果たして何を感じたのだろうか。
「……そ、そうなのか。それはー……大変だったね……」
「それに、なんだかここに来てから空も飛べなくなっちゃったし、スペルカードも見当たらないし、もうなんだか色々疲れちゃった!」
「あー……すまない、さっきから魔法使いやら妖精さんやら空を飛べないやら、あとそのスペルカードとやらや……もう少しわかり易く話してもらえるとありがたいのだが……」
「え? お兄ちゃん分からないの? 魔法使いとかスペルカードとか」
「……もしかして今流行りのアニメか何かの話なのかい?」
「あにめ???」
恐ろしいほどにお互い話が噛み合っていない。
少女も俺も頭の上にはクエスチョンマークだらけだ。
「お兄ちゃんのいうそのあにめ? とかってのはフラン知らないけど……あ! そうか! そもそも人間は普通スペルカードとか持ってないし、羽もないから空を飛べないし、分かるはずないや!」
「待って、君は一体何の話をしているんだ?」
「もしかしてお兄ちゃん……吸血鬼とかも知らない? カプっとやってチューってするやつ」
ついに吸血鬼などという単語まで出てきた。
彼女の口からは魔法使いやら妖精さんやら、吸血鬼やら、挙句謎のカタカナまで次々と出てきて、二十歳を過ぎた俺には頭の理解が追いつかない話ばかりだ。
「すまないが、本当にさっきから一体何の話なんだい?」
「うーん……どうすれば分かって貰えるかな……そうだ!」
そういい少女は突然椅子を立つと
俺の方に来て、横に立って俺の顔を下から眺めてくる。
「お兄ちゃん、ちょっと腕を出して?」
「なんだ……ん? こうか?」
すると少女は次の瞬間、突然驚きの行動に移す。
「……せーのっカプッ!」
「うおっ!? いってえ!!」
少女は突然腕に噛み付いてきた。
この見た目の割にかなりの噛み付く力で、俺はあまりにもの痛みのお陰で大声をあげる。
「あれ〜……おかしいな? やっぱり血の吸い方ってこうじゃないのかな? まあ吸ったことないから分からないけど」
「いきなり何をするんだ!! 痛いじゃないか!!」
「ごめんなさい……」
「もしかして君は自分が吸血鬼だとでも言いたいのか? というか吸ったことないって聞こえた気がしたがどうなんだ? もう何がなんだかまるで分からないぞ」
俺は少女に口調を強めて言う。
しかし次の瞬間、少女が申し訳なさそうに視線を落としているのをみて、俺は我に帰る。
「でも……本当にフランは吸血鬼なんだもん……魔法使いだって、妖精さんだって、全部本当の話なんだもん……こうすれば分かってもらえると思って……」
「あー……すまない、少し口調が強すぎた。だが、俺には君が言っていることがどうも本当の話に聞こえないんだ。何か他に、君のことを詳しく知ることができる話は無いのかい?」
しかしとは言いつつも、この子の言動、行動、格好、道端にいた時の状況、住んでいる場所のことといい、聞かずとも普通では無いことは明らかだ。
確かに彼女が言っていることはあまりにも現実離れしており、まるでアニメか漫画の世界の話みたいだ。
信じろと言われて今の何事も無く続いていくこの現代社会では、信じられる話である筈がない。
だがかといって現状突きつけられている状況、情報では彼女が言うそれを一律に否定できるわけでもない。
真冬の夜、半袖とスカート姿で、一人で外をさ迷っていた、金髪外人少女について辻褄が合う話を考えろ、と言われた所で無理がある。
それこそ本当に彼女は吸血鬼なのかもしれないと俺は思えてきた。
まあともかく、今の現状では何とも言えない状況だ。
現状担当しているアイドルも居ない事実上暇人な俺は、もう少し話を聞いてみるのもありかと思いとりあえず話を聞き続ける。
「うーん……羽を見せれば分かって貰えそうなんだけど……さっきから羽を出すことも出来ないし、レーヴァテインもどっか行っちゃったし」
「分かった、せめて自分の住んでいた場所位は分かるよな?」
「住んでいる場所? 紅魔館だけど」
「いや違う違う、住所……例えば東京とか千葉とか……」
「何そこ? 聞いたことない地名だけど。もしかしてここって幻想郷じゃないの?」
また新たな名前が出てきた。
幻想郷? なんだそれは。
名前からして、アニメや漫画みたいな物の空想世界らしいのだが。
やはり俺は悪い夢を見ているんじゃないだろうか。
虹色の流れ星から実は全て夢で、目が覚めたら公園で寝ていましたというオチも有り得そうだ。
それなら彼女はきっと、担当アイドルがほしい俺が作り出した理想の少女像の幻覚なのだろう。
「幻想郷……聞いたことがない場所だが、そこが君の住んでいる場所なのか?」
「そうだよ! 妖怪や妖精さん、他にもイジワルな巫女や変な魔法使いが居て……」
「その話、僕にも詳しく聞かせてもらえないかな?」
彼女が幻想郷について話し始めたその時、突如として俺は誰かに声をかけられる。
声の方向を向くと紫のエクステを付けた、不思議な雰囲気の少女が立っていた。
「突然声をかけてしまってすまない。だがその話には少し心当たりがあってね、少し気になったんだ」
「君は……この話について何か知っているのか?」
「まあ知っている、と言うよりインターネット等の都市伝説的な物で聞いたことがある程度の話だが。とりあえず、良ければ僕も話の輪に加えて貰っても構わないかい?」
「俺は構わないが……」
こうして突然現れた謎の少女を加え、話の流れは急展開を迎えていくことになるのであった。
果たして謎の少女フランドールとは、幻想郷とは、一体何なのか。
これは日常に舞い降りた、交わるはずがなかった非日常の物語である。
長らくお待たせしました、routeスカーレット2話です。
少し本編の話や就職関連で忙しく遅れてしまいました。
東方とデレマス、両方好きな作者が私利私欲で作ったエセ小説ですが、実はある程度最後までの流れはもうできていたり……
さて次回は飛鳥ちゃん大活躍? 回です。
また期間があいてしまいそうですか、次回もお楽しみに!
……どうでもいいけど幸子ってレミリアの服とか格好似合いそう。誰か着せてみてほしい「」