アイドルマスターシンデレラガールズ 〜彷徨えし真紅の幻想録〜 作:ドラソードP
この作品は東方とデレマスのクロスオーバーです。
キャラ崩壊、多分あります。
どうせ半分作者の妄想です。
それでも許せる方は、ゆっくりしていってね!
少女は東京の空に何を思ったのか?
俺は夜の街中を歩く。
一人、孤独に。
辺りでは雪が降っている。
今日も残業だった。
346プロに勤めてそろそろ三年と半年、プロデューサーを目指す俺は担当アイドルを貰うことも出来ず、雑用係として働いていた。
別に、何かが起きる訳でも、アイドルと接することができる訳でもなく、ただただ事務や雑用仕事などを繰り返す、そしてそんな無駄な毎日が過ぎ去っていく。
プロデューサーになれる気配も無く、同期はどんどん出世していき、入社した時にはあまり有名ではなかった346ブランドのアイドルも既に時の人だ。
ああ、もうこの状況全てに飽き飽きとしてきた。
今年の夏の頃まではまだ俺にも、真っ赤に燃えるような熱い思いがあった。
だが三度目の冬、一週間後にクリスマスを控えたこの時期になって年の終わりを感じると、途端に俺の中の思いはこの雪のように冷たく、真っ白になってしまったのだ。
あと何日虚無感を感じれば良いのか、あと何回年を跨げば良いのか、俺にはもう、何もかもがわからなかった。
手が悴む。
手袋を貫通して伝わってくるその寒さが余計に寂しさを際立たせる。
誰かに手を握ってもらう、プロデューサーになれていた俺なら、普通に経験していることなのだろう。
俺は街中にあるとある公園のベンチに座る。
なんだか色々と疲れた。
街の方はもう夜の七時だというのにまだ賑やかだ。
若いカップルなんかが手を繋ぎあって歩いている。
クリスマスはまだ先だ、雪が降っているからってイチャイチャするのはやめろ。俺に色々こたえるから。
俺は力を失うように背もたれに寄りかかり、空を見上げる。
街の街頭に照らされて、無数の雪が光り輝く。
普通の一般人なら綺麗だと言うのだろうが、今の俺からするとその雪の無機質さが余計に寂しさを感じさせる。
「あと何度、一人でこの空を眺めれば良いのかね……」
俺は独り言のように呟く。
ビニール袋に入ったコーヒーを片手にベンチに座り、冬空を眺めるスーツの青年、その姿はまるで青年ということを除けばまるで仕事に疲れた中年親父の様だ。
「寒いな……」
ビニール袋の中からもう冷えきってしまった缶コーヒーを取り出し、あける。
「なんだよ、冷えてるじゃねえか……」
先程コンビニで買った時には暖かかったはずなのだが、思った以上に時間が経っていた様だ。
仕方なく、俺は冷めてぬるくなったコーヒーを口にする。
街の方を眺めると辺りの電子掲示板には、大々と346プロのアイドルが出ている。
俺は再び掲示板から目をそらすようにして空を見上げる。
「……なんだ? 流れ星か?」
ふと、空を見上げると光り輝く何かが走り抜けていく。
やがてそれは赤や、青や、紫、黄色など様々な色に分かれて四方に飛んでいった。
「こんな都会で星? そもそも排気ガスで見えるわけないだろ……まったく。いや、だとするとじゃああれは何なんだったんだ?」
その時はちょっとした出来心だった。
なぜだか知らないが、俺はあの光の行き先を見てみたくなったのだ。
別にその先に何かあるわけでもないだろう。
恐らく、この状況に答えが出るわけでもない。
それに真面目に考えれば、星がそんな近くに落ちるわけがないということもわかっていたはずだ。
だが気がつくと俺は自然とベンチを立ち、虹色の光が走って行った先へと歩んでいくのであった。
三十分程歩いたか、気が付くとビル街の中心に来ていた。
この時間帯だとまだ人は多い。
飲み会に行くのか集団で歩いているサラリーマンや、若者のグループなんかがそこらじゅうに居る。
そもそもまともに考えてみれば、流れ星が表面に落ちたらただの隕石だ。
こんな風に人々も呑気にしていられないだろう。
まったく、疲れで幻覚でも見たのだろうか。
俺はここまでわざわざ歩いてきた自分がバカバカしくなり、道を引き返した。
まったく、何をやっているんだと俺は苦笑いをする。
まあ、なんだかくだらないことだったが久々に冒険心を燻らせてもらった。
公園のベンチで寂しく座っているよりは、多少は良かったのかもしれない。
俺は来た道を戻る。
街の空気は正直今の俺には居心地が悪い。
とりあえず外を歩いていても寒いだけだし、もう家に帰るか、そう思った。
だが、その時だった。
俺に転機が訪れることになった瞬間は。
人気の無い場所を歩いていた俺の前に、一人の少女が座り込んでいた。
少女は寒そうに震えながら、俺に気がついたのかこちらの方を向く。
「……あなたは……だあれ?」
その季節外れな短いスカートと半袖の服、そして特徴的な帽子を被った金髪の少女は、こちらを弱々しげに見ながら話しかけてくる。
「……迷子か?」
少女は小さく頷く。
「あー……おうち、わかる?」
「紅魔館……」
建物の名前だろうか、聞いたことのない場所の名前を口にする。
名前からして団地やマンションといった感じよりも、お屋敷といった感じの場所だろうか。
しかしこの辺にそんなお屋敷といったお屋敷は無かったはずだったが。
「……お母さんやお父さんは?」
「……わからない」
ああ、困った。
これはまた、街の方の交番まで引き返さなければいけなさそうだ。
「……名前、言えるかな?」
「……フラン……ドール」
外人なのだろうか、出てきた名前からして日本人ではなさそうだ。
しかしなぜそんな外人の子がこんな道端で、しかも季節外れな格好で座っているのか疑問が湧く。
あの流れ星と言い、もしかして俺はずっと変な夢でも見ているのか?
まあとりあえず、雪も降っていてこのままでは寒いだろうと思い、俺は自分が来ていたコートを脱ぎ羽織らせてあげる。
「……ありがとう」
少女は一瞬こちらを向き、例を言う。
一瞬街頭の光で顔が見えたが、かなり可愛らしい少女だ。
「……とりあえず立てるか?」
俺は中腰になり手を差し伸べる。
するとその少女は恐る恐る手を伸ばしてきた。
しかし俺と手が触れようとした瞬間、急に手を引っ込めてしまう。
「あー……怖がらせちゃった?」
「違う……そうじゃないの……」
少女は顔を上げ、その顕になった透き通るように赤き瞳で、こちらをまっすぐに見てくる。
「あなたがその手を取ったら……壊れちゃう……だから……」
「壊れる?」
少女は再び顔を伏せてしまう。
気のせいか、その座っている姿はかなり寂しそうに見える。
「あー……」
俺はなんだか彼女を放っておけなくなって来てしまった。
それに俺の直感が、彼女を警察に渡してそのままバイバイ、で済む話でも無さそうだと本能的に理解した。
「なんだか……色々ありそうだが……」
俺は少女、フランドールの手を取る。
「えっ……!?」
「このままここにいちゃお互いに風邪ひいちゃうし、とりあえず一旦暖かいところに行くよ」
少女はいきなり手を取られたせいか、それとも別の理由なのか、非常に驚いた様子でこちらを見てきたが、すぐにその場に立った。
「なんで……なんで、貴方はフランが触れても壊れないの?」
「君がさっきから言っている、その壊れるってのは俺のことなのか?」
少女に問いかける。
だが少女は返事をすることなく、しばらく呆然とした後、突然俺に飛び付いてきた。
「うおっと!?」
「これが誰かに触れられるってこと……これが誰かの暖かさってことなの……?」
「あー……どうした?」
「絵本の王子様……本当に居たんだ……」
次の瞬間、俺に抱きついている彼女の肩が震え始めた。
「フランを……フランを迎えに来てくれた……絵本の王子様……」
「あー……なんだかわからないが色々辛かったんだな、よしよし……」
彼女の頭を軽く撫でてあげると途端に声をあげて泣き始めた。
溜めこんでいた何かが溢れ出したかの様に、彼女をつなぎ止めていた何かが切れたかの様に。
俺は人通りが少ないその裏道。
そこで、不思議な迷子の少女と出会った。
初めての方は初めまして、route幸子で知っている人はやあ、いつも痛いこと言ってる私です。(こういうの言ってみたかった)
今回route幸子の筆休めとして、ちょっと初めてクロスオーバーを書いてみることにしました。
東方は自分が二次元の世界に入るきっかけになった作品で、フランは自分が初めて恋をしたキャラです(気持ち悪い)
最近、なんか東方とデレマスのクロスオーバー書きたいなー……と思っていたので、書きました(唐突)
実際話の流れは最後まで出来ているのですが、また作者のガバガバ設計が炸裂して最悪この作品がぺしゃる可能性もあります。
まあ、そんなことを言いつつも今本気で設定を考えて書いているので、できる限りは本気でやらせてもらいます。
そんなわけで次回も見ていただけると作者感激です。
最後に、こんな辺境の作品を最後まで読んで頂き、ありがとうございました。