Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

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サブタイトルだけ変更するかもしれません。






1章-9「感謝の気持ち」

ガタンっ..ガタンっ。

 

いつの間にか寝ていた俺は車の何かを踏む音で目を覚ます。

 

「なにこの状況....」

俺の膝には何故か一色が、左肩には雪ノ下が後ろからは2つの膨らみの大きさから言って由比ヶ浜が右肩には留美が俺の肩に頭を預けていた。

 

 

「あ!比企谷君、おはよう~」

 

「陽乃さん....頼りっきりですいません」

 

「んー。比企谷君が後でお姉さんとキスしてくれたら許しちゃおっかな~♪」

 

「・・・冗談なら「冗談じゃないって言ったら?」」

 

「すいません...」

 

「あははは、冗談だから安心してよ」

 

「陽乃さん....」

 

「なあにー?比企谷君」

 

「陽乃さんは恐くないんですか?」

 

「恐くないか....か。比企谷君はどう思うの?」

 

「質問を質問で返さないでくださいよ」

 

「相手の意見を聞きたいなら自分の意見から言わないと駄目だぞ♪それで比企谷君はどうなの?」

 

「・・・俺は自分よりもこいつらに何かあったときの方が怖いです」

 

「やっぱり君はそう思うんだね。比企谷君は優しいね」

 

「優しくなんてないですよ....こいつらに何かあったとき自分が自分でいられなくなりそうで怖いんです....。要は自分が変わりたくないからこいつらに何か起きて欲しくないっていう只の俺の我が儘なんですよ」

 

「それじゃあ比企谷君はもし、雪乃ちゃんや由比ヶ浜ちゃんに一色ちゃんに留美ちゃんだっけ?彼女たちが襲われて助けに入ったら死ぬっていうときに君なら助ける?それとも見捨てる?」

 

「助けます」

 

「凄いね、即答なんて。お姉さん惚れちゃいそうだよ~」

 

「別に雪ノ下達だけじゃないですよ。勿論小町もめぐり先輩も三浦も戸塚もかまくらも材木座も、それに陽乃さんだって危なくなれば助けますよ」

 

「それも自分のため?」

 

「勿論です」

 

「・・・ふざけないでください」

 

「い、一色!?起きてたのか」

 

「比企谷君..あなたどれ程愚かなら気がすむのかしら?」

 

「雪ノ下も!?」

 

「ヒッキーの馬鹿...」

 

「由比ヶ浜も....」

 

「八幡...私は八幡に死んでほしくない」

 

「留美...」

 

「先輩が死んでほしくないって思っているように私達だって先輩に死んでほしくなんてないんです」

 

「でも...そういう状況になったら」

 

「もし私がそういう状況になったら迷わずに見捨てなさい」

 

「っ!それは出来ない....」

 

「ヒッキー....ヒッキーの気持ち私にも分かるよ。でも、でもね...だからこそそういう状況にならないように皆で考えていけばいいんだよ」

 

「由比ヶ浜が...なんかまともなことを言っている」

 

「酷いし!?」

 

「冗談だよ...」

 

「ねえ、ヒキオ」

 

「な、なんでひょうか?」

 

「何ビビってるし...あーしのことも助けてくれんの?」

 

「ああ」

 

「そんな時だけ噛まないとか....はあ、ならあーしもあんたが危なくなったら助けるし」

 

「っ!優美子!?」

 

「三浦先輩!?」

 

「二人ともなに勘違いしてるし。あーしはただ、もう友達が死ぬところなんて見たくないってそんだけ」

 

「優美子....」

 

「ねえ、八幡」

 

「留美どうした?」

 

「その...まだ着かない?」

 

「・・・トイレか?」

留美は黙って頷いてくる。

 

「陽乃さん、あとどれくらいで着きますか?」

 

「ここからだと後、3分ってところね」

 

「3分持ちそうか?」

 

「だ、大丈夫...」

留美は俺の袖を握る力を強めて落ち着かないといった感じに足もそわそわしだした。

 

「到着ー。一応見える範囲に奴等はいないけど気を付けながらだからもう少し頑張ってね?」

留美は黙って陽乃さんに頷く。

 

「留美ちゃん大丈夫?」

 

「由比ヶ浜....もう喋れないくらいやばいらしいから察してやってくれ。あと三浦」

 

「なに?」

 

「トイレまで留美をおんぶしてってもらえるか?」

 

「まっ、あんたがするわけにもいかないし。やってやるし」

 

「それじゃあ、前衛に陽乃さんと俺で確認をする。中央に三浦と留美と小町。中央左サイドに材木座と戸塚。右サイドに由比ヶ浜と一色。そして後衛に」

 

「私と城廻先輩と言うわけね」

 

「ああ。この布陣でいこうと思う。極力銃の使用は禁止。それぞれ助け合いながら動くこと。止まる場合は前の人の肩に2回タップ。間に合わないと思ったら声をあげてくれ」

 

「お兄ちゃん!カー君を忘れてるよ!」

 

「にゃあー」

 

「・・・小町、かまくらに静かにしているようによく言い聞かせておいてくれ」

 

「うん!分かった!カー君は私の鞄の中に入ろうね~」

 

「にゃあ~」

 

「それで比企谷君。今回銃はどうする?置いてく~?」

 

「いえ。一応持っていきましょう」

 

「どうして?」

 

「・・・考えたくはありませんが怖いのは奴等だけではありませんから」

 

「成る程ね。確かに生存者も安全とは言えないわね。それで生存者がいた場合はどうするのかしら?」

 

「その場合は残酷だと思うかもしれないが極力切り捨てることになると思う。生きてくのに人が増えるのはリスクしかないからな...」

 

「で、でも!....そんなの...」

 

「由比ヶ浜さん、理解しましょう。比企谷君の言っていることは正論だわ」

 

「結衣先輩。一番辛いのはこんな決断をしなくてはいけなかった先輩なんですよ」

 

「ゆきのん、いろはちゃん...分かってる、分かってるけど...目の前で誰かが死ぬのはもう」

 

「結衣、しっかりしな」

 

「優美子...」

 

「相模の分も死んじゃった皆の分も生きるんでしょ?結衣」

 

「っ!・・・うん、そうだったね」

 

「それじゃ、そろそろ行くんだが。俺ここ知らないんだけど雪ノ下さん大体の中の造りって分かります?」

 

「うんーそうだねー。まず入り口は目の前に見えると思うけどあの自動ドアと後ろに非常口用の扉が付いてるくらいかな。中は1階が食料品売り場や簡単な小物を売ってる所とあと本屋さんと食堂かな。2階にはいろいろな服屋さんがあるよ。トイレは1階の一番奥に1つと2階に2つそれに3階には映画館もあるね。そこにもトイレはあるよ」

 

「かなり詳しいですね....」

 

「あーここ。私が通ってる大学から近いから、よく来てたのよ」

 

「そうなんですか。それじゃあ2階のトイレが一番近そうなのでそこで」

 

「は、八幡....武器は何を持っていくの?」 

 

「忘れてた....。ありがとう戸塚」

 

「ううん。役に立てなら良かったよ♪」

 

「天使だ....」

 

「え!?何八幡?」

やべ思ったことが声に出てた。

 

「いや何でもねえよ。あ、そうだ一色。ずっと銃借りっぱなしだったあの時はサンキューなこれなかったら危なかったと思う」

正直留美を助けるとき一色から銃を貸してもらっていなければ食われていたと思う。

 

「いえいえ♪先輩の役に立ったなら良かったです♪」

 

「あざといあざとい」

 

「戸塚先輩の時と態度違いすぎませんか!?」

 

「気のせいだって」

 

「は、はち、、、まん」

 

「お、おお。悪い留美。すぐ行こう、皆武器を持って降りてくれ」

 

陽乃さんと雪ノ下と一色と戸塚に日本刀を持ってもらっている。4本しか日本刀は無かったので重要な配置にいる人に持ってもらうためだ。この時に材木座が剣豪将軍材木座義輝の見せどころだな八幡よ!とか言っていたがスルーだスルー。

 

材木座にはノコギリと銃の弾をセットしたマガジンなどを持ってもらっている。1度マガジンが入った鞄を背負ったがかなり重かった。

 

 

俺は金属バットを持ち、由比ヶ浜は木刀を城廻先輩には非常用のベルとナイフを持つ。

 

「ねえ、ヒッキーどうして城廻先輩にはリーチの短いナイフにしたの?危なくない?」

 

「あの人、予想より力なくて木刀振り回せないんだからしかたないだろ...」

 

「あー...」

 

「んなことより周り警戒しろ。今のところ奴等はいないがいつ出てきてもおかしくないんだからな」

俺達はトイレに向かうために2階へと続く階段をなるべく音をたてないように歩き無事にトイレまで到着した。

 

「それじゃあ。トイレの中の確認を女性全員でしながらトイレに行ってきてくれ。俺達はここで誰も来ないか見張ってるから」

 

「うん!よろしくね!」

 

「何かあったら無理はしないようにするのよ?」

 

「ああ」

 

「なあ八幡よ」

 

「なんだよ材木座。てかいたのか」

 

「ぬほーん!」

 

「材木座君、しー。静かにだよ」

 

「す、すまない...。それより八幡、これからどうするつもりなのだ?」

 

「どうするって言われてもな....」

 

「ふむ。宛はないのだな?」

 

「お前にはあるのかよ」

 

「ない!」

バキッゴキッ.....。

 

「うう....何をするのだ、八幡よ」

 

「お前がアホみたいなこと言うからだ」

 

「我はただ、宛がなくとも八幡になら着いていくと言おうとしただけなのだ....」

 

「・・・」

バキッ....。

 

「ぬほーん!な、何故また叩くのだ!?」

 

「うるせえよ...ばか」

 

「クス。二人とも仲良いね」

 

「当たり前だ!八幡と我は切っても切れない主従の絆で結ばれておるのだからな!」

 

「小声で言ってなかったらぶっ飛ばしたくなる台詞だな。というかこの状況だと主は俺だがそれで良いんだな?」

 

「な、なんだと!?」

 

「はぁ...めんどくせ。・・・けどありがとな材木座」

 

「ん?我に何か言ったか?」

 

「いや何でもねえよ」

 

 

 

 

 

由比ヶ浜side

 

 

「良かったぁ、奴等いないね」

 

「だね~それで便器は3つだけど、1つは留美ちゃんが使うとして隣は私が使っても良いよね?」

 

「姉さん。駄目に決まっているでしょう、その隣は私が使用するのよ」

 

「あら、雪乃ちゃんが私に歯向かってくるなんていつぶりだろうね?」

 

「別に歯向かってなんていないわ」

 

「ね、ねえ?ゆきのんと雪ノ下さんは何を言い争ってるの?」

 

「由比ヶ浜さん、あなたは分からないのね...残念だけれど。今回は諦めなさい」

 

「え?ゆきのん!?」

 

「それじゃあ姉さん、理解している私達で決めましょうか」

 

「あーしも分かってるんだけど?それに真ん中のトイレはあーしがもらうし!」

 

「貴女では無理よ。三浦さん、諦めなさい」

 

「雪ノ下さん、あんたには言われたくねーし」

 

「あれー?私何か言ったっけ?」

 

「いや、あんたの方じゃ...はぁめんどい。もうどっちでもいいし!あーしがもらうし!」

 

「ふふふふ。それは元生徒会長の城廻めぐりがさせないよ!」

 

「え?何で皆こんなことになってるの!?」

 

「結衣先輩は危険なので男子トイレを使ってください。わたしが真ん中のトイレを勝ち取ってきます!」

 

「え?何!?どういうこと!?」

 

カラカラカラカラ。

 

「あれ?んしょ...流れない」

あたしは気づいてしまった。今の状況に一番右のトイレは汚すぎて使用不可能。そして左のトイレは留美ちゃんが使った、そして流れない。と言うことは........。

 

「あ、あたしも!」

 

「「「「「今更遅い!!「わよ!」です!」」」」」

 

「そ、そんなぁ.....」

 

 

 

 

 

「ひ、ヒッキー....」

 

「うおっ!?由比ヶ浜びっくりするだろうが。他はどうしたんだ?」

 

「そ、その....お願いがあって。と、トイレにあたしも行きたくて」

 

「目の前にあるのがトイレだが?」

 

「そ、そうじゃなくて...使えないと言うか...その....もう!分かれし!!」

 

「ぐはっ...これで殴られるって理不尽すぎないか?」

 

「は、八幡。たぶんだけどトイレが一杯だから着いてきてほしいって意味じゃないかな?」

 

「あー成る程。それならそうと早く」

 

「言えるわけないし!ヒッキーの馬鹿!!」

 

「お前、ちょっと声抑えろよ....。材木座、戸塚、悪いけどここ見張っててくれるか?」

 

「うむ!任された!」

 

「うん!二人とも気を付けてね」

 

 

あたしとヒッキーは階段をあがって3階の映画館の隣に設置されているトイレの前まで来ていた。

 

「んじゃ由比ヶ浜。俺はここで見張ってるから早くいってこい」

 

「怖いし、ヒッキー着いてきてよ...」

 

「いやお前、流石にまずいだろ。男が女子トイレ入るとか」

 

「で、でも!トイレの中に奴等がいたら危ないし。ヒッキーお願い!」

 

「・・・分かったよ」

 

「ヒッキーありがとう♪」

 

「おい、腕に抱きつくなって歩きづらいから」

 

「ご、ごめん...」

 

「ほら、いくぞ」

ヒッキーは持っていた金属バットを強く握り締めてあたしの少し前を歩きながら奴等がいないか確認してくれている。右手で金属バットを持って左手はあたしが前に出ないようになのか手を伸ばしてくれている。ヒッキーのちょっとした優しさが嬉しくて、いとおしくてあたしの目の前にある手を見て繋ぎたいという感情を押し殺してどこか悲しくなっていく。

 

 

 

 

「ふぅ...どうやら誰もいないみたいだな」

全て確認し奴等がいないことが分かって、ヒッキーがあたしの方に振り返ってくる。

 

「うん。良かった、本当に」

 

「それじゃあ俺はこれで.....なあ由比ヶ浜?」

 

「・・・」

あたしはトイレから出ていこうとしたヒッキーの手を、先程からいとおしくて堪らなかった手を握っていた。

 

「・・・はあ、どうした?」

ヒッキーは頭をかきながらあたしに聞いてくる。

 

「ここにいてほしいの....」

 

「は?いや...え?」

 

「お願い....ヒッキー。1人になりたくない、よ」

 

「・・・分かった、分かったから...泣くなよ」

あたしはいつの間にか涙を流していた。ヒッキーは優しく頭を撫でてくれる。あー、あたしは卑怯なのかもしれない、皆を差し置いてヒッキー連れ出して....でも、でもね少しは甘えても良いよね?と思ってしまうほど今のヒッキーの目は優しかった。

 

 

 

「そ、そのありがとう.....」

あれから暫く泣き続けた私を優しく頭を撫で続けてくれたヒッキーにお礼を言ってトイレに入る。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

無言。分かってはいたけど恥ずかしい!ヒッキー外にいるとか音とか大丈夫かな....。ヒッキー引いちゃったりしないかな。なんでヒッキーなにも喋らないんだろう....もしかして何かあったのかも!

静寂の中私の中に溢れてくるのは恐怖だけだった。ドアを挟んで向かい側にはヒッキーがいるはずなのに音がしないだけでこんなにも心臓が脈打っている。

 

「由比ヶ浜大丈夫か?」

あたしがヒッキーの無事を確かめようと声を出そうとしたらヒッキーの方から呼び掛けがあって驚いたけど先程まで考えていたことは一瞬にして忘れてしまった。

 

「う、うん!大丈夫!ヒッキーは大丈夫?」

 

「ああ、問題ない。なるべく急いでくれ」

 

「えと、そのこんな静かな状態じゃ恥ずかしいというか....何か話さない?」

 

「・・・お前、この状態で俺に何を喋れと?どんだけSなんだよ」

 

「やっ!ちょ違くて!そうじゃなくて!気をまぎらわしてほしいってだけだから!」

 

「んなこと言われてもな...由比ヶ浜は何かあったのか?」

 

「え?」

 

「いやなんて言うか。逃げ出したとき元気なかったから....て当然か。あんなことがあったらな」

 

「あ、うん....それはそうなんだけどね......」

 

「ん?どうした?」

 

「いやこの話はこんな状態で話していいことじゃないというかなんと言うか話すべき時がきたら話すというか」

 

「なんだそれ。お前は未来視か何かなのか?」

 

「え?未来視?なにそれ?」

 

「未来視を知らないのかよ....」

話の内容はどうでもいいことだったけどヒッキーと話しているだけで落ち着くし、音も誤魔化せたと思う。

 

「女のトイレって長いんだな...」

 

「ヒッキー!それセクハラだよ!」

 

「トイレまで着いていってやったのにこの言われよう納得いかない」

 

「もう.....あれ?」

 

「ん?どうした?」

 

「何か、話し声みたいなの聞こえない?」

 

「・・・聞こえるな」

 

「映画館の2番ホールのところからぽいね、ちょっと行ってみない?」

 

「駄目だ、危険すぎる」

 

「でも、もし生存者がいるなら....」

 

「分かったよ....」

あたしとヒッキーは声の正体を突き止めるために2番ホールの入り口まで近付いた。

 

「ねえ、ヒッキー。どうしてここだけ扉が開かないようになってるのかな...」

あたしとヒッキーが近付くと扉には開けないように太い角材で塞がれていた。

先程から扉の中から複数の声みたいなのも聞こえてくる。

 

「そう言うことか...」

 

「ヒッキー?」

 

「どうしてこんな人の集まりそうな所なのに奴等がいないのか分かった」

 

「・・・何で?」

 

「それは奴等になったやつを映画館に誘い込み映画を見ていた奴を犠牲にしたってことなんだろうな」

 

「で、でもそれならなんで二番ホールだけなの?」

 

「丁度その時間に放映していたんだろ」

 

「そんなぁ....そんなのって」

 

「悪い。由比ヶ浜、話は後だ」

 

「え?」

 

「角材に亀裂が走ってる...そろそろこじ開けられるんだろう。皆のところに戻ってさっさと逃げるぞ」

 

「う、うん!」

あたしとヒッキーは小走りで皆のところに戻るため3階から2階に続く階段を下りている時に後ろから凄まじい音がした。

 

「由比ヶ浜、音は気にするな!走るぞ!」

 

「わ、分かった!」

今の音で異常を感じたのか2階にいたはずの皆が1階に移動していた。

 

「皆ぁあああああ、にげろぉおおお!!」

ヒッキーは皆を見つけると叫び声をあげた。普段からは想像も出来ないことで体が一瞬硬直してしまい階段を踏み外して落ちそうになったがヒッキーがあたしの手を引いて助けてくれた。

 

「大丈夫か?由比ヶ浜」

 

「う、うん。ありがとう」

 

「礼なら後だ!今は走るぞ!」

後ろを向くと奴等はもうすぐそこまで来ていた。奴等は走ることは滅多にしてこないが小走りくらいはしてくる。それに痛覚が無いためなのか平気で階段を転がり落ちてくる。

 

「比企谷君!このままでは逃げ切れないわ!1度別れて警察署で落ち合いましょう!」

 

「はっ、はっ.....じ、時間はどうしますか?」

 

「明日の夕方までに!それが無理なら明後日にしましょう!夜は身を隠しましょう」

 

「分かりました!行くぞ由比ヶ浜」

 

「え?ふぇ!?ど、どこにいくの!?」

 

「このまま走ったって追い付かれる。だけど奴等は急には曲がれない。なら方向を変えて非常口から逃げる」

 

「ここ、非常口なんてあったの?」

 

「おまえ...陽乃さんが入る前に教えてくれただろ?」

 

「そ、そうだっけ?」

 

「はっ....はっ......もう、疲れるから黙って走ってくれ」

 

「ひ、ヒッキー...はっ、はっ、ひ、酷いし」

 

「無理に喋らなくていいから走れ!」

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆。

 

 

 

あたしとヒッキーはなんとか逃げ出すことに成功して今は近くにあったバイクショップの中に入り荒くなった息を整えている。

 

「なんとか....はぁ....逃げきれたな」

 

「皆無事かな?」

 

「無事に決まってるだろ。それよりも明日までにどうやって5㎞も距離のある、警察署まで行くかだ。時間的には11時を少し過ぎたところだから問題ないとしても移動手段がない」

 

「そっかぁ....。バイクは?」

 

「俺が運転できると思うか?」

 

「だよねー...」

 

「なあ、由比ヶ浜」

 

「んー?」

 

「あの時、トイレで何を俺に言おうとしたんだ?」

 

「あー....うん。そうだね、ヒッキーには伝えないとだから話すね」

 

「ああ」

 

「奴等から逃げているときね、ヒッキーと会う前にさがみんがいたんだ....でもね、でもさがみん、奴等に噛まれてて、私何も出来なくて何もしてあげれなくて....」

 

「由比ヶ浜....」

 

「さがみん...死んじゃう直前にね。死んじゃうって分かってるのに最後に言ったのはヒッキーへの感謝だった」

 

「・・・俺はあいつに恨まれても感謝される覚えなんてないぞ」 

 

「あたしも知らなかったから、ヒッキーのやったこと。皆が言ってるほど悪いことはしてないって思ってたけど。さがみんから聞いて、あーやっぱりヒッキーらしいなって」

 

「俺らしい?」

 

「まず、葉山君たちが来る前までさがみんに来てくれって言い続けたのは、ゆきのんの為だよね?この依頼を受けたのはゆきのんだから」

 

「来てもらわないと困るからだ...別に雪ノ下の為じゃない」

 

「ううん。だって別にさがみんが来なくても結果の発表はこの時点で出来たから問題ないんだよ。ゆきのんから順位の報告があったのは知ってたし。でも依頼の内容は、さがみん自身の成長。それならさがみんが発表しなくちゃ依頼は失敗に終わっちゃう、でしょ?」

 

「仮にそうだったとしても、あいつに感謝される理由にはならないだろ?」

 

「葉山君達が来てからは、さがみんの為。わざとあそこでさがみんに酷いことを言って泣かせれば全てヒッキーが悪いってことになって、こんなことをしたのにさがみんには誰からも責められることは無かった....」

 

「・・・」

 

「だから....ありがとうだって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※由比ヶ浜の一人称の変更7月20日。

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