Highschool of the Dead ~比企谷八幡の選択~ 作:隣の三下君
留美side
私は今何も考えられなくなっていた。目の前ではお父さんが刺されて倒れている。刺した人は目の前の家の人。刺した後に何度も「許してくれ」と言ってきた。
八幡...許してくれって言えば人を刺しても許されるのかな?
私は悲しみが込み上げてきて泣いている。私の泣き声で奴等が集まってきているがそんなの気にしている余裕は、今の私にはなかった。
こんなとき千葉村の時もクリスマスイベントの時も手を指し伸べてくれた八幡がいてくれたら。
「はち....まん」
私は嗚咽混じりに八幡を呼んでいた。
「ぁヴぁああ」
気味の悪い声がした方を向くと目と鼻の先に奴等が3人ほどいた。
私は腰が抜けてしまったのか立ち上がることも出来ずに近付いてくる奴等を見ながらただ今までの記憶を思い返していた。
まるで走馬灯のようにゆっくりと。
私の人生はろくでもなかった。思えばいつからおかしくなってしまったのだろう。どこで歯車は外れてしまったんだろう。
初めは上手くやれていた。友達を作ることに何よりも一生懸命で知らない人に話しかける恐怖を堪えながら話しかけて。
話していくうちに遊ぶようになって、気付けば2人が3人になって4人になって大勢で遊ぶようになった。
でもそんなときだった。私はある罪を犯してしまった。
ーーーーー虐め。
悪いことだとは思っている。それは嘘じゃない。でも友達と誰かを虐めてるとき、私はそいつよりも上なんだと優越感に浸ってしまった。何人も虐めた。
そして私の番がきた。
私は大丈夫だと思って虐めてきた。でもいざ自分が虐めの対象になった時、私はこんなことをやっていたのかと初めて思い知らされた。
でも今更拒むことは出来なかった。
今まで私がしてきたことを考えれば逃げることが出来なかった。誰かに頼ることも出来なかった。
だから虐めを受け入れてきた。虐めはどんどんエスカレートしていくものだ。
いつしかクラス全体で私は除け者になっていた。
先生に頼ることは出来ない。
友達に頼ることも出来ない、もういないのだから。
家族に頼ることも出来ない。
私はどうしたらいいの?
そんなことを考えていたときに千葉村のキャンプがあった。
お母さんから友達との想い出をたくさん撮ってくるのよと言われてカメラを渡された。
普通のことなのに胸に何かが刺さったような痛みに襲われて千葉村なんて行きたくなかった。
でも当日はやってくる。
千葉村に着いた所で先生から高校生が参加してくれて盛り上げてくれるという説明があった。
正直どうでもよかった。
高校生なんて青春のど真ん中にいるような人達見たくもなかった。
でも1人だけ違っていた。
私は八幡を初めて見たとき自分と同じ何かを感じていた。
だけど自分から話に行くことは出来なかった。だから機会を待つことにした。
カレーを作るときに私に話しかけてくる高校生がいた。モテそうで1番話したく無い人だった。
私はある程度話を聞いて頷きその場を離れることにした。話続けても調子乗ってると言われ、すぐに離れれば、何様なの?調子乗ってない?と言われる。
でもそれが良かったのか、離れて座っていたら八幡が近付いてきた。
腐った目でとてもモテそうにない人だったけど話していると気を使ってくれているが気を使っていることを悟らせないように話していた。久し振りに話してて苦痛ではなかった。
2つ日目の夜に肝試しをすることになった。私は早く帰りたくて仕方なかった。そんな時、また八幡が私の所にきた。
私が1人でいる理由を聞いてきた。
本来ならこんな話私がするはずはない。でも八幡に話した。八幡なら助けてくれそうだと思ったから。
肝試しが始まるとモテそうな人が友達であろう人達と一緒にいた。
お化け役にしては何もなく普通の格好だったけど私は八幡が言ったことを思い出していた。
〈〈肝試し楽しいといいな〉〉
私の予感は見事に的中した。
私は何故か恐怖はなかった。
普通高校生に責められれば怖いはずなのに。
私は今回の事で八幡に迷惑をかけたくなかった。おそらく八幡が考えた作戦だろうとは思った。でもこの事が冗談なら後々先生に告げ口する子がいてもおかしくない。
だから私は持っていたカメラのフラッシュを使って皆に逃げるように言う。
これだけ恐怖があれば告げ口なんてしないと思ったし仲もバラバラになったからそれどころではないと思ったから。
その次の日から虐めは無くなった。虐めの主犯がバラバラになったことでクラス全体で受けていた虐めも少しずつ落ち着いてきた。
それでも私には、もう怖くて友達を作ろうなんて思えなかった。
月日は流れてクリスマス。
高校生とクリスマスイベントをすることになった。
高校生って聞いて八幡がいるかもと思った。
だから私は自分から先生に立候補した。
行ってみるとやっぱりいた。でも隣には可愛い女の人がいて女の人は八幡を頼りにしているみたいだった。
クリスマスイベントの手伝いで来たのは良いけど高校生から何も指示がなかった。
だから私が聞きにいくことにした。私がいるって分かるように。
気付いたみたいだけど特に何もなく仕事だけ言われて持ち場に戻る。
皆に言って私は1人で折り紙を折り始める。
私は何でここにきたんだろう。
そんなことを思いながら。
私が1人で折り紙を折っていると八幡が隣に座ってきた。一緒に折り始めた。
先程の女の人の事を思い出した私は。
「いい。いい八幡」
拒否してしまう。
「そうか」
と言って離れようとしたがまた座り直して。
「だけどな俺はもっと上手に出来る」
「なにそれ」
私は先程までの嫌な気持ちがどこにいったのか口元がおもわず緩んでしまうほど楽しかった。
「いや...まだ死にたくないよ....八幡!」
ドン!
と大きな音がして私の前にいた3人の奴等が頭から血を出して倒れた。
「え?....」
音のした方を見ると先程まで八幡がいた家だった。
比企谷side
留美の声が聞こえた。まだ死にたくないと。
俺は可能な限り早く留美の元に行くために塀をよじ登って綱渡りのように慎重に進んだ。一歩踏み外せば奴等の中に落ちて助からないだろう。
ドン!ドン!
俺に触ろうと近付いてくる奴等の頭が吹き飛ぶ。
後ろを見ると雪ノ下さんが手を振っていた。
「ほんとあの姉妹は味方でよかったな...」
俺が塀を飛び越えて留美の元まで後少しのところまで来たとき留美の後ろに奴が1人いるのが見えた。
雪ノ下さんも雪ノ下も見えていないようで射撃はない。留美も気付いていないのか俺の方を見ている。
俺は覚悟を決めて最後の塀を飛び越えそのまま留美に向かって走る。
「八幡!」
「留美!!」
俺は留美の手を引いて自分の胸に引き寄せるとそのまま襲ってくる奴の口に鉄パイプでガードしたが顎の力で少しずつ変形していく。
「ひっ...」
留美はあまりの恐怖に小さく悲鳴をあげる。
「大丈夫だ、留美。耳を塞いでろ」
「はち...まん?」
俺はポケットに入れておいた銃を奴の額に向けて引き金を引いた。
ドン!
奴はその場に倒れ俺達も緊張が解れその場に倒れる。
だが今の音で奴等が柵を破ろうとしていた。破られるのも時間の問題だと思った俺はすぐに留美を抱え起こす。
「留美動けるか?」
「・・・ごめん八幡。腰抜けちゃって」
「しょうがないか...留美先に謝っとくぞ。悪い」
「ううん...ここまで来てくれただけで嬉しかったよ。ごめんね....ひぇ!?」
「おい...変な声出すなよ」
「ごめん...でもこれ」
「言うな。後で殴られてやるから」
「いや別に....嫌なんて」
「ん?どうした?」
「・・・何でもない」
陽乃side
「ねえ~雪乃ちゃん。あの子比企谷君に抱きついたと思ったら今度はおんぶして貰ってるんだけど、どうしよっか♪」
「・・・どうもしないわよ....それよりしっかり狙ってちょうだい」
「狙うってあの子を?」
「違うわよ...」
「もう!やだな~冗談よ冗談♪」
ドン!
「そうは聞こえなかったのだけどね....」
比企谷side
流石に奴等が集まりすぎてるな...。足元を見ると奴等で溢れ返っていた。
俺がまだ人間でいるのも射撃のサポートのおかげだ。
それにしてもどうするか。武器は鉄パイプが使えなくなったから銃しかないが。無闇に撃てば逆に集めてしまう。
あまり考える時間もない。
「今から塀を渡ってあの家まで戻る」
「本気?」
「ああ。俺だって怖いし無謀だとは思うけどな」
「・・・分かった。八幡を信じる」
「安心しろ。死ぬときは一緒だからな」
「信用できなくなってきた...」
「うっ....」
「それよりその....早くしてほしい」
「ああ、悪い。おんぶなんて嫌だよな」
「いやそうじゃなくて....なんでもない」
「えと、留美さんや?」
「・・・揺らさないで....」
「先程から足が落ち着いておらず...まさか」
「・・・トイレ行きたい」
「ど、どれくらい我慢できそうだ?」
「もう....無理」
「・・・わ、分かった。気にしないからこのまましちまえ」
「でも...ねえ八幡はさ」
「どうした?他にもあるのか」
「・・・こんな風にお漏らししちゃう女の子は嫌いに...なる?」
なにその質問。レベル高くないですかね....。
なると言えば、最悪の事態になりそうだしならないと言えば変態...だな。
「留美は留美はだろ...嫌いになんてならねーよ」
「・・・うん。分かった....そのごめん」
せ、背中に生暖かい何かが...。
「お、終わったか?」
「・・・・」
返事はないが俺の背中を掴む手の力は強くなっているので察しようと思う。
俺はその後なんとか家まで戻ると皆が支度をしていた。
「なにやってるんだ?」
「あ!ヒッキー無事でよかったよ!本当に心配したんだからね!」
「あ、ああ悪かったな」
「八幡、今から移動するんだって雪ノ下さんが」
「戸塚分かりやすい説明ありがとな」
「つーかあんたも手伝ってくれない?」
あのー三浦さん?あなた殆ど何もしてないように見えるんですが?
「ヌハハハ!八幡よ!よくぞ無事に戻ってきた!」
「おおー材木座。お前どこにいたんだ?」
「ずっといたではないか!」
「・・・あ、ああそうだったな」
「お兄ちゃん!」
「小町」
「もうあんまり無理しないでよ....」
「・・・悪かったな」
俺は右手で小町の頭を撫でる。
「比企谷君無事で良かったわ」
「ああ、お前らのおかげだよ」
「ねえ...八幡」
忘れてた...。
「なあ雪ノ下、もうすぐ出発なのか?」
「もうすぐではなく。もう出発するのよ」
「少しシャワーだけでも」
「無理ね」
「皆荷物を詰め込んで乗ってるし流石にきついかな~奴等もそこまで来てるしこれ以上集まると逃げれなくなるからね」
「雪ノ下さん....せめて着替えるだけでもいいですか?」
「・・・比企谷君何をしたの?」
「俺は何も...」
「そっかーそういうことかー」
「はあ...その子は私が着替えさせてくるわあなたは姉さんに任せるわね」
「はーい♪それじゃあ比企谷君急いで着替えようね!」
「・・・嫌な予感しかしない」
5分ほどで着替えた俺と留美は車に戻ってきた。
俺は最初由比ヶ浜の服を着させられようになったが由比ヶ浜の父親の服を見つけて着替えた。
留美は先程からスカートを手で抑えているがどうしたんだ?
「留美」
「・・・なに?」
「何でスカート抑えてるんだ?」
「比企谷君?」
「なんだ?」
「ここは由比ヶ浜さんの家よ?」
「ああ、そうだな」
「理解しなさい」
「・・・すまない」
「私に謝っても仕方がないでしょう」
「留美、悪い」
「別に...いい」
「それじゃあ、早く逃よっか♪」
俺達が車に乗り込むと雪ノ下さんが手榴弾を入り口付近に投げた。
ドーン。という爆音がして車は路地の左に曲がって走り出す。そのうち何人か引いた気がするが小町の目も塞いだし留美の目も塞いだし大丈夫だろう。
「雪ノ下さん、これからどこに逃げるんですか?」
「宛はないわね、どうしよっか?」
「リーダーはあなたよ?比企谷君」
「・・・それなら1度警察署に向かいましょう」
「今更警察に頼ると言うの?」
「そうじゃない。ただ武器の補充が出来るかもしれないし、通信装置が壊れていなければ救援を求められるかもしれないし情報も手にはいるかもしれないだろ」
「そうね~♪それじゃ決まりってことで」
「私も賛成ね」
「・・・八幡...そのぱ...ぱん..........つ」
「お、おお....悪い。雪ノ下さん。警察署に行く前に皆の服も欲しいのでデパートにお願いします」
「はーい♪」
「先輩~私にどうゆう服きて欲しいですか?」
一色は俺に近付きながら言ってくる。
「いや一色?近い近いから...」
「先輩が言うなら私どんな服でも....」
「・・・」
「あー!ヒッキー!今想像したでしょ!」
「ば!べ別にしてねーし!」
「お兄ちゃんは本当に....これからどうするの...」
「八幡....」
「ん?どうした留美」
「なんか....こんな状況なのに楽しそうだなって」
「留美ちゃん」
「?」
「こんな状況だからだよ!それに皆がいれば楽しくいられる」
「・・・皆がいれば」
「留美ちゃんも、もう大事な1人なんだよ」
「私も...」
「うん!そうだよ!これからよろしくね!僕戸塚彩加です!」
「私はー城廻めぐりです~♪よろしくねー留美ちゃん」
「久し振りですね!わたしは一色いろはです♪これからよろしくでーす♪」
「あーしは三浦優美子、何かあったらあーしに言いな。あとよろしく」
「あたしは由比ヶ浜結衣!よろしくね!留美ちゃん」
「私は雪ノ下雪乃。会うのは2回目ね。よろしく留美さん」
「我は剣豪将軍材木座義輝だ!よろしく頼むぞよ!」
「私は雪ノ下陽乃ね。これからよろしくね♪」
「俺の紹介は要らないよな?」
そう言って手を差し出す俺。
「うん....うん!鶴見留美です。これからよろしくお願いします!」
留美の顔は笑顔になっていた。
なんでこうなったのか....謎ですね。
※由比ヶ浜の一人称の変更8月11日。