Highschool of the Dead ~比企谷八幡の選択~ 作:隣の三下君
比企谷side
「ねえ?これからどうする?..」
由比ヶ浜が言ってきた。それは誰しも思っていることでここにいる誰もが知りたいことだろう。
俺は答えられないし皆もそうだと思った、だけど1人だけ違っていた。
「由比ヶ浜ちゃんはどうしたい?」
陽乃さんが答えた。この中で最年長と言っても俺より3つ上なだけの女性だ。普通なら自分のことで精一杯のはずだ、俺は改めて凄いなと思う。
「・・・あたしはママやパパに会いたい」
この言葉に反応したのは少なくないだろう、あの雪ノ下でさえ動揺しているのが見てわかる。
「そっか...そうだよね。だからこそお姉さんから皆に提案がありまーす♪」
陽乃さんは先程までの暗い雰囲気からは一変いつもの陽気な声に戻っていた。
「提案ですか?」
「うんそう♪この人数で動くにはヤッパリ、纏められるリーダーを作った方がいいと思うの♪」
「はあ...」
そんなの決まっているじゃないか。これだけ個性的な面々を纏められる器を持っている人なんて1人しかいない。
「私は~」
そうあなたしか。
「比企谷君がいいと思いまーす♪」
「はあ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。
「ふっ...姉さんと同じ意見なのは大変遺憾なのだけれど、私も比企谷君が向いていると思うわ」
「うん!あたしもヒッキーなら、ううん。ヒッキーがいい!」
「先輩ですか~。まっしょうがないですね、私も賛成です♪」
何これ誰もやりたくないときに起きるあれか?ほら例えばクラスの学級委員長を決めるときとか「あーなんとかちゃんならいいんじゃないー?」みたいな。だが今は駄目だろ、命がかかってるんだ、俺じゃ役不足だ。
「お、おい俺は」
「あーしもヒキオならいいし」
Oh...。睨まないで?怖いから。
「私もいいと思うよ、勿論戸部っちが副リーダーでとべ×はち!きました「はいー今は静かにねー」」
「私もー比企谷君が向いてると思うよー」
「本来なら我がやるべきところだが「煩いですよ?」・・・すいません...」
「ヒキタニ君なら、バッチし任せられるでしょー!」
「じゃあ決まりだね」
陽乃さんは満足したように笑顔で言ってくるが俺は納得していない。
「いやいや俺じゃ分不相応ですって...何で俺なんですか?」
「それじゃあ逆に聞くけど比企谷君なら誰を選ぶのかな?」
「・・・雪ノ下さんが向いてると「何でかな?」」
「1番歳上ですし纏める力も実力もありますし、それに信頼もあります」
「信頼ねー本当にあると思ってるのかね?」
「え?」
「私のは信頼じゃないよ。ただ正しいから従うってだけ」
「・・・正しいなら良いじゃないですか」
「だーめ。そんなのいずれボロが出るもの」
「それなら雪ノ下は「私も無理よ」」
「何でだよ?お前なら何が起きても対応してくれるだろ?」
「そうね。あなたが言うならそうなのでしょうね」
「いや何で俺が言うならなんだよ」
「とにかく私では駄目よ。今三浦さんから信頼を得るなんてこと不可能だもの」
「うっ...そ、それなら...い、一色はどうだ?生徒会長やってたんだしリーダーシップもあるだろ?」
「ヒッキー!何であたし見たあとに口ごもっていろはちゃんに言ったし!」
「おお、由比ヶ浜。よく口ごもるなんて知ってたな。んで一色どうだ?」
「なんかあたしの扱い酷くない!?それくらい分かるし!」
「先輩から推薦してもらうのは嬉しいんですけど~。この面子を纏めるのは私には荷が重いので無理ですー」
「ねえ!ヒッキーあたしは!?」
「えーと...それなら。戸塚!戸塚ならどうだ?部長やってたしそれに着いていきたいって思うだろ?」
「ヒッキーガン無視!?うわーん、ゆきのん!」
「あはは...八幡。そう言ってくれるのは嬉しいけどたぶんそう思ってるのは八幡だけだと思うよ」
「そんなことないと思うが....。そ、それなら...三浦なん「ああ?」何でもないです....」
「そ、その...城廻先輩は「めぐりに出来ると思う?」すいません....」
「その、えび「海老名ならあーしとフォワードやるから駄目だし」」
いやフォワードってなんだよ...。いつから役割決まったの??
「それなら聞かせてください。何故俺なんですか?自分で言うのもあれですけど、纏める力なんて元々ボッチだった俺には無いし別段何が出来るわけでもありません」
「ねえ比企谷君。リーダーに必要な素質って何だと思う?」
「・・・さあ。カリスマ性ですか?」
「正解はね、信頼なんだよ」
「・・・なんか雪ノ下さんらしくない答えですね」
「うん♪私には一番縁がないものだからね~」
本質を知っている人にはですけどね。
「そんなこと無いんじゃないですか?」
「じゃあ比企谷君は私のことを信用できる?」
「・・・でき「はい、時間切れ~」早くないですか...」
「間があっただけでアウトだよこういうのはね。それにもう1つ大切なこと」
「もう1つ?」
「どれだけ皆の事を理解出来ているのかってこと」
「それこそ俺なんて」
「さっき言ってたじゃない、皆の事。私は雪乃ちゃんの事だけなら負けないけど他の人のことなんて分からないもん」
「それくらい...」
「あなたじゃなければ無理よ。比企谷君」
「雪ノ下...でも俺は怖いんだ。俺の判断で誰かを失ってしまった時の事を考えると」
「比企谷君。人は皆、いずれ死ぬものよ。遅いか早いかだけ」
「・・・」
「勿論、あなたにだけ重荷を背負わせるつもりはないわ。私達も精一杯のことはするつもりだし別にリーダーだからって気負う必要もないのよ」
「・・・本当に俺で良いのか?」
「先輩にならわたしの命預けても後悔しませんから♪」
あざといんだよ....お前は。
「まあ、ヒキオがダメなとこは、あーしらでカバーすればいいっしょ」
「優美子ーそれだわー!冴えてるわー!」
「だぁっしょ!」
三浦スッカリ元気になったんだな...。
「お兄ちゃん!小町はお兄ちゃんを信じてるよ♪あ!今の小町的に超超ポイントたっかいー♪」
俺の妹もあざとかったな...。最後のがなければ。
「比企谷君。頼りないかもしれないけど、一応私はお姉さんだからーいつでも頼ってね♪」
城廻先輩...いつでも癒されてます。
「八幡よ!お主が決断したことで何が起きようとも我等は誰もお主を恨むものなぞおらぬぞ!」
くそ...ちょっとカッコいいじゃねえか。
「それじゃあ、比企谷君?」
「ヒッキー!」
「比企谷君。ここにいる人は皆あなたを認めているのよ」
「・・・分かりました」
「あのー....それでは僭越ながら」
「「「「「固いよ!!」」」」」
「はあ...えーと取り敢えずの目標としては学校からの脱出。そして家が近い人から両親の無事の確認。それでいいでひょうか?」
「なんか一気にやる気無くなった!?そして噛んでるし!?」
いや噛んだのは、あれだよ...何文字以上喋ると噛んじゃうんだよ、てどこのロリ忍者だ。
「でもそこが」
「ええ、クス。そうね」
「うん!」
「比企谷君(先輩)(ヒッキー)らしい」
「お前らそれ誉めてんの?」
「それで比企谷君。脱出って言ったけれどどうやって脱出するのかしら?」
「それは・・・こいつを使おうと思ってる」
「へえ。成る程ね」
「え!?ヒッキーこれで逃げられるの!?」
「ああ間違いなくな」
「逆に何で結衣先輩分からないんですか...」
「うわーん。ゆきのん!」
「はあ...。教えてあげるから泣かないの」
うん。相変わらずユリユリってんなー。
「それじゃあ....」
どうしようこのメンバーだと一番前に雪ノ下さん、後衛には三浦がベストなんだが...リーダーがどっちもやらないってどうなんだ...。
「えーと...」
「それじゃあ1番前は私だね♪」
雪ノ下さんが言ってくる。まるで俺が言いにくいのを理解してくれたみたいに。
「でも...」
「んじゃ、あーしは一番後ろをいくし」
「なんで...」
「別に....ただ」
「ただ?」
「何でもないし!」
「でも後ろってことは...」
危ないという理由の他にもうひとつ理由があるのだ。一番前に雪ノ下さんが来るってことは、いざとゆうときの為に雪ノ下を後ろから2番目にする必要がある。一番後ろじゃない理由は体力がないからだ。一番前もその理由でアウト。
「わーってるし。雪ノ下さんも後ろに来るってことっしょ?」
「ああ。もう気にしてないのか?」
「そんなわけないし、今でも恨む気持ちはあるし...でも、もしあーしが一緒にいて隼人が目の前で奴等になったとしても...何も出来なかったと思ったから....」
「そうか...」
いつもの三浦からは考えられないが何か三浦の考えを変える何かがあったんだと思った。怨みというのは簡単に抑えられるものではないことは俺も理解しているから。
「順番は、雪ノ下さん、俺、小町、由比ヶ浜、戸部、海老名さん、城廻先輩、一色、戸塚、材木座、雪ノ下、三浦だ。この順番で納得してない人は今のうちに言ってくれ」
「はーい」
一色が手をあげる。
「なんだ一色」
「先輩と距離が離れすぎてる気がするんですけど~これじゃあ先輩をいじ...先輩に抱き付いたり出来ないじゃないですか~♪なので結衣先輩とー場所を~変わりたいなって♪」
「ひ、ヒッキーと...だき、だき...」
「変なことするからお前は後ろだ」
「えー酷いですよ」
「はあ...本当の理由は真ん中も危ないんだ。だからある程度戦えるやつをおいておきたい。一色は状況判断も出来るしな」
「そ、そうですか....」
一色は顔を俯かせている。やっぱり気に入らなかったか?
「分かりました」
未だにあげないから気に入らなさそうだが我慢してもらおう。
「お兄ちゃん、いつそんなテクニック覚えたの?」
この子は何を言ってるの?
「何の話だよ」
「はあ...まあお兄ちゃんだもんね」
「?....そろそろ行くぞ」
俺達が職員室から出ると奴等は玄関までの距離に20人くらいはいそうだった。
「全員。音はたてずになるべく戦闘は避けましょう。危ないと思ったら各々の判断で攻撃をお願いします」
俺の作戦を聞いてから最初の目標の学校からの脱出が始まった。
作戦を聞いただけではそこまで難しくなさそうだが、かなり難しい。奴等の動きに規則性なんてものがあればいいのだが全くそういうのは無いのだ。あたり前かゲームの世界じゃあるまいし。
奴等が近付けば心臓の音も早くなり手も震えてくる。
目は奴等が攻撃を急にしてきても対応出来るように、まばたきの回数が自然に減りずっと集中しているのでいつもの倍以上疲れる。
手汗は酷く、俺は今木刀が半分になってしまったので戸塚が持ってきてくれた箱の中にあった鉄パイプを握りしめているが手汗で滑らないか凄く心配だ。それに以外と重い。60㎝もあるので引きずらないように持っているのだがこれにも神経が削られていく。
全員が無言。そんな中聞こえるのは奴等の不気味な声のみ。もう悲鳴も聞こえてこなかった。
ようやく玄関まで来て安心したのだろう...その時に事件は起こった。
今考えても何が起きたのか分からない。
いきなりだった。
いきなり奴等は。
俺達が通りすぎようとした扉をぶち破り。
丁度そこにいた。
海老名さんに噛みついた。
「あ、あぐぁ...み、んな...にげ」
海老名さんには5人ほど噛みついていた。
「えびっんん!!」
俺が大声で叫びそうになっていると雪ノ下さんに手で口を抑えられた。
「比企谷君...今は...我慢しなさい」
雪ノ下さんの声は震えていた。
由比ヶ浜も叫ぼうとしているが小町が手で口を塞いでいる。
「小町の後ろから城廻先輩達が....あれ?っ!戸部!」
俺は叫んでいた、いや叫ばずにはいられなかった。戸部は襲われている、海老名さんの元に迷わずに駆け出していた。
「皆、わりぃな。やっぱり海老名さんを1人には出来ないでしょ!」
「戸部ー!!」
「戸部っち!!」
三浦と由比ヶ浜も叫んでいる。グラウンドにいた奴等も此方に向かってくる。
「戸部っち..きちゃ、だめだよ...なんで」
「そんなの決まってるでしょー!好きになった女と一緒にいるためなら俺は死を選ぶ!」
戸部はいつものお調子者の雰囲気からは考えられないほど真剣で真っ直ぐに言った。
「も、う....ば、か、、、なん.......」
「ヒキタニ君!」
「戸部...」
「こうなったのは誰のせいでもないべ!それより絶対に生き残ってもらわないと困るでしょー!」
俺はなんとか涙を堪えて叫ぶ。
「全員。走れ!!」
皆が驚き肩が揺れる。
俺はポケットの中に入れておいた防犯ブザーのピンを勢いよく引っこ抜く。
ビビビビビビビ!!!!
猛烈な音が鳴り響き俺は防犯ブザーを雪ノ下さんが乗ってきた車とは逆の方に投げる。
音に群がり奴等はあっという間に防犯ブザーの周りに群がっていた。
「まじかよ...」
防犯ブザーは予想よりも効き目が強いのか学校外にいた奴等も誘きだしていた。
これは使いどころを間違えれば逆効果になるなと思いながら持っていた鉄パイプで防犯ブザーに向かって此方に歩いてくる奴等の頭を叩きながら走る。
「はぁはぁ...はぁ...」
俺達が全員乗り込んだ時には皆疲れと絶望と安堵が混じって疲れきっていた。
「すいません...雪ノ下さん。疲れているはずなのに運転を任せてしまって」
「それは、しょうがないよー。他に運転出来る人はいないし。それにお姉さんは比企谷君が心配してくれて嬉しいよ?」
あの出来事のあとから雪ノ下さんの言い方がおかしい気がする。なんて言えばいいのかなんか丸くなった気がする。いままでみたいな威圧感が全くないのだ。最初は疲れてるからか?と思ったが...。
「あはは...そうですか」
この車がハンビーと言うのは雪ノ下さんに聞いて知ったのだがこのハンビーは前に2人、後ろは席になっておらず広々とした荷台みたいになっていた。
武器や食料が大量に乗っていて少し狭い。だがそれでも8人が乗るのには広いとは言えないが全然座れるくらいの広さはある。
因みに運転手は雪ノ下さんで助手席は小町。小町の膝の上にかまくら。
「おかしいだろ...」
俺は右の車の窓際に体を預けて座っているのだが...俺の前に雪ノ下、左には一色。しかも俺に体重を預けて既に寝ている。後ろには由比ヶ浜が俺の背中に頭をあてながら寝ている。
なにこの状況?
「あら、何がおかしいのかしら?」
「いや何って...」
「いいなぁー私もそこに混ざりたい~」
「姉さんは運転でしょ」
「もう!雪乃ちゃんも言うようになったわね」
「これでも...助けに来てくれて感謝しているわ」
「雪乃ちゃんも変わったね、私にお礼を言うなんて、誰の影響かな?」
「さ、あ....すぅすぅ...」
雪ノ下は寝たのか寝息を立て始めた、車がグラウンドから出るときのカーブで慣性の法則が働き雪ノ下は俺の膝に収まる......なんで?
「お、おい「比企谷君」はい?」
「そのままにしてあげて、今日は疲れたと思うから」
「・・・優しいんですね」
返事はなかったが俺も睡魔に襲われてそのまま寝てしまっていた。
「比企谷君?寝ちゃったか、まあ頑張ってたものねー。小町ちゃん」
「はい!」
「この辺りで1番近い家ってどこかな?」
「うーん、やっぱりうちですかね。車なら15分位で着くので」
「それじゃあまずは」
「いや、うちは駄目だ」
「あれ?お兄ちゃん起きてたの?」
「いや...寝てた....すいません、雪ノ下さん」
「ううん。それよりどうして?」
「来るときに奴等に入られたので...取り敢えずは...由比ヶ浜の家でいいと思います。結構広いですし、塀にか囲まれていましたから中には奴等もいないと思いますし」
「そっか、それにしても比企谷君、詳しいねー?」
「・・・1度行ったことがあったからですよ...」
「お兄ちゃんが!小町の知らない間に!?」
「雪ノ下も一緒にな」
「なーんだー」
「それじゃあ、向かうけど道案内頼める?」
「はい。横窓からでもだいたいの位置は分かりますから。それにしても...酷いですね」
「そうだね、私も少し動揺してる」
遠目から見る景色は、家からは煙があがり叫び声が聞こえ、散々なものだった。
「これが日本中で...」
「そうじゃないのよねーこれは世界中で起こってるのよ」
「っ!?世界中で!」
「そっ、じゃなければ雪ノ下財閥はとっくに飛行機で日本を離れてる」
「・・・世界中で」
「問題は色々あるけど今は取り敢えず休息が必要だからね」
俺はこれからの事を考えるのを辞めて由比ヶ浜の家までの案内に集中することにした。
「はあ...現実逃避なんだろうな」
考えることを辞める。それは1種の現実逃避だ。でも仕方がないだろう、こんな状況なら誰しも現実から目を背けたくなる。
こんな死と隣り合わせの現実なんて。
海老名さん...。生かしたかったけど.....。
次回は平塚先生と川なんとかさんが出てきます。
※由比ヶ浜の一人称の変更8月10日。