Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

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次回から物語が動いていきます。


1章-22「休息2」

少し眠っていたのか意識が覚醒していく。床に倒れるように意識を失った筈なのに頭から感じられる感触は、感じたこともないほどに柔らかく気持ちがいい。自室の枕よりも気持ちいいかもしれない。

 

目を少しずつ開けると夜になっているのか周りが暗い。そんな中で松明の灯りがゆらゆらと燃え一色の顔を半分照らしている。ん?照らしている?俺が見えるのはすぐ近くに一色の顔と少し離れた場所に見える、天井という名の壁。

 

自分の状態を確認しようと手を上げるとふにょんという感触に慌てて手を下げた。柔らかい感触に悲鳴ではないが、喘ぎ声に似た甘美な声が響く。声の質から言って陽乃さんの声だろう。

 

「あ、先輩起きたんですね♪」

 

「もう比企谷君たら、触りたいのなら皆がいないところで触らしてあげるのに♪」

 

....一色の目が笑っていなかった。声も顔も笑顔なのに、この頃こんなんばっかだなと、諦めて起き上がる。

 

「陽乃さんすいません。触るつもりは無かったんですけど...」

 

「ん?別に構わないよ?むしろもっと触る?」

 

「触りません....」

 

「先輩、色々と言いたいことはありますが先輩が寝ている間に今後について話し合ったので聞いてもらってもいいですか?」

 

「...ああ。頼む」

 

その後、少し補強されて簡単には入れなくなった入口付近で全員集まり内容を聞いた。その話の内容をまとめると。

 

1.食料の蓄えがあまり無いのでここには長居は出来ないということ。(かまくらの餌も明日の夜には無くなるらしい)

 

2.此処から一番近いのは三浦の家らしく、次にいくのは三浦の家。

 

3.風邪をひいたりした際に専門的な事が分かる人が一人は欲しいとのこと。陽乃さんと戸塚は、ある程度は分かるらしいが、それでも限界はある。

 

4.後の決定権は俺に一任する。....と。

 

いやいや、責任重大過ぎるし何よりここまで話し合っていたのなら俺の意見なんていらないだろ。

 

「なあ、平塚先生見付かったんだし俺じゃなくて平塚先生の方が」

 

「それは駄目ね」「それは駄目!」「先輩以外わたしは、認めませんよ?」「お姉さんも、その意見は賛成できないかなぁー」「あーしも反対」「お兄ちゃんのが小町はいいと思うなぁ」「私も八幡に賛成」「比企谷人望ありすぎ!マジうける!」「あ、私もね比企谷君の方がいいかな~って」「僕も八幡に賛成だよ!」「うぬ、我も異存はないのである!」「比企谷、諦めたまえ。君はリーダーに向いているよ。私なんかよりよっぽどな」

 

満場一致で何この信頼感。信頼してくれるのは嬉しいが俺のミスが命に繋がってしまう。出来ることならこんな重みは俺には背負いきれない。だけど....ふと、皆の顔を見る。雪ノ下、由比ヶ浜、一色、陽乃さん、三浦、小町、留美、折本、城廻先輩、戸塚、材木座、平塚先生。ここにいる奴等を誰一人として失いたくない。

 

拳を握る。

こんな非力な俺で大丈夫なのか?....違う。陽乃さんは言った。-------私達を頼れって。

 

皆を助けられるのか?....違う。俺は助けられてばかりだ。

 

情けないな....でも。

 

「こんな俺なんかで良いのか?」

 

「はあ、何を言っているのかしら、貴方は」

 

やれやれと額に手をおく雪ノ下。その姿が懐かしくて呆れられているのに嬉しく感じてしまう。

 

「貴方だから良いのよ。他の人なんてごめんだわ」

 

「うん!あたしもだよ!ヒッキー!」

 

「先輩忘れたんですか~?わたし達は付き合ってるんですよ?彼氏を信じられなくてどうするんですか~♪」

 

「ちょ!あたしもだよね!?ヒッキー」

 

「どうかな比企谷君。そろそろ決意は固まった?」

 

「陽乃さん...」

 

「本当は、私からも言おうと思ってたんだけどね。雪乃ちゃんに全部取られちゃったから」

 

雪ノ下ちゃっかり、ガッツポーズしてるけど変わらないな、本当に。

 

「そうだよ、お兄ちゃん!小町を守ってくれるんでしょ?」

 

「当たり前だろ、小町」

 

「あーしも言おうと思ったけどやっぱり良いや。決まったみたいだし」

 

「頑張ってね!八幡」

 

「比企谷にならあたしも着いてくからさ....て、あれ?い、今のは別に変な意味じゃないからね!」

 

「お、おう...」

 

「比企谷君」

 

「城廻先輩...」

 

「私達をお願いね?」

 

「はい」

 

「うん!良い返事だね!」

 

「八幡!僕も頼ってね!僕頼りがいないかもしれないけど...」

 

「いや頼ってるさ。本当に助かってるよ、ありがとな戸塚」

 

「八幡...うん!」

 

「んんっ!八幡よ!」

 

「材木座ちょっと煩い。廊下にまで声が響くだろうが」

 

「....八幡よ」

 

「なんだよ」

 

「我になら言えることもあるであろう。困ったことがあれば何でも相談するのだぞ?」

 

「.....お前ほんとにたまにだけど格好いいこと言うよな」

 

「た、たまにぃー?」

 

「あーそう言うのは良いから」

 

「比企谷」

 

「平塚先生...とりあえず、その無事で良かったっす」

 

「ふふ、君のおかげだよ」

 

「いえ、そこで転がってる奴のおかげでもありますし。雪ノ下と陽乃さんがいなければ...俺だけじゃ奴等になって終わりでしたよ」

 

「君は、変わったな比企谷」

 

「そうですか?」

 

「ああ、大人になったよ。良い変化だ」

 

「自分では良く分からないんですけどね」

 

「ふっそういうものだよ。私があと10年若ければ告白したかもしれないがな」

 

「...先生は今でも充分魅力的ですよ」

 

「ふえっ!?ひ、比企谷それはどういう」

 

バンっ!

 

「っ!」

 

窓を叩く音により一瞬で部屋の中は静寂に包まれる。さっきまでの雰囲気と変わり緊張で誰もその場を動かない。声どころか唾液を飲み込む音や心音さえも煩いと思えてくる。

落ち着け、と心の中で葛藤する。

 

考えていたばかりじゃないか、皆を守るって。その為の行動を起こせと体に言い聞かせる。深く深呼吸をして入口を見ると曇りガラスに誰かいるのが分かる。奴等か生存者か、後者はないだろう。後者なら声をかける筈だ。

 

結論が出たところで俺は動き出す。近くに置いてある、陽乃さんの刀を借りてゆっくりと足音を立てないように入口に近付く。誰かの手が俺のズボンを掴んだことでその場に止まり振り返ると雪ノ下が掴んでいた。俺は心配するな、という意味を込めて頭を上下にふる。雪ノ下は、ゆっくりと掴んでいたズボンを離す。入口には、机と椅子でバリケードを作っているため入口を開けて倒すのは無理。

 

端に余っていた机を音をたてなように静かに運ぶ。この部屋は入口の他にも天井付近にスライド式の小さめな窓が付いている。机に登り鍵を開ける。スルスルという小さな音だが窓を開く際に出してしまった。入口より少し右にいる俺に少しずつ奴は近付いてくる。音が小さかった為か、壁を叩いたりはしてこない。

 

「っ!」

 

思わず息を呑んだ。奴は急に頭を上に向けてきた。右半分を食べられたのか口が裂けて目が潰れている。口が裂けている為なのか上を向いたので笑みを浮かべているように見えて背筋がゾッとして足が震える。足の震えは机にまで届きガタガタと揺れ出す。落ち着く為に深呼吸をするが奴が机の音に気付いたのか壁に近付いてくる。壁にぶつかり壁を叩き出す。壁一枚挟んで奴がいる。そう思うと冷や汗が止まらず目の前も霞んでくる。

 

右手に持っていた刀も震えだす。歯肉から血が出そうになるくらい噛み締める。うっかりするとガチガチと歯も震えだしそうだった。

 

きゅっと左手に暖かい感触が伝わる。ゆっくりと振り返ると留美が笑顔で左手を握ってくれていた。不思議と既に恐怖心は無かった。あったのは、感謝の気持ちとこれからやることに対しての覚悟だけだった。

 

さんきゅー。と口パクでした俺に留美は、手を離し改めて上の窓から覗きこむ。奴は、がっしりとした体型の男性で身長も180㎝あるのか刀を降り下ろせば上からでも届くだろう。

 

壁を叩いている奴の真上に窓から体半分出しながら刀を構える。壁越しに叩いている揺れが伝わってくる。焦るな、と心に言い聞かせて目を開き一気に刀を降り下ろした。

 

血飛沫をあげてべちゃっとその場に倒れこむ奴。刀は鮮血により赤く染まり廊下の天井にまで血が飛んでいる。勿論手や顔に血がかかったがあまり気にならなかった。

 

「比企谷君...」

 

「もう大丈夫だ」

 

皆の空気が重い。これまで何人も倒してきたとは言え、慣れるものではない。廊下は血だらけ。俺にも血はついている。匂いで吐いてもおかしくないだろう。俺だって頭に直接降り下ろしたんだ、感触が、抜いたあとの光景が思い出す度に吐きそうになる。

 

でも吐いてはいけない。きっとこれは必要なことだから。

 

「留美さっきはありがとな」

 

血で汚れていない左手で留美の頭を軽く撫でる。本当にさっきは助かった。留美が手を握ってくれなければ震える手で奴を倒せず最悪....。

 

「ううん、八幡の役に立てたなら」

 

「それより比企谷君。その格好は不味いよね...」

 

「...ですよね」

 

そうは言っても着替えはない。贅沢は出来ないし言えないけど血を拭き取ることはしたい。

 

「なあ比企谷」

 

平塚先生が俺の肩に手をおく。気のせいか嫌な予感がするんですが?

 

「私と折本は、多少着替えを持ってきている。少ないがタオルもだ。仕方ない、本当に仕方がないから私のを貸してやろう」

 

「え?....いやいや、良いですよ。タオルだけ貸してくれれば...」

 

どうした?女子陣の顔が笑顔なのに笑ってないぞ?戸塚は苦笑いだし、嫌な予感しかしないんだが。

 

「先輩逃げちゃ駄目ですよ?」

 

「いやどうして近付いてくるのん?ちょっと待て、落ち着け。タオルで拭くくらい自分で出来るから」

 

「でも貴方は、女物の服なんて着たことがないのだから着方を教えてもらった方が良いんじゃないかしら?」

 

「いや何言ってんだよ。そもそも着ない」

 

「着ないって事は、ヒッキーは裸でいるのかな?それはそれでもあたしは、良いけど」

 

由比ヶ浜の目のハイライトが消えている。少しずつ近付いてくる女子に対して数歩下がると誰かにぶつかる。

 

「三浦...」

 

「比企谷、逃げるのは無しね。それとあーしの事は優美子って呼ぶし」

 

いや何でだよ。てか俺に名前呼びとか嫌だろ? 

「八幡....約束」

 

留美に言われて思い出す。そう言えば名前で呼ぶって勝手に約束された覚えはある。俺は納得した覚えなんてないが。

 

ガシッと三浦が両肩を掴み留美が左腕を右腕をタオルを持った小町が掴んでいる為に動くことが出来ない。右腕にはタオルが巻かれ、小町が拭いてくれている。白いタオルは、赤く染まっていく。時間が少し経ったせいもあり完全には落ちそうにない。服に付いた血は落とすことは出来ないほど就いてしまっている。

 

前から着替えを持った平塚先生と雪ノ下、陽乃さん、由比ヶ浜、一色が近付いてくる。

 

俺は知ることになる。

 

時に女は獣になると。

 

 

これが大人になるということと違うのは分かるが、俺は今日の事を決して忘れることはないだろう。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、材木座君」

 

「どうしたのである。戸塚氏」

 

「僕たち何だか空気だね」

 

「そうであるな。でも」

 

「うん、ちょっとあれは嫌だね」

 

「うぬ..」


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