Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

22 / 24
1章-21「休息」

平塚side

 

 

久し振りに会った、奉仕部の部員の一人である比企谷は何処か成長した雰囲気だった。一皮剥けた自分の生徒を見ることが出来て嬉しい反面寂しくも思ってしまった。比企谷が一皮剥けた理由は、今回の事が原因だろう事は、一目瞭然だった。教師であり、大人である私はなにもしていない。しかも目の前で助けられている。だがそんな状況なのに嫌悪感はなく、むしろ女性として嬉しくもあった。これは生徒だった相手には、絶対に感じない気持ちだろう。

 

 

大人になったな...比企谷。

 

 

消火栓のホースを体に巻き付けて二階である窓に引き上げられていく。途中下がったように感じたが気のせいだろう。

 

「平塚先生!!」

 

「おお、由比ヶ浜。無事で良かったよ」

 

窓から部屋に入ると由比ヶ浜から抱擁される。その体は震えており、優しく由比ヶ浜を抱き止め頭を撫でる。

 

「平塚先生....」

 

「雪ノ下も、大変だったな」

 

由比ヶ浜と雪ノ下、二人と抱擁した。その他にも三浦、戸塚、一色、城廻、陽乃、比企谷の妹と、確かあの子は、イベントの時にいた女の子だったか。

 

少し名残惜しいが抱擁を解き、ホースを再び外に落とす。

 

「静ちゃん」

 

「陽乃。無事で良かったよ、それと私の大事な生徒達を守ってくれてありがとう」

 

「...私は守られていただけだよ。情けないけどね」

 

哀愁漂う、陽乃の顔が珍しく少し驚いてしまうが何時もの仮面は外れており、陽乃も変わったなと喜んでしまう。それと同時に陽乃を変えたであろう、人物にお礼を言いながら。

 

 

その後に折本と比企谷を上まで上げたところで問題が起きた。材木座だったか?...重い。雪ノ下と陽乃はライフルで窓から奴等を狙っており安全確保をしているが上に上がる気が全くしない。城廻なんて真っ赤になりながら引っ張っているし、こうゆう頑張っている姿が男を落とすのだろうか?城廻の姿は、女である私でも守ってあげたいと思うほど儚くて可愛らしかった。

 

 

「折本もう少し頑張ってくれ。小町と留美は、陽乃さんと雪ノ下と交代してくれ」

 

比企谷の言葉に焦りだす雪ノ下姉妹。こんな珍しい反応、普段なら暫く見ていたいが、今は早く動けと思うだけだ。

 

「城廻先輩も見張りをお願いします」

 

本当に君はよく見ている。こんな状況でも生き残れたのは、比企谷の存在が大きいだろうな。

 

 

八幡side

 

平塚先生と折本を助けることに成功した俺は現在疲労によりかつてないほどの睡魔に襲われていた。小町や一色が話しかけてくるが、全く耳に入ってこない。頷こうとするが首が下にいってから上げられない。俺はそのまま意識を手放した。

 

 

一色side

 

「先輩っ!」「お兄ちゃん!」

 

突然叫んだ、わたしと小町ちゃんに皆の視線が集まり平塚先生との談笑も聞こえなくなりました。先輩が急に倒れ込むようにして地面に寝そべったので何処か噛まれたのかと思った、わたしと小町ちゃんは、叫び声をあげたのですがどうやら眠っただけのようでした。

 

「別に噛まれてないわね。ずっと根を積めてたし疲れたのね」

 

「よ、良かったぁ....」

 

床の上で倒れて静かに寝息を立てている、先輩を起こさないように頭を両手で包み込み少し上げて自分の膝の上にのせる。所謂膝枕だ。周りの目が点になってるけど譲るつもりは誰にも無い。一番最初に動いたのはわたしなんですから!

 

「い、いろはちゃん?」

 

「どうかしましたか?結衣先輩」

 

「いや、その...何をしてるのかなって」

 

「膝枕ですけど?」

 

もう別に隠すつもりも偽るつもりもない。わたしは、先輩の事が好きで堪らなく愛している。それに。

 

「わたしと先輩は付き合っているのでこれくらいは当然ですよ」

 

先輩は、わたし一人を選んではくれなかった。だけどわたし達は選んでくれた。少なくとも、わたしは入っているのだから問題ない。

 

「そ、それなら!あたしだってつきあってるもん!」

 

「由比ヶ浜さん?それはどういう事かしら?」

 

やっぱり先輩は、既に付き合っていたんですね。誰かは、まあ結衣先輩の挙動で怪しいとは思ってましたけど...。結衣先輩が雪ノ下先輩や、陽さん先輩から質問されてるけど今は、寝息を立てている先輩を満喫しようと優しく先輩の頭を撫でる。

 

「うわー...一色さん幸せそうだね~」

 

「!城廻先輩...」

 

「全く見せつけてくれる!」

 

「お兄ちゃん、気持ち良さそう。後で小町もやってもらおうかな?」

 

「比企谷人気過ぎ!でも、そっか..もう彼女いるんだ...」

 

「材木座君。僕たちは廊下を見張ってようよ。八幡ならそう言うと思うんだ」

 

「そ、そうであるな。この空気は少し耐え難い...リア充爆発しろ!」

 

「八幡お願いしたら私の頭撫でてくれるかな?」

 

「にゃー」

 

ぼふんっ。顔から蒸気が出てるくらいに暑い。はわわわわ、雪ノ下さん達以外は全員こっち見てるの気付かなかった...。先輩に撫でてもらうのは羨ましすぎるのでわたしもお願いしよう。きっと先輩なら、わたしが膝枕して頭撫でたって言えばやってくれるはず!でも、もしかしたら膝枕も?.....ぼふんっ。

 

「はあ、皆そこまでにするし。比企谷の事はいろはに任せてあーし達はやることあるっしょ?戸塚と....材なんとかはやってるんだし、分かるっしょ?」

 

どこかで、ほにょーんとか気持ち悪い声が聞こえた気がしましたがスルーですね。それよりも三浦先輩、わたしの事を名前で....それに先輩の事もヒキオじゃなくて比企谷って。

 

「三浦先輩...」

 

「何?そんな睨まれても困るけど?」

 

「三浦先輩の好きな人って誰ですか?」

 

「...決まってんじゃん?隼人しかいないっしょ?」

 

「本当の事を言ってください」

 

三浦先輩は優しい。言動と攻撃的な見た目から分かり辛いですがいつも、わたち達を一番に公平に見てくれる。だからこそ知りたい。先輩は、わたしだけは選ばないって言った。でもわたしも選んでくれるって言ってくれた。こんなことが起こる前なら最低なハーレムやろうとでも罵ってやれたけどわたしは、あの言葉に救われた。

 

-------- だから。

 

「三浦先輩、正直に答えてください。先輩の事どう思ってますか?」

 

 

 

 

三浦side

 

 

「正直にお願いします」

 

真っ直ぐに聞いてくる、いろはからは嘘偽りは許さないという覚悟が感じられた。

あーしは、こんな世界になる前まで比企谷の事を何とも思っていなかった。どちらかと言えば好意の反対に思っていた。隼人によく対立するし良く分からない奴だったから。....でもこんな世界に変わって比企谷は変わった。もしかしたら最初から変わってなんていないのかもしれない。

 

あーしが見ていなかっただけ、なのかもしれない。比企谷は言った。あーしも守るって。あの時の言葉、素直に嬉しかった。そして、ほっとした。あの時から気になってたのかもしれない。自ら危険に先立ち進んでいく姿は、カッコ良く見えたし、頼もしく見えた。そして少しだけ不安にもなった。

 

あーし自身が比企谷の重りになってるんじゃないかって思ったら胸がチクリと痛くなった。これが恋なのか、あーしにも分からない。でも少なくとも嫌いではない。それだけは言える。

 

「嫌い、ではない。あーしにも良く分からない。まだ気持ちの整理もついてないから」

 

「そうですか....ですが決断は早い方が良いですよ?先輩は言いました。わたしは選べないって」

 

「え、それって...」

 

「あ、勘違いしないでくださいね?わたしだけは選べないって言ったんです。先輩は、わたし達を選ぶって言ったんですよ」 

 

一人を選ばないって、何回考えても女の敵じゃん?でもどうしてか分かんないけど....。

 

「三浦先輩、笑ってますよ?」

 

「へ?」

 

「三浦先輩って意外と可愛いんですね」

 

「だ、黙るし!!」

 

顔が暑い。ハッキリと熱をもっているのが触らなくても分かる。あーしが比企谷の事なんて....そりゃ少し格好いいと思ったし頼りになる姿見せられて、て!あーしは何考えてるし!!

 

 

 

 

 

雪乃side

 

一色さんも気になるけれど今は....。

 

「さて、由比ヶ浜さん?」

 

「な、何?ゆきのん、顔が怖いよ?笑ってる筈なのに目が全然笑ってないよ?」

 

「雪乃ちゃん、駄目だぞ~そんな言い方じゃ怒ってるみたいだよ?ねー?ヶ浜ちゃん?」

 

「由比ヶ浜です...」

 

「あら、姉さんの方が怖いわよ?由比ヶ浜さんが怯えてるじゃない」

 

「えー?お姉さん何かしたかなー?んー分からないなぁ~。だってしたのは由比ヶ浜ちゃんだもんね?」

 

「ひぃっ....」

 

「はぁ...姉さん止めましょう。これでは、由比ヶ浜さんが可哀想だわ。それに一色さんの話も聞こえたわ。比企谷君は、一人を選ぶつもりはないみたいよ。全くいつからハーレム谷君になったのかしらね....」

 

「でも雪乃ちゃん、安心したんじゃないの?」

 

「あら、それは姉さんもでしょ?」

 

「おりょ、取り繕ったりしないんだ」

 

取り繕う、ね。私は今まで取り繕って、そして失敗してきた。後悔もしたわね。だから....。

 

「もう取り繕ったりはしないわ。私は彼が好きだもの」

 

「変わったね、雪乃ちゃん」

 

「ええ、彼の...いいえ、ここにいる皆のお陰よ。勿論由比ヶ浜さんも」

 

「ゆきのん!!」

 

「姉さんも、ね」

 

「雪乃ちゃん....」

 

「助けに来てくれて本当に嬉しかったわ....ありがとう。.....お姉ちゃん」

 

「ゆ、雪乃ちゃん!?」

 

「どうしたのかしら?」

 

「も、もう一回言って!!」

 

「何をかしら?姉さん」

 

「ん~!違うよ!お姉ちゃんってもう一回! 」

 

「あら、そんなこと言ったかしら?」

 

「言ったよぉ~!」

 

「どうだったかしらね。由比ヶ浜さんに聞いてみましょうか」

 

「ええ!?そこであたしに振る!?」

 

「言ったよね!?ヶ浜ちゃん!」

 

「だから、由比ヶ浜です!てかゆきのん、笑い過ぎだからね!」

 

「あら、ごめんなさいね。あまりにおかしいものだから。さっ二人ともそろそろ落ち着きなさい。比企谷君が寝ている間でもやれることはやっておきましょう。彼がまた、頑張りすぎてしまわないようにね」

 

「うん!そうだね!」

 

「そうだね、それじゃ作戦会議だね」




亀更新で本当に申し訳ありません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。