Highschool of the Dead ~比企谷八幡の選択~ 作:隣の三下君
皆様は御正月忙しいですか?私は忙しいです。ログレスやらファンキルやらアルクロやらとイベントが多すぎてやりきれないくらいです。
コンビニで必要な物、特に水や缶詰などを優先的に背負っていた鞄につめていく。まさか友達の結婚式で当てたビンゴゲームの景品がここで役に立つとはな。勿論鞄に入るだけいれても折本では家まで持っていけないので1.5リットルの水一本に缶詰を基本的に持ってもらって私が水を持っている。1.5リットルのペットボトルは役1.5キロだ。一つなら問題ない重さだが本数が増えていけば肩にかかる負担は大きくなる。
現在私は5本のペットボトルを鞄に入れたがかなり重くこれ以上は家まで体力が持ちそうにない。なので鞄の空いているスペースにカップ麺を出きる限りつめていく。端が潰れたり蓋が開きそうになったりしているが出きる限り入れていく。
現在の武器は拳銃が二丁と包丁が二つ。だが拳銃はそろそろ弾薬が無くなるし音が大きいので奴等が集まってきてしまう恐れがあり無闇に使えない。包丁しか武器になるものは持っていない、だが肩に荷物を持ち体のバランスは悪くなり体力も無くなっていれば間違いなく奴等に遭遇したら噛まれるだろう。
私はコンビニの入口にあった売り物の傘を一本取り出してビニールの部分を全て剥がしていく。売り物のハサミを使いながら剥がすと殺傷能力は無いが遭遇してしまった際の防衛にはなるだろう。
「平塚先生缶詰を詰められるだけ鞄に詰めました、缶切りはどうしますか?」
大きく膨らんだ鞄を抱えながら折本が聞いてくる。
「缶切りは家にあるから必要ないよ。それじゃあ行こうか」
「はい、分かりました!ところで平塚先生その傘は何に使うんですか?」
「ああこれは奴等が襲ってきたときに少しでもリーチが長い方がいいと思ってね。包丁では危ないしな」
「でもそれでは奴等は倒せなくないですか?」
「ああ確かにこの武器では倒すことは出来ないだろう。だが時間稼ぎくらいにはなる。何も奴等を倒す必要はないんだ、私達は逃げればいいんだからな」
荷物を鞄に摘めて肩に背負うかなり重いが走る必要は無い為なんとかなるだろう。折本を見ると辛そうだがなんとか持てている。
「それじゃあ折本帰りに向かうが来たときよりも荷物が邪魔で危険だ。注意していくとしよう」
「はい!」
折本とゆっくり歩道の真ん中を歩いていると足音が聞こえてきた。前から歩いて来たのは赤ちゃんを抱き締めて涙を流している母親だった。
「む、息子をたすけてぐださい...」
息子を見ると肩から血が流れている。母親の方は腹部に木が刺さっており血が滴り落ちている。母親は足を引き摺りながら近付いてくる。
「平塚先生....」
「最悪だな....」
家までは歩いて6分くらいだろうか。まだ少し遠い。赤ちゃんは見るからに噛まれており既に死んでおりいつ奴等になってもおかしく無い状態だ。
「おねがぃじまず...私のことはどぅなっでもぃいんです...ごふっ...」
血を吐き出しながら自分の赤ちゃんの為に必死に訴える母親の姿に視線を反らしたくなるが反らすわけにもいかない。
「折本...恐らく二人とも助からないだろう。いや赤ん坊の方は既に死んでいるが...直ぐに奴等になるだろう。赤ん坊が奴等になった瞬間走るんだ私は赤ん坊に向かって銃を撃つ。後は家まで走るんだ」
「でも先生....」
「ぐぎゃぁぁぁがっあ!!」
女性の叫び声で振り返ると赤ん坊は奴等になっており母親の喉元に噛み付いていた。
ドンッと渇いた音が響き額を撃ち抜く。かなり近付いて撃ったため血が跳ね返って服に付着する。子供を撃ったとき噛まれながらも私を睨み付ける母親の顔は忘れることは出来ないだろう。
「はぁはぁ....」
なんとか家まで辿り着く事が出来た折本と私は鍵をかけて荷物をおろして呼吸が落ち着くまで壁に体を預けた。
「先生...」
暫くすると折本が暗い表情で私に聞いてきた。
「あたし達も奴等になってしまうんですかね....」
きっと先程の光景を思い出して考えてしまった事なのだろう。今までの現実とはかけ離れているであろう現実は重く私達に今起きていることが現実だと突き付けてくる。だがだからこそ負けてはいけない。
「ならないさ」
たった一言。折本は私の言葉に疑いの言葉をかけることはなく「そうですか」と一言呟いて作り笑いだとは分かったが笑顔を浮かべてくれたことに感謝する。
コンビニから帰ってきて暫く経ったか...ようやく体が動くようになってきた。が、あの母親の憎しみを込めた瞳だけは永遠に忘れられんな...。
まだ未だに銃の引き金を引いたときの感覚が残っている。陽乃に貸してもらった拳銃にマガジンが二つ。既に10発を撃ち終えて弾数はあまり残っていない。
「さて折本。折角コンビニから無理して持ってきたんだ。ご飯にしようじゃないか」
私の言葉に頷き缶切りを持ってきてくれた折本から缶切りを受け取り魚のフレークの缶を開ける。
不思議な気分だ。
何処かやるせなく、だが無事に戻ってこれて食料を増やせたという達成感もある。
「平塚先生....?」
「....ん?ああなんだい折本」
「そ、その!平塚先生のお陰であたしは今も生きていられてるので、その...さっきのは仕方ないと思います!」
力強く言ってくれた折本に一瞬戸惑うが、その言葉が私を気づかってくれた言葉だと分かると自然と笑いが込み上げてきた。
「あははは。そうか...ありがとな折本。早く比企谷達に会えるといいんだがな」
「そう、ですね!大丈夫ですよ!いつか会えます!」
その日私達は、すぐに眠った。疲れていたからという理由もあるだろうが未だに思ってしまっているのかもしれない。これが悪い夢で目が覚めたら比企谷と雪ノ下と由比ヶ浜と共に楽しく話しているそんな現実に戻れるんじゃないかって。
「.......!」
んん...誰だうるさいな。まだもう少し寝かせてくれ。私は疲れているんだ。
「平塚せんせー全然起きないね。ヒッキー、ゆきのん、どうする?」
「そうね...このまま。というわけにはいかないのだし」
「いや別に帰っても良いだろ?気持ち良さそうに寝てるから起こすのもあれだし」
「ヒッキーいい人風に言ってるけどめんどくさいだけでしょ、絶対に」
「全く...貴方は変わらないのね」
「ばっか。お前等な、こんな気持ち良さそうに寝ているのに起こせるわけないだろ?」
「でも置いてくのは酷いし」
んん....この声は。
「二人とも、どうやら目が覚めたようよ」
「平塚せんせー、もう帰りますよ!」
「...比企谷?由比ヶ浜?雪ノ下?」
「平塚先生。比企谷君の顔を見てまるでおばけでも見たような顔をするのは流石に酷いと思いますよ」
「おいお前が一番酷いからな?」
「あら私は別に何も言っていないのだけれど。むしろ貴方を弁護してあげてるのだから感謝くらいしてもいいと思うのだけれど」
「お前ほんとに良い性格してるよな」
「あら、ありがとう私も自分の性格は大好きよ」
なんだ?なんだこの状況は?
「...お前達無事だったのか?」
「えー何言ってるんですか先生。あたし達とさっきまで話してたじゃないですか」
「平塚先生、何か悪い夢でも見ていたのかしら....」
「つーか俺達に何かある夢とかどんな夢なんだよ」
ふふ、ははは。そうか、あれは全部私の悪い夢だったのか。窓からは何時も通り綺麗な夕焼けが差し込んでいる。そして何より私の大切な生徒達が目の前にいる。
「そうだな。私は悪い夢でも見ていたのだな」
シーンと急に静まり返る奉仕部の部室。先程までいた、比企谷達の姿は無い。
「どこに!」
「きゃっー!!」
「っ!?」
急に本館の方から叫び声が聞こえてきて声のした方に走り出す。
廊下を私のヒールの音と叫び声が混じった音が響く。目には涙が浮かんでいるのかぼんやりとしている。本館まで来ると先程までの叫び声が嘘のように静かになっていたが校舎は血で染まり窓ガラスは割れていた。
気持ち悪い静けさの中で後ろから私に近付いてくる足音に気付いて振り返る。そこにはピョコンと寝癖なのか髪の毛が立っており、腐った目の比企谷がゆっくりこちらに歩いてきていた。
「良かった、比企谷。他の皆はどうした?」
「...........」
とても小さな声で何かを話した比企谷は、ゆらゆらと左右に揺れていた。
「おい比企谷、どうしっ...」
比企谷の肩を掴んだ私は気付いてしまった。床にぴちょん、ぴちょんと血が滴り落ちていってることに。
私は少しずつ比企谷から離れた。体は震え涙も再び出ていた。この状況に怖くて、怖くて、仕方がなかった。
「ヒッキー!!やっと見付けたよ。もう帰らないで待っててって言ったのに!!あれ?平塚先生も一緒だったの?」
「ゆ、由比ヶ浜......」
嗚咽が混じり声がうまく出せない、早く離れさせなければいけないのに体も震えて動いてくれない。
「どうしたんですか?平塚先生」
「ひ、比企谷からはな、はな」
「ん?痛ぁあああ。な、なに....ひ、ヒッキー....痛い、痛いよ...」
ブチブチと首に噛みつかれた由比ヶ浜の神経が切れる音がして由比ヶ浜は前のめりに倒れる。
「うぁあ...あ...あ」
比企谷は由比ヶ浜を跨いで私に近付いてくる。もう逃げる事さえ出来ない。震えて声も体も動かない。
諦めた瞬間後ろから私の顔を捕まれた。ひんやりとしていて顔を見ると何時も奉仕部で見ていた雪ノ下だった。
「にげ....ろ」
何とか言葉にすることが出来た。雪ノ下だけでも生きていてくれれば...だが雪ノ下の目の焦点は合っておらず左肩が大きく食べられていた。
そうか....私はここで死ぬのか。まあ私の大切な子達と一緒に死ねるのだ、こんな死も悪くはないのかもしれないな...。
はい病塚先生の出来上がりです。