Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

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毎日が暑い....ようやく投稿できました。


1章-18「大人とか子供とか関係ない」

水が無いと困ると言う理由で近くのコンビニに行くことになった。だが折本はついてくると言って聞かないし...困ったものだ。一応拳銃が一丁あるがこれだけでは心もとない。それに奴等に対しては使い物にならないだろう。部屋の窓から奴等の数を確認する、不思議と奴等の姿がない。暗いから気付かないだけか?とも思ったが遠くの方で一ヶ所だけ明るい場所があった。まるで山が燃えているように明るいその場所は橋がある場所だった。状況から察するに警察が感染の拡大を防ぐ為に検問を設けているのだろう。人は灯りに集まってくる。それならあの場所には人が大勢集まっている事だろう。そしてパニックにもなっていると想像がつく。奴等は音に集まってくる。この周囲に奴等が異様に少なかった理由が分かったな。

 

橋は使えそうにないが橋に奴等が集まっているのなら今が動き出すチャンスか。問題は家に武器になりそうな物が何もない事か。唯一包丁があるがリーチが短く力が強い奴等に掴まったら最後噛まれるだろう。

 

折本を見るが諦めていないのは明白だった。決意のこもった瞳は強く輝いている。こんな瞳が比企谷や雪ノ下が出来ていれば良かったのにな。

 

「仕方ない。武器になりそうな物は包丁くらいしかないから出来る限り奴等との戦闘は避けつつコンビニ向かうとしよう」

 

「はい!」

 

折本は元気よく返事をして大きめの鞄を背負った。あーあれは確か以前の友達の結婚式のビンゴ大会の時に当たった景品だったな...。二泊三日程の荷物が入る大きめな鞄。意中の彼と楽しんできてねっ!って....そんな相手いたことないわ!はぁ....。

 

「せ、先生どうしたんですか?」

 

どうやら顔に出てしまっていたようだ。心配そうに見てくる折本の頭を優しく撫でてなんでもないよと言って包丁と懐中電気を持つ。

 

「折本。念のために確認をしておこう。奴等が急に現れても叫ばずに落ち着いて対処する。やむ無い場合だけ包丁を使い攻撃する。狙うのは首だ。躊躇ったら噛まれるから躊躇うな」

 

私の言葉に頷く折本を見て玄関の扉を開ける前にドアスコープを覗き奴等がいないのを確認してから少しだけドアを開き周囲を確認する。奴等がいないことを折本に伝えて玄関の鍵を閉めてゆっくりと懐中電気の灯りを頼りに進んでいく。一番近いコンビニは徒歩10分程で着く距離だがそれは普段の何もない日常での話だ。玄関から出るだけで3分など既に経過している。集中力を使っているせいで風に揺られる木々の音でさえ意識して足を止めてしまう。目の前が暗く懐中電気で明るく灯されるのは一部分のみ。遠くで人の叫び声や悲鳴が聞こえてくる。唾液を呑み込む音でさえ大きいと錯覚してしまうほどに切り詰められた状況の中歩き続けて30分程でコンビニが見えてきた。コンビニの店内には奴等は見えないが血でベットリと床とガラスが汚れている。

 

このような状況を見るだけで察してしまう。分かってしまう。ここで何があったのかを。幸いなことに電器は付いている。消える前にコンビニの店内に入ろうとするが自動ドアの筈の入り口が開く気配はない。壊れているのか電器の供給が無くなってきているのか定かではないが明かりが消えてしまうのは奴等に噛まれる可能性が高くなる為避けたい。だが拳銃を使って無理矢理入り口を壊せば音で奴等が集まってくるだろう。

 

「先生どうしますか?」

 

心配なのか折本が聞いてくるが私自身どうすれば良いのか分からなかった。自動ドアを良く見ると少しだけ間に隙間があった。これがスライド式の自動ドアではなく鍵付きのドアだったら開ける手段は無かっただろう。

 

隙間に包丁をねじ込みてこの原理を使って少しずつ開けていく。すんなりとはいかないが少しずつ開いていく状況に気持ちが昂るのと同時に今まで気にならなかったが急に後ろが気になってくる。振り向けば奴等がいるかもしれないという恐怖が私の手を止める。

 

「先生...?」

 

折本の不安の声を聞き心の中ではいないことは分かっているが体が言うことを聞いてくれない。蛇に睨まれた蛙とはまさしく今の自分の状況だろう。その時だった私の肩に重みを感じたのは。

 

「折本....」

 

折本が優しく私を後ろから抱き締めるようにして包んでくれていた。ふっと気が楽になっていくのを感じる。震えもいつの間にか止まっており乱れかけていた呼吸も戻っていく。

 

「先生大丈夫です、私もいますから」

 

「大人の私が本来は君を支えなければいけないんだがな...すまないな」

 

「大人とか子供とか関係ないですよ。こんな世界になってしまったんです。自分の出来ることを成すべき事をする。でももし自分一人じゃ出来ないことなら遠慮なんてせずに相手を頼るきっとなんとかしてくれるから」

 

この言い方。言い回し。似ている....。

 

「今の比企谷があたしに言ってくれた言葉なんです。総武の生徒と一緒に何かしようってなったときに最後まで案が決まらなくてでもあたしはすぐに雰囲気に流されちゃうから便乗位しかできなくて....そんな時に比企谷が来たんです。ビックリしましたよ、比企谷に頼る人がいるなんて思っても見ませんでしたから....それで会議が始まると比企谷は話を聞きながら頭を抱えてました。そりゃそうですよね...時間無いのに同じ話の繰り返し...全然話は進まないし。会議は一旦休憩になって比企谷は一人出ていきました。あたしは比企谷の後を追ってました。たぶん何処かで期待していたんだと思います....」

 

「比企谷は何か買おうとしてましたけど話しかけるきっかけになると思って横から入り込んで適当なボタンを押しました。ぷっあの時の比企谷驚きと困惑しているような顔で面白かったなぁ。あ、いえ!そうじゃなくてですね。それで久し振りって声をかけたんですよ。色々聞きたくて...まぁでも結局会議の話は出来なくて話も殆ど出来なかったんですけどね....。でもその後会議が始まるとさっきとは違って比企谷が反対してきたんです。でも結局それも数で押しきられちゃって...その日の会議は終わったんです。あたしは比企谷にあたしがどう思ってるか知ってほしかったんで終わったあとに一人になるの待ってました。ずっといろはちゃんって生徒会長と一緒で中々一人にならなかったけど....やっと一人になった比企谷にあたし聞いたんです。このままで間に合うのかな?ってそしたら比企谷なんて言ったと思いますか?」

 

「ん?んーそうだな...。分からんじゃないのか?」

 

「そうです。間に合わないとは言わなかったんですよ」

 

比企谷らしいな。

 

「あたしは聞きました。どうすれば良いかなって。そしたら「お前はどうしたいんだ?だろ?」....あはは..その通りです。あたしは分からないって答えました。そしたら[そうか。まっそれならそれで良いんじゃねーの?]え?[だから折本がやりたいことが分からないなら分かるまで待てば良いし、どうしても見つけたいって言うなら誰かを頼れば良い。俺は頼れる相手いないけどな。お前ならいるだろ?それに頼ることは別に恥ずかしい事じゃないんだ。俺は...いや何でもない。じゃあな]......比企谷が言っていた誰かを頼れ....今思えばあの時比企谷が連れてきた人達が比企谷の頼った人達だったんですよね....。話は反れてしまいましたけど...最初に言った言葉は比企谷からの受け売りなんです。

 

「そうか」

 

比企谷が初めて雪ノ下と由比ヶ浜を本当の意味で頼った日にあいつも頼られていたんだな。私は折本の手に自分の手を重ねてありがとうとお礼を言って抱擁を解く。

 

「それじゃあ折本。コンビニで必要な物だけ持ち帰るぞ」

 

「はい!」


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