Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

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はい遅くなりました....。6月~8月は勘弁してください。忙しすぎて何も出来ないのです


1章-14「一色いろはの告白」

ストーブから灯油を取り出し松明に付けてマッチで火をつけた。

 

力強くも暖かい火は少しの安心感を与えてくれる。

 

「なんか....いいねこういうの」

 

由比ヶ浜は火を見ながら呟いている。皆そう思っているのだろう、頷きながらゆっくりと警察署に向き直る。

 

「ふぅー。さーてと、それじゃ比企谷君。この松明は誰が持つのかな?」

 

問題はそこである。本来なら一番先頭である俺と一番後ろの雪ノ下が持つのだろうがそれでは敵と遭遇したときに戦えない。なので真ん中にいてもらっている城廻先輩と小町に持ってもらうことにした。

 

「さてそれじゃそろそろ」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 

「ん?どうした小町」

 

「カー君。お腹すいたって」

 

あーそう言えば皆朝から何も食べてなかったな。

 

俺は自分の背負っている鞄から猫用の缶詰を1つ取り出して小町に渡した。

 

小町は缶詰を受けとると缶詰の蓋を外し鞄の中に入れた。鞄の中からにゃ~という声がすることからどうやらかまくらは満足したようだ。

 

「まず目指すべき場所だが、最初に1階にあると予想した武器庫に向かい武器と弾薬の補充。そして2階の部屋に入り今日はそこで休もうと思う」

 

「どうして2階なのか聞いてもいいかしら?」

 

雪ノ下が目を鋭くして聞いてくる、命がかかっているのだこうやって真剣に聞いてきてくれるのは正直ありがたい。かなり怖いが。

 

「1階だと外からも囲まれた場合逃げ道が完全に無くなるし常に全方位気にかけなくてはならないから休めないだろ?」

 

「それなら3階でもいいと思うのだけれど」

 

「2階なら非常用のホースを使えば下に降りれるし逃げる幅が拡がるだろ?勿論なるべく最悪な状況にならないようにはするが」

 

まあ1階の外にも敵いたら降りれないんですけどね。だからあくまで幅が拡がるってだけだ。

 

「成る程ね.....分かったわ」

 

「ねえ。あーしも一つ質問があるんだけど」

 

「......なんだ?」

 

何故だろうか...三浦の目が怖い。てか元々怖いけどさらに怖い。

 

「あんたが先頭なんだけど、なんか理由とかあるの?別に雪ノ下さんのお姉さん?でもあーしでも良いんじゃないかなーて」

 

「私の事は陽乃で良いよ、三浦ちゃん」

 

「そっ。それじゃ陽乃さんで」

 

おー...なんていうか三浦が誰かをさん付けで呼んだの初めてみた気が.....いや雪ノ下もさん付けでたわ...。

 

「で?どうしてあんたなの?」

 

皆の視線が俺に集まる。理由は勿論先頭が一番危険だからなのだが今の三浦にそのまま伝えていいものか考えてしまう。

 

「そうですよぉー先輩。まっ先輩だし何を考えているのかなんてある程度分かりますけどね」

 

一色は何処か諦めたように言ってくる。

 

「でも先輩が死んだらわたしも死ぬので死なないようによろしくでーす♪」

 

あざとさMAXでウインクしながらとんでもないことを言ってきやがった。

 

「お、おい一色。お前自分が何言ってるのか分かってるのか?いつものあざとさアピールは今はいらないんだぞ?」

 

「残念ですけど先輩。今のは素です」

 

一色はいつものおちゃらけた様子からは一変して真剣な表情になり近付いてくる。

 

「一色.....」

 

「先輩は気付いていないかも知れませんが....いえ流石に気付いていますよね?皆先輩の事が好きです。勿論わたしもです。先輩の事が大好きです、この気持ちは誰にも負けるつもりはありませんし誰よりも強いと思ってます」

 

「そ、そんな!いろはちゃん、あたしだって!「結衣ちょっとだまんな。今勇気を出して言えたのはあいつだし。それなら最後まで言わせてあげるくらいは譲らなきゃっしょ?」.....うん」

 

「三浦先輩....ありがとうございます。先輩、改めて言います。わたしは先輩の事が好きです」

 

「一色.....」

 

「ここからは少し皆さんにずるいと言われるかも知れませんが......」

 

そう言うと一色は俺に抱き付いてきた腕を背中に絡めて離れないように力をいれてくる。

 

「っ!」「いろはちゃん....」「結衣我慢しな」「材木座君。僕達は少し離れて周りを警戒しておこう」「う、うぬ....そうだな」

 

「い、一色.....」

 

「先輩お願いします。死なないでください....」

 

そこにはいつものあざとい後輩の姿はなくただただ俺の事を心配してくれる一色の姿があった。

 

「ありゃりゃー比企谷君。モテモテだねぇ~お姉さんやきもち妬いちゃうぞ?」

 

「なに言ってるんですか陽乃さん」

 

「ずるいです.....」

 

「え?」

 

一色が俺の胸に頭を埋めながらずるいと言ってきた。だが俺には何がずるいのか分からない。

 

「わたしも名前で呼んでください」

 

「は?え?」

 

「だって陽乃さんってハルさん先輩の事は名前で呼んでるのにどうしてわたしは名前で呼んでくれないんですか?」

 

「それは....」

 

単純に恥ずかしいからだ。とは言えないし。てか呼んでくれなんて頼まれてない気がする。

 

「分かりました。こう言います。わたしの事はいろはって呼んでください」

 

「......」

 

いざ呼ぼうとすると恥ずかしさが倍増している気がする。一色は俺を黙ったまま名前を呼ぶのを待っている。本当はこんなことをしている時間なんてないのかもしれない。でも誰もなにも言わないのはきっと皆が一色に対して何も言えないからだろう。言わないんじゃなくて言えない。

 

その意味することは最低だと思うが雪ノ下や陽乃さんや由比ヶ浜からアプローチは受けたのだ。そして自分だけを選ばなくて良いと言ってくれた由比ヶ浜。皆俺には勿体無いくらいに素敵な女性達なんだろう。こんな状況じゃなければ俺なんかを選ばずに釣り合う奴と付き合っていたはずだ。

 

だが一色は今真っ直ぐ気持ちを伝えてくれた。そして名前で呼んで欲しいと言っている。伝えた気持ちの答えではなく名前で呼んでくれと。

それならその気持ちくらいには答えても良いんじゃないかと思う。

 

 

「い、いろ...ひゃ」

 

はい、盛大に噛みました。なんだこれ....さっきより全然恥ずかしいんだが。これセーブポイントまで戻ってやり直しとか出来ないの?出来ないよなぁ....。

 

「ぷっ流石先輩ですね」

 

「あんまり笑うなよ....」

 

いろはは、笑いながら涙を浮かべて手で拭っている。

 

「でもそんな所もわたしは大好きですよ♪先輩」

 

「.........あざとい」

 

今のいろはの笑顔は本当にあざとさもあるかもしれないが心が揺らいでしまうほどの破壊力を持っていた。暫くは目を合わせられないくらいには。

 

「あー!ヒッキー照れてる!!ねえ!ゆきのん!!あたしもヒッキーに名前で呼ばれたいよぉー」

 

「ゆ、由比ヶ浜さん落ち着きなさい。慌てても仕方がないのだし私のスカートはあまり引っ張らないでもらえるかしら?名前なら後でそこにいるリア充谷君に言えば言ってくれると思うわ」

 

ちょっとー?リア充谷君ってなんですか?知ってるか?リア充ってリアルが充実してる奴の事なんだぜ?つまりこんな世界で俺がリア充な筈がない。

 

「は、八幡!!」「ぬおー!はちまん!!」

 

叫びながら戸塚と材木座が走ってくる。ちょっと材木座うるさい、今は静かにだろ?戸塚の声が聞こえない。

 

走ってくる二人の後ろから奴等が見えた時俺は即座に反応した。

 

「っ!皆聞いてくれ。今から警察署内に入る。まずは正面玄関に入ったら扉に鍵をかけて奴等が入ってこれないようにする。だが正面玄関はガラス張りだ。さっき確認したら強化ガラスだったから簡単には破れないとは思うが....そのまま2階に上がり安全な部屋を確保する」

 

「数は.....25ってとこかな?ちょっと多いね」

 

「はい。ですので出来るかぎり戦闘は避けましょう。それじゃ先程の並びでお願いします」

 

急いで警察署に入った俺達は扉を閉めて鍵を閉めた。バンっバンっと扉を叩かれるが流石強化ガラスだ。簡単には割れないようだ。

 

「では今のうちに移動しましょう」

 

「ヒッキー、武器庫は行かなくて良いの?」

 

「今は武器よりも安全な場所を見つける方が先だ。心に余裕も出来るし暗くなってからだと本格的に動けなくなる。武器庫は明日、最悪寄らずに移動する」

 

「お兄ちゃん、そろそろ」

 

外の光景を見て小町が震えている。留美も同じように顔を青くして震えているがこの状況なら当然だろう。

 

「ここからは静かに行動するぞ」

 

皆頷く事で肯定して表情を一瞬で変えて集中している。

 

本当に頼もしいな.....。

 

こんなくそったれな世界になってから数日。確実に俺達は知らず知らずのうちに変わっていっている。

 

きっとその変化は生きてくのに必要な変化...。

 

その変化にはきっと誰も気付く事はなく、それが当たり前になっていく。




あと少し...,

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