Highschool of the Dead  ~比企谷八幡の選択~   作:隣の三下君

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更新が遅れてしまい大変申し訳ありませんでした。

書こうとしても何もアイデアが浮かばずに一日一日を過ごしていたらこんなことに.......。

※3月6日修正。相撲→相模


1章-10「死を乗り越える為に」

八幡side

 

 

由比ヶ浜から聞かされた話は俺にとって意外なものだった。相模に対して俺がしたことは誰から見ても酷いと写ったはずだ。いや....陽乃さんと平塚先生は違う意味に取ったみたいだが。

 

それでも俺のとった行動は別に誰かの為にやったことじゃない。雪ノ下が雪ノ下のやり方を曲げずに最後までやろうとした、だから俺は、俺自身のやり方にしたがって行動を起こしたまでだ。

 

---------------だから。

 

「感謝されるようなことなんてしてないんだけどな.....」

 

「ううん。ヒッキーなら自分のやりたいようにやったからさがみんの為じゃないって言うかもしれないけど、あたしは、さがみんの為だったと思ってる」

 

「.............」

 

「ヒッキーはさ、いつもそうだよ。自分を犠牲にしてでもあたし達を助けてくれる」

 

「俺は別に自分自身を犠牲になんて」

 

「してるよ....してる。今回だってそうだよ......。あたし、ちょっと怒ってるんだから」

 

「何をだよ....」

 

「陽乃さんが暴走しかけた時...ヒッキー死んじゃうかもしれなかったんだよ?」

 

「.........」

 

「嫌だよ.....ヒッキーが死んじゃうなんて.....私は嫌ぁ....」

 

由比ヶ浜は泣きながら俺の服を掴みながら頭を俺の胸にたおしてくる。

 

「由比ヶ浜.....」

 

「ヒッキー.....あたしは、ね......あたしはヒッキーの事が......ううん。比企谷八幡の事が好きです」

 

「っ.........俺は..........」

 

由比ヶ浜は涙目になっている顔をあげて俺の口に人指し指を当ててくる。

 

「答えは良いよ....。こんなのずるいって分かってるから......ヒッキー優しいから断れないってわかっててやってるから.......だから....答えは良いの」

 

「由比ヶ浜.....」

 

「あたし今回の事で分かったんだ......ヒッキー、私だけを見てくれなくてもいい.....だから.....だから.....んんっ!」

 

俺は由比ヶ浜の唇と自分の唇を合わせていた。由比ヶ浜の気持ちには答えられない。

そんな状態でこんな事をしている俺はきっと最低なんだと思う。

 

「ごめん、由比ヶ浜。答えは返せない....」

 

「うん....うん」

 

「でも、もしそんな俺で良ければ.....っ!」

 

俺が言い終わる前に由比ヶ浜が今度は俺の唇に唇を合わせてきた。さっきよりも長いキス。体が少しずつ熱を帯びていくのが分かる。

 

「ヒッキー......ありがとう」

 

俺は由比ヶ浜の感謝を素直に受けとることは出来なかった。

 

 

 

 

いつの間に寝ていたのか薄暗い空が明るくなっていた。俺は携帯を開いて時刻を確認すると7時をさしていた。

昼までは5時間ほど時間があるが奴等がどれくらいいるのかも分からないので速めに動いておくべきだろうと思った俺は壁に預けていた体を起こそうとすると自分の右肩に重みがあるのに気付いた。

 

「........由比ヶ浜」

 

由比ヶ浜が寝息を立てながら寝ていた。顔が近くにあり昨日の事を思い出して顔が熱くなる。暫く起こすことも出来ず固まっていると由比ヶ浜が目を覚まして俺と目があった。

 

「ひゃ、ヒャッキー!?」

 

お互い驚いて飛び退くように離れる。でもまた自然と目は合って顔が紅くなっていく。

 

「ゆ、由比ヶ浜」

 

「な、何?」

 

「そろそろ警察署に向けて動きたいんだが大丈夫か?」

 

「あ、う、うん!大丈夫、大丈夫!」

 

「そうか、それじゃあ俺が取り合えず外を確認してくるからここで待っててくれるか?」

 

「やだ」

 

「......おい」

 

「絶対嫌だし!あたしも着いてくに決まってるじゃん」

 

「入り口開けたら直ぐに奴等がいるかもしれないんだぞ?」

 

「だからじゃん!あたしが一緒にいてもヒッキーの邪魔にしかならないかもしれない....でも、これでもしヒッキーが死んじゃったらあたし....」

 

瞳に涙を浮かべて服の袖を掴んで下から上目使いで由比ヶ浜は言ってくる。正直緊張で頭がおかしくなりそうだった。

 

「わ、分かった、分かったから少し離れてくれ....」

 

「ああっ!ご、ごめん、ヒッキー」

 

「い、いや....ほら行くぞ」

 

俺は由比ヶ浜の左手を右手で掴んで入り口の扉を開けた。

 

「うんっ!」

 

 

 

 

 

運が良いのか外に奴等の姿はなく辺りは静まり返っていた。

以前までならここは大勢の人が行き交い賑やかだった道路なのに今や車の一台も走っていない。

あるのは電柱にぶつかった大型バスや、血でフロントガラスが汚れているような車ばかりだった。

 

慣れたと思っていても心にくるものはあるようで胸が締め付けられる。

 

今頃小町や他の皆は無事だろうか....そんなことを考えていると由比ヶ浜が俺の手を繋ぐ力が強まった。

 

「大丈夫だよ、ヒッキー。皆もきっと無事だよ」

 

真っ直ぐ前を見ながら言う由比ヶ浜を見て先程までの想いを振り払い俺も由比ヶ浜の手を、力強く握り返した。

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

小町side。

 

お兄ちゃんと別れた後直ぐに車に乗り込みお義姉さん候補の陽乃さんが運転して警察署に向かって奴等から逃げることが出来ました。

 

でも...お兄ちゃんとお義姉さん候補の結衣さんは大丈夫かな。

 

「大丈夫......彼がいるもの」

 

私の心配が伝わったのか陽乃さんが運転をしながら言ってくる。

 

「そうだよ。小町ちゃん、結衣先輩だけならともかく先輩もいるんですから大丈夫ですよ」

 

「ええ、そうね。悪運だけは強いから....でも少し由比ヶ浜さんが心配ね.....」

 

「あんたも気付いてたんだ」

 

「三浦さんも気付いていたようね」

 

「結衣を見てれば分かるし。結衣は優しいし変に気を使うから隠すけど布団の中で泣いてた。結衣はまだ、皆の死から立ち直れてない」

 

「そうね.....」

 

「いやはや、だが。八幡ならば問題はなかろうて!」

 

「うん!そうだよね、材木座君!僕もそう思うよ!」

 

皆、お兄ちゃんの事を信頼しているんだなって心のそこから伝わってくる。状況が状況なら喜んでいた所だけど、今は、今だけは何も望まない。お兄ちゃん....結衣さんと一緒に無事に戻ってきて。

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

俺と由比ヶ浜は徒歩で警察署に向かっている。陽乃さんから貰っていた拳銃を俺が構えて、由比ヶ浜は木刀を構えている。

道の真ん中を歩いて進んでいくと遠い所に奴等がいるのが見えた。

数は4~5体って所だろう。

 

正直銃は使えない。弾を確認したら6発しか撃てないし、何より音が響く。風がふく音以外何も聞こえないこの場所で銃を使ってしまえばそこらじゅうから奴等を集めてしまう。かといって由比ヶ浜に頼ることも出来ない。

 

ある意味出くわしたらアウトの状態だ。

 

「ヒッキー?」

 

「由比ヶ浜、遠回りになるが迂回するぞ」

 

「でもここを通ればすぐそこだよ?」 

 

「かなり遠くだが奴等がいる。俺達の今の武器だと倒しながら行くのは無理だ。だからなるべく戦闘は避けながら行きたい」

 

「う、うん!分かった!」

 

由比ヶ浜、少しは元気になったかな?なったなら良いんだが.....。

 

迂回して歩いても奴等はいる。

曲がり角を曲がる前に確認しながら歩き集中力を徐々に削っていく。

 

「ヒッキー、顔色悪いけど大丈夫?」

 

由比ヶ浜が心配してくれている。よほど酷い顔をして歩いていたのだろう。

 

「ああ、問題ない。それよりも....」

 

バァンっ!!と物凄く大きな音が近くで聞こえた。

 

「今のは拳銃の発砲音か?」

 

「ひ、ヒッキー、今のって」

 

「ああ。誰か生きてる奴がいるのかもしれない。小町達かもしれないし様子を見に行こう」

 

「うん」

 

俺と由比ヶ浜は銃声の聞こえる場所まで来ると遠目だがライフル銃を持っている男が道路の真ん中にいるのを見付けた。

 

「あ!生きてる人だよ、ヒッキー。おーっ!?」

 

大声で叫ぼうとした由比ヶ浜の口を咄嗟に手で塞ぎ物影に隠れる。

隙間から覗くと此方をちらっと見ただけでまた前を向いた。

 

「由比ヶ浜、落ち着いて聞いてくれ」

 

由比ヶ浜が首を縦に振ったことで手をどける。

 

「あれは人間じゃない」

 

「奴等は銃なんて使えないんじゃ....」

 

「奴等よりも厄介かもしれない。狂喜に堕ちた人間ほど危ない相手はいない」

 

「それってどうゆうこと....」

 

「あいつをよく見てみろ。奴等かどうか確認せずに端から殺してる」

 

「.......」

 

「あれじゃあ俺等が出ていった途端に殺される」

 

「(こんな世界になったんだ。親族、友人、恋人。自分の前で仮に死んだとしたら。いや俺だって由比ヶ浜や皆が死んでしまったら正気を保てる自信なんてない)」

 

「そんな...」

 

銃声の音に集まって来ているのか奴等の数が増えていく。

 

「ここにいるのも危険だな。あと少しだ。早く警察署に向かおう」

 

「うん....」

 

由比ヶ浜は俺に手を引かれながら暫く後ろを向いていた。

 

何を感じたのか、何を思ったのか俺には分からない。

 

 

 

-----------------だけどこの日俺達は初めて『人間』から逃げた。

 


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