相模南の奉仕活動日誌   作:ぶーちゃん☆

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今回、予告通りオリキャラが見事なまでに落ちますw





vol.6 相模南は彼女に想いを語る

 

 

 

 今うちがこの子に向けてる顔は、一体どんな表情なんだろう。

 ハブられて虐められて引きこもってたなんてみっともなくて格好悪いカミングアウトを、よりにもよって年下の女の子にするだなんて、年頃の女子からしたらとてもじゃないけど容認出来ないような情けない行為だというのに、それなのに今うちは口元が弛んでいるという自覚がある。

 ……ぷっ、マジで変なの、うち。

 

 よし、自分が変な女だと自覚出来たところで、もう少し話を進めてしまおう。

 目の前の女の子が、驚いて目を丸くしている間に。

 

「ふふ、びっくりした? だよねー。だってあいつ、全然そういう事するようなヤツには見えないもんね」

 

「……あ、いえ……そんな」

 

「いーのいーの。だってうちも心の底からそう思ってたもん。あのドヨッとした目とか、なんなら人を貶す事に生き甲斐感じてそうまである」

 

「……で、ですよねー」

 

「そこはちょっと否定しようよ!?」

 

「す、すみません!」

 

 あわあわと頭をペコペコ下げる千佐さんを見て、うちはつい安心して微笑んでしまう。

 部室での態度とかを目の当たりにして少し不安になってたこの依頼だけど…………うん、なんとかなるかもっ。性根は叩き直さなきゃかもしんないけど、こうしてみたらなんてことない普通の子だもんね。

 あはは、ホント、クラスメイトに性根をぼっこぼこにされる前のうちみたい。

 

「……あいつってさ、確かに見た目はあんなんだし性格だって超悪いけど、でも、千佐さんが軽く見てるようなただのオマケじゃないんだよ?」

 

「!? ……オ、オマケだなんて……」

 

 スイッと目を逸らしやがったな? やっぱ絶対オマケだと思ってたでしょ、この子。

 

 だったら話してやらねばならないよね、比企谷の凄いトコ。

 そもそもあいつを軽く見たままじゃあの子たち……特に一色さんがこの子を認めないだろうし。認めないもなにも部員じゃないけど。

 

 

 だからうちは千佐さんに話す。うちと比企谷の間にあった全ての事を。

 いかにうちが最低であったのか、そして比企谷はそんな最低なうちに、どう手を差し伸べてくれたのか。

 

 あの日、本当の意味で比企谷と初めて向かい合ったうちの部屋での出来事は、うちの中だけの宝物にしときたかったけど──お母さんには盗み聞きされてたけど……──この子の為にも比企谷の為にも……なにより少しでも多くの人にあいつを良く見てもらいたいと願ってるうち自身の為にも、全部話してあげるのだ。

 

 

 

 

「……信じらんない……だって、親押し退けて無理やり押し入ろうなんてしたら、下手したら通報されちゃうじゃないですか……」

 

 文化祭、体育祭、それからクラス替えをしてうちの身に起きた事から、比企谷が家に押し掛けてきてまで、うちの手を掴んでくれた事までを話すと、ずっと黙って聞いていた千佐さんが呟くようにそう声を漏らした。

 

「ね、バカでしょあいつ。なにせお母さんに啖呵切ったんだから。通報するならしてくれって。そしてうちには、警察来ちゃう前にちょっと話してくれよって」

 

 ホント、いま思い出しても胸が熱くなる。そんなバカ、どこにも居ないっての……!

 

「でね? そんなバカなあいつに自分を認めさせてやりたいと一念発起して、うちはやっと登校拒否から抜け出せた。復帰したら復帰したで、まーたあいつの策略で色んな酷い目に合わされたんだけどさ、その度にあいつのムカつくニヤケ面を思い浮かべて「なにくそー!」って頑張れたんだ」

 

 ああいう辛くて挫けそうになる時って、ホントあいつのムカつく顔がうちの特効薬になんのよねー。

 

「でさでさ! ようやく事態が一段落した頃にあいつを例の屋上に呼び付けてやったの! そんでそこで突然お礼言ってやってあいつをびっくりさせてやったんだー。ちなみにその日がうちの誕生日でね? せっかくだから復帰祝いと誕生日祝いでなんかくれ! って言ってやったら、後日あいつがこのピアスくれたの。あはは、あいつあんなんのクセしてこんな可愛いピアスプレゼントしてくれたんだよ? 超笑える! しかもこのピアスの花のモチーフには花言葉があってさっ、なんだと思う!? 『絶望を乗り越えて生きる』だってさ! 超キザじゃない? 似合わな〜! って感じだよねー。でもうちがコレ着けて部室行くとあいつがそれ見て絶対悶えるから超面白くってさー、だからもうあいつをからかう為に毎日だよ毎日! 毎日着けてきてんだから! ざっまー! って感じじゃない!? んでねー? …………ってアレ? どうかした?」

 

 ん? どうかしたのだろうか……? なぜか千佐さんがゲンナリとしてる。

 

「……あ、いえ……その、良く分かりました……い、色々と」

 

「……そ? あ、でねー?」

 

 

 それからしばらくのあいだ比企谷のバカさを語ってあげてたんだけど、なぜか千佐さんからストップが掛かりました。

 おっかしいなー、これじゃまだ奉仕部に入部してからの毎日のやり取りとかまでは細かく話せてないんだけど。ちゃんとあいつの良さ分かったのかなぁ。

 

 

× × ×

 

 

 まだまだ話し足りないような気はするけど、本人がもう大丈夫ですって懇願するんだから仕方ないよね。

 それでも、どうやらうちは知らず知らず結構喋ってたみたいで、ひとたび喋るのをやめるとノドが渇きを憶えていることに気が付いた。

 渇いたノドを潤す為に缶コーヒーをくぴくぴ流し込むと、口内もノドも、なんとも甘ったるい液体に満たされる。

 

「……うへぇ、やっぱ甘過ぎだっての……余計ノド渇いちゃうじゃん」

 

 マジでこんなのを好き好んで飲んでるヤツの気が知れないよねー、とブツブツ文句言ってると、同じくレモンティーでノドを潤していた千佐さんが話し掛けてきた。

 

「……えっと、聞いてもいいですか?」

 

「ん? いいよー、次はあいつのなにが聞きたいの?」

 

「違いますから! 相模先輩があの人のことが大好きなのはもう嫌というほど分かりましたから! だからあの先輩の話は一旦置いといてください!」

 

「そ?」

 

 

 

 

 

 …………ん?

 

「いやいやちょっと待って!? うちそんなこと一言も言ってないよね!?」

 

「……え? 今あえて惚気てたんじゃないんですか……?」

 

「ちちち違うから! そ、そういうんじゃないから!」

 

 ……え、なに? うち惚気てたの……? マジ……?

 ヤバイ〜、顔とか超熱くなってきたぁ……!

 

「……え、えと……うち、そんなに分かりやすかった……?」

 

「いやだから……分かりやすいもなにも、普通に惚気てるのかと思いましたし……まぁ、言ってしまえば超バレバレです」

 

「ぁぅ……」

 

 マ、マジかぁ……! うちってそんなに分かりやすいのかぁ……!

 そーいや葉山くんが好き……いや、あれは好きというよりはミーハー心かもしんないけど……とにかくその時も超態度に出てたっけ……

 

 初めて会った子にあっさりバレるくらいじゃ、そりゃ由紀ちゃんたちどころか優美子ちゃんたちにもバレバレにもなるわ。

 ……は、恥ずかしい……

 

「あ、いや……まぁ、相模先輩のお話聞いたり、あたしのあの人への態度に不穏な空気になった先輩方……特に一色先輩を見れば、あの人に凄い魅力があるんだろうなってことは理解してますので、気持ちがバレたからってそんなに気にしないでください……別に話す相手もいないんで、誰にも話しませんし……」

 

 あまりにも恥ずかしくて両手で顔を覆い隠しているうちに、千佐さんは優しくそう声を掛けてくれた。

 

「……ぅぅ……た、助かります……」

 

 ぐぅ……これじゃせっかくの素敵なお姉さん像も台無しだっつの……アホかうちは。

 

 

 

 って、今はうちの羞恥に時間食ってる場合じゃなかった!

 そう、そんなのは今夜のベッドに回しとけばいい。いま大事なのは千佐さんの問題なんだから。

 だからうちは耳まで熱くなってる顔をなんとか持ち上げ、またも素敵なお姉さん風を吹かせて笑顔を向けるのだった。

 

 

「ま、まぁそれはそれとして、じゃあ千佐しゃんがうちに聞きたい事ってにゃにかにゃっ?」

 

 

 ……誰かお願いだからシャベルかスコップ持ってきてください。

 

 

× × ×

 

 

 うちの失態で若干おかしな空気になってしまったものの、うちの酷い噛みっぷりも黙って聞き流してくれた千佐さんは、またとても真剣な眼差しを向けてくる。

 

 やだ、千佐さんって意外と大人じゃない! ……とかも一瞬思ったんだけど、こんな真剣な眼差しを向けてくる千佐さん相手にいつまでもそんなんじゃ失礼すぎると感じたうちは、すぐさま気持ちを切り替えて千佐さんの質問に耳を傾ける事にした。

 

 

「……あの、それで相模先輩は、どうやってまたクラスに馴染めたんですか……? そんな酷い目にあったのにそんなに笑顔で居られるって事は、やっぱり元通りの地位に戻れたって事ですよね」

 

「……元通り?」

 

 

 ああ、そういう事か。この子はうちの話を聞いて、そんな勘違いをしてるのか。

 

 そうだよね、千佐さんにとっては、そこがなによりも一番聞きたいポイントだもんね。

 そして一瞬変な空気になっちゃって忘れてたけど、それこそがうちが千佐さんに一番話したかった事でもあるのだ。

 

 

 ……これから話す内容は、千佐さんにとって少し残酷かもしれない。

 でもこれを受け止めなければ、この子はこの先学校生活を送っていけないと思うから、うちはこの子にちゃんと伝えなければならない。

 

「千佐さん、それ、勘違いだから。うちのクラスでの地位は何一つ元通りになんてなってないよ。さっきの机みたいな虐めはもう無くなったけど、うちはクラスでは親友の二人以外からは今も腫れ物扱いのまま。……今も、毎日非難の目に晒されたまんまだよ」

 

「……え」

 

 うちが伝えた真実に、千佐さんは期待に満ちていた瞳に陰りを落とす。

 この子は、うちの過去に己の未来を見いだそうとしてたはずだ。だからうちがこうして笑って復帰出来ているという事実に、だったら自分だって! という希望を持ったんだよね?

 そんな微かな希望を、他でもないうちの口からあっさりと打ち砕かれてしまったのだから、それが残酷じゃないはずがない。

 

「そん、な……あたしてっきり、相模先輩は奉仕部に……あの人に救ってもらえて、元の立場になれたから笑えてるんだって思ったのに……! じゃあなんで相模先輩はそんな平気な顔をしてられるんですか!? だって、クラスメイト達からハブられ続けたまま学校生活送り続けるなんて……そんなの……そんなの惨めじゃん……っ」

 

 そう言って千佐さんは悔しそうに俯き、震える両手でスカートをギュッと握る。

 

 ……惨め……か。

 

「確かに惨め、かもね。……でもね? 千佐さんは今の状況を雪ノ下さん達に改善してもらえたとして……もしいま千佐さんをハブってるクラスメイト達が突然ちやほやしてきたとして……その人たちの言葉を信じられる? ……少なくともうちにはそうは思えなかった。もし今あの人たちが笑顔で話し掛けて来ても、うちには信じられない。……千佐さんはそんなんで幸せ? 毎日が楽しくなる?」

 

「……」

 

「さっき雪ノ下さん言ってたじゃん? 前のように中心で居たいというのが依頼なら受けられないって。……あれってね、別に雪ノ下さんは意地悪で言ってたんじゃなくて、そういう事なのよ。もしかしたら物理的には中心になれるかもしれない。……でも、本当の意味ではもう無理なんだよ」

 

 苦しみながらも千佐さんはそれを理解してくれたようで、俯いたままこくんと頷いた。

 

「……じゃあ……やっぱもう無理なんだ。あたしはずっと、惨めなままなんだ……だったらもう、学校なんて……」

 

「……うん、だよね、惨めだから学校なんて来たくなくなるよね。……うちもそんな惨めな自分が嫌だったからずっと逃げてた。……うちはヘタレだし、人一倍周囲の目を気にする人間だったから、毎日がホント惨めで惨めで……。だから前みたいにまたクラスで中心になれないような学校生活なら、もうそんなもの要らないって思ってた」

 

 

 ……でもね、と言葉を紡ぎ、うちは千佐さんの震える両手にそっと手を添える。

 

「……誰かさんが言ってたよ。惨めかどうかなんて本人の気持ち次第なんだってさ。……それは今のうちもホントそう思う。たとえ前の煌びやかだった頃の自分と比べてショボくたってみっともなくたって、そんなのはただの偽物。……自分にとって何が大事なのかを見つけられれば、惨めさなんかすぐにどっかに吹っ飛んじゃうって」

 

「……大事な、物? ……それがあれば、ひとりぼっちでも……惨めな気持ちが吹っ飛んじゃうん……ですか……?」

 

 千佐さんは呟くように、弱々しく不安そうにそう訊ねてくる。

 だからうちは千佐さんの震える手に添えた手に、ギュウっと力を込めた。

 

「うん。それはうちが胸を張って保証してあげるよ。あはは、うちなんかに保証されたってなんの価値もないかもしんないけどね」

 

 ゆいちゃんくらい価値ある胸を張られたら保証も万全だろうけど、ってうるさいわ。

 

「あ、でもひとりぼっちでもってのはちょっと語弊があるかもね。それはその人その人の大事なモノ次第かな。例えばあいつだったら、ぼっちだって自分の中の大事な信念だけで惨めなんか吹き飛ばしちゃってたし、」

 

 あ、それと小町ちゃんと戸塚くんも追加で。

 

「雪ノ下さんは自分自身に絶対の自信を身に付けて、ひとりで居る事の惨めさなんて吹き飛ばすどころか凍り漬けにしちゃってたし、一色さんは努力して自分の魅力に磨きをかけて、同性に超嫌われる惨めさよりも男子人気を取ったわけだし」

 

 あれ? なんか今ちょっと一色さんにだけ悪意こもっちゃった? ま、いーけどー。どうせ一色さんだし。

 

「誰よりも友達との繋がりが無くなるのを恐れるゆいちゃんだって……一時期は親友の“あの”優美子ちゃんに逆らってまで自分を貫こうとしたんだよ?」

 

 優美子ちゃんと仲良くなれた今なら分かるけど、たぶんあれが優美子ちゃんじゃなかったら、ゆいちゃんはあのときクラスでひとりぼっちになってたと思う。

 

「……そしてうちは、昔みたいにちやほやしてくれる大勢の友達じゃなくて、たった数人だけど、本当に大事な友達の存在に気付けたから、前みたいにクラスの中心じゃなくたって、今こうして惨めさなんか吹っ飛んじゃってるんだよ。……うちは、クラスでハブられてる今が、今までの人生の中で一番幸せだって感じてる」

 

 それは本当にうちの宝物。

 由紀ちゃんが、早織ちゃんが、優美子ちゃんが、姫菜ちゃんが、雪ノ下さんが、ゆいちゃんが、……あー、あとホンっトにオマケの一色さんが居てくれるから、うちはもうこれっぽっちも惨めなんかじゃない。

 ……そしてそれをうちに気付かせてくれたあのバカも、ふふっ、特別にうちの宝物に入れといてやろう!

 

 でもまぁこうしてよくよく考えると凄いメンバーだよね、うちの宝物。惨めになれる要素がひとつも無いっていうね。

 

 

「……カッコいい……」

 

 ん? いまなんか言った? この子。

 あまりにも声が小さすぎてなに言ってんのか聞き取れなかったうちは、俯いたままの千佐さんの次の動きを待つ。

 

 すると、千佐さんはゆっくりとゆっくりと顔を上げてうちをジッと見つめてきたんだけど、…………なんか目がキラキラしてる。

 ん?

 

 

「……カッコいいです……! 相模先輩カッコ良すぎます! ……そりゃ学校では雪ノ下先輩たちの方が有名人ですけど、あたしは断然相模先輩派です!」

 

 え、なに言ってんのこの子。そんな派閥ないから。

 

「ちょ、ちょっと待って……? 別にうちなんてカッコ良くもなんともないから! 偉そうなこと言ってるけど、大体あいつの請け売りだったりするし……」

 

「そんなこと無いです! 超カッコいいです! だって、あんな惨めな目にあって登校拒否ったら、普通恥ずかしくてもう学校なんかに来れないですよ! あたしだったらみっともなくて絶対無理!」

 

 いやいやちょっと待って? なんか微妙にバカにされてる気がするんだけど……

 

「それなのに先輩は頑張って学校に来て、そんな強い気持ちを持てるだなんて……あたし超尊敬しちゃいました! 超素敵です!」

 

「え、そ、そう? えへ」

 

 なんだ結構いい子じゃないこの子。

 ……うちチョロっ!

 

「……正直、やっぱまだ恐いです……これからも毎日あんな誰も居ないみたいな扱い受けなきゃなんないのかな……って。……たぶんまた、中学の時の栄光に縋りたくなっちゃうかもしれません……」

 

 でも……と、千佐さんはうちの手をギュッと握り返し、真っ直ぐにうちの目を見る。

 

「……あたし、尊敬する相模先輩みたいになりたい……! だから頑張ります! ……あたしが頑張れるように、力を貸してもらえませんか……?」

 

「……うん、その為の奉仕部だから。……今から部室帰って、雪ノ下さん達にそうやって報告しよ?」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

 ──こうして、当初の思惑とは若干違う気がしないでもないけれど、うちはなぜか懐かれてしまった千佐さんと共に奉仕部へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「あ、あの! 相模先輩!」

 

「ど、どうかした?」

 

「そ、その……南先輩って呼んでいいですか!?」

 

「え、あ、うん……いいけど」

 

「やった! じゃああたし…………ウチ、今日から南先輩って呼ばせてもらいますね!」

 

「ストーップ! そのウチって言うのはやめようね!? 突然ウチとか言いだしたら、クラスの目とかアレだから……!」

 

「……は、はーい……分かりましたぁ……」

 

 

 いやいやあんた絶対分かってないでしょ! なんでそんなに不満そうなのよ!

 マジで勘弁してよ……あの状態で連れ出した千佐さんが突然ウチ呼びで帰ってきたら、また比企谷のヤツになに言われるか分かったもんじゃないからぁ……!

 

 

 

「あの、南先輩!」

 

「こ、今度はなに……?」

 

「ライバルとか超強力で勝ち目ないかもしれませんけど、ウ……あたし、南先輩の恋、全力で応援しちゃいますね!」

 

「……」

 

 

× × ×

 

 

 色々と妙な不安を抱えつつやっと戻ってきた特別棟三階。ちょっと千佐さん、制服の裾から手を離しなさい。

 

 多少歩きづらくはあるものの、あと少しで部室という所でうちは普段あまり見ない光景を目撃した。

 

「あれ?」

 

 誰だかは確認出来なかったのだが、今まさにちょうど奉仕部に誰かが入っていく影が見えたのだ。

 

 

「た、ただいま戻りましたー……」

 

 

 ──またお客さんかな。珍しい事もあるもんだ。

 そう思いながら、その新たなお客さんを追うように部室の扉を開けたうちの目に飛び込んできた光景、それは……

 

 

「あ、南さんやっはろーです!」

 

「ん? あ、小町ちゃんやっはろー。……なんだ、小町ちゃんかー」

 

 

 新たなお客さんかと思われた人物、それは小町ちゃんだった。

 奉仕部の部室に小町ちゃん。それは、特になんの変哲もない光景に過ぎないのだけど、なぜだかちょっと違和感。

 

 

 ……あ、そっか。普段なら雪ノ下さんか一色さんの隣に席を構えるはずの小町ちゃんが、なぜか依頼人席に座ってるから変なのか。

 

 どうしたんだろう? と疑問を感じつつ扉をくぐった時だった。うちの背後から心底驚いたような声がしたのは……

 

 

 

「……え、ひ、比企谷さん……?」

 

 

「およ? ……んー、えっとぉ、確かA組のー…………千佐さん、だよね? あれ、どしたの? こんなトコに」

 

 

 

 

続く

 





というわけで、さがみんにも可愛い?後輩が出来ました\(^O^)/
やはり小物は花開いた小物に憧れます笑
これが小物なりの更正への第一歩ですね☆


……一体いつから八幡に落ちると錯覚していた?
残念!さがみんにでしたー!
……別にここから百合百合な世界の幕が開くわけではありませんのであしからず。




そしてこの小町の登場で、物語は一気に加速します。
加速というか、ぶっちゃけ(たぶん)次回で奉仕活動は終了しますw

あ、奉仕活動自体が解決するという意味で、別にSS自体が終わるわけではありませんよ?
奉仕活動日誌というタイトルなのに、その奉仕活動が正味4話程度で終わってしまうという不思議。


ここのところ久しぶりになかなかの連続投稿をしましたが、次はたぶんこんなに早くないですっ!ではまた次回ノシ


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